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川 ゚ -゚)奴隷と海賊のようです(゚Д゚,,)  1スレ目

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:15:15.28 ID:FGFXeJm4O


ずくん、と腹が痛んだので、思わず瞼を開けてみると、小窓の外は未だ、星の輝く夜の色に染まっていた。
何だ、朝はまだ来ていないのか、と、再び瞼を閉じてみるが、
痛みが治まることはなく、眠気ばかりがどんどんと遠ざかっていく。

仕方なしに、硬く冷たい石の床に手を突いて起き上がると、
腹をさすりながら痛みの原因について考えてみる。

やはり、昨日の鍛錬で腹を蹴られたからだろうか?
それとも、払いのけられ地に落とされた飯を食べたからだろうか?

だが、どちらも今までに幾度となく経験してきたが、今夜のような痛みを深夜突然伴ったことはない。
不思議な痛みに首を傾げつつ、夜が明けるまでに治まらなければ
鍛錬に支障が出るかもしれないな、などとぼんやり思う。

そうしてしばらく腹をさすり続けていたのだが、
痛みは一向に治まらなかったので、結局さするのをやめることにした。

部屋を出て人を呼ぶ、という考えは、微塵も持ち合わせていなかった。
この狭く暗い部屋を出ていいのは鍛錬の時のみと決まっていたので、扉には錠前が掛けられていたからだ。

――だから、その錠前を開く音が静寂を破ったとき、
びくりと心臓が跳ね上がってしまったのは無理もないことだった。




5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:16:33.95 ID:FGFXeJm4O


とっさに目前の扉を注視し、まずは幻聴を疑ってみたが、扉はゆっくりと確実に開かれている。
同時に耳に入る、聞き覚えのない二つの声。

「何で……鍵……大体……の部屋……お化けが……!」

「そん……嘘に……決まっ……?」

扉を開けた男と目が合った。そのまま黙って見つめ合うしかなかった。
初めて見る人物に、何て声をかければいいのか、
初めて起こった出来事に、どう反応すればいいのか、わからなかった。

その内に、男が口を開いた。

「これはまた……随分と可愛らしいお化けがいたもので」





6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:17:43.56 ID:FGFXeJm4O




碧空はどこまでも澄んで、広がる海に青を映す。輝く金色の太陽は燦々と光を降り注ぎ、地上を存分に暖める。
その熱気にあてられたのか、海の男たちは荒々しく雄叫びをあげていた。

孤島の沖には三隻の船。一つは今まさに海中へと沈み行くところで、
もう二つは倒れたマストを掛け橋にして繋がっている。
大小並んだ二隻の大きい方、見るからに立派な商船は、現在戦場と化していた。

身なりの整った商人を始め商船の乗組員たちは、護衛船を沈められたことにより為す術もなく蹂躙されていく。
場を支配するのは荒くれ者の男たち。手にした剣で、棒で、石で、甲板に次々と死体を積み上げていく。

また一人、断末魔をあげた乗組員が荷物のように放られた。
そして彼は、血にまみれた唇を微かに動かして、息も絶え絶えに吐き捨てる。

「下賤な……海賊どもめっ……!」



(,,゚Д゚)「――お粗末な遺言だな」

最早瞳孔の開いてしまった男を見て、海賊の一人、ギコはくだらなさそうにため息を吐く。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:20:43.77 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)「ったくよー、この船も弱っちい奴ばっかじゃねぇか。つまんねー、あーつまんねー」

文句を垂らしながら、愛用のメイスを気だるそうに揺らすギコを見て、
近くにいた痩躯の男が剣を振るいながらこれまた陰鬱そうにため息を漏らす。

('A`)「勘弁してよギコさん……また船長に怒られちゃうでしょ……」

(,,゚Д゚)、ペッ「知らねーよあんなしょぼくれキンタマ」

(,,゚Д゚)「大体よぉ、あいつに見る目がねーからこんな弱っちい船ばっか襲う羽目になるんじゃねーか。
    勘弁して欲しいのはこっちだってーの」

(´・ω・`)「そう、それは悪かったね」

(,,゚Д゚)「全くだ。一回さ、俺に任せてみるべきなんだよ。当てるから。
    何かこう、オーラ? みたいなの出してる船。俺より強そうなの乗ってるやつ」

(;'A`)「船長……この人うちを壊滅させるつもりですよ」

(´・ω・`)「そうだね。本当、困ったNo.2だ」

(,,゚Д゚)「ん? 船長?」

(゚Д゚,,)「あ、船長ちぃーっす」

(´・ω・`)「……」

(;'A`)「……」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:23:16.92 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)「お、てことはもう終わったのか。今日は随分とはえーな」

(´・ω・`)「あぁ、表は抵抗激しかったけど中はそうでもなくってね。
     要人ぽいのもいたし、動かせる最低の人数も残せたし、この船は正解だったよ。流石僕」

(,,゚Д゚)「いやー、相変わらず船長の見る目は流石っすねギコハハハ」

(´・ω・`)「アハハハハ。ところで次サボったら一緒に海に捨てるからね」

(,,゚Д゚)「ちっ」

盛大な舌打ちをしたギコは、面倒臭そうに側の死体に手をかけ始めた。
身ぐるみを全て剥げば、後は魚の餌にするだけだ。

それから倒したマストや商船の修復、支配下に置いた商船に残すメンバーの適当な選抜を終えると、
二隻は再び緩やかに進み出す。

海賊船の方に戻ったギコは、船内を船長のショボンと並び歩いていた。

(,,゚Д゚)「で、要人ぽいのってどんなのだよ?」

(´・ω・`)「貴族のボンボン。要人というか、何か隠れて勝手に乗り込んでたらしいんだ」

(,,゚Д゚)「バカだな」

(´・ω・`)「話してみた感じ、頭は良さそうなんだけどね。好奇心で身を滅ぼすタイプみたい」

(,,゚Д゚)「へー」



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:25:41.25 ID:FGFXeJm4O


(´・ω・`)「海賊にも興味津々でさぁ。何となく誘ってみたら結構乗り気」

(,,゚Д゚)「世も末だな、色々と」

(´・ω・`)「元々憧れはあったらしいよ、父親が海賊大嫌いなんだって」

(,,゚Д゚)「そりゃ好きな方が珍しいだろうよ。何だ、そいつは反抗期のお子ちゃまか?」

(´・ω・`)「ま、家庭環境は人それぞれだよ。さーて、今回はあれでいくら絞れるかなぁ」

(´・ω・`)「……あ」

(,,゚Д゚)「ん?」

ショボンは急に立ち止まると、ポケットの中を何やらゴソゴソと探り始めた。

(´・ω・`)「忘れてた。ワタナベさんへのお土産さ、これで大丈夫だと思う?」

そう言って取り出したのは、繊細な模様が彫られた髪飾り。
落ち着いた茶の色合いの中で、はめ込まれた小さな赤の宝石が慎ましげに輝いている。
それをしげしげと眺めたギコは、やがて目を閉じ首を振る。

(,,゚Д゚)「多分、宝石の大きさに文句をつける」

(´・ω・`)「やっぱりか。どうしよう、他に彼女が気に入りそうなものなかったんだけど」

(,,゚Д゚)「そりゃ困ったな」



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:27:27.64 ID:FGFXeJm4O


腕を組んで考えたギコは、だがすぐに思い当たる。

(,,゚Д゚)「……人形なかったか? それもとびきり変な顔の」

(´・ω・`)「え、人形? どうしてまた人形なんか」

(,,゚Д゚)「最近マイブームらしい。帰るまでに飽きてなきゃな」

(´・ω・`)「多分あったと思うけど……何でもいいのかな?」

(,,゚Д゚)「持ってる数が少ないからな、何でも気に入るはずだ」

(´・ω・`)「そう、ありがとう」

(,,゚Д゚)「いや、こっちこそ悪いな」

(´・ω・`)「いやいや、ワタナベさんには僕も恩があるからね」

ハハッと笑ったショボンはまた歩き出し、ギコの方を見ることなく言う。

(・`  )「じゃ、それはしぃちゃんにでもあげときなよ。
    さっきも言ったけど、女性が喜びそうなのはそれぐらいだったから」

(,,゚Д゚)「おう、ありがとよ」

受け取った髪飾りをポケットにしまうと、ギコもショボンの後に続いた。





14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:29:58.01 ID:FGFXeJm4O




陸に上がって数日。
仲間と別れたギコは、配分された略奪品と釣ったばかりの魚を持ってある家を目指していた。

初夏の日差しを浴びながら、石畳の敷かれた街道を歩き、時折人とすれ違う。
視界に入るのは緑の草原と畑、奥の方には石造りの民家が一つ。

(,,゚Д゚)「いい風だなぁ」

髪を揺らし頬を撫でる風を堪能し、ギコは深く息を吐く。

その内に、遠くあった民家は目と鼻の先にまで迫り、脇では、少女が一人衣類を干していた。
背を伸ばし、懸命に干すその姿に言いようのない愛らしさを感じたギコは、忍び足でそっと少女に近づく。
そして、気配を微塵も察知しない少女の背後に堂々と立つと、おもむろに手を伸ばして

∑(*゚ー゚)「きゃっ!?」

その両目を覆った。

(*゚ -゚)「もーっ、ギコちゃんいい加減目隠しするのやめてよー、びっくりしちゃうでしょー」

(,,゚Д゚)「いやー、お前見るとついやりたくなっちゃってよー」

笑いながら手を外すと、小さな体がくるりと反転して、頬を膨らました童顔がじろりとギコを見上げる。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:33:29.57 ID:FGFXeJm4O


(*゚ -゚)「ギコちゃん!」

(,,゚Д゚)「はいよー」

(*゚ -゚)「……」



(*゚ー゚)「おかえりっ!」

もふっと、少女しぃはギコの腹に抱きついた。

(,,゚Д゚)「おーおー、寂しかったかー、おねしょしたりしてないかー」

(*゚ー゚)「もう8才だもん! おねしょなんかしないよっ」

(,,゚Д゚)「ばっか油断すると危ないんだよ、卒業して数年とか一番ヤバいんだよ」

(*゚ー゚)「しないったらしないもん……きゃあ!」

ギコはしぃを抱き上げると、目線を合わせて頭を撫でる。

(,,゚Д゚)「ま、とにかくただいま」

(*゚ー゚)「……」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:35:33.09 ID:FGFXeJm4O


しぃは僅かに俯き、小声で呟く。

(*゚ー゚)「おねしょはしなかったけど、やっぱりギコちゃんいないと寂しいよ」

(,,゚Д゚)「わりぃわりぃ、今回はいつもより長くいるから」

(*゚ー゚)「……本当?」

(,,゚Д゚)「本当本当」

(*゚ー゚)「やっぱりギコちゃん大好きっ!」

そうしてしぃが再びギコに抱きついたところで、家の扉がゆっくりと開き間延びした声が流れた。

从'ー'从「あ~、騒がしいと思ったらやっぱりギコちゃんだ~。おかえり~」

(,,゚Д゚)「おう、ただいまババァ」

从'ー'从「あれれ~、今何か幻聴がした気がするよぉ~?」

(,,゚Д゚)「気のせいですともお姉様。ああそうだ、今日も若く麗しいお姉様に最上のお土産が」

从'ー'从「え~、何々~?」

ほわんとした笑顔を保ちながら近づいてくる女性、ワタナベに対し、
しぃを降ろしたギコは、地面に置いておいた袋から人形を取り出して見せる。

从'ー'从「わ~、何これ~?」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:39:15.32 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)「チョイスはショボンめにございます」

从'ー'从「きゃ~、ショボンちゃんったらセンスいい~。すっごく可愛いよ~」

(;゚ー゚)「……」

きゃあきゃあと喜ぶワタナベを尻目に、しぃは何とも言えない微妙な表情を浮かべる。
その人形とやらは、これでもかと言うくらい大きな穴を目に持っており、
ぐにゃりと曲がった高すぎる鼻の下では、分厚い唇が激しく自己主張をしていた。

しぃは思わず、ワタナベとは違う意味で何これと言い出すところだった。

(,,゚Д゚)「うんうん、お前の言いたいことはわかるぞしぃ」

(;゚ー゚)「……」

从'ー'从「んんん? 何を言いたいのかな~?」

(,,゚Д゚)「つまり、しぃもお土産が欲しいんだよなー?」

∑(;゚ー゚)「え、あ、うん、そうっ!」

ワタナベの探りをさらりとかわしたギコは、今度はしぃの為に髪飾りを取り出す。

(,,゚Д゚)「これまたショボンのチョイス」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:41:51.65 ID:FGFXeJm4O


(*゚ー゚)「わぁー、すっごく可愛いー! 赤い石がキレー!」

从'ー'从「なかなかいい髪飾りだね~、ちょっと宝石がちっちゃいけど」

(,,゚Д゚)(やはりか)

从'ー'从「しぃちゃんに似合いそ~、早く付けてみなよ~」

(*゚ー゚)「うんっ」

しぃがいそいそと髪飾りを付けると、ワタナベの言う通りその髪飾りはしぃの短く揃えた髪によく映えた。

(*゚ー゚)「えへへ、似合う?」

(,,゚Д゚)「似合う似合う、可愛いしぃが更に可愛くなった」

(*゚ー゚)「もー、ギコちゃんったらー」

从'ー'从「親バカ~」

(,,゚Д゚)「うっせ」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:43:16.29 ID:FGFXeJm4O


そうして皆で声を張り上げて一頻り笑った後、しぃは満面の笑顔で言う。

(*゚ー゚)「ギコちゃんのお土産っていっつも凄いよね。いいなぁ、しぃも商人さんになって船に乗りたいなぁ」

(,,゚Д゚)「……」

从'ー'从「……」

商人というか、商人を襲っている海賊です、なんて、とても言うことのできないギコは、曖昧な顔で

(,,゚Д゚)「そうだな」

と返す。
好きでやっている海賊だが、こういう時ばかりは、苦々しい気持ちになるしかなかった。





24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:46:03.08 ID:FGFXeJm4O




从'ー'从「でも、もうちょっと皆とゆっくりしてきてもよかったのに~」

夜も更け、しぃが眠りについた頃、ギコとワタナベは酒を飲んでいた。

(,,゚Д゚)「んだよもう、わかってるくせに」

从'ー'从「はいは~い、一刻も早くしぃちゃんに会いたかったんだよね~」

(,,゚Д゚)「いちいち口に出して言うな」

ふん、とワタナベから目を背けると、コップの酒を一息に呷る。

从'ー'从「けどさ~、ショボンちゃんならいいお店知ってるんだろ~し、
    いい加減連れてって貰えばよかったじゃな~い」

(,,゚Д゚)「ああん?」



从'ー'从「いつまでも、童貞なのにお父さ (;, Д )・。゜・ブバラッ





26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:49:12.42 ID:FGFXeJm4O


(#,゚Д゚)「バッ、バッ、ババア! てめぇその話はするなって!」

从'ー'从「あれれ~、本日二度目のババァ呼びだよぉ~?
    仏の顔も二度目までって言うから、ワタちゃんキレていいんだよね~、ね?」

(#,゚Д゚)「三度だババァ!」

从#゚ー゚从「よ~し、ひっさびさのリアルファイト、始めちゃうよ~っ!」



数分後、ギコは床と口づけを交わしていた。

(,, Д )「何故……何故勝てない……!」

从*'ー'从「あ~すっきりした~」

頬を赤らめて余韻に浸るワタナベから繰り出されたのは、雷のように速い突き、
全てを薙払う暴風のような蹴り、そして後頭部に鈍器の如く叩き込まれたお土産の人形。
年とか性別とか筋力とか本当関係ないな、と、ワタナベの尻に敷かれながらギコは改めて思う。

(,, Д )「お姉様……私が悪うございましたから……早くどいて」

万が一目を覚ましたしぃにこんな光景を見られたら、死ぬしかない。焦るギコは弱々しく床を叩く。

(,, Д )「早く……重い……」

从'ー'从「え?」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:51:37.16 ID:FGFXeJm4O


(,, Д )「いや、あの、羽根のように軽いんですけど、いい加減情けないんで起き上がりたいです」

从'ー'从「反省した?」

(,, Д )「しました。そりゃもうすっごく」

从'ー'从「怪しいけど~、ま、いっか。許したげる~」

そう言って素早く立ち上がったワタナベは、何事もなかったかのように椅子に座り勝利の美酒を味わい始めた。
一方、残されたギコは、床に手を突きよろよろと立ち上がると覚束ない足取りで歩き、やがて椅子にもたれる。

(,, Д )「……まさか、まだ鍛えてんの?」

从'ー'从「ワタちゃん、武の道は死ぬまで続くと思うんだ~」

(,, Д )「あ、そう……」

そろそろ衰えてきたか、などと思ってしまった数分前の甘い自分を容赦なく殴り飛ばしたい気持ちになりながら、
ギコはテーブルに突っ伏した。もう、酒を飲む気にもなれなかった。

从'ー'从「まぁ、ギコちゃんが女性にま~ったく興味はないのはよく知ってるけどさ~、
    でも折角男として生まれたんだしさ~」

(,, Д )「頼むからもう放っといて……いやマジで……」

从'ー'从「うぅん、ギコちゃんカッコいいのにもったいな~い」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:54:16.51 ID:FGFXeJm4O


もったいな~い、もったいな~いと繰り返すワタナベの声を聞いて、
もったいないのはどっちだよと心中で突っ込んだギコは、お返しとばかりに尋ねる。

(,,゚Д゚)「お姉様こそー、このまま独りでいるつもりなんですかぁ?」

年を食いすぎた今じゃ、嫁の貰い手なんてある筈ないけどな、なんて、ギコはこっそり思ったが、
敢えて結婚せずに過ごしてきたワタナベのことが、内心凄く疑問になっていた。

聞かれたワタナベは、一瞬寂しげな笑みを浮かべると、またいつものほわんとした表情に戻る。

从'ー'从「結婚したいくらい好きだった人なんて、今まで一人しかいなかったんだもん」

(,,゚Д゚)「ん……?」

从'ー'从「何でもないよ~、えへへ」

はにかみ、ちびりと一口酒を含んだワタナベは、あ、と、何かを思いついたように目を見開く。

从'ー'从「でもね~、最近すっごくお気に入りの可愛い子がいるんだ~」

(,,゚Д゚)「子ってアンタ……」

从'ー'从「うん、あれはまだ成人してないね~。いっつもハワハワしてて見てて和む~」

(,,゚Д゚)「あー、うん、わかったからもういい」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:56:33.64 ID:FGFXeJm4O


これ以上聞いたら頭痛がしそうだと、ギコはワタナベの話を打ち止める。
ワタナベもそこまで話したいわけではないらしく、黙ってコップに口を付けた。

(,,゚Д゚)「そういえば、さ」

从'ー'从「ん~?」

(,,゚Д゚)「明日街に行こうと思うんだけど、一緒に来るか?」

从'ー'从「え~、いいよ~、親子水入らずで行ってきなよ~」

(,,゚Д゚)「そうは言ってもだな……俺、最近のしぃの喜びそうな所なんてわかんねぇんだよ。
    こないだもやらかしちまったし」

从'ー'从「うん、年頃の女の子連れて武器屋はないと思うよ~」

(,,゚Д゚)「だって、昔はそれですげぇ喜んでたんだぜ……」

从'ー'从「女の子はね、男の子よりもすぐに大人になっちゃうんだよ~」

(,,゚Д゚)「寂しいねぇ……」

从'ー'从「あはは。まぁ、しぃちゃんと一緒に行くなら、そうだな~。
    最近できた新しい劇場なんていいと思うよ~。
    劇の演目はなんと、可憐なお姫様を救う騎士様の物語~。燃えるね~」

(,,゚Д゚)「別に燃えねぇけど、ならそこに行ってみるわ。ありがとな」



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 12:58:42.76 ID:FGFXeJm4O


从'ー'从「うんうん、思いっきり楽しませて楽しんできてね~。あ、でも、迷子には気を付けてね~」

(,,゚Д゚)「ギコハハハ、しぃは頭がいいから迷子になんかならねぇよ」

从'ー'从「頭がいいからこそだよ~。まぁ、しぃちゃんなら
    変な人に遭遇しても大丈夫だけどね~。毎日一緒に鍛えてるし~」

(,,゚Д゚)「おう、そりゃ心配いらねぇな」

从'ー'从「きっと、一撃で男の急所を潰せるよ~」

(,,゚Д゚)「うんうん、そりゃ頼もし……」



(,,゚Д゚)「え?」

从'ー'从「しぃちゃんは蹴りの才能が一番あるんだよね~。
    上手く育てればワタちゃんを越えられるかもよ~、楽しみ~」

(;,゚Д゚)「……」

俺は何という化け物に大事な愛娘を預けてしまっていたのだろう。
いよいよ始まった頭痛に顔をしかめながら、ギコは席を立ちふらふらと歩き出す。

(Д-,; )「わり……俺もう寝るわ……」



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:00:58.78 ID:FGFXeJm4O


从'ー'从「うん、おやすみ~」

そうしてワタナベが何杯目かの酒を注いでいると、突然ギコは立ち止まり、振り返らずに声をかける。

(,,  )「……しぃのこと、いつもありがとな」

从'ー'从「んん~、どったの突然?」

(,,  )「……勝手に拾ったのは俺なのに、結局姉ちゃんに育てさせてる」

从'ー'从「な~に~、今更? 気にしないでって言ったじゃ~ん。それに、私は……」



从'ー'从「ギコちゃんのこと、勝手に拾って育てたんだよ?
    しぃちゃんの面倒見るくらい、どうってことないよ」

(,,  )「……そうか、そうだったな」

それきりギコは、黙って寝室に向かっていった。





34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:04:53.60 ID:FGFXeJm4O




誘拐。その言葉を告げられたとき、ロマネスクは後頭部を殴打されたような感覚に襲われた。

( ФωФ)「馬鹿な……我が輩の息子が誘拐だと……?」

( <●><●>)「はい。今朝方、私の部下が一人の男性に道を尋ねられまして。
       その者の行き先はロマネスク様のお屋敷だったようですが、
       距離の遠さに道を間違えたことを知り、書簡を放り出して去っていってしまいました。

       余りに無責任な配達人だった故に悪戯を疑いまして、
       失礼ながらも中を改めさせて頂いたところ、発覚いたしました」

( ФωФ)「何ということだ……」

幼い頃から勉学を叩き込んだために頭は良かったが、
やはり愚かな息子だったか、と、ロマネスクは頭を抱え込んだ。

( <●><●>)「ロマネスク様……モララー様のことです、きっと何か致し方ない事情が」

( ФωФ)「ワカッテマス、君は我が輩の息子を買い被り過ぎだ。
      どうせまた、くだらない好奇心で身を滅ぼしだのだろうよ」

( <●><●>)「はっ……私如き若輩者が過ぎたことを言ってしまい、
       申し訳ありませんでした。無礼をお許し下さい」

( ФωФ)「気にするな。それより、その文を送り付けてきた厚顔無恥な不届き者は、
      一体どこのどいつなのだ?」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:06:47.19 ID:FGFXeJm4O


( <●><●>)「……それが、その」

ワカッテマスは僅かに顔を伏せてしばらく言い淀んだ後、意を決して告げた。

( <●><●>)「……海賊、でございます」

( ФωФ)「……」



(#ФωФ)「海、賊……だと……」

案の定、ロマネスクは額に青筋を浮かべてワカッテマスを睨んだ。
ロマネスクの海賊嫌いは、彼に関わる者なら誰もが知る程有名であった。

(#ФωФ)「よりにもよって、海賊! この世で最も卑しく汚らわしい、忌々しい海賊だと!」

( <●><●>)「ロマネスク様、どうか落ち着いて下さい」

(#ФωФ)「これが落ち着いていられるかっ!」



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:08:44.14 ID:FGFXeJm4O


( <●><●>)「わかってます。だからこそ、落ち着くのです。
       怒りに我を忘れては、ロマネスク様まで身を滅ぼしてしまいます」

(#ФωФ)「……」



( ФωФ)「……そうだな、ワカッテマス。君の言う通りだ。いや恥ずかしいところをお見せした」

( <●><●>)「構いません。それより、海賊は身の代金を要求しています。如何致しますか?」

( ФωФ)「払わんわけにはいかんだろう。早急に使者に届けさせる。
      今は領土を広げるのに忙しい時期だ、軍隊は使えん」

( ФωФ)「……だが、いずれ時が訪れたならば、この恨みは必ず晴らす」

( <●><●>)「その時には、私も微力ながら」

( ФωФ)「ああ、期待している」

そうしてロマネスクは座椅子から立ち上ると、ワカッテマスの横に立ち肩に手を置く。

( ФωФ)「しかし、わざわざ街まで足を運ばせて悪かったな。今は準備で忙しかろうに」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:11:15.67 ID:FGFXeJm4O


( <●><●>)「いえ、元々来るつもりでしたから。
       実は、建てさせていた劇場が先日完成しましてね、今期はそこで行おうかと」

( ФωФ)「ほう、そう言えば。ならば我が輩は、わざわざ君の屋敷まで向かわずに済むのかね。
      それは随分な朗報だ。ここ数年、君が開催するものが一番面白いからな」

( <●><●>)「お褒めに預かり光栄です。
       最もこれは、先代が優秀な奴隷を集め揃えていて下さったからですけれどね」

( ФωФ)「いやいや、立派に育てたのは紛れもなく君の偉業だよ。
      特に、長髪の剣士は群を抜いて素晴らしい」

( <●><●>)「……」

言うべき礼が、ワカッテマスの口からは出てこなかったが、ロマネスクは気にすることなく話を続ける。

( ФωФ)「娘も楽しみにしている。あれは争いを何よりも嫌っているが、
      君は命の奪い合いは決してさせないからな。まぁ、それが一部の不評を買っているわけだが」

( <●><●>)「元より承知の上です。皆、失うには余りにも惜しい」

( ФωФ)「全くだ」

同調するように首を縦に振ったロマネスクは、ようやくワカッテマスから手を離し、再び座椅子へと戻った。

( ФωФ)「で、だ。その娘なんだが……そろそろどうかね?
      いよいよ周りも辛抱しきれなくなってきたんじゃないのか?」



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:13:27.73 ID:FGFXeJm4O


( <●><●>)「……はぁ」

ワカッテマスは、ロマネスクにこの話を持ち出されるのが苦手だった。

( ФωФ)「あれは本当に君を好いている。
      親馬鹿だとは十分わかっているが、よくできた娘だ。モララーの馬鹿とは大違いな程に」

( <●><●>)「……わかってます。デレ様は、若く、美しく、お優しい。
       それ故に、私如きにはとても勿体ないのです」

( ФωФ)「何を言う。名門を背負う若き当主、そんなものは並みの男には到底務まらない」

( ФωФ)「……それに、だ。我が輩は、君のような息子がずっと欲しかったのだ。
      我が輩の為にも、どうかね?」

( <●><●>)「……今は、競技を成功させることしか頭にありません。
       そんな状態では、きっとデレ様を寂しがらせてしまいます」

( <●><●>)「ですから、その……今一度時間を」

( ФωФ)「ああ、ゆっくりと考えてみてくれ。我が輩も、存命している内ならいくらでも待とう」

にゃっはっは、とロマネスクは豪快に笑ったが、ワカッテマスには、口角を引きつらせることしかできなかった。





41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:16:11.69 ID:FGFXeJm4O




( <●><●>)「やっぱりあの話になってしまいましたよ……」

ロマネスクの私室を出たワカッテマスは、はぁ、とため息を零しながら、豪華な屋敷の廊下を歩いていた。
途中でデレの私室も通りかかったが、とても会う気にはなれなかった。

嫌いなわけではない、むしろ好感を持っている。だが、結婚相手となると別だ。
しかし、本当は自分でもよくわかっていない。
何故上司の意に逆らうような真似をしてまでも、結婚を頑なに拒むのか。

( <●><●>)「わかんないんです……これじゃ、君のお株を奪ってしまいますね」

ふふ、と小さく笑ったワカッテマスは、玄関に着くと、
二重になっている扉を開けて、丁度想像していた人物に声をかけた。

( <●><●>)「ビロード、用は済みました。帰ります……」



( <●><●>)「よ……?」

返事はなかった。いつもなら、慌てた声が即座に帰ってくると言うのに。
代わりに、地面にはミミズののたくったような文字が残されていた。

『いなくなっちゃったんで探しに行ってくるんです! すぐ戻ってくるんです!』



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:18:16.20 ID:FGFXeJm4O


( <●><●>)「……」

ワカッテマスは俯き、額に手を当てて呟いた。

( <●><●>)「初めて来て、はしゃぎたくなる気持ちは、わかってましたけどねぇ」





(,,゚Д゚)「いやー、この街は変わんねーなー」

(*゚ー゚)「たった数ヶ月じゃ変わんないよー」

街道を通って街についたギコとしぃは、離れないように手を繋いで歩いていた。
繋ぐとき、拒まれてしまったらどうしようかと、ギコは内心凄く不安だった。

(,,゚Д゚)(……後何回、こうして手を繋げるのかなぁ)

(*゚ー゚)「どったのギコちゃん?」

(,,゚Д゚)「いや何……新しい劇場は何処らへんにできたのかなぁと」

(*゚ー゚)「え、ワタちゃんに聞いたの?」

(,,゚Д゚)「おう、向こうからぺらぺらと話してきたぜ」



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:20:43.73 ID:FGFXeJm4O


(*゚ー゚)「じゃ、じゃあ、ギコちゃんの言ってたイイ所って、新しい劇場のことだったんだ!? やったぁ!」

(,,゚Д゚)「何だぁしぃ、そんなに嬉しいのかぁ?」

(*゚ー゚)「だって、だってね、本当に最近できたばかりなんだよ!
    ワタちゃんともね、今度街に行ったら行こうねって……」

(*゚ -゚)「……やっぱり、ワタちゃんも連れきたかったなぁ」

(,,゚Д゚)「アイツが行かねってんだから、しゃーねーだろ。代わりに、土産話をタコができるほど聞かせてやれ」

(*゚ -゚)「……」

(*゚ー゚)「うんっ!」

(,,゚Д゚)「さて、しぃ先生。問題の劇場とやらは一体何処にあるのですかね?
    この無知なギコちゃんめに是非ともご教授下さいな」

(*゚ー゚)「えへへ、こっちだよー」

ギコの腕をぐいと引っ張ったしぃは、劇場に向かって走り出す。その後を、ギコは歩幅を縮めて付いていった。

やがて二人は、できたばかりの綺麗な劇場を前に立ち尽くしていた。

(,,゚Д゚)「こいつぁ……でけぇな」



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:22:20.39 ID:FGFXeJm4O


(*゚ー゚)「でしょ? でしょ? 早く中に入ってみたいよね?」

(,,゚Д゚)「焦るなしぃよ、まずは上演時間を確認しなくては」

そう言ってギコは、扉の近くに貼られたポスターに目を向け書かれた数字を読み、
それから側にあった日時計を見た。

(,,゚Д゚)「残念。まだしばらく時間がある」

(*゚ー゚)「えー、待ちきれなーい」

(,,゚Д゚)「何、飯でも食ってりゃすぐ過ぎる。久々にモナーの顔も見たいし。というわけで食堂にゴーだ」

(*゚ー゚)「ゴー!」





49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:24:20.67 ID:FGFXeJm4O




食堂に入ると、すぐに恰幅のよい主人が声をかけてきた。

( ´∀`)「いらっしゃーいモナ」

(,,゚Д゚)「ようモナー、久しぶり」

再会の挨拶をかけたギコは、人もまばらな食堂を見ると、

(,,゚Д゚)「相変わらず人気ねぇなぁ」

と言ってカウンターに腰をかけた。

( ´∀`)「何だギコさん、戻ってきちゃったモナか」

(,,゚Д゚)「おう、しぃがいる限り必ず戻ってくるぜ俺ぁ」

(,,゚Д゚)「なー」「ねー」(゚ー゚*)

( ´∀`)「はぁ……暑苦しいくらいお熱いモナ」

やれやれと肩を竦めたモナーは、まずは頭を冷やせとばかりにコップ一杯の水を二人に差し出す。
ギコはそれを一息で飲み干し、しぃは小さな口でちびちびと飲んだ。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:27:01.20 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)「にしてもよう、新しい劇場すっげーのな。劇やるにしちゃでかくねぇか?」

( ´∀`)「あぁ……あれは街の皆も持ちきりにしてる話題モナ。
      実はあれを建てたのは、ナヌス家のワカッテマス様なんだモナよ」

(,,゚Д゚)「ナヌス家……? てことは、もしや」

( ´∀`)「そうだモナ。今度、あの劇場を使って、街で初めてナヌス家主催の剣闘士競技をやるんだモナ」

(,,゚Д゚)「へー、そいつはすげーじゃねーか。
    ナヌス家の剣闘士競技ったら、今国で一番アツいやつだろ。俺も見に行こうかなー」

そのとき、水を飲み終えたしぃが首を傾げてギコに尋ねた。

(*゚ー゚)「ギコちゃん、けんとーしきょーぎってなぁに?」

(,,゚Д゚)「ん、あぁ。そうだな……戦って、強い方を決めるんだよ」

(*゚ー゚)「へー、ギコちゃんとワタちゃんがやるみたいな?」



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:30:40.63 ID:FGFXeJm4O


∑(;, Д )「なっ……」

(* ´∀`)「モナモナモナ、ギコさんアンタ、まだワタナベさんと喧嘩してるモナか?
      しかも、どーせこっぴどくやられてるんだモナ?」

(*゚ー゚)「うん。ギコちゃんはね、絶対にワタちゃんに勝てないんだよ。
    ワタちゃんって凄いよね、私もワタちゃんみたいになりたいの」

∑∑(;, Д )「!?」

ギコは固まったまま動けなくなり、しばらく店の客たちの恰好の笑いものになっていた。





(*゚ー゚)「ご飯おいしかったねー」

(,, Д )「うん……」

ろくに喉を通らなかったギコには味はわからなかったが、とりあえず生返事をする。
未だショックの抜けきらないギコは、肩を落としながらとぼとぼと歩いていた。

見られていた。しぃに。こっぴどくやられているところを。
ちなみにギコは、いつも大体昨夜と同じような感じで負けている。

今まで、見られたら死ぬしかないと思っていたが、いざそうなってみると死ぬ気すら起きなかった。
完璧に誰か俺を殺してくれ状態になっていた。



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:32:45.72 ID:FGFXeJm4O


(*゚ー゚)「元気出しなよギコちゃん……しょうがないよ、ワタちゃんが強すぎるんだもん」

(,, Д )「うん……うん……」

慰められると余計泣きたくなってくる。
ギコは食堂に行ったことを深く後悔したが、
恐らくいずれ似たような形で発覚したであろうことは容易に想像がついた。

一番傷ついたのは、しぃのワタナベみたいになりたい発言だったが。

(,, Д )「あ……」

(((,,∩Д∩)))「あああああ……しぃが……しぃが恐怖の暴力女に……!」

∑(;゚ー゚)「ギ、ギコちゃん!? 急にどうしたの、何だか怖いよ!」

顔を押さえて震えるギコに動揺したしぃは、とりあえず懸命にギコの背中をさすってみる。
たまによしよしと頭も撫でてみたが、おかげでギコは死ぬ決意を固めかけていた。

不意に、しぃの手がギコから離れた。

(,,∩Д∩)「……?」

不思議に思ったギコは手を降ろす。

(,,゚Д゚)「どうした、しぃ?」

(*゚ -゚)「ギコちゃん、あれ……」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:35:48.79 ID:FGFXeJm4O


訝しむような顔で言うと、しぃはそっと指差した。
つられてギコが視線を向けると、背の高い男が三人、マントを羽織って顔を隠した性別不詳の背の低い人物を、
時折ひっぱたきながら無理矢理に狭い路地裏に連れ込もうとしている。

(,,゚Д゚)「……」

(*゚ -゚)「……」

(,,゚Д゚)「遊んでるようには、見えねぇよな?」

(*゚ -゚)「うん」

そうしてしぃが、きっ、とギコを見上げたので、大体想像のついたギコは、内心少し嫌がった。
だって面倒臭い。だが、可愛い娘の為なら仕方がない。
一瞬、もしかしたら背の低い方が悪者かもしれないなと思ったが、どうでもよかった。

(*゚ -゚)「ギコちゃん」

(,,゚Д゚)「わかってるって。お前は隠れてろ」



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:39:22.93 ID:FGFXeJm4O


ギコはしぃを、半ば無理矢理壁の隙間に押し込めると、
腰に巻いた布で隠していたメイスを取り出し路地裏の入り口に近づく。

(,,゚Д゚)「三人なら、楽勝だな」

余裕の笑みを浮かべたギコは壁に背を当て様子を探る。
見れば、男たちはギコに背を向け獲物のマントを剥ぎ取っているところだった。

(,,゚Д゚)「行くか」

足元の小石を拾い上げたギコは、まず一番近い男の後頭部に当たるよう斜め上に向かって放り投げた。

「痛っ!」

当たった瞬間即座に振り向いた男の顔面を、既に間合いへと踏み込んでいたギコが
間髪入れずメイスで叩き潰す。ごしゃっと嫌な音がする。何か折れたなと思う間もなく次の男へ。

「この野郎!」

掴みかかってきた男をかわし、今度は腹に重い一撃。食らった男は口から色々と吐き出した。

(,,゚Д゚)「きったね」

メイスを引っ込め、今度は背中に振り下ろし地面に落とす。顎をしたたかに打っていた。



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:41:08.87 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)「ラストー」

そう言って振り向くと、最後の男は既に獲物を連れて逃げ出しているところだった。

(,,゚Д゚)「うっわ、なっさけね。俺から逃げられると思うなよ」

だが、ギコが走り出した瞬間、前方から痛々しい段末魔が響いてきた。
逃げ出した男は膝を落とし、股間を押さえて悶絶している。ギコの足はピタリと止まった。

(,,゚Д゚)「……」



(;,゚Д゚)「ま、まさか……」

予想通り、男が倒れた後から隠れている筈のしぃの姿が現れた。細い脚を中空に上げた状態で。

(;,゚Д゚)「……マジで潰せんの?」

うっかりメイスを落としたギコは、思わず自分の股間も押さえてみた。
ワタナベ2号の誕生が痛いほど理解できた。
そんなギコの気持ちを知ってか知らずか、安堵の表情を浮かべたしぃは、ぺたりと地面に座り込む。

その小さな体を覆う影。いつの間にか、しぃの背後には憤怒の顔をした男が。



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:44:35.25 ID:FGFXeJm4O


(;,゚Д゚)「四人目……!?」

瞬間、伸びた糸が切れたように走り出したギコ。
男の太い腕がしぃに触れるのを阻止するべく、獣のように地を蹴り駆ける。

だが、その必要はなかった。

しぃの近くで立ち尽くしていた人物は突然しゃがみこみ、地に伏せた男が腰に付けていた剣を抜き取ると、
数歩足を踏み出して下から思い切り振り上げた。迫っていた太い腕は弾かれる。
更に踏み込み、勢いもそのまま剣を斜めに振り降ろすと、衝撃に男は転び倒れる。

そして一撃、鳩尾に足を落として終わった。

(,,゚Д゚)「……」

既にゆっくりと歩いていたギコは、途中で未だ悶絶している男を蹴り飛ばし、
しぃのもとへ辿り着くと頭に手を置く。

(,,゚Д゚)「ダメだろー、ちゃんと隠れてねぇと」

(*;-;)「ご、ご、ごめんなさい……」

背後から命の危険が迫っていたことを嫌という程感じ取れたのか、しぃはポロポロと涙を流していた。
そうしてギコがしぃを抱き上げると、マントを剥ぎ取られ顔を露わにした人物が、長髪を揺らしながら振り向いた。

川 ゚ -゚)「……」

(,,゚Д゚)「……」



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:46:55.53 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)(……若い、女か?)

整った顔は中性的で、男とも女とも取れたが、何となく、ギコには女のように感じられた。
長髪の主は剣を放ると、ギコに対して頭を下げる。

川 ゚ -゚)「助かった。この街に来たのは初めてだったから、迷ってたらいつの間にかあんなことに」

(,,゚Д゚)「……まぁ、結構入り組んでるからな。慣れりゃどうってことねぇが」

川 ゚ -゚)「そうか、ならばその内に慣れそうだ。しばらく滞在する予定だから」

(,,゚Д゚)「へー、てことはアンタ傭兵か何かか? そこら辺にいる農民って感じにゃ見えねぇが」

川 ゚ -゚)「傭兵ではないが……剣を手に持つのが常の日々を過ごしている」

(,,゚Д゚)「ふーん……」

どちらにせよ、俺が助ける必要なんて全くなかったな。ギコは僅かに肩を竦める。
無駄な時間を過ごした、と、ギコが別れの言葉と共に立ち去ろうとしたとき、しぃが突然ギコの肩を軽く叩いた。

(,,゚Д゚)「ん……?」

何事かととりあえず降ろしてみると、
涙の後を頬に残したしぃはギコに背を向けてまじまじと顔を見つめる。



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:48:56.44 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)「何だ、しぃ。この人見たことでもあるのか?」

(*゚ー゚)「んーん、初めて見るお姉ちゃんだけど……」

しぃは一歩前へ出て、頭を下げた。

(*゚ー゚)「助けてくれてありがとうございます。お姉ちゃん、綺麗で強くてカッコよくて、まるでワタちゃんみたい!」

川 ゚ -゚)「いや、助けて貰ったのはこちらの方だ。ありがとう。
    君こそ、まだ幼いのに実に美しい足捌きだった。そのワタちゃんとやらは君の師か何かかな?」

(*゚ー゚)「うん!」

すっかり元気になったしぃを見て、立ち直りが早いなぁと思ったギコは、いい加減去ろうとしぃに声をかける。

(,,゚Д゚)「おーい、しぃ

(*゚ー゚)「ところでお姉ちゃん。道に迷っちゃったんでしょ?」

川 ゚ -゚)「あぁ」

(*゚ー゚)「なら」

(,,゚Д゚)(げ、嫌な予感)



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:50:56.04 ID:FGFXeJm4O


ギコの不安は再び的中する。

(*゚ー゚)「案内してあげるよ! 私もギコちゃんも住んではないけど、街には詳しいから!」

(,,゚Д゚)「ですよねー」

(*゚ー゚)「ん?」

(,,゚Д゚)「いや何でもない」

隠れて小さくため息。またもや可愛い娘の為なら仕方がないと言い聞かせる。

川 ゚ -゚)「だが、それでは君たちに悪い。住んでないということは、何か用があって来たのだろう?」

(*゚ー゚)「いいのいいの、遊びに来ただけだから。ねー?」

(,,゚Д゚)「おう」

川 ゚ -゚)「そうか、そう言われると甘えたくなる。正直困ってた」

(*゚ー゚)「それに、一人だとまた変な人に会っちゃうしね。お姉ちゃんは強いけど、でも面倒臭いよね」

川 ゚ -゚)「全くだ」

あははと笑ったしぃは、突然思い出したように手を叩く。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:53:05.17 ID:FGFXeJm4O


(*゚ー゚)「そう言えば、お姉ちゃんの名前は? 私はしぃで、こっちはギコちゃん」

川 ゚ -゚)「私はクーだ。よろしくな、しぃにギコチャン」

(,,゚Д゚)「ギコ、な。チャンはいらん」

川 ゚ -゚)「そうか、変な名前だとは思っていた」

(,,゚Д゚)「……」

素なのかわざとなのかわからんな、と、訝しげな目でクーを見ていると、
クーは唐突に顔を背け、言いにくそうな素振りで口を開いた。

川 ゚ -゚)「ところでだな、さっきから言おうとは思ってたんだが」

(,,゚Д゚)「あん?」

(*゚ー゚)「なーにー?」

クーは真っ直ぐに前を向くと。



川 ゚ -゚)「私は男だ。故にお姉ちゃんではない」





73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:54:46.77 ID:FGFXeJm4O


(,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「……」

(,,゚Д゚)(二分の一で外した……)

ギコが別のことでショックを受けていると、本当に予想外だったらしいしぃが口に手を当てて叫ぶ。

(;゚ー゚)「嘘だーっ! だって、だって、こんな綺麗なお兄ちゃん見たことないもん!」

川 ゚ -゚)「褒めてくれるのは嬉しいが本当に男だ」

(;゚ー゚)「嘘だーっ!」

(,,゚Д゚)(まぁ、胸も尻も出てねぇしな)

冷静に納得するギコの横で、しぃはうろたえ続ける。そして混乱するあまり、

(;゚ー゚)「えいっ!」

(,,゚Д゚)「あ」

川 ゚ -゚)「む?」

クーの股間にタッチ。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 13:56:42.94 ID:FGFXeJm4O


(;,゚Д゚)「ぎゃああああああ、しぃさん嫁入り前の娘が何しちゃってるんですかーっ!?」

齢8にして男の股間を触る娘。お父さん、そんなふしだらな娘に育てた覚えはありません。

(;゚ー゚)「……」

(;,゚Д゚)「……」

川 ゚ -゚)「……」



(;゚ー゚)「ギコちゃんよりちっちゃいけどあるーっ!?」

(;,゚Д゚)「そんなことを叫ぶなっ!」

川 ゚ -゚)(賑やかだ……ビロードみたいだな)

数分後、しぃはようやく落ち着いて、

(*゚ー゚)「クーちゃんって呼ぶからいいもん!」

と自己解決していた。






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