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(-_-)チョコレートと雛鳥のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:30:06.99 ID:W4ys1GJcO


昼過ぎだというのにカーテンを閉め切ったままの部屋。
温い布団の中で僕は寝返りを打った。折りたたみベッドがギシリと鳴った。

布団の中に潜ると皮脂の臭いがする。
そういえばシーツ替えてなかったな。面倒くさい、でも気持ち悪い。
自分の臭いは落ち着くような胃がムカつくような、何とも言えない感じだ。

(-_-)「お腹減ったな…」

空腹。そして無気力。
何か食べたいのだが、口に物を入れたくない。
舌はカラカラに乾いていて気持ち悪い。
ああ、お腹が減った。






2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:33:26.14 ID:W4ys1GJcO

ガタガタ、とテーブルの上で携帯が揺れた。LEDがカラフルに光る。電話だ。
デレからだ。
欠伸をかみ殺しながら通話ボタンを押した。


(-_-)「はい、もしもし」

(-_-)「いや何も」

(-_-)「うん、寝てた」

(-_-)「はは」

(-_-)「今から?」

(-_-)「……あー」

(-_-)「…分かった、準備するよ」

(-_-)「うん…後でね、はい」


電話を切って欠伸をもう一つ。ついでに伸びをすると背骨がパキリと鳴った。
カーテンを開ける。昼間の太陽はそんなに眩しく感じない。涙が出た。



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:34:51.98 ID:W4ys1GJcO



お風呂に入って適当な服を着る。
どうせデレの家まで徒歩十分もかからないんだからお洒落する必要もない。

(-_-)「いってきます、と」

返事はない。誰もいないんだから当然だ。
思っていたより日差しは弱かった。
乾いたばかりの髪を寒風が乱していく。
遠くから小学生のはしゃぐ声が聞こえた。
今の時間帯は下校時間か。
何も不安なんてなさそうな笑い声に、小学生に戻りたい、なんて思ってしまった。




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:36:30.16 ID:W4ys1GJcO



昔のことを思い返しているうちにデレの家に着いた。
チャイムは鳴らさず、勝手にドアを開けてあがる。

玄関には飼い猫のおはぎがいて、眠たげな目で僕をチラリと見た。
僕は靴を脱ぎながらおはぎの頭を撫でる。
おはぎはミャオンと鳴いて、手のひらに頭を擦り付けてきた。


(-_-)「おはぎまた太った?」


もちろんおはぎは僕の質問には答えず、気持ちの良さそうな顔ですりすりしてくる。

ζ(゚ー゚*ζ「ドアを開けてやって」

振り返るとデレがいた。




5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:38:09.70 ID:W4ys1GJcO


僕は立ち上がり、玄関のドアを開けてやる。
おはぎはするりと隙間から出ていった。
何とも雄々しい後ろ姿だ。
あれで三歳なんだから、これ以上大きくなるのかと僕は少し心配する。


ζ(゚ー゚*ζ「さっきから外に行きたいってうるさかったの」

(-_-)「ふーん」


この寒いのに猫は元気だねぇ、と僕が言うと、おはぎはデブ猫だからとデレは言った。

そんなデブ猫をデレが溺愛しているのを僕は知っている。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:39:49.18 ID:W4ys1GJcO

居間に通され、僕はいそいそとこたつに入る。
暖かい。
外の風で冷え切った指が痛いくらいだ。


(-_-)「はぁ…」


天板に頬をくっつけ、窓の外を眺める。
レースのひだとやや傾きかけた陽光で世界は真っ白に見えた。


ζ(゚ー゚*ζ「はい、ほうじ茶」


デレが急須とマグカップを持ってきた。お茶うけはチョコレート。
和洋折衷。
そんな言葉が浮かぶ。

(-_-)「ありがとう」




8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:40:58.97 ID:W4ys1GJcO


デレがお茶をカップに注いでくれると思って僕は待つ。
デレは僕を見つめる。

デレの黒目がちな瞳は濡れたビー玉のようだ。朝露に光るブルーベリーでもいい。

たっぷり見積もって、三秒間僕らは目をそらさなかったと思う。
そのすぐ後に、耐えきれなくなって僕は視線を外した。
急須に手を伸ばす。


ζ(゚ー゚*ζ「あのね、うちはセルフサービスなの」


屈託なくデレは言った。
僕に自分のマグカップも差し出しながら。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:42:20.63 ID:W4ys1GJcO


(-_-)「ところで何か用でもあったの?」


デレにほうじ茶を注いでやったマグカップを押し返しながら聞いた。
デレはほうじ茶をふぅふぅと冷ましている。


ζ(゚ー゚*ζ「別に何でもないよ。暇かなと思って」

(-_-)「そう」


僕はチョコレートの包装紙を丁寧に剥がして頬張った。
ゆっくりと口の中でチョコレートが溶けていく。
もう一個食べようとチョコレートを手に取ると、デレがあーんと口を開けた。
雛鳥のようだと思いながら、僕はチョコレートを食べさせる。

静かだった。
デレがほうじ茶を恐る恐る啜る音と時計の針の音と僕がチョコレートを溶かす音しか聞こえない。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:44:05.07 ID:W4ys1GJcO


ζ(゚ー゚*ζ「そういえばねー」

(-_-)「うん」

ζ(゚ー゚*ζ「昨日ツンちゃんと買い物に行ったんだけどね」

(-_-)「この前も行かなかった?」

ζ(゚ー゚*ζ「いいのー」

デレのオチのない話を聞いて、たまに僕が何か話す。
デレはそれを興味ない素振りで聞く。
でも途中で話すのを止めると続きをせがむ。
僕はまた話し出す。デレのワンテンポ遅れた相づちと、どこかズレた感想を聞く。
いつものこと。

僕はそれがひどく幸せに感じて、同時に恐ろしくも感じる。




13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:45:41.99 ID:W4ys1GJcO


ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ヒッキーもそう思うよね」

(-_-)「…え、ごめん、何?」

ζ(゚、゚*ζ「もー、聞いてなかったの?」


むくれた顔のデレ。
ぼんやりしてた、と言ったらますますむくれた顔をされてしまった。
僕はごめんと謝りながら、デレの膨らんだ頬のラインを頭の中でなぞる。

ζ(゚、゚*ζ「……」

(;-_-)「ごめんってば」

ζ(゚、゚*ζ「…許す」


その代わりと、またあーんと口を開けてデレはチョコレートをせがんだ。




14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:46:56.86 ID:W4ys1GJcO


僕はさっきよりも丁寧に包装紙を剥がし、デレの唇にチョコレートを触れさせる。
ぺろ、と舌が伸びてきてチョコレートを攫っていった。


ζ(゚ー゚*ζ「美味しい」


僕は最後のチョコレートをデレに食べさせてしまったことを若干後悔した。
デレは意地悪く微笑んで、こたつの中で僕の足をトントンと蹴った。


(-_-)「あ、ちょっともう」

ζ(゚ー゚*ζ「ヒッキーの足邪魔ー」

(-_-)「はいはい」




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:48:09.13 ID:W4ys1GJcO

僕が足を避けるとまたデレの足がトントンと蹴ってくる。
仕方ないのであぐらをかいた。


ζ(゚、゚*ζ「…む、あれ?」

(-_-)「もう足は伸ばしてないよ」

ζ(゚ー゚*ζ「えー? ヒッキーのバカー」

(-_-)「バカじゃないよ」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあヒッキーの不登校児ー」

(-_-)「まあ…その通りかな」


デレはもそもそとこたつ布団を肩にかけると、僕の目をじっと見てきた。

僕はカップに手を伸ばす動作で視線を外す。
目を見ていなくてもデレが僕を見つめたままなのは分かっていた。




16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:50:42.50 ID:W4ys1GJcO

ζ(゚ー゚*ζ「ヒッキー、明日は学校に来る?」

(-_-)「……気が向いたら」

ζ(゚ー゚*ζ「本当に?」

(-_-)「気が向いたらね」

ζ(゚ー゚*ζ「明日は席替えするよ」

(-_-)「そう」

ζ(゚ー゚*ζ「明日は晴れだよ」

(-_-)「うん」

ζ(゚―゚*ζ「ヒッキー、ねえ」

(-_-)「…何?」

ζ( 、 *ζ「寂しいよ、ヒッキーがいないと」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:52:21.56 ID:W4ys1GJcO


カンカンカンカン…と頭の中で音がした。遮断機のような音だった。

僕はデレの顔を見た。
何だか胸がギュッと苦しくなって、多分これは罪悪感なんだと思う。
ごめんね、デレ。


ζ(゚、゚*ζ「ヒッキーがいないと勉強も分かんないの。先生の言葉じゃ頭に入ってこないよ」

(-_-)「うん…」

ζ(゚、゚*ζ「ヒッキー」


デレが僕の名前を口にすると泣きそうな、幸せな、だけどつらくて苦しい。
とろけそうなほど甘い。冷たくて熱い。
こんな気持ちをなんと表すのだろう。
呼吸が止まりそうだ。
酸素が足りない。だって目眩がする。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:53:44.03 ID:W4ys1GJcO


(-_-)「ごめん、明日は学校行く、から」

ζ(゚、゚*ζ「……勉強教えてくれる?」

(-_-)「うん」

ζ(゚、゚*ζ「途中で保健室に行かない?」

(-_-)「…多分」

ζ(゚ー゚*ζ「一緒にお弁当食べる?」

(-_-)「…うん」

ζ(゚ー゚*ζ「ヒッキー」

(-_-)「何? デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「明日のお弁当はね、デレが作ってあげるよ」

(-_-)「…ありがとう」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/08(日) 00:54:41.96 ID:W4ys1GJcO


僕は多分、泣きそうだった。
カップに残ったお茶を一気に飲み干した。
涙の塊が胃に落ちたような気がした。

ぽちゃん。

僕はデレの足をそっと突っついた。
デレは笑って、僕も笑った。ひどく幸福だった。


終わり

[ 2010/10/18 18:34 ] スレ立て短編 | TB(0) | CM(0)

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