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( ∵)は( ^ω^)の遊園地にやってきてしまったようです 15スレ目(完結)

14スレ目はこちら
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:13:23.50 ID:0DuioJe70


そこから先は、前に聞いた事があった。
案内係さんは僕をこちらに誘い込み、園に引き入れた。
スタンプというシステムを使って僕を園長にして、空間を安定させた。

解るようで、解らない。言葉が上手く頭に入ってこない。

というか、理解したくなかった。
それはつまり、案内係さんは僕を利用していただけ、っていう事なんだから。

「案内係」

と、後ろから、聞きなれたようでどこか違う声がした。
僕の知ってるそれよりずっと幼くて、どこか頼りなくて清んでる。

( ・∀・)「……! なんで」


振り返った案内係さんが、くわっと目を見開いて、こぼす。

/ ,' 3「……やぁ、久しぶり、でもないみたいだね」

目の前に居たのは、まだ若かりしころの姿をしたおじいちゃんだった。




5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:14:11.18 ID:0DuioJe70


こんなに、露骨に感情を露にする案内係さんは初めて見て、僕はむしろそちらに驚いた。

/ ,' 3「僕が解らない? あぁ、なんでかここに来たら姿が若くなっちゃったからね」

想像したより冷静な僕に、おじいちゃんが拍子抜けしたみたいに訪ねる。

( ∵)「……いや、そうじゃなくて」


驚くという感覚が麻痺しているのかもしれないし
僕の知っているその人とは姿が違っているからかもしれない。

/ ,' 3「……そんな事よりだ。
    よくないね、案内係。何の関係もない少年を巻き込んだりして」

言葉に詰まっている僕から、視線を移す。

( ・∀・)「……なんで君がここにいる」

/ ,' 3「なんで? 娘や孫がここにいる方がよっぽど不自然だろう」

( ・∀・)「何しに来たと聞いているんだよ」




8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:15:37.23 ID:0DuioJe70


/ ,' 3「助けに、かな」

( ・∀・)「なんの事か解らないね」

/ ,' 3「娘のお願いから始まったとはいえ
    その為に可愛い孫が犠牲になるのを黙って見ているわけにはね
    と、こういう事。まだ解らない? 」

こんなに若いのに、孫なんてなんだか違和感。僕の事なんだろうけど実感が沸かない。

( ・∀・)「荒巻、何を勘違いをしているんだい
      僕は何もゲストを拉致してきたわけじゃないし、何一つ強制なんかしていないよ
      すべて彼が望んだこと、僕はその手助けをしていただけさ」

/ ,' 3「詭弁はいい」

おじいちゃんは言うと、こうこうと地面を照らす電灯を足で軽く蹴った。

と、電灯の根本が脆くもポキリと折れて、ぐわっと僕の方に倒れかかる。

( ∵)「……っわ」




12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:16:39.61 ID:0DuioJe70


ただでさえ運動神経の悪い僕に、よける事なんてできるはずがなくて
両手で頭を庇いぐっと目を閉じる。

( ・∀・)「危っ 」

案内係さんが、とっさに僕の前に立ちふさがって
倒れかかる電灯に手を伸ばし掴もうかという次の瞬間

明らかに固形だったそれは、どす黒いベトロのような液体に変わった。

( ・∀・)「な」

それは案内係さんの手を滑り、ぼたぼたと地面にしたたり落ちる。
落ちた液体は地面にじわりと沈み、すっと馴染む。

(  ∀ )「や、闇……」

案内係さんが、どろりと手からしたたる黒い液体を見つめながら言う。


/ ,' 3「何て事はない。
    光を当てられた影が内側に逃げ込む事は当たり前だろう」

おじいちゃんが吐き捨てるように言うと、案内係さんが愕然と膝をついた。




15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:17:31.65 ID:0DuioJe70


( ∵)「あ、あの。な、なんなんですか、今の?ここはどうなっちゃうんです? 」

/ ,' 3「こうして話している今も光の当たらないところ
    つまりウチ側は闇の虫に食われ続けている
    そこにどんどん穴が開いていって、穴同士が合わさりやがて更に大きな穴になる
    その頃には」

( ・∀・)「園ごと闇の腹の中……」

なんだかメルヘンチックなようで、ずしりと重みのある言葉だ。

もちろん腹の中という表現は比喩であり、消化吸収までの時間すらあるはずもなく
食われるという事は即ち……

( ・∀・)「……なんでそんなに冷静でいられるんだい」

膝をついたままの案内係さんが、目だけをこちらにやる。

冷静?そんなわけない

こんなにも重厚な建物も、360度広がる青空も
規則的に並べられた石畳も、全てが闇と対称の物に見えて、でも
その実、闇に食われている。




20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:18:52.02 ID:0DuioJe70


足を一歩動したらその時、自分まで食べられちゃうんじゃないか、
そう考えるだけで、叫び出したくなるくらい恐ろしかった。

でも、どうやら僕は感情が滅多に表に出ないタイプらしく
そういえば、その事でよく誤解を産む事が多かったなぁ。

なんてこの状況で振り返れるあたり
やはり僕は自分が思っているより冷静なのかもしれない。

( ・∀・)「君の冷静な所は割りと好きだったけど、今は不思議と腹が立つよ」

案内係さんが、うんざりした様子で言う。

こんなにも自分に対して嫌悪感を露にされるのは初めてで

僕はお前を利用していただけ。

優しくしたのも、助けたのも、自分の目的のためだ。とそう言われてる気がして
ぎゅっと胸の奥が痛くなった。


……ううん、だめだ。
落ち込んでいても仕方ないし、今はそれどころじゃない。

( ∵)「あの、おじい……荒巻さん」




24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:20:07.01 ID:0DuioJe70


/ ,' 3「おじいちゃんでいいよ。姿形は若いけど
     ビコーズの事は覚えているし、荒巻さんだなんて他人行儀で寂しいじゃないか」

そう言って、僕の頭を愛しげにぽんぽんと撫でる。

( ∵)「……おじいちゃん、あの」

/ ,' 3「なんだい」

姿は変わっていても、優しいとろんとした目は変わっていない。

声だって、口調こそ変わっていているけど声質はおじいちゃんと同じで
急に何かがこみあげてくるのを堪えて、訪ねる。


( ∵)「僕に何が出来るでしょうか」




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:23:29.42 ID:0DuioJe70



「……だぁぁっ、もうっ」


同じ頃、辺りに甲高いヒステリックな声が響いた。

ξ#゚⊿゚)ξ「どこにいるのよあの二人はッ……」

はぁはぁと肩で息をして、来た道を振り返る。
彼女もまた、キャストでありながらこの園の広さに翻弄されている一人だった。

ξ#゚⊿゚)ξ「ブッ殺す……見つけたら……手足引き裂いてやる……」


聞こえるか聞こえないかで呟いた後、ぱっと上を見やる。

目の前には、光に当てられたブーンのジェットコースターが、主人を待つ犬みたいに
ぼんやりとたたずんでいた。


ξ゚⊿゚)ξ「……あんたは、のんきで良いわね……人の気も知らないで」


『そう怒るなお、ツン。かわいい顔が台無しだお』




42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:25:27.10 ID:0DuioJe70



ξ゚⊿゚)ξ「……そう言えば私の気が済むと思ってるんだから……」

頭の中に、鮮明にブーンのいつものセリフが浮かんで
これでもかと寄せていた眉間の皺がふっとゆるむ。

今思えば、ブーンに大人で私は子供だった。

一方的に感情をぶつけるしか出来ない私に、そのすべてをちゃんと受け止めて
自分の中で吸収し消化してくれてた。

だらしのないブーンを私が引っ張っていた気になっていたけどその実
誰よりも私が信頼していたのはブーンだった。

だから、あの事故の報告をした時取り乱したブーンが、私はただ恐ろしくて
初めて感情をぶつけてきたブーンを受け止める事が出来なかった。


後悔は尽きないけど、正解もわからなくて
ブーンがいなくなった世界が耐えられなくて、気づいたらここに帰って来ていた。




45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:25:51.31 ID:0DuioJe70


本当はずっと前から気づいてた。ここはブーンの遊園地じゃない。
だから、待っていたってブーンは帰ってこない。

でも、ここから離れるのが恐ろしかった。
もしこの園に終わりが繰るならば

そのときは私も一緒に消えてなくなったほうがいい。

……

「あれれ~、ツンちゃん? 」

そっとコースターに手をかけると、不意に間の抜けた声がした。


ξ゚⊿゚)ξ「……渡辺 」

从'ー'从「きぐうだねー! 何してるの? こんなところで」




48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:26:56.95 ID:0DuioJe70


ξ゚⊿゚)ξ「別に。アンタは何を…… 」

从'ー'从「何も してないよー、ツンちゃんはなにを

ξ゚⊿゚)ξ「あぁもう。面倒くさいからもう良いわ。それじゃあね」

从'ー'从「うん、ばいばー……」


と、視界が歪んだ。


ξ;゚⊿゚)ξ「な……? 」

目の前の光景に、我が目を疑う。

从'ー'从「あはは、もう時間みたい……」


空間がぐにゃりと曲がり、渡辺の額からつーっと一筋の黒い液が垂れる。


ξ;゚⊿゚)ξ「わ、わたな……あんた、だ、 」




50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:27:54.70 ID:0DuioJe70


从'ー'从「もうあの子は食べられちゃったから、やっぱり私もここには居られないみたい」

渡辺はわけのわからない事を言って、それでもまだへらへらと笑っている。
そうしている間にもどす黒い液体はどろどろと顔を垂れ続ける。


ξ;゚⊿゚)ξ「あんた、どうしちゃっ…… 」

从'ー'从「えへへ、ツンちゃん、お別れだね」

言い終わるか終わらないかで液体に顔が完全に覆われると、
液体は勢いを増し、全身が液体に包まれて真っ黒になった渡辺は

頭からどろりと溶けだし、そのまますうっと地面に消えていった。


ξ;゚⊿゚)ξ「…… 」


渡辺が消えて、私は間抜けにも口を呆けるしかできなかった。

あまりにも唐突すぎて、何が起きたんだかわからない。
目の前に居た人間が急に液体に溶かされて消えてしまったのだ。




52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:28:33.64 ID:0DuioJe70



/ ,' 3「正面ゲートの鍵を開けて、外に出ればいい」

( ∵)「……え?」

/ ,' 3「逃げるんだよ。走って、鍵を開けて、外に出るんだ」

( ∵)「ちょ、ちょっとまって下さい、に、逃げるって」

/ ,' 3「?何」

( ∵)「や、闇をどうにかする方法は」

/ ,' 3「ないよ」

即答。

/ ,' 3「あったらとっくに僕がそうしてるじゃないか。
    僕はここじゃなく、お前を助けに来たんだ。逃げろ、って言いに」

おじいちゃんはそう言うと、僕の背中をトンと押した。




56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:29:30.76 ID:0DuioJe70


/ ,' 3「時間は無い。余計な事は考えなくていい。
    そして、走っている間は出来る限り楽しいことを考える。
    闇の虫は影と孤独な気持ちに集まるみたいだから」

( ∵)「……でも、でもおじいちゃん達は……」

言うと、おじいちゃんは困ったように笑った。

/ ,' 3「僕らは行けないよ」


( ∵)「……い、いけないって」

案内係さんを見る。
地面にペタリと座りこんで、頭を垂れている。
こちらをちらりとも見てくれないから、表情が解らない。

( ∵)「……じゃ、じゃあ。他のキャストの人達は、お、お母さんは」


/ ,' 3「お母さんの事は……大丈夫。
    君を送った後僕がちゃんと責任を持って帰す。
    だから早くここから出ていくんだよ」




63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:32:04.00 ID:0DuioJe70


( ∵)「か、鍵、鍵は?」

/ ,' 3「表の鍵はジャケットの右ポケットにあるだろう、赤い鍵だ」

( ∵)「……」

右ポケットを探ると、有った。
兎の装飾が施された、真っ赤に輝く鍵が。

/ ,' 3「さぁ、いいかげんに行くんだよ」

( ∵)「……」


僕はもう一度背中を押されて、ようやく走り出した。




73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:34:40.81 ID:0DuioJe70


( ∵)「はぁ、はぁ、はっ、」

なにも考えないで、ただ走る。

帽子の力か、行く道を迷うことはなく
壊れていく建物や、割れてむきだしになっている地面を見送り
僕はただひたすらに、ゲートだけを目指した。

……

( ∵)「……はぁ、」

ゲートには、驚く程早く着いた。
こんなに近くに有ったのか、と愕然とした後に、気付く。


( ∵)「……距離まで食べられてる」

もう本当に時間がないのだ。
僕は慌ててゲートの前に駆け寄り、南京錠に鍵を挿す。

( ∵)「……」

挿した所で、手が止まる。

本当に、このまま僕だけ逃げ出して良いのか。




81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:36:56.62 ID:0DuioJe70


ツン、ドクオ、クー

妹者さん、兄者さん弟者さん、貞子さん

おじいちゃん、案内係さん


僕の中に、帽子からブーンさんの感情が伝わってくる。


遊園地のキャストのみんなが、遊園地が、どうしようもなく愛しくて。

きっと、これが園長さんの感覚
園長さんがずっと抱いていたものなんだ。

( ∵)「……」

僕はひとつ うんとうなずくと、鍵を抜いて目を閉じた。




84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:38:19.08 ID:0DuioJe70



考えなくちゃ、

みんなが助かる方法、みんなが闇に飲まれないで済む方法


どうしたらいい


どうしたら


( ∵)「……閉園」


そうだ、閉園したらいいんだ。

無くなる前に、食われる前に、園長である僕が幕を引けばいい。

ううん、僕が終わらせなきゃいけない。




89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:39:44.27 ID:0DuioJe70


……でも、閉園ってどうすれば……


“表ははじまり、裏はおしまい”


ふっと、そんな言葉が浮かぶ。
聞いたことのない言葉。きっと園長さんの記憶だろう。

( ∵)「裏は……おしまい……」

右が表、ならば左。
僕は恐る恐る左のポケットを探すと、こつん、と何かが指に当たる。

取り出すと、三日月の装飾がされた青色のきらきら輝く鍵が姿を表した。

( ∵)「……裏ゲート」


僕は一言呟くと、青い鍵を握りしめて来た道を走り出した。




94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:41:05.32 ID:0DuioJe70



帰り道は、行きのそれとは全く姿を変えていた。

地面を割れて、そこから真っ黒なヘドロのような物が吹き出している。
度々、踏みそうになって転ぶ。

行きはよいよい帰りはつらい。あぁなるほど、と意味の解らない納得をした。


やがて、だんだんとヘドロが多くなって行ったなぁと思うと
ようやく先程、二人と別れたスペースに差し掛かった。


とっさに二人を探すけど、おじいちゃんも案内係さんも、そこにはいなかった。


嫌な予感がする。


( ∵)「おじいちゃん!案内が……」

言いかけて、僕は目を見開いた。




100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:42:20.14 ID:0DuioJe70


( ∵)「案内係さん!!」

悲鳴に近い声を上げて、駆け寄る。
案内係さんが、真っ黒な水溜まりの中にぼんやりと座り込んでいたのだ。

目は開いているのに、返事はおろか反応すらも無い。
僕は黒い水溜まりにどぷりと足を入れて、膝をつき耳の傍で何度も声を張り呼び掛ける。

見ると、案内係さんの足にはヘドロが絡み付き、額からはだらだらと液体が垂れていた。

手のひら全部を使って頬を垂れるヘドロを拭う。
でも額から溢れるヘドロは頬を垂れ続け、僕の手を伝ってぼたぼたと地面に垂れ落ちる。


( ∵)「起きてください!案内係さん!」

僕はうなだれた案内係さんの顔をぱしぱしと両手で叩いた。

( -∀-)「……痛い」

ようやく反応が返ってきた。けど、喜べる状況じゃない。




103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:44:14.90 ID:0DuioJe70


( ∵)「……だめ、だめです!……起きて……に、逃げなきゃ」

ヘドロはぜんぜん落ちない。頭がぼんやりしてくる。
気付くと、僕の瞳からはぼろぼろと涙が出てきていた。

何ないてるんだ、僕は。バカみたいだ。

( -∀-)「僕は……君が困ったりする顔が好きで……それが嬉しかったけど

      はは、不思議と……
      泣いてるとこを見ても全然嬉しくないんだな……」

( ∵)「……たの、そうだ、楽しいこと、考えましょう。
    楽しいこと……さっきおじいちゃんが言ってた、」

( ・∀・)「……今、楽しいよ……とても」

( ∵)「……僕は真剣に」

(  ∀ )「……いいや……君が来てからは楽しかった……
      ……久しぶりに……スタンプを集めて……
      ……久しぶりで……本当に、懐かしくて

      冷たい、寒いけど、……それを糧に闇……居られる気が……する」

( ∵)「……何言ってるんです、……まって……待ってください」




108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:45:25.00 ID:0DuioJe70


(  ∀ )「そろそろ……離れようか……君も食われてしまう」

瞳の奥が見えるくらい近くにいるのに、案内係さんの言葉が頭に入ってこない。

僕は完全にパニックになっていた。
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、必死に案内係さんの顔のヘドロを拭う。

僕は全然楽しくなかった。怖かった、いたかった、わけわかんなかった
あんたの勝手な思惑でこんなとこに連れてこられて、連れ回されて
僕はまんまと君の計画通り園長にさせられたんだ

それなのに……

      「離れろッ……」

案内係さんが叫ぶと瞬間、僕は突き飛ばされ、そのまま尻餅をつく格好で、地面に倒れ込む。

( ∵)「……って」

僕が離れたのをきっかけにしたかのように、ヘドロは勢いを早め
一瞬にして全身ヘドロに包まれた案内係さんは、頭からぐにゃりと溶け出していった。

ヘドロで覆われたシルエットが歪んで、水溜まりに溶けていく。




118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:49:23.32 ID:0DuioJe70



僕は唇をぎゅっと噛み立ち上がって、水溜りに背を向ける。


なぜだかわからないけど、涙が止まらない


前が見えない。邪魔だ、邪魔だ。とまれ、とまれとまれ

僕には、この園には時間がないんだ。


悲しみに暮れている時間も、おいおい泣いてる時間も

……そう、泣いてちゃだめだ。

たの、楽しいことを……考えなくっちゃ。そして走るんだ、
早く、早く、早く早く



「……邪魔だ、おっせーぞ」


走り出したところで、どこから声がした。
そして、聞き覚えのある金属音に、近づいてくる真っ黒な鉄の固まりと巻き上がる煙。



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:50:02.48 ID:0DuioJe70


現れた黒光りしたSL
その運転席、すすで汚れた男がひょっこり顔を出した。

( ∵)「ド、ドクオさん!」

('A`)「よう。オマエ、顔ぐちゃぐちゃにしてどこへ行くんだ」

( ∵)「え、う、裏ゲートに」

顔をぬぐって答える。


('A`)「ふーん、奇遇だな、今園内回っててよ、裏ゲートに行くとこなんだ」

( ∵)「……!……え?」

僕がきょとんとしていると
ドクオさんがぽりぽりと帽子の上から面倒くさそうにをかいて言った。

('A`)「……めんどくせぇな。乗っていくかいかないか」


( ∵)「え、あ、の、……乗ります!!」

僕は何回もありがとうを言って、SLに乗り込んだ。




126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:51:33.06 ID:0DuioJe70


('A`)「なぁ、聞いて良いか」

ドクオさんが、窓からぼんやりと外を見ながら言う。

( ∵)「はい」

('A`)「裏ゲートに行ってなにするつもりなんだ」

( ∵)「……それは」

('A`)「言えないならいい。
    俺はただのキャストで、お前は園長様なんだからな」

( ∵)「……」

('A`)「そんな顔すんな……そういう意味で言ったんじゃない」

何も言えなくて黙ってしまう僕に、ドクオさんはバツの悪そうな顔をして
頭をかき、ゆっくりと話し始めた。




129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:52:28.99 ID:0DuioJe70


('A`)「俺らは弱いんだ。
    もちろん、権利とか立場とかそうじゃなくて。
    だから園長さんに頼って、全部追わせて俺らは脅えるだけ。

    こういう時も、本当は認めたくねーのに、お前を頼ってる。
    情けない。自分がいやになる」

( ∵)「……」

('A`)「俺らは何にも出来ない。
    最後に決めるのも、行動するのも園長なんだ
    園長にばっかり背負わせて、園長にばっかり負担をかける」

途中で、気がついた。

あぁ、ここでいう園長さんっていうのは僕の事じゃない。
きっと、ブーンさんのことだ。

きっと、ほとんど思い出したんだろう。空気の効果も食われているんだ。


133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:53:28.48 ID:0DuioJe70


( ∵)「……負担になんかじゃなかったと思います」


('A`)「え? 」

( ∵)「ちゃんと、頼ってました。信頼してました。
   みんなが園長さんを信頼してくれるくらい、それかもっと強く。
   だから……」

('A`)「……なんか変な感じだ」

( ∵)「? 」

('A`)「お前に何が解るんだって、普通そう思うのにな。
    なんか知らんが、すげー救われる。
    ……ブーンと喋ってるみたいだ」

( ∵)「格好が同じだからですよ。きっと 」

('A`)「まぁ。そうだろうな」

ドクオさんが小さく笑って、僕もつられて笑う。


142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:56:02.54 ID:0DuioJe70



('A`)「おっと、そろそろ降りろ」

( ∵)「え? 」

外を見る。一本道を行ったところに、うっすらとゲートが見える。


('A`)「勘違いすんなよ。俺はお前を送ってやったわけじゃない。

    他の奴らの事も気になるしな。
    さ、降り」


ろ、 と言った所で、僕は猫っ首を捕まれて、ぽいっと外に放られた。





148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:57:24.27 ID:0DuioJe70


あいててて、
何も放り投げる事ないのに……。

僕は頭を抱えて、起き上がる。


( ∵)「……は、行かなきゃ」

呟いて、立ち上がりズボンをぱんぱん叩くと
裏門に続くまっすぐの道を走り出した。

気づけば、辺りはすっかり暗くなっている。

建物はほとんどが影絵かシルエットのようになっているし、

地面ももう見えないくらいヘドロに覆われていて
走るたびにびちゃびちゃと音がする。しぶきが上がる。

足を何度も絡み取られそうになりながら、ただ前に進んでいく。

足がやけに冷える。見ると、ひざまでヘドロに絡みつかれている。
重い。徐々に感覚がなくなってくる。


走る。走る。走る。



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:58:40.16 ID:0DuioJe70


額から、たらりとヘドロが流れ始める。
寒い。顔から脚から、徐々にヘドロが覆われていく。

走る。走る。

とん、と手に壁が当たる。顔をごし、とこすって奪われていく視界をなんとか確保する。

どうやら、僕は裏ゲートにたどり着いたらしい。


正面ゲートと大きさはさほどかわらないものの、装飾はされておらず
シンプルなつくり。でも、独特の威圧感はある。

南京錠を探す。もう顔は覆われている。目で確認する事はかなわない。
手を壁に這わせる。正面ゲートと同じ位置ならば、このあたりに……

あった。

早く。早く。カギを挿して、まわす。早く。
ガチャン、と小気味のいい音がした。やった、外れた。のだろう。
もう感覚すらない。

冷たい。寒い、怖い。痛い。
どれがどれなんだかわからないけど、そんなかんじがする。苦痛だ。




158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:00:52.26 ID:0DuioJe70


……

もう僕は闇に食われたのか、それでもまだ意識はある。
外から見て僕はどうなっているのか、立っているのか座っているのか、倒れたのか。

それでも、力いっぱいで扉を押す。

押している?押している気はする。
どうやら感覚は食われたらしい、でも、ゆっくりと扉が開く音がする、気がする。



……暖かい。




眠たい



179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:06:39.90 ID:0DuioJe70






~おわり~  







はじまり




181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:07:28.28 ID:0DuioJe70


「おはよー」


「……」

「ご飯の時間よー、ほらほら、早く起きなさい」


ご飯……?


ううん、眠い。良いにおいがする。焼き魚かな……?
僕はゆっくりと目を開けて、上半身だけを起こす。

(#゚;;-゚)「おはよう、ビコーズくん」


目の前に居る女性が、僕が起きたのを確認すると にかっと笑って、僕も挨拶を返す。
でぃさんだ。僕らのお母さんみたいな人。


184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:08:05.17 ID:0DuioJe70


( ФωФ)「おはようビコーズ。今日は焼き魚だぞ。良い朝だ」

この猫みたいな顔をした人は、杉浦ロマネスク。

僕と同じ学校に通っていて、同じ部屋に住んでいる中学三年生。
まだ学校に行くまでに2時間近くもあるのに
びしっと制服を来て、髪形も決まっている。

僕はロマネスクさんに「おはようございます」と深々とお辞儀をしてから、布団から出て
顔を洗うと、食堂へ向かった。


( ФωФ)「な、ビコーズ、今日の放課後は暇か? 一緒に釣りにでもいかんかね? 」

食堂には、もう既に何人かの姿があり、入るとすぐロマネスクさんが声をかけてきた。

(#゚;;-゚)「あら、いいじゃない。釣った魚は夕御飯にしましょ!
     ねっ、今日は早く帰って来てね、ジョルジュくん」
  _
( ゚∀゚)「……っせーな、何時に帰ろうと俺の勝手だろうが」

この人は、近所の高校に通っているジョルジュ長岡。

僕と一緒で、まだ当然寝起き。(というかロマネスクさんが異常なのだ)
スウェット姿でだるそうにぽりぽり頭を書いている。




186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:08:39.26 ID:0DuioJe70


( ><)「もう、ジョルジュ君ったら。僕は楽しみにしていますからね!
      期待してます、ロマネスクさん、ビコーズさん」

( <●><●>)「どうせ何もつれないことはわかってます」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ! 」

この人たちは僕よりひとつ年下で、市内の小学校に通う仲良し三人組。
左から、わかんないんですくん、わかってますくん、ちんぽっぽちゃん。

( ФωФ)「意地でも大物を釣ってやろう、な、ビコーズ」

ロマネスクさんはむぅっとして、僕の前でガッツポーズをやる。
……というか。いつのまにか僕も一緒にいくことになってるらしい。

何も返事してないんだけどな、まぁ、どうせ暇だしいいか。


朝食が済むと、僕は歯を磨くために洗面所へ向かった。




187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:09:01.05 ID:0DuioJe70


僕専用の青いハブラシに少しは磨き粉を乗せて、水を流す。
季節はもうすっかり秋だから、水が冷たい。

不意に、思い出す。
そういえば、あそこにいたのは夏だった。
夢だったんだろうか。思い出すと、やはりそう思わずにはいれない。

もし夢だったなら、悪夢だ。
だって、あんなに時間がたったのに、ぜんぜん忘れられない。
今も胸が、ぎゅっと苦しくなる。

そう、夢だったんだ。そう思う事にしよう。
あのヘンテコな世界も、そこの住民も、あの不気味な男も、全部なかったんだ。

僕はぶんぶんと頭を振って、コップに水をすくい……


「……ゲスト? 」


( ∵)「……! 」




190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:09:42.57 ID:0DuioJe70



今、確かに声がした。


胸が どん と高鳴る。


確かに、聞いた事がある。とても、懐かしい声。

心臓の高鳴りを抑えて、辺りを見回す。



「こっちだ! こっち! ずっと探してたんだぞ! 」


……ん?

違う、この声は。



( ´_ゝ`)「やぁやぁ、よかった、 どうやら出られたみたいだな! 」




192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:10:26.42 ID:0DuioJe70


( ∵)「……」


鏡の中に、男が居る。


(;∵)「お、弟者さん? 」

(;´_ゝ`)「違う違う、兄者兄者 」


ど、どっちでもいい……


( ´_ゝ`)「なんだよ、せっかくの再会だっていうのに
      なんだその顔!俺はさびしいぞ」


指をさすな、鬱陶しい……


(;´_ゝ`)「た、ため息はやめてくれないか、ゲスト」

( ∵)「……で、な、んなんですか、というか……」




194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:10:47.94 ID:0DuioJe70


( ´_ゝ`)「あぁ、それがな」

「おい、誰かいんのか? 」

兄者さんが何かを言いかけたところで、洗面所の外から声がした。
……マズイ!これは非常にマズイ。

( ∵)「か、隠れて、早く、」

( ´_ゝ`)「は? 隠れるってったって、どこに? 」

(#∵)「いいから、早く! 」

  _
( ゚∀゚)「……お前一人か? おかしいな、さっき話し声が……」

( ∵)「え、えぇ。はは、それじゃあっ」
  _
( ゚∀゚)「……? 」

間一髪のところだった。
僕は歯ブラシを置くと、洗面所からダッシュで逃げた。




196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:11:18.45 ID:0DuioJe70



( ∵)「あ、危なかった……」

部屋に戻った僕は、そっとポケットの中に手を入れ
小さな手鏡を開く。

( ´_ゝ`)「や! また会ったね」

( ∵)「……また会ったね、じゃないでしょ……。
   もしグーゼン傍に手鏡がなかったらどうしてたと……」

( ´_ゝ`)「それにしてもこの手鏡は質が良いな!
      なかなか居心地が良い。よし、決めた。ここに永住しよう」

( ∵)「……いい加減に……」


( ФωФ)「お、鏡に向かって独り言? 良い趣味をしている」

( ∵)「! ロ、ロマネスクさん。いつから」




199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:11:47.89 ID:0DuioJe70


( ФωФ)「いい加減に、というところからだ。

        おっと、僕は人の趣味に口出しする趣味はない。
        どうぞ、僕に気にせず続けてくれたまえ」

ロマネスクさんはくるりと後ろを向いて、自分の支度を始めた。
とりあえず、兄者さんのことは気づかれてないみたいで
ほっと胸を撫で下ろす。

( ´_ゝ`)「……変な奴だな」ヒソヒソ

( ∵)「あなたに言われたくないと思います」


( ФωФ)「よし、僕の支度は終わったぞ。君の支度はどうだ。

        趣味は帰ってからにしたまえ。さ、出かけよう」




201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:12:32.84 ID:0DuioJe70



玄関を開くと、青空と普段と変わらない町並みが広がる。

少し肌寒い。もうすぐ衣替えの季節だな。
すれちがう人たちは、もうマフラーをしている人までいる。

( ФωФ)「おっと、そういえばシャープペンシルの芯を切らしていた。
        先に行っていてくれ」

ロマネスクさんが交差点で立ち止まり、くるりと向きを変えた。
それを確認したように、胸ポケットから声がする。

「楽しそうだな、ゲスト」


ちょうど赤信号だ。僕は鏡を取り出し、開く。
ねぐせを直す風にして、小声で鏡の男に話しかける。

( ∵)「喋らないでください。誰かに聞かれたらどうするんです 」



202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:12:46.18 ID:0DuioJe70


( ´_ゝ`)「む、僕に話し相手になって欲しくて
      わざわざ手鏡に入れてまで連れて行くんじゃないのか? 」

( ∵)「違いますよ。
   もしあそこに置いておいて誰かに見つかったらどうする気ですか……」

( ´_ゝ`)「またまた、素直じゃないんだから、ゲストは」

ゲスト。すごく懐かしい響きだ。また胸が痛む。


( ∵)「……僕はもうゲストじゃないですよ」

( ´_ゝ`)「おっと、そうだな。じゃあなんて呼べば良い。
      というか君、名前なんていうんだっけ」

( ∵)「……ゲストでいいです」




204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:13:12.54 ID:0DuioJe70


ゲスト。そう呼ばれるのも嫌じゃない。


遊園地は、確かに存在した。夢じゃなかった。妄想じゃなかった。

この鏡の男が ゲスト と呼んでくれるのが証明になる。


あのヘンテコな世界も、そこの住民も

 あの不気味な男も

全部。

あったんだ。確かに、本当だったんだ。


僕は鏡の男にバレないように小さく笑うと、青信号を確認し
鏡を鞄に放ってゆっくりと歩き出した。







210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:15:15.88 ID:0DuioJe70



はい


これでほんとうに終わりです。

そんなに長くないのに1年とかかかっちゃった。テヘ
それでは

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