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( ^ω^)と窓際の(*'-')のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:01:54.72 ID:tskYGqXRO
下北沢への電車を待つホーム。

ルミネへ続く小ぎれいなJRの南口から数十段潜り込んでたどり着くそこは、
新宿のくすんだ部分の空気をたっぷりと孕んでいた。

そのくすんだ空気を“切り裂く”でもない速度で滑り込んできた電車が、終点新宿のホームへ乗客を吐きだす。

( ^ω^)「あっついお。」

一歩電車に踏み込むと、溜め込まれた熱気がむあっと頬に襲ってきた。




2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:04:26.27 ID:tskYGqXRO

熱気といっても温度が高く暑いものではなく、
主のいない息づかい、というか、
嗅覚では感じることの出来ない匂い、というか。
脱ぎ捨てられた、まだ温もりのあるジャケットを着せられている感じだろうか。

楽器を持って電車に乗るときは、座らずにドアの横にもたれている事が多い。

今日も例に漏れず、僕は楽器を抱きしめて窓際の隅に体をフィットさせていた。




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:05:36.68 ID:tskYGqXRO

***

新宿発といっても、5分もすれば景色はビル街から住宅地のそれへ変わってしまう。

曇り空から秩序なくぶらさがっている遠く新宿のビルを眺める。
とりとめもない焦燥に似た感情のうねりが、みぞおちの辺りで渦まくのを感じた。


僕は大きな流れに従うのを嫌い、北海道から上京してきた。
そして
この街が作るイビツな『うねり』に憧れ、引き寄せられた。

街は僕を迎え、
捕らえた。




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:08:03.15 ID:tskYGqXRO

この街の『うねり』の一部となった僕は、もう二度とそこから抜け出す事ができなくなってしまったのだ。

( ^ω^)「こんなじゃ無かったお。」

( ^ω^)「僕は地元じゃロックスターで、みんなが僕に期待してて、北のオレンジオチンチンなんて呼ばれて…」

( ^ω^)「・・・・・。」

ビルの山脈と、その裾に雑然と詰め込まれた民家へ目の焦点を合わせてながら考える。

電車は逃げるように新宿から遠ざかっているのだが、街の『うねり』の一部になる事で埋下していた『感情のうねり』は、どうやら僕を離してくれそうになかった。




5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:09:31.32 ID:tskYGqXRO

( ^ω^)「…こんなはずじゃ、無かったんだ。」

ため息でドアの窓が曇り、一瞬だけ街を覆い隠してくれた。




7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:12:08.84 ID:tskYGqXRO

***
その時、視界の端にわずかに残った車内の景色で、ピンク色が動いたのを感じじた。

( ^ω^)「お?」

意識を車内に移すと、ピンク色のトレーナーを着けたちいさな女の子が、ぽてぽてとこちらに歩いてくるのが見える。

(((*'-')「~♪」

真っ黒い髪に
真っ黒い瞳。
年齢は幼稚園の年長さんといったところか。

薄いブルーのジーンズが、上着のピンクを映えさせていた。
少し地黒なせいか、マッシュルームカットがよく似合っている。




9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:15:07.06 ID:tskYGqXRO

電車の揺れに足を取られながら僕のいる窓際にたどり着くと、
彼女はぼくの握り拳ほどの茶色い靴を動かすのをやめた。

電車が揺れる度に左手に触れる髪の毛がとてもやわらかい。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:16:07.52 ID:tskYGqXRO


(*^ω^)「幼女ktkr!!」

あたまをナデナデしてやる(性的な意味でなく)衝動を堪えていると、彼女は扉の窓に唇と鼻とほっぺたをべったりくっつけた。
外から見たらさぞ滑稽だろう。

(*'*')「・・・。」

( ^ω^)(電車の窓…おっさんの脂やらビッチOLの化粧やらで、ばっちいお。)




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:19:18.41 ID:tskYGqXRO

さて、注意でもしてやるべきだろうか?
車内を見渡すと、乗車率は6割程度。
母親らしき女は女性週刊誌を異常ななスピードでべらべらめくり続けている。

(*'*')「ぶびーっ」

(;^ω^)「おっ!」

女の子が、突然、べったりくっつけた口から空気を吹きだし始めた。




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:21:06.37 ID:tskYGqXRO

当然、吐息は固いガラス窓に跳ね返され、彼女の唇の端を「ブビー。」
と鳴らして両サイドに逃げていく。
しかし彼女は息を吹き続ける。

(*'*')「ぶびーっ。」

とうとう彼女は次の駅に到着するまでブビーを続けた。




16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:23:37.26 ID:tskYGqXRO

***
(*'-')(ししちにじゅうし、しはさんじゅうろく、しくしじゅう)

( ^ω^)(停車中は大人しいお。)

停車中は何か考え事をしたり隣の線路の枕木を数えたりていたが、
電車が動き出すと同時にまた作業をし始める。




17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:25:33.57 ID:tskYGqXRO

そんな調子で何駅かが過ぎたところで、
僕は気づいた。


( ^ω^)(この子は息を吹き込む事で、この列車を操縦しているんだお…。)





19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:30:33.20 ID:tskYGqXRO

そうして見てみると、駅が近づくと息を弱めているし、カーブにさしかかると体を傾けながら一生懸命体を曲げている。

彼女の中でこの列車は、口をほどかれヒュルヒュルと空へ昇っていくゴム風船と同じ原理で動いているのだ。
吹き続けなければ、停まってしまう。




21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:35:02.96 ID:tskYGqXRO

ナンセンスと思うかもしれない。

しかし、今この車内にぼんやり乗っかっている人の中で、列車の動力を確実に理解しているのは何人いるだろうか?
車掌の手によってこの列車が動いている事を証明できる人は、いったい何人いるんだろうか?







22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:38:50.49 ID:tskYGqXRO

蛇口をひねれば水がでる。
リモコンをいじればチャンネルが変わる。

それと同じで、
彼女が息をを吹き込めば、列車は動くのだ。

少なくとも僕と彼女の中で、それが揺るぎない事実となってしまったのである。







28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:55:18.27 ID:tskYGqXRO

もしこの列車が遅れようものなら、
あそこで手帳を広げているサラリーマンは、ミスタースミスとの商談に間に合わないかもしれない。

あそこの学生は、ハゲ教授のサディスティックな出席の取り方に腹を立てねばならなくなるかもしれない。

あのホステス風の女は客を1人取り逃がすかもしれない。

僕だって、もうすでに遅刻しているのだのだ。
これ以上遅れる事は許されない。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 19:59:44.45 ID:tskYGqXRO

だが、傍らでその高尚な仕事を見守る僕は、残念ながら「分別ある大人」であり、公衆の面前で窓にキスをする勇気を持ち合わせていない。

この電車の運転は彼女に託すしかないのだ。








31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 20:02:20.65 ID:tskYGqXRO

ちいさな運転手は時々すうっと胸を膨らませ、取り込んだ空気を電車に送り込む。

(´・ω・)(車は計算できないからな…)

空気を吹き込まれ、ゴム風船はヒュルヒュルと民家と民家の間をすり抜けて南へ向かう。

('A`)(あーやべー、4年であと58単位かー)

彼女の息が少しあがっている。

ξ'⊿')(あいつ、自分は遅刻するくせに…)

それでも必死に義務を果たそうとしている。




32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 20:06:02.73 ID:tskYGqXRO


****
――――窓の外の景色に見慣れた建物が増えてきた。

(*'*')「ぷすーー。」

( ^ω^)(そうか、もうすぐ下北沢なんだお。)

運転手の吐息が弱まり、それに従って電車はヒュルリとホームに吸い込まれた。

どうやら定刻通りに着いたようだ。




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 20:17:37.77 ID:tskYGqXRO

( ^ω^)「ありがとう。」
(*'-')「・・・・。」

僕は口の中でお礼を言うと、ドアが開く直前、窓に唇を押し当ててみた。

( ^*^)「ぷぅ。」

息を吹くとなんとも情けない音が音がして、彼女とのキャリアの差を思い知らされてしまった。

列車から降りて改札を出て、何となく振り向く。

夕日色をべっとり塗りたくられた列車の側面が見えた。

列車はやがて民家の谷へヒュルヒュル動き出す。

ちいさな運転手の立派な仕事が、今また始まった。



( ^ω^)と窓際の(*'-')のようです
おわり。








40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 20:22:47.04 ID:tskYGqXRO

すいません
新宿~八王子間で書きました

数日ROMります
[ 2010/11/05 20:19 ] スレ立て短編 | TB(0) | CM(0)

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