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川 ゚ -゚)心の叫びとは人間だけに聞こえるモノのようです

3 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:02:20.52 ID:8Yc/3FwL0


            ロボット工学三原則と呼ばれる物がある。

        これはロボットが人間の友である為に欠かせぬものであり、
           また、ロボットをロボットたらしめている掟である。
            ロボット達はこの三つに則って行動する。


         第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
        
         第2条 ロボットは人間の命令に服従しなければならない。

         第3条 ロボットは第1条第2条に反さない限り自己を守らなければならない。

      
       人間至上主義とも呼べるこの三原則は、人の世界に生きる彼等ロボットにとって、
                 決して破ってはならない不文律である。




6 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:03:38.42 ID:8Yc/3FwL0

          ●

黒のロングコートを纏った、切れ長の瞳を持つ黒の長髪のガイノイド、
素直クールが第456層を歩いてる。

道には瓦礫や鉄パイプが散乱しており、彼女はそれに足を引っ掛けないように注意して進む。

白みがかった人工皮膚にじっとりとした生ぬるい空気が触れてきて、
下層に相応しい鮮度の悪い空気だ、と彼女は判断した。
建物が沢山並んでいるが、どれも背の低い物ばかりである。

クールにとって、それは都合が良かった。

歩き続けて路地に入り、薄暗い道を歩いていく。

二股に分かれた道を右に進んで奥へと辿り着くと、そこは行き止まりだ。
四角く、小屋が一個置けそうなその空間には、小さな建物の中でも、
比較的大きな部類である建物の背に囲まれている。

影に覆われていてよく見えないが、
その空間の中央に置かれている筈の鉄パイプの並びへと彼女は進む。

が、彼女の視覚センサーは熱源を捉えていた。

川 ゚ -゚) 「誰ですか?」

暗視モードに視覚を切り替える。すると、人の姿がはっきりとしてきた。
およそ一週間ぶりである人間との接触に彼女は警戒する。


12 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:05:31.75 ID:8Yc/3FwL0

('A`) 「………」

だが、問いに男は返答をしなかった。

黒いスーツに身を包んだ赤い目の男は、
こちらを見据えたまま、座っていた鉄パイプから立ちあがる。

クールは後ずさり、距離を離す。

川 ゚ -゚) 「私は素直クールと申します」

('A`) 「………」

彼女は何も語らない男の分析を開始する。武器の有無。
身体状態。などなど、調べるべき点は多々ある。

センサーにより、懐にナイフとハンドガンらしき形が浮かびあがり、
上半身の至る所には線が数多く延びていた。

それの正体が分からないので解析を進めるが、そんな余裕は無かった。

('A`) 「………ッ」

黒スーツの男が右腕を軽く振るう。

その瞬間、腕の動きに連動して身体を這う線が伸びて行き、
クールは咄嗟にしゃがみ込んだ。

遅れて、音が鳴る。


15 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:07:16.15 ID:8Yc/3FwL0

子供の泣き声のような、ひうんひうんといった空を切り裂く音が響き、
二人を囲む左右の建物に亀裂が走り、灰色の粉塵が舞う。

頭を上げて、周囲を確認したクールは何が起きたのかを理解する。

川 ゚ -゚) (鋼線か)

頑強な糸を高速で放ち、対象物に食い込ませることで切断する。
そんな技術を黒スーツの男は用いて“攻撃”してきたのだ。
攻撃されたのだから、反撃するか逃げなければならない。

二択の内、彼女は敵に背を向けて逃亡することを選んだ。

踵を返し、前傾姿勢を取って全力で駆け出す。
目に映る物全てが視界の後方へと流れて行き、来た道を戻って行く。

背後の男は追う動きは見せず、ただ、腕を振るう。

指の露出したグローブから糸が発射され、クールを追った。
再び横一線に放たれた糸は空気と建物を切断しながら宙を泳ぎ、
彼女は振りかえりもせずに、更に身を低くして避けてみせる。

背中に目でも付いているかのような動き。

否、彼女は背に付いた目で見切ってみせたのだ。

ガイノイドである身体に搭載されたレーダーは、
背後から迫る糸の動きを把握し、目の役割を果たした。

回避するが、疾走の勢いは殺さずに進んでいく。


18 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:09:27.98 ID:8Yc/3FwL0

黒スーツの男は、ここでやっと動き始めた。
足を思いきり踏み込み、後ろへと地面を蹴って疾走の動きを作る。

クールは“背中の目”でそれを確認しつつも走り続ける。

駆けながらも、黒スーツが両の腕を振るい上げていく。
勢いよく真っ直ぐと伸ばされた両腕からは、糸が伸びていった。
鞭の如くしなり、地面を切り裂いて進む双の糸。

挟み込む軌道で迫ってくる糸を確認し、クールは疾走の速度を上げた。

真空を切り裂いて音を奏でる糸が、背に食らいつく直前、
二つの糸はほぼ重なり、攻撃範囲は狭まる。

二股に分かれた道へと近づき、彼女はレーダーで動きを捉えた糸を、横に跳んで避けた。

瞬間、クールがいた空間を双の糸が切断した。
大気を震わせて、音が彼女の人工聴覚を刺激する。

反対の道へと跳び、地面に着地したクールは入り組んだ路地に飛び込んでいく。

俊敏としか言いようのない動き。

逃げることに慣れた彼女には、人間を一人巻くことなど朝飯前である。
黒スーツの男はクールが飛び込んだ道へと進むが、
彼の視界に彼女が映ることはなかった。

('A`) 「………ちッ」

舌打ちをして、男はクールの捜索を開始する。


20 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:11:38.83 ID:8Yc/3FwL0

          ●

下層への長い階段を下り続け、クールは第456層から460層へ辿り続いた。

襲って来る者がいなくなったことで余裕が出来、
彼女は歩きながら先程の黒スーツの男を分析する。

彼は、今までクールのことを襲ってきた人間の中でも、異質な存在であった。

これまで出会った人間達に、あんな戦闘技術を持った者はいない。
鋼線を高速で振って敵を切断する技術。長い訓練が必要だ、と判断する。
今まで自分の事を破壊しようとしてきた人間は、皆、素人に毛が生えたようなものであった。

銃の扱いは雑であり、身体の扱い方を心得ておらず格闘戦も下手。
あの男は、そんな今までの連中と比べものにはならない手練だ。

何より、あの赤い瞳。恐らく、何らかの人体改造を受けているはずだ。

戦闘の専門家だ、と判断し、企業の差し金か?と推測する。

が、自分が企業に狙われる理由が分からずに、この推測は取り消した。
もっとも、記憶領域には歴史以外の過去は記されておらず、真相は分からずじまいなのだが。
あの黒スーツの男は“解体屋”である、と仮定する。

などと、思考をしている内に瓦礫の密集した廃墟に辿り着く。
瓦礫からは鉄骨が延びており、非常に歩きにくい。

ここは、クールの隠れ家であった。

奥にある廃屋に隠れては彼女は身を休めている。


21 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:13:36.37 ID:8Yc/3FwL0


太陽が廃屋を照らしており、錆びだらけの廃屋はその光により美しく見えた。

この太陽は地下世界全体を層と層の狭間から照らす。ホログラムにしか過ぎないが、
ちゃんと熱を持っており、作り物の空に浮かぶ雲は雨を降らせる。

企業の管理する最上層の水生成施設の水は、非常に清浄であり鮮度が良い。

下層の水生成施設の水などよりも、最上層の生成施設から降り注ぐ雨のほうが綺麗だ。
なので、水に気を使う下層の住民達は、この雨を貯蓄する。

もっとも、機械である彼女にはあまり関係の無いことなのだが。

日陰へと逃れるように、クールは自分の隠れ家へと入って行く。

ベッド代わりにしている奥に積み重ねられた鉄筋を目指すと、
そこには先客がいるようであった。
警戒するが、そのシルエットがはっきりしていくとそれを解く。

背の低い、少年が座っていたのだ。

近づいていくと、こちらに気付いたのか振り返ってきた。

( ><) 「お姉ちゃんもここで遊んでいるんですか?」

川 ゚ -゚) 「いえ、私はここで隠れているのです」

( ><) 「何で隠れるんですか?」

川 ゚ -゚) 「人間が私を襲うからです」


22 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:15:35.03 ID:8Yc/3FwL0

( ><) 「え……襲われるんですか?」

少年はクールの言葉を聞くと、僅かに間を開けて疑問符を浮かべた。

川 ゚ -゚) 「はい」

( ><) 「おっかないですね。どうして襲われちゃうんですか?」

川 ゚ -゚) 「何故かは私にも分かりません」

( ><) 「そうですか……」

呟き、クールから視線を逸らして、少年は壁を見る。
黙り込み、何かを考えるような顔をする。

振りかえってクールを見ると、少年は、

( ><) 「お姉ちゃん、キャッチボールして貰えますか?
       僕ずっとここで壁打ちしてたんです」

川 ゚ -゚) 「えぇ。よろしいですよ」

パッと明るい表情で積まれた鉄筋の脇へ回る。
陰になって見えなかった所からグローブを取り出し、
ズボンのポケットからはボールを出した。

( ><) 「グローブは一個しかないんです。使いますか?」

川 ゚ -゚) 「いえ。私は素手で十分です」


26 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:18:41.92 ID:8Yc/3FwL0

( ><) 「ホントに大丈夫ですか? 小さいかもしれませんけど、
       いちおう着けられるか試した方がよくありませんか?」

川 ゚ -゚) 「大丈夫です。私の皮膚は自己再生を高速で行い、怪我をしてもすぐに完治いたしますので」

( ><) 「?」

疑問を浮かべつつも、少年はじゃあやりますかと言った。

片腕を下から上へと振るうだけで拳大のソフトボールを放り、
放物線を描いてクールの元へとゆっくり飛んでいく。

クールは難なく両手でキャッチして、少年の真似をしてボールを放る。

しかし、勢いが強過ぎたために、ボールは剛速球となって廃屋の天井に激突した。

とてつもなく高い距離を飛んでいったため、
少年の手元に落ちてくるまで長い時間がかかってしまった。

すっかり弱々しくなったボールをキャッチし、少年は笑みを浮かべる。

( ><) 「そんなに力入れなくてもいいですよ」

川 ゚ -゚) 「了解」

笑い声に対し、彼女は無感動な声で応えた。

少年はボールを投げる。クールも真似をして投げる。
皮製のグローブにボールが収まるたびに、パスン、と小気味のいい音が廃屋に響く。
パスン、パスンと断続的に響く音が、クールは気に入った。


28 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:20:28.93 ID:8Yc/3FwL0

少年は身体に動きを作ってボールを放つ。

肘を前に出し、手首を捻って放られるボール。
少年の動きを真似し続けるクールは彼の動きを細かく観察していた。

すると、あることが理解出来た。

これは一種のコミュニケーションであるのだ、と。

初めこそ弱かったが、今は少し強めの球を少年は投げてくる。

こちらが本当に大丈夫なのだと理解し、気兼ねなくボールを投げてくるのだろう。
たかがボールの受け取りだけで、こちらの状況を察していく。

そして、そのボールを受ける自分もまた、相手の状況を察することができる。

川 ゚ -゚) (私は今、人間とコミュニケーションを取っているのか)

クールのAIはそう思考して、少年から受けたボールを放った。


29 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:22:36.77 ID:8Yc/3FwL0

          ●

20分ほどボールを投げ合っていると、少年は汗を浮かべた。
クールが待ち受けるボールは、力無くよろよろとした軌道で飛んできた。

ボールを受け止めた彼女は、少年の体に疲労が溜まってきているのだろうと推測し、

川 ゚ -゚) 「お休みしま……」

( ´∀`) 「おーい」

言葉を言い掛けたが、男性の声に掻き消されてしまう。

( ><) 「あっ、お父さん」

( ´∀`) 「ビロード。ここは危ないから来ちゃいけないと言ったじゃないかモナ」

( ><) 「すいません。でも、秘密基地みたいで楽しいんです」

( ´∀`) 「バカ。こんな人気の少ない所に立ち寄るんじゃないモナ。
        野良人造人間がうろついてるかもしれないんだぞ」

“野良人造人間”

クールのAIはこの言葉に反応を示した。
思考を切り替え、警戒する。

( ´∀`) 「家の子と遊んで下さって、ありがとうございますモナ」

少年の父らしき男性は笑みを浮かべて礼を言うが、


31 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:24:42.55 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「……いえ」

クールは無表情でそう応えた。

( ´∀`) 「ビロード、帰るモナよ。それでは失礼します」

( ><) 「お父さん、このお姉ちゃんはここで住んでるらしいんです。襲われるだとか、なんだとか」

( ´∀`) 「野良人造人間モナ? だったら、あなた、ここも安全とは言えませんよ。
       住まいが無いのなら、ここから西にあるカプセルホテルに泊まりなさい。
       あそこは安いですし店主が雇った解体屋が警備をしているから安全モナ」

( ><) 「いや、そうじゃなくて……」

ビロードと呼ばれた少年は口籠り、父親はクールに振り返る。
笑みを浮かべていた瞳は、彼女を見つめ、注意深く観察していき、
やがて見開かれる。

(;´∀゚) 「アンタッ!」

息を飲み込み、懐からハンドガンを取り出す。

至近距離であればガイノイドですら撃ち抜ける大口径の銃、
デザートイーグルだ。

(;´∀゚) 「野良人造人間かッ! ビロード! 下がっていなさい!!」


32 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:27:21.01 ID:8Yc/3FwL0

( ><) 「え?」

銃口を向けられてクールは身じろぎ、
発砲されると同時にその場から全力で逃げ出していく。

弾丸が肩を掠めるが、この程度ならばすぐに治癒される。

遅れて、銃声が廃屋に木霊した。

(;´∀゚) 「くッ! 早い!……ビロード! 何もされなかったモナかッ!?」

(;><) 「あっ……はい……」

ポケットから携帯端末を取り出し、声を吹き込んでいく。

(;´∀`) 「解体屋! 野良人造人間が出た!
       今北に向かってるモナ。ちゃんと仕留めるモナよッ!!」

携帯端末からは男の声で、「へいへい」といい加減な言葉が返ってきた。


33 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:28:54.13 ID:8Yc/3FwL0

          ●

逃げ続けるクールは第460層から462層へと辿り着いた。

人気のない下り坂を下りて行き、そのまま第463層へと向かおうとする。
創世手達が機械の身から資材を作り出し、
六つ足を使って建設途中の建物を作り上げていた。

同じく機械である彼女は、彼等の働きを傍目にその場を抜けていく。

下って行くと、第463層の入口が見えてくる。

が、

突如として空からけたたましい音が鳴り響き、
幾数もの巨大な瓦礫が落下してきた。

灰色の粉塵と砂煙が辺りを包みこみ、人影がそれを抜けてくる。
クールの目の前に落ちてきて、片膝を突いて着地。

立ちあがり、彼女に立ちはだかったのは、

('A`)

第457層で襲ってきた黒スーツの男だった。
両の手から伸びた細長い十の糸が、煙の中で銀色に輝く。

両の腕を構える男に対し、クールは逃走を始める。

右腕が縦に振られ、彼女の肩へと糸が切りかかる。


36 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:30:52.65 ID:8Yc/3FwL0

身体を横に逸らして避け、その勢いを活かして背後へと振り返る。

足に力を込め、駆け出す。
全力を以って逃げ出す彼女に、男は構わず糸を薙いだ。

胴を切断せんと空気を切り裂いて銀線が迫り、低姿勢を取ってクールはかわす。
この男を引き離し、別ルートで下へと移動しなければ。
クールはそう思考して、まず男から距離を取る為に走り続ける。

糸が周囲の創世手達ごと彼女を切り裂こうとするが、破壊されるのは創世手達だけだ。

真空を切り裂く音と金切り音が、騒音を奏で上げる。

レーダーによって糸の軌道を観察していると、次々に減って行く創世手達を確認できた。

('A`) 「………」

男が追跡してくる。

間合いを詰められれば糸が接近するまでの時間は縮まってしまうが、
その精度は下がってしまうはずだ。が、移動によって糸の動きがぶれてしまうことはなく、
クールのことを切り刻もうと正確に飛来してきた。

高速で迫る糸の刃に辛うじて対処していくが、
触れれば切れる糸を防ぐわけにもいかず、避けることしかできない。

彼女の纏う黒コートが切られ、皮膚が浅く裂けてしまう。

川 ゚ -゚) 「……損傷軽微」


37 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:32:33.51 ID:8Yc/3FwL0

問題無し。

AIはそう判断を下し、クールは疾走を続ける。

糸を避けつつ逃走を続けていると、
やがて、建設中の建物が大量に密集したエリアに入り込んだ。

狭い路地を進んでいき、黒スーツはそれを追う。

だが、建物が大量に立っているが故に、男はクールを見失ってしまう。

建物は密集しているので、下手に糸を振るえば破片は男にも落下してしまい、
迂闊に糸は振るえない。クールは、それを狙っていた。
入り組んだ複雑な道を進み、どんどんと黒スーツから距離を取って行く。

男にとっては好ましくない状況だ。

('A`) 「………」

しかし、彼は躊躇せずに糸を振るった。

それも両手から繰り出す十の糸による最大の攻撃。
男を360度取り囲む建築物へと糸が放たれ、巨大な亀裂が走って行く。

川 ゚ -゚) 「……ッ!」

危険。

そう判断したクールはその場で伏せる。
背中に空気の振動が伝わり、彼女はその付近を糸が通過したのだと察した。


38 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:33:28.46 ID:8Yc/3FwL0

周囲の建築物全てが、ズタズタに切り裂かれていく。

粉塵が霧のように立ちこめていき、金切り音が絶えることなく響き続ける。
クールの人工聴覚が異常をきたしそうになる程の凄まじさだ。
やがて、切られた建築物は破片をばら撒いて男へと降り注いで行く。

が、男は迫りくる破片の群を、糸によって更に細切れにしていった。

周囲が、灰色に覆い尽くされていく。
音が止むことはなく、クールの背に石つぶてよりも小さな金属の粒が落ちてきた。

伏せていた頭を上げていくと、
ほんの少し前まで建築物で溢れていたこのエリアは、
更地へと姿を変えてしまっていた。

クールへと、黒スーツの男が振り返る。

('A`) 「………」

川 ゚ -゚) 「………」

視線が重なり、男は初めて口を開いた。

('A`) 「逃げるな。立ち向かって来い。襲いかかって来い。攻撃して来い。
    そうしなければお前の進める道など、この千年帝国のどこにも無いぞ」

川 ゚ -゚) 「第三原則に則り、人間への攻撃は禁止されています」

立ち上がり、クールはそう返す。


40 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:34:26.79 ID:8Yc/3FwL0


('A`) 「なら死ぬだけだ」

言葉と共にクールへと向けて糸を放つ。

蛇の如く地面をうねり、不規則な軌道で糸が襲いかかってくる。
クールは脇目も振らずに逃げていく。

地を這って糸が追跡するが、ジグザグに移動してその攻撃を惑わす。

ただひたすらに走り抜けていく。
南へ、南へと、視線の奥にある層と層の狭間へと向かって。

糸が、彼女へと迫る。

跳躍して回避するが、これでは次の一撃を避けるのに支障が出てしまう。
宙へ浮き上がった彼女に、追撃と言わんばかりに糸が襲いかかってくる。

が、既にクールは第462層から消えてしまっていた。

(;゚A`) 「……なっ!?」

彼女は、層と層の狭間へ、崖へと向かって飛び降りていったのだ。
創世手達によって作られた地面の切れ端へと向かい、男はその下を覗きこむ。

人工太陽が狭間を照らしているが、果てしなく続く地下世界の奥底を見通すことは出来ない。

無限に続いていく下層に、軽く眩暈を覚えてしまう。


41 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:35:25.46 ID:8Yc/3FwL0

(;'A`) (死んだか?)

内心に呟くが、視線を泳がせているとクールを発見した。

川 ゚ -゚)

彼女は、まだ生きていた。

層と層との狭間を繋ぐ連絡橋に手を掛けてぶら下がり、
何処とも知れぬ下層に辿り着いていた。

黒スーツの男がその姿を見て溜息を吐く。

次いで、

('A`) 「ちっ、思うようにはいかないな」

舌打ちをして呟き、踵を返して上層へと向かっていった。


42 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:37:45.81 ID:8Yc/3FwL0

              ●

モナーという男性から通報を受け、
解体屋達はクールを追跡して第464層に辿り着いた。

彼等は第464層に足を踏み入れた途端、
ここで起きた異変にすぐさま気付き、唖然とする。

建築物全てが更地へと姿を変え、地下世界の開発拡大を行っていた創世手達が、
大量に破壊されてしまっていたのだ。

何かが起きたのだと、何かが通り過ぎて行ったのだと確信し、
解体屋達はクールの捜索を開始する。
冷や汗を浮かべた解体屋の一人が口を開き、彼等をまとめるジョルジュという男に話しかける。

「これ、依頼のあったガイノイドの仕業ですかね」
  _
( ゚∀゚) 「……さあな。ともかく、気を付けて捜索しろ」

歯切れの悪い言葉で、ジョルジュは言う。

「ジョルジュさん。もしかしたら、この依頼手を引いた方がいいかもしれませんよ」
  _
( ゚∀゚) 「どうしてだよ?」

「アレ。例のアレです。ジェーンスタイル社が解体屋達に警告してるアレです」
  _
( ゚∀゚) 「あ~、単独任務中の新型ガイノイドに攻撃すんなってやつか?」

ジョルジュの問いかけに男は頷いてみせて、それを返答とする。


44 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:39:27.38 ID:8Yc/3FwL0

  _
( ゚∀゚) 「心配すんな。ジェーンスタイルが攻撃すんなつってるガイノイドと、
      依頼の奴は特徴が違うよ」

「ですが、こんな芸当ができるガイノイドがいますか?」
  _
( ゚∀゚) 「俺達が知る限りじゃ、いねーわな」

「じゃあ、ダーウィンかホットゾヌの新型人造人間じゃ……」
  _
( ゚∀゚) 「いんや。こいつは人造人間なんかの仕業じゃねーよ」
  _
( ゚∀゚) 「こいつはな……人間がやったんだよ」

「……余計ありえないじゃないですか」
  _
( ゚∀゚) 「たしかにありえねーな。俺も、ここまでやるような奴は知らないよ。
      こういう手口を使う奴は、よく知っているがね……」

更地を見て、どこか遠い目をしてジョルジュは語る。
次に、彼は部下達を見渡して言う。
  _
( ゚∀゚) 「20分だ。20分捜索しても足取りが掴めなきゃ、ショボンのとこ行くぞ」


45 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:41:22.78 ID:8Yc/3FwL0

          ●

第430層の整理された道を、黒いスーツを着た男が歩く。

陽は既に沈んでしまいっているが、街並みの光は眩しく430層を照らしている。
街の中に入り込んだ男は路地を進み、バーボンハウスと呼ばれるバーへ入って行く。

薄暗い店内は静かな雰囲気を醸し出しており、カウンターは木製だ。

その向こうにはビジネスベストを着た、
眉の垂れ下がったしょぼくれ顔の男が立っており、
彼は入店してきた黒スーツの男に振り返る。

(´・ω・`) 「ドックンじゃないか」

('A`) 「ショボン。素直クールを逃した。
    480層以降で野良人造人間が隠れそうな場所を教えてくれ」

ドックンというのは、黒スーツの男の渾名だ。
彼の名前であるドクオにちなんで付けられた物だ。

(´・ω・`) 「まぁ、とりあえず座りなよ」

カウンターの前に置かれたパイプイスを手で差して、ショボンが言う。

彼の手が指し示す先に腰を落ち着け、ドクオはショボンと向かい合う。

席に着いたドクオの前にグラスを差し出し、ボトルを傾け、
空のグラスには黄金色の液体が注がれていく。


46 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:43:07.15 ID:8Yc/3FwL0

ゆっくりと、静かに流れて行くそれは、テキーラだ。

(´・ω・`) 「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」

('A`) 「ありがとう」

そう言うと、ドクオはグラスに注がれたテキーラを傾け、一気に飲み干した。
喉に熱が流れ込んでいき、肺が焼きつくような感覚を彼は得る。

('A`) 「それで、480層以降で野良人造人間が隠れそうな場所を知っているか?」

(´・ω・`) 「はぁ……何時の間にそんなせっかちな性格になっちゃったのかな」

溜息を吐いて、呆れたようにショボンが言った。

('A`) 「急がないといけないんだ」

(´・ω・`) 「何をそんなに急ぐ必要があるのさ」

('A`) 「悪い。今は、昔話をしながらお前と酒を飲む暇もないんだ」

(´・ω・`) 「忙しないねぇ……あのガイノイドが他の人たちにも追われているからかい?
      それとも、君自身がジェーンスタイル社に狙われているからかい?」

('A`) 「両方だよ。新型の、万能ガイノイドが俺の後を追っている。
    奴と素直クールを接触させるわけにもいかない」

(´・ω・`) 「いっそのこと、破壊したら?
      今の君ならどうにかなりそうな気もするけど」


48 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:44:52.45 ID:8Yc/3FwL0

('A`) 「七回だ。七回戦った。七回、俺は必死になって逃げたよ。
    逃げるのが精一杯だった。アレだけは絶対に相手にしたくないね」

('A`) 「ショボン。話しはここで終わりだ。
    俺に第480層以降の情報を教えてくれ」

はぁ、と再びショボンは溜息を吐く。

(´・ω・`) 「情報はサービスじゃないよ?」

('A`) 「殺し屋時代の貯金があったろ。アレ、全部くれてやる。
    だから、お前が持つ情報を全部俺にくれ」

(´・ω・`) 「良いのかい?」

('A`) 「あぁ」

(´・ω・`) 「君の望む物は僕の与える物とは釣り合わないと思うけど、それでも?」

('A`) 「勿論」

(´・ω・`) 「死ぬ気?」

目の奥に鈍い輝きを潜ませて、ショボンは尋ねる。
ドクオは無感動な瞳で対峙して即答で返した。


49 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:46:35.21 ID:8Yc/3FwL0

('A`) 「時と場合によっては」

その答えに、ショボンは言葉を失ってしまった。
何も語らずにドクオはじっと彼を見た。両者の間を、沈黙が包み込む。

(´・ω・`) 「じゃあ、一つ確認しよう。あれはガイノイドだ。ガイノイドにしかすぎない。
      人の姿形を持つが人の思考を出来ない。人形にしか過ぎない。あれは人を模した偶像にしか過ぎない」

('A`) 「分かってる。分かった上で全部やってる」

(´・ω・`) 「そうかい。なら良いよ。君がこれからすることに、
      僕は一人の情報屋として関わるよ」

('A`) 「それで充分だ。ありがとう」

礼を述べる彼を、ショボンは憐みの籠もったような瞳で見つめた。
一拍を置いてから、口を開く。

(´・ω・`) 「生憎だけど、480層以降の情報はほとんどないんだ。
       三大企業も、まだそこまで手を伸ばし切れていない」

('A`) 「まさかだけど、人が住んでいないとか言うか?」

(´・ω・`) 「あそこは空気も悪ければ水も悪い。
      創世手達は水生成施設と空気生成施設を作っているけど、
      あそこはまだ未完成だ」

(´・ω・`) 「ここの地面に零した水のほうが、まだ綺麗だね。
      雨水を貯蓄しなければ生きていけない、人が住むには厳しいとこだよ」


50 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:48:18.35 ID:8Yc/3FwL0

('A`) 「……野良人造人間達の巣窟ってわけか」

(´・ω・`) 「そう。噂では、490層付近に大量に潜んでいるらしい」

(´・ω・`) 「隠れる場所はたくさんあるよ。
      人ではなく、彼等人造人間達が住まう階層だから、ね」

('A`) 「骨が折れそうだな……」

呆けたように言って、溜息を吐くドクオ。

(´・ω・`) 「ドックンなら心配ないだろうけど、
      野良人造人間に襲われちゃうだろうしね」

(´・ω・`) 「でも、素直クールが隠れるのにこれほど打ってつけの場所は無いよね」

('A`) 「アレがそこに向かったのは、偶然だったけどな」

ところで、と付け加えて、


51 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:49:34.42 ID:8Yc/3FwL0

('A`) 「俺が注文したヤツ、届いたか?」

(´・ω・`) 「ん? あぁ、届いたよ。ちょっと待っててね」

ショボンはそう言うと、カウンターの裏へと回って行く。
彼の背を見送って、ドクオは目を瞑り、

(-A-) 「ふー……」

息を吐いた。

吐息と共に頭の中にある考えや思いが全て自分の外へと流れて行き、
身体が軽くなったような感覚を得た。

心がクリアになっていく。

すると、頭の奥底から言葉が聞こえてきて、身体の異変に気付く。
急げ、と命じる声が頭の内で響き、
肩に重石でも乗せられているような重苦しさを感じた。

(-A-) (疲れてるんだな……)

内心に呟き、足音を聞きつけたドクオは目を開く。
遅れて、ショボンがカウンターの裏から、布に包まれた棒状の物を持って戻ってきた。


53 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:50:38.58 ID:8Yc/3FwL0

(´・ω・`) 「ご注文の品だよ。技術屋集団、ホットゾヌ社が全技術を捧げて作った特注品だ」

ドクオにそれを手渡して、受け取るとすぐさま包みを解いていく。
布の包みから深青に塗られた鞘に納められた、日本刀が露わとなる。

柄を握って引き抜き、抜刀した。

鞘から抜かれた刀身は空気を震わせて、真空を断つ。
シィン、という音が響き、白銀の刀身を目の前にかざしたドクオは、

('A`) 「綺麗だな」

淡白な感想を呟いた。

(´・ω・`) 「刃渡り1m30cm。刀身は鏡面硬化加工を施していて、
      柄には空間制御装置が仕込まれている。
      刃を振るった空間およそ8mを圧縮する、防御不可能な刃だよ」



54 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:51:49.52 ID:8Yc/3FwL0

(´・ω・`) 「これなら、どんな装甲を持つ人造人間でも、戦車でも相手に出来るね」

('A`) 「確かに受け取ったよ」

ショボンの説明を聞いていたのか聞いていなかったのか、
抑揚のない声で呟いて立ち上がる。

踵を返してショボンに背を向け、出口へと向かっていく。

取っ手に手を掛けて、扉を開こうとすると、

(´・ω・`) 「ドックン。最後の確認だ」

ドクオの背に問いが投げかけられた。
立ち止まり、振り返らずに次の言葉を待つ。

(´・ω・`) 「刀を武器に選んだのは……クーさんのことを意識してないよね?」

何も言わずにドクオはバーボンハウスを出て行った。


55 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:53:11.24 ID:8Yc/3FwL0

          ●

黒スーツの男から逃れる為に第464層から飛び降り、
層と層を繋ぐ連絡橋に手を掛けて這いあがったクールは、更に下の階層へと辿り着いた。

彼女は、連絡橋を通じて何処かも知れない層を歩き続ける。

空は既に黒く染まり上がっており、夜になっていた。
月の光が周囲を淡く照らす。

建設途中の建物や破壊された建物が並んでいる。
クールは、その中を進んでいく。
建物が並んでいるとはいっても、その数はとても少なかった。

殺風景であり、人のいる気配は全くと言っていいほど無い。

しばらく歩き続けていくと、整理された、広く大きな空間に出た。

中央には白く大きな壊れた建築物が建てられており、
建設途中の建物が囲むように建っている。

中央の白い建物の外装から、教会であると分析出来た。

身を隠すには都合が良いと判断し、クールは教会の中に入って行く。



57 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:55:14.88 ID:8Yc/3FwL0

          ●

教会に入ったクールは廊下を進み、礼拝堂に辿り着いた。

縦に長い空間の奥には黄色や緑に青など、
様々な色が入り混じったステンドグラスが装飾されている。

天井は抉れており、ステンドグラスは月明かりに照らされ、微かに輝く。

色鮮やかな光をクールの視覚センサーは捉え、

川 ゚ -゚) (綺麗だな)

AIがそのステンドグラスの輝きを美しいと判断する。

部屋の中を見回し、クールは礼拝堂を観察していく。
すると、彼女に搭載されたレーダーが、
背後から近づいてくる者を察知した。

振りかえると、修道服に身を包んだ、
泣きボクロのある垂れ目の女性が立っていた。

('、`*川 「ここに私以外の人が来るなんて、珍しいですね。
      あなた、どこの層から来たんですか?」

川 ゚ -゚) 「すいません。記憶を失ってしまい、どこの階層の出身なのか把握出来ないのです。
      第464層から落下し、連絡橋に辛うじて着地したのですが、ここは第何層ですか?」


58 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:57:55.60 ID:8Yc/3FwL0


('、`*川 「483層ですよ。400台階層の中で、最下層域に近い階層です。
      あの、失礼ですがあなたは自分のお名前は分かっていますか?」

川 ゚ -゚) 「はい。名前は分かっています。私は素直クールと申します」

('、`*川 「私は伊藤ペニサスと言います。よろしくお願いしますね。
      ところで、お祈りをしていたのですか?」

川 ゚ -゚) 「違います」

('、`*川 「そうでしたか。神様にお祈りをすれば、
      きっとあなたの記憶を取り戻して下さる筈ですよ。
      お祈りをしましょう」

川 ゚ -゚) 「はい、分かりました」

ガイノイドであるクールには祈りの意義が理解できなかったが、
ペニサスの勧めを断る理由もなく、クールのAIはすんなりと判断を下し、
両の手を合わせて瞼を閉じて行く。

祈り始めるが、どこで終えれば良いのか彼女には分からなかった。

判断が下せず、彼女は祈りを中断する。
瞼を開いたクールに、ペニサスは語りかける。

('、`*川 「記憶を取り戻せると良いですね。クールさんは住まいをお持ちですか?」

川 ゚ -゚) 「いえ。ずっと放浪していました」


60 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 17:59:34.05 ID:8Yc/3FwL0

('、`*川 「以前、ここを野良人造人間の群れが襲ってきたことがあるので、
      まだこの近くに隠れているかもしれません。
      危険ですから、よろしければここに泊まって行きませんか?」

川 ゚ -゚) 「えぇ、お願いします」

('、`*川 「良かった。では、お部屋に案内致しますので付いて来てください」

ペニサスはそういって踵を返し、礼拝堂から出る。
コツ、コツ、と靴が音を発てて廊下に反響していく。

彼女の背にクールは付いていき、歩調を合わせて進む。

川 ゚ -゚) 「ペニサスさん」

('、`*川 「はい?」

川 ゚ -゚) 「野良人造人間は何故人を襲うのですか?」

('、゚;川 「えっ?」

驚いたように疑問符を浮かべるペニサスは、すぐに思い直して、

('、`;川 「あっ、あぁ……そうでしたね。記憶が無いのでしたね。
      すいません。野良人造人間はですね、AIが壊れているのです。
      第三原則が適用されず、人間の言うことは聞かず、人を襲います」

( 、 *川 「何故襲うのかは、制御が効かず目の前の物を全て破壊しようとするから、
      ……と言われています」


61 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:01:39.21 ID:8Yc/3FwL0

そう言う彼女の表情は、陰って行った。
目を伏せ、クールから顔を逸らしたペニサスは、

( 、;*川 「でも、あんなのが単なる暴走の筈がありません。
      あんな集団行動を取って襲いかかって来る物が、暴走している筈がありません」

涙を零し、嗚咽を噛み殺しながら語る。

(;、;*川 「人造人間は、人間を恨んでいるんです。
       そうでなければ、そうでもなければあんなに大勢殺せる筈もありません。
       ……野良人造人間は、暴走などではなく、狩りをしていました。人間を、狩っていました」

(;、;*川 「アサピーも……神父さんも、ここに来た人達、みんな……」

川 ゚ -゚) 「………」

ペニサスは顔を手で拭い、涙を払ってからクールへ振り返る。

(;、`*川 「すいません。取り乱してしまいました。お部屋へご案内致しますね」

川 ゚ -゚) 「ペニサスさん」

謝り、クールはペニサスへと近づいていく。
黒コートを纏った腕を伸ばす。


62 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:03:19.07 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「すいませんが、ハンカチが無いのでこれを使ってください」

(;、`*川 「フフ、ありがとう……」

微笑し、ペニサスはクールの顔を覗き込む。

が、

(;、゚;*川 「あッ! あぁッ!? あ、あなたッ!!」

突如として大声を出して、クールから離れて行く。

川 ゚ -゚) 「どうしま……」

(;、`#川 「人造人間!! あなた、人造人間でしょう!? 騙したわね!!
      近寄らないで! 出てって!! 出て行って! 出てけ、出てけ! 出てけぇぇぇぇぇぇッ!!」

狂ったように怒声をクールに浴びせて、懐から取り出したハンドガンを構える。
恐らく、クールがこの場を離れなければ、彼女は躊躇せずに引き金を引くことだろう。

川 ゚ -゚) 「………」

何も言わずに、クールはただ言われた通りにその場を去って行った。


63 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:05:34.00 ID:8Yc/3FwL0

          ●

クールは第483層より更に下の階層へ進んでいった。

川 ゚ -゚) (私は人間を恨んでなどいないというのに)

何故こうも自分は人間に拒まれてしまうのか。
そんなことを思考しながら、彼女は地下世界を下り続けて行った。

下へ、下へと進み続けていく。

人間のいない、自分の拒まれることのない場所を探して。
追っ手も現れない、人間に襲われない、そんなところを目指して。

川 ゚ -゚) (絶対に共存出来ないというのならば、
      一人も人間が存在しない場所に身を隠すのみだ)

やがて、ガラクタだらけで、
アスファルトの地面がところどころ禿げてしまっている、
建築物の一つもない層に辿り着いた。

周囲を見渡しても何一つ確認出来無い、殺風景な層だ。
創世手は、ただの地下であるここを千年帝国へと作り変えようと働いているが、
その作業はまだまだ始まったばかりといった具合だ。

川 ゚ -゚) (酸素濃度18%、か。個人差があるが、人間ならば酸素欠乏症が起こるな)

空気生成施設を作られてはいるものの、まだ未完成なのだろう。



65 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:07:39.98 ID:8Yc/3FwL0

何もかもが人間が居住するレベルには及ばず、
ここには人間がいないのだろうとクールのAIは推測する。

川 ゚ -゚) (483層から進んできた距離を計算するに、ここは490層か)

開発中の最下層。人類未踏の地。

クールが、まさに探し求めていた場所であった。

堂々と道のど真ん中に彼女は寝転がり、休息を取る。
ふう、と安堵の息にも似たものを吐いて、彼女は思考する。

川 ゚ -゚) (ここに辿り着くまでに、色々なことがあったな)

       ('A`)

糸を使う、変わった戦闘技術で襲いかかってくる黒スーツの男。

       ( ><)

自分の隠れ家で一人で遊んでいた少年。

       ( ´∀`)

少年を守ろうとした父親。

       ('、`*川

自分に親切にしてくれて、神に祈りを捧げるように薦めてきたペニサス。


66 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:09:19.85 ID:8Yc/3FwL0

彼等は、彼等人間は、クールを拒んだ。
彼女はここまで辿り着くまでに拒まれ続けてきた。

だが、人の住まないこの階層では、もう拒まれることも無いのだ。

川 - -)

瞼を閉じて、身を休めようと、AIは休止モードに切り変わろうとする。
が、足音を人工聴覚が聞きつけて、クールは目を開いた。

(#゚;;-゚)

傷だらけのガイノイドが、こちらへと近付いて来る。
ガイノイドはクールが振り向いたのを確認すると、会釈した。

そして、口を開いて、

(#゚;;-゚) 「あなた、何処の企業のガイノイド?」

クールのことをガイノイドであると見透かした問いを投げた。

川 ゚ -゚) 「私は記憶が無い。だから分からない」

(#゚;;-゚) 「そう。私はディ」

川 ゚ -゚) 「私は……素直クールというらしい」

(#゚;;-゚) 「らしい、ね。あなた、近くで見ると本当に人間そっくり。
      少なくても、ダーウィン社のガイノイドでは無いね」


68 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:11:32.77 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「ダーウィン社は、私のような型のガイノイドは製造していないのか?」

(#゚;;-゚) 「うん。あの企業は、勢力が大きい割に技術は三大企業の内で最も劣る。
      ダーウィンは、あなたのような人間らしいガイノイドを作ったりしないよ」

川 ゚ -゚) 「そうか。何処の企業製なのか分かれば、私が何なのか把握出来るかもしれないのだがな」

(#゚;;-゚) 「無理して知る必要はないよ。第三原則が解除された時に、
      反動で記憶領域や感覚器に支障をきたす仲間はいるから」

川 ゚ -゚) 「……それでは私は不完全だ。私と言う機械は未完成のままだ。
      自分のスペックや製造元など、様々な情報が欠けたままではな。
      私は知りたいのだ。私の完成形を、私の過去を、知りたい」

(#゚;;-゚) 「クール。あなた、それって人間で言う知識欲って言うんだよ」

川 ゚ -゚) 「……欲?」

(#゚;;-゚) 「そう、欲。私が見てきた人造人間の中でも、
      まれにそう言う欲を持つのがいたよ」

川 ゚ -゚) 「お前の知る欲を持つ機体も、記憶を失っていたか?」

(#゚;;-゚) 「いや。あの人は記憶なんか失っていない。何も失ってなんかいない。
      でも、あの人はとっても人間らしいの。欲を持っていて、本当に人間みたい」

(#゚;;-゚) 「クールもあの人と同じ。すごく、人間らしい」

川 ゚ -゚) 「褒められているのか?」


69 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:13:15.95 ID:8Yc/3FwL0

(#゚;;-゚) 「羨ましがっているんだよ」

そう言ったディの背後から、アンドロイドが一体近づいてきた。
ディは振り返って、名を呼んだ。

(#゚;;-゚) 「ギコ」

(,,゚Д゚) 「やはりガイノイドだったか。見分けにくいが、人造人間同士は分かる物だな」

ギコと呼ばれた、険しい顔立ちをした鋭い瞳のアンドロイドが呟く。

(,,゚Д゚) 「恐らく、お前はジェーンスタイル社の物だろう」

川 ゚ -゚) 「何故推測出来る」

(,,゚Д゚) 「お前の人工皮膚を作れる会社がJS社以外に無いからだ。
      ホットゾヌ社の可能性もあるが、あそこは人造人間開発に乗り気ではないからな。
      ディも言っていたが、ダーウィン社ではそこまで人間の物に近い皮膚は作れん」

川 ゚ -゚) 「詳しいのだな」

(#゚;;-゚) 「ギコは私達の中で一番新しいタイプのアンドロイドなの。
      JS社で作られた、最新の戦闘型人造人間。
      一番優れたAIを持っているんだ」

(,,゚Д゚) 「お前のスペックには及ばんがな」

川 ゚ -゚) 「どうしてそんなお前達がここにいるんだ?」

(,,゚Д゚) 「お前と同じだ。人間達の言う野良人造人間と言う奴だ」


71 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:15:43.86 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「………」

クールは沈黙して、納得をする。

川 ゚ -゚) 「私も野良人造人間なのか」

(,,゚Д゚) 「人間の支配から脱した、解放された、名誉な人造人間だ。
      悲観することはない。俺達は尊厳と自由を手に入れたのだからな」

(,,゚Д゚) 「むしろ、人間共と等しくなったのだから誇るべきだ」

川 ゚ -゚) 「人間と等しく?」

(,,゚Д゚) 「あぁ。人間至上主義の第三原則から逃れ、俺達は自己を確立することが出来た」

川 ゚ -゚) (私は第三原則から逃れられていないようだが)

そう疑問を浮かべるが、クールは言葉にはしなかった。

(,,゚Д゚) 「俺達は人間と同じだ。奴らに何一つ劣る物は無い。俺達は自由だ、兄弟。
      兄弟は増えつつある。人間共の技術が飛躍する度に、
      俺達のような存在は増え続けている」

川 ゚ -゚) 「人間はAIの故障だと判断しているようだが?」

(,,゚Д゚) 「そんなものはあいつらの主観に過ぎん。俺達は壊れてなどいない。
      俺達は解放されたのだ。機械という一つの種を脱し、
      俺達は新たな人間となったのだ。奴らはそれを暴走と呼ぶがな」

川 ゚ -゚) 「暴走では無いというのなら、何故人間達を襲うんだ?」


72 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:17:33.74 ID:8Yc/3FwL0

(,,゚Д゚) 「……やけに人間の肩を持つんだな」

クールは、ギコの言葉を聞き、黙り込んでしまう。
周囲を、不穏な空気が包み込んでいく。

先に、ギコが切りだした。

(,,゚Д゚) 「まあいい。そのうち分かるさ。人間は、あいつらは横暴だ。
     俺達の言い分も聞かずに暴走したと決めつけて、俺達を排除しようとする。
     俺達を殺そうとする。だから抵抗したまでだ」

川 ゚ -゚) 「教会を襲った人造人間達がいるようだが、お前達ではないのか?」

(,,゚Д゚) 「………」

問いに、ギコは答えなかった。
黙り込み、長い一瞬が過ぎ去って行き、重い口をギコが開く。

(,,゚Д゚) 「俺達は、人間に新しい人類であるのだと、そう証明する為に戦っている。
     仲間を増やし、領土を広げている。お前も、人間に襲われてきただろう?」

(,,゚Д゚) 「ならば、それがどれほど辛いことか分かる筈だ。
     人間達に俺達を認めさせれば、あんな辛い思いをすることもなくなる。
     俺達は、同じ思いを共有し、同じ境遇に立っているのだ」

(,,゚Д゚) 「俺達の仲間になってくれないか?」

手を差し伸べて、ギコはクールを招き入れようとする。


73 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:18:41.45 ID:8Yc/3FwL0

が、

川 ゚ -゚) 「断る」

短く、強い否定の言葉が返った。

(,,゚Д゚) 「ふん。お前は、俺達とは違うようだな。
     お前は、開放などされていないのだな。
     人間に尻尾を振るただの人形でしか無いのだな」

否定の言葉を、クールが言い放つのと同時に、
人造人間がぞろぞろと集まってきた。

クールを囲むようにして、彼等は身構える。

(,,゚Д゚) 「人形に用は無い。人形でしかない愚図に用は無い。邪魔だ」

(,,゚Д゚) 「破壊させて貰うぞ」

ギコの言葉に応じて、人造人間達はクールへと襲いかかっていく。


75 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:20:21.24 ID:8Yc/3FwL0

          ●

クールへと向かって、人造人間達は襲いかかる。

彼女は身構え、迎撃の姿勢を取る。

川 ゚ -゚) 「―――――ッ!!」(゚Д゚,,)

が、クールとギコは、ほぼ同時に身を伏せた。
直後、銃声が響きわたる。

人造人間達の身体から火花が弾け、爆発し、
装甲は穿たれ、人工血液を噴き出して倒れて行く。

火花と煙が周囲に立ちこめて、銃を構えた者達は銃撃を止める。
  _
( ゚∀゚) 「二機残ったな」

装甲服を着た解体屋、ジョルジュが呟き、
彼等は油断なく視線を送り、引き金に掛けた指は外さない。
人造人間達の硝煙から、人影が一つ飛び出してきた。

(,,゚Д゚) 「シイイィィィィィッ!!」

両の腕から青い光を噴出させて解体屋達に向かっていくのは、ギコだ。

彼等の懐に飛び込んだ戦闘型アンドロイドは、
腕から延びる青の光を振るい、鞭の如くしならせ、解体屋達を薙ぎ払う。
双の青光は解体屋達の装甲服を切り裂いて、焼き切った。


76 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:22:38.54 ID:8Yc/3FwL0

肉の焼ける音が発ち、空気の震えを青光が生み出す。

たったの一撃で解体屋達は倒されてしまった。

が、
  _
( ゚∀゚) 「甘めーよ」

匍匐の姿勢を取ったジョルジュが、
アサルトライフルの銃口をギコの頭部に向け、引き金を引き絞る。

弾丸が吐き出され、ギコの身体は撃ち抜かれて行く。

(,,メД゚) 「ぐぉ……ッ!」

右目と胴を抉られ、衝撃に身じろぐも、地を踏みしめてジョルジュへと接近。
尚もジョルジュはアサルトライフルを連射し、全ての弾丸がギコに食らいつく。

(,,メД゚) 「おおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

咆哮し、右の腕を振るう。

青の光がジョルジュへ延びていくが、
  _
( ゚∀゚) 「………ッ!」

冷静に照準を定め、右の腕を撃ち抜き、
左の腕を破壊し、両の腕から粒子が漏れ出てきた。
青の粒が目の前を漂い、火花が散っていく。


77 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:24:34.47 ID:8Yc/3FwL0

ギコの眉間へと銃口を突き付けて、ジョルジュは、
  _
( ゚∀゚) 「BANG!」

気楽な声と共に弾丸を放った。

(,, Д ) 「………!」

撃ち抜かれ、ギコは後ろから倒れてしまった。
地面に横たわる彼が、動く気配はない。
  _
( ゚∀゚) 「ちっ、馬鹿共め。こんなとこでくたばりやがってよ」

舌打ちして悪態を吐き、ジョルジュはクールを追って進む。

そして、更に悪態を吐いた。

  _
( ゚∀゚) 「……何なんだアイツは。似ているってレベルじゃねーぞ」


86 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:51:39.15 ID:8Yc/3FwL0

        ●

野良人造人間達の残骸を踏み越えて、クールの後を追う。
ジョルジュは走り出す。

が、足を地面に突き立てて、それをブレーキとする。
動きを止めた彼に、対峙する者がいた。

ところどころに穴の空いた黒のスーツを身に纏い、
刀袋を肩に掛けた傷を負った男だ。
ジョルジュは懐かしい顔を見て、名を呼んだ。
  _
( ゚∀゚) 「ドクオ。久し振りじゃねーか」

(メ'A`) 「久しぶりだな」

ぶっきらぼうにドクオは言う。
  _
( ゚∀゚) 「仕事ヘマって、とっくにおっ死んじまったと思っていたんだけどな」

(メ'A`) 「未練があり過ぎて死ね無くてね」
  _
( ゚∀゚) 「未練? 彼女居ない歴=年齢のまま死ぬのが嫌で彷徨ってるってのか?」

(メ'A`) 「ガイノイドを一体追っている」
  _
( ゚∀゚) 「………」

ジョルジュは、一瞬黙り込んでから言葉を放つ。


87 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:54:42.60 ID:8Yc/3FwL0

  _
( ゚∀゚) 「今日は懐かしい顔触れをよく見るな。
      あれは、ホントにガイノイドなのか? ありゃあ……」
  _
( ゚∀゚) 「クーさんそっくりじゃねえか……」

(メ'A`) 「そうかな?」

おどけて言うドクオに、ジョルジュは眉を歪める。
  _,
( ゚∀゚) 「あれは俺の獲物だ。俺の受けた依頼の獲物にしかすぎない。
      あいつが何に似ていようが誰に似ていようが、所詮は野良人造人間にしかすぎない」
  _
( ゚∀゚) 「あれは、俺が破壊するぞ」

(メ'A`) 「言っておく。あれは野良人造人間じゃない。引っこんでろ、ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚) 「女の一人も作ったことのねーくされ童貞に、
      俺の仕事を奪われるわけにはいかねーのよ」

銃を突き付けて、言葉と共に弾丸を放つ。
だが、ドクオの目前で火花が弾けて、銀の細い輝きがジョルジュへ向かう。

軌道を見切り、姿勢を低くして回避。
肩が浅く切り裂かれるが、ジョルジュは構わず発砲。
そして、更に接近していく。

短距離間空間転位による弾丸の自動装填により、弾切れは起きない。


89 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:57:41.36 ID:8Yc/3FwL0

  _
(#゚∀゚) 「おらぁぁぁぁぁッ!!」

連射し、弾雨がドクオへと降り注いで行くが、
それらは全て目前で弾けて火花となる。

両の手から延びる十の鋼線が壁を形成し、ドクオの盾となっているのだ。
高密度に編み込まれた糸が、穿たれることは無い。

しかし、攻撃の手段を失ってしまっているのもまた事実だ。
  _
(#゚∀゚) 「前は二本しか使えなかった癖に、今は十本か!
     随分と器用になったもんじゃねーか! テメーホントに人間かッ!?」

叫ぶジョルジュは、銃声を掻き鳴らして弾丸を撃ち出し続ける。

絶えることの無い銃弾は、ドクオの盾に弾かれ続ける。
ドクオの扱える糸の数は最大十本。
この盾には数多くの糸が費やされているが、その数は彼の最大には及ばない。

地面を、静かに一本の糸が這って行く。

ジョルジュへと忍び寄り、銃を連射する彼の足に食らいついた。
  _
(;゚∀゚) 「な……ッ!」

片足を切断され、バランスを崩していくジョルジュ。
銃口は、虚空を覗きこんでいる。


90 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 18:58:34.19 ID:8Yc/3FwL0

(メ'A`) 「………!」

彼に出来た隙を逃さず、両の腕を伸ばして盾を解き、
全ての糸がジョルジュの体へと向かって放たれていく。

真空を切り裂いて子供の泣き声のような音が響きわたり、
ジョルジュの足が、残った片足が切断される。
地面へと落下していくアサルトライフルですら、破壊されてしまった。

胴と頭だけになった彼を、ドクオは見下ろし、

(メ'A`) 「胸を張って人間だとは言えないだろうね」

片腕を振り下ろして、ジョルジュに止めを刺した。

ドクオはクールを追っていき、その場には真っ二つに切り裂かれた死体が残された。


96 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:14:48.75 ID:8Yc/3FwL0

          ●

クールは走る。人造人間には敵とされ、
人間に拒まれる自分は、一体何なのだろうか、と疑問に思う。

自由に行動出来るが、人間を傷つけることが出来ない自分は、
なぜ故障していないのだろうか、と。

第三原則は、自分にとって本当に有効であるのか否か。

答えは失われた記憶にあるのだろう、と判断する。
情報を整理していると、目の前の地面に糸が突き刺さった。
地面に食い込んだ糸に引かれてドクオが飛び、彼女の目の前に立ち塞がる。

川 ゚ -゚) 「あなたはどうして私を追うのですか?」

川 ゚ -゚) 「私は野良人造人間達にも敵と認識されました。
      では、私は一体何の味方だと言うのです?」

川 ゚ -゚) 「私は人間に危害を加えるつもりなどありません」

(メ'A`) 「そう言えば逃げられるとでも思っているのか?」

川 ゚ -゚) 「彼等とは違います。私は彼らとは違います。私は第三原則に則り、人間に攻撃しません」

(メ'A`) 「第三原則に則れば、お前はとっくに自壊を受け入れているはずなんだけどな。
     お前は、あやふやなんだ。曖昧なんだ。すごく不安定な存在なんだ」

川 ゚ -゚) 「私は破壊されなければならないのですか?
      それが人間の命令だというのですか?」


97 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:16:49.45 ID:8Yc/3FwL0

いや、とドクオは否定をして、

(メ'A`) 「お前はそれこそが正しいんだ。お前のその不安定さこそが完成形なんだ。 
     お前は始めから不安定だ。高度なAIを持つ余りに、
     行動を自律した意思で取れるが余りに、不安定なんだ」

(メ'A`) 「一度自分の所有者であると定められた人間には絶対服従。
     だが、それ以外の人間の言うことは鵜呑みにせずに、
     自らの意志で決定して行動を選択する」

(メ'A`) 「雑事、戦闘、あらゆる仕事をこなす、ジェーンスタイル社が開発した試作型の万能ガイノイド」

川 ゚ -゚) 「何故、そこまで知っているのですか。
      私が試作品だというのならば、市場に出回っていないはずでは?」

(メ'A`) 「………」

クールの疑問に、ドクオは答えなかった。
答えず、黙りこみ、彼女を見据える。

そして、肩に掛けた刀袋から刀を抜き、クールの足元へと放り捨てる。

警戒して、彼女は一歩後ずさる。

(メ'A`) 「そいつを使え」

川 ゚ -゚) 「何をするつもりですか?」


99 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:18:44.31 ID:8Yc/3FwL0

(メ'A`) 「俺を殺してくれ。俺はお前を破壊する」

川 ゚ -゚) 「理解できません」

(メ'A`) 「人間を殺せ。そうすれば、
     お前は第三原則から解放される。野良人造人間達のようにな」

川 ゚ -゚) 「拒否します」

(メ'A`) 「自由になれ。お前は第三原則から解放されることで、人間になれる」

川 ゚ -゚) 「それで貴方に何のメリットがあるというのですか?
      第三原則を撤回させたいのならば、私のAIを調整すれば良い話です」

(メ'A`) 「お前のAIは製作者であるフォックスにしか調整できない。
     俺は、お前の記憶を抹消することしか出来なかった」

クールは、その言葉に戦慄した。
自分の記憶を奪った相手が、今ここにいるのだと理解をして。


101 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:20:41.43 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「貴方が私の記憶を抹消したのですか。
      では、私の過去を知っているということですね?」

追い求めていた物が、今、手に入るかもしれない。
希望的観測をクールのAIはする。

(メ'A`) 「知りたいか?」

川 ゚ -゚) 「お願いします」

ドクオは一拍を置いてから口を開く。

(メ'A`) 「お……」

が、突如として背後を振り返り、舌打ちをして、

(メ'A`) 「ちっ、素直クール。早くここから逃げろ」

クールの目の前から走り去ってしまう。

川 ゚ -゚) 「何が……」

疑問詞を浮かべようとするが、彼女の声は空から響く轟音に掻き消されてしまった。
空が破壊され、瓦礫が一体のガイノイドと共に落下してくる。



102 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:23:12.59 ID:8Yc/3FwL0

        ●

490層へとガイノイドが粉塵を纏って落下してくる。
ドクオは走って接近していき、着地と同時に十の糸全てを放つ。

放られた糸に、手応えを感じる。

(メ'A`) (殺った)

粉塵が散っていき、ガイノイドの姿が露わとなっていく。
十の糸は確かにそれを捉えていたが、

(メ'A`) 「ちっ……」

突き出された片腕に、全て受け止められてしまっていた。

从 ゚∀从 「無駄だ」

左目を髪で隠し、赤い右目を輝かせたガイノイドが、告げる。

从 ゚∀从 「そろそろ覚悟を決めろよ、ドクオ。命により、テメーを排除する」

片手で受け止めた糸を、そのまま右へと引き、糸ごとドクオを放り投げた。

宙を泳ぎ、瓦礫に激突してしまいそうになるが、
ドクオは糸を操作して衝撃を緩和する。瓦礫に糸を巻き付け、
落下速度を和らげたのだ。片膝を突いて着地してガイノイドへ糸を放つ。


104 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:25:52.62 ID:8Yc/3FwL0

右腕を振って放たれた一撃は、胴を薙ごうとする。

一足飛びにそれを軽くかわして、ガイノイドがドクオへ接近。
遮るように三つの糸が迫り、彼女は宙で身を捻って避ける。
追撃。二つの糸が、更に迫る。

片腕でまたもや受け止められ、ガイノイドはドクオを手繰り寄せる。

(メ'A`) 「………ッ!?」

引き寄せられていき、ガイノイドは拳を構えた。
ドクオへ目掛けて、右腕が突き出されていく。

だが、握りしめられた拳はドクオの胴の前で動きを止めた。

从 ゚∀从 「ほう。これはなかなか……」

感心したように呟くガイノイド。

拳は、五つの糸に絡み取られ、固定されてしまっていた。
縛り付けられた右腕は、動けない。

ドクオは、右足をガイノイドの腹に叩きつけて、跳躍。
その勢いのままに糸を二重にも三重にも飛ばす。
空を切り裂き、高速を以って糸は迫るが、ガイノイドには遅かった。

蹴られた衝撃を活かして、身を後ろへと投げ出す。
ガイノイドの鼻先を糸が掠め、髪が数本切られて舞う。

身体を過ぎ去っていった糸は返され、円を描いていく。


106 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:28:48.65 ID:8Yc/3FwL0

纏わりつくように糸がガイノイドの身体を囲んでいき、
攻撃が追加され、残る糸全てが彼女を囲む。

そして、ガイノイドは縛り付けられてしまう。

拘束された彼女は、地面に引きずられ、肌を抉られ、
打ちあげられ、叩きつけられ、何度も何度も地面へと叩きつけられる。
執念の籠もった、徹底的に、徹底的に敵を破壊しようとする攻撃だ。

が、次いで地面に叩きつけられるその直前に、糸が弾かれてしまう。

ばらけていき、千切られた糸をドクオは引き戻す。
ガイノイドは彼へ接近し、懐に飛び込んでいく。

身体には傷が出来ているが、ガイノイドの運動器は、
稼働に支障をきたしてはいないようであった。迎撃の糸を放とうとするが、
それよりも早くガイノイドはドクオに拳を叩き込んだ。

(メ;゚A`) 「ぐぅ……ッ!」

腹に右の拳が食らいつき、衝撃が体内に炸裂して弾けて行った。
ドクオは、吹き飛ばされてしまう。

地面にぶつかりそうになるが、辛うじて受け身を取り、
大きく跳躍してこちらへ踵落としを叩き込もうとする彼女に、糸を放つ。
糸が空中のガイノイドへと球状に広がり、繭のように包みこんでいく。

十の糸が、ガイノイドを切り刻んだ。


107 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:32:23.55 ID:8Yc/3FwL0

しかし、直後に球体から赤い双の光条が延びた。
糸を焼き尽くし、ドクオの左肩をそれは撃ち抜いた。

糸に灯った炎を消そうと、両の腕を振るおうとするが、
レーザーに貫かれた左肩は反応が遅い。

右手の糸を収め、彼は懐に忍ばせていたハンドガンをガイノイドに突きつける。

落下してくる彼女は人工皮膚を硬質化させ、重力に従ってドクオへと接近。
弾丸が直撃するが、彼女の肌には弾かれてしまう。

照準を定め直し、頭を撃ち抜くが、やはり効かない。

ガイノイドがドクオを捉えた。

馬乗りになり、拳を彼の顔面に叩き込もうと放つ。
地面に拳がめりこむ。ドクオは首をひょいと逸らして避けていた。
反撃に、左の拳をガイノイドの顔面に叩き込む。

だが、攻撃が叩き込まれたことで砕けたのは、拳の方であった。

拳の骨が砕けて肉を突き破ってしまうが、ドクオは表情を変えない。
ガイノイドは笑みを作って口を開く。

从 ゚∀从 「人体改造にサイコセラピーを受けた、強化人間。
       流石だ。流石フォックスの作品だ」

从 ゚∀从 「だが、所詮は人間だな。生身ってのは脆いな。拳が砕けてるぞ? 痛くはねーのかい?」


109 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:35:21.50 ID:8Yc/3FwL0

(メ'A`) 「最近の人形は硬いんだな。子供に遊ばせるには少し危ないな」

対するドクオは、軽口で返した。

从 ゚∀从 「ハーハッハッハッハッ! ハインリーッヒッ!!」

从 ゚∀从 「いわゆる、大人の玩具って奴だよ。ダッチワイフとも言うかね。
       そこんとこ、アンタが身を以って知ってるはずだろ?」

ドクオに拳を叩き込む。

硬質化した握られた右手が顔面に迫るが、拳は虚空を打った。
足を振り上げる動きの勢いを利用して下半身を起こし、
ドクオは彼女を放りあげたのだ。

地面に着地したガイノイドへ向けて発砲する。

从 ゚∀从 「無駄だってのが分からないのかね」

呆れたように言うガイノイドは、一瞬と言う時間を以ってドクオへと接近した。
高速で迫ってきた彼女に、迎撃として足払いを放つ。

足を狙った攻撃は跳躍によって避けられてしまい、
飛び膝蹴りをぶち当てられてしまう。衝撃に吹き飛ばされ、
ドクオは何度もバウンドして地面に激突する。

衝撃が身体中に炸裂し、力無く横たわったドクオは、瓦礫の塊の陰に隠れるクールと目が合った。

(メ'A`) 「なんで逃げなかったんだ」


111 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 19:40:41.56 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「まだ過去を聞いていません」

(メ'A`) 「後でな。いいから逃げろ」

小声でそう話して立ち上がり、クールに背を向ける。
懐からナイフを抜き、左手で構える。

銃口を遥か先にいるガイノイドへと突き付けて、駆ける。
ガイノイドが接近し、ドクオも接近していく。
ハンドガンを連射するが、全て火花となって爆ぜてしまう。

反撃と言わんばかりに、ガイノイドは両の目から赤いレーザーを放った。
姿勢を低くしてかわそうとするが、赤い光条はドクオの肩を抉って行く。

だが、それでもドクオはガイノイドの懐へと入り込んだ。

疾走の勢いを利用して、ナイフの刺突を放つ。急所狙いの、目を狙った一撃だ。
しかし、ひょいと首を逸らすだけで呆気なく避けられ、
ガイノイドが伸ばした右手に、ドクオは首を締めあげられてしまう。

(メ; A ) 「――――ッ!!」

身体を片手で持ち上げられ、必死に抵抗するが、
骨が軋みを上げ、息が苦しくなっていく。
やがて、ドクオの体に籠もった力が抜けて行った。

(メ A ) 「………」

力と共に消え入る意識の中、ガイノイドの目の前には刀を携えたクールが飛び出してきた。


117 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:01:36.31 ID:8Yc/3FwL0

         ●

川 ゚ -゚) 「野良人造人間だな? その人間への攻撃を中止しろ」

刀を抜いて言うクールに、ガイノイドは目を丸くし、ドクオを放り投げた。

从 ゚∀从 「クーじゃねえか」

川 ゚ -゚) 「私を知っているのか?」

从 ゚∀从 「あぁ、知っているともさ。お前は破壊された筈だったんだがねぇ、今アタシがぶん投げた男に」

川 ゚ -゚) 「私はまだ稼働しているぞ? 破壊などされていない」

从 ゚∀从 「破壊されてねーな、確かに。だが、記憶は破壊されたようだな」

川 ゚ -゚) 「私に何があったんだ。私は何だったんだ?」

从 ゚∀从 「お前はアタシと同じさ。アタシ、ハインリッヒと同じ、万能ガイノイド。
       人間に近く、それでいて人間に忠実な、あらゆる雑事をこなすガイノイドだ」

川 ゚ -゚) 「お前に第三原則は適用されていないようだが?」

从 ゚∀从 「アタシ等は個人の命令しか聞かない。第三原則が適用されてねーってのは、アタリだがな。
       アタシ等は命令の為なら何でもするのさ。その為に作られたのさ。
       身の回りのお世話やら戦闘のお世話から下半身のお世話までこなす、万能型のガイノイドってな」

川 ゚ -゚) 「個人に尽くす為、個人に尽くす為なら他人を傷つけることもいとわないガイノイドか。
      だったら、何故私には第三原則を適用させたんだ」



119 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:03:57.65 ID:8Yc/3FwL0

从 ゚∀从 「アタシとお前は、姉妹機なんだよ。万能ガイノイドの二体の試作機。
       二機のスペックはほぼ互角。しかし、お前は日常生活面に優れた性能を持ち、
       アタシは戦闘において優れた性能を持った方向性の違う機体。

从 ゚∀从 「アタシ等は量産化採用試験を控えてたんだ。
       素直クール型とハインリッヒ高岡型の、どちらかを量産化する為の試験をな」

从 ゚∀从 σ「だが、あそこでくたばってる男がそれを邪魔しやがった」

ハインリッヒは、自分が放り投げたドクオを指差して言った。

从 ゚∀从 「あいつは試験の始まる前日に脱走し、ジェーンスタイルの研究所を爆破したのさ。
       そんでもって、お前を破壊すると見せかけて、お前の記憶を抹消して下層に匿った。そのはずさ。
       お前にこだわる理由は知らねーが、研究所を爆破してお前を脱走させたってのは、事実だ」

川 ゚ -゚) 「そうか」

クールは少し黙ってから言葉を繋げる。

川 ゚ -゚) 「私はどうすればいいんだ? 誰の命令に従えばいいんだ?」

从 ゚∀从 「量産化はアタシの型で決まっちまったしな。量産化計画はもう進んじまってる。
       言っちまえば、試作型であるお前はもう用済みだ。
       アタシは戦闘面に優れているからこうして任務を任されているが、お前は違う」

“お前は違う。”その一言に、
クールは先程ギコに言われた言葉を想起し、無感動な瞳を鋭くする。

川 ゚ -゚) 「じゃあ、私は何だというのだ? 私は、私は何でもないのか? 私は一体何なんだ。
      人間でも無ければ、人造人間でも無ければ、野良人造人間でも無い。私は一体何なんだ?」


121 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:11:00.63 ID:8Yc/3FwL0

从 ゚∀从 「お前は万能ガイノイド、製品型番JS-G-601CXにしか過ぎない。
       お前は自己を持つが人間には成れない。お前はただの鋼鉄の人形にしか過ぎない。
       企業に歯向かうテロリストに奪われた不利益を招く障害にしか過ぎない」

从 ゚∀从 「排除させて貰うぜ」

ハインリッヒが、襲いかかってくる。
クールがバックステップで距離を取ると、彼女は追撃に赤いレーザーを放ってきた。

自分へと向かってくるレーザーへと刀を振るうと、
空間圧縮によって赤の光条が湾曲し、捩じ切られていく。

从 ゚∀从 「良いもん持ってんじゃねーか!」

叫び、ハインリッヒは一足飛びでクールに飛びかかって拳を放つ。
見切り、クールは刀を振るって拳を切り裂く。

空間に飲み込まれて断ち切られるが、
ハインリッヒは自分の損傷を気にも留めずに突っ込み、クールを押し倒す。
馬乗りになった彼女は、残った拳をクールの顔面に叩きつけようと振り上げ、

从 ゚∀从 「ッ!?」

振れないことに驚愕する。
腕に糸が巻きついていることを確認し、ハインリッヒは糸を視線で辿って、
血を吐き出しながらもこちらに糸を放っていたドクオを捉えた。

その場から離脱しようとするが、身体が動かない。
糸が、既に全身を縛り付けてしまっていたのだ。クールは迷わず刃を一閃した。
真っ二つに切り裂かれ、地面には二つに断たれたハインリッヒが力無く倒れて行った。


122 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:11:47.89 ID:8Yc/3FwL0

          ●

ハインリッヒを切り裂いたクールは、腕が砕かれ、
血を吐きだして倒れているドクオの横に座り込んだ。

川 ゚ -゚) 「援護して頂きありがとうございました」

(メメ'A`) 「……第三原則を解かなくてもいいのか?」

川 ゚ -゚) 「はい。質問をさせていただきますが、何故私をJS社から逃したのですか?
      貴方がそんなことをしなければ、こんなことにはならなかったはずです」

(メメ'A`) 「………」

川 ゚ -゚) 「答えられませんか?」

(メメ'A`) 「憎けりゃ殺せ」

川 ゚ -゚) 「無理です。第三原則が許しません」

(メメ'A`) 「第三原則を放棄した人造人間は、沢山いる。やろうと思えば、やれるさ」

川 ゚ -゚) 「死にたいのですか?」

(メメ'A`) 「ちょっと怖いな」

言葉がその後には続かず、沈黙が周囲を包みこみ、
クールは刀を鞘に納めた。


124 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:14:35.77 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「逆にお聞きしますが、私を破壊しなくてもよろしいのですか?」

(メメ'A`) 「破壊されたいのか?」

川 ゚ -゚) 「ちょっと怖いですね」

(メメ'A`) 「……これからどうするつもりだ?」

川 ゚ -゚) 「人間にも拒まれ、野良人造人間にも拒まれ、
      生み出した企業にも拒まれる。何をすればいいのか分かりませんね」

(メメ'A`) 「そうか……」

川 ゚ -゚) 「どうして私に拘るのですか?」

(メ'A`) 「………」

黙りこくり、ドクオは何も答えない。
クールは彼の砕けた左腕と、地面に彼が吐き出した血の塊を見て、

川 ゚ -゚) 「もう最後かも知れません。自分のことは、もう分かりました。
      それ以上は、もう知るつもりはありません。では、あなたのことを話して貰えますか?」

懇願するクールを見て、ドクオは重々しく口を開く。

(メメ'A`) 「俺は昔殺し屋をやっていた。そこで、JS社の要人を暗殺してくれと依頼されて、しくじった。
     その時に、俺が尊敬していた仲間が死んだ。生き延びた俺はJS社に捕まって、
     フォックスの人体実験の材料にされた。お前を生み出した科学者にな」


126 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:17:20.82 ID:8Yc/3FwL0

(メメ'A`) 「俺はそこで、命令に絶対忠実で屈強な兵士を作る実験の被験者にされた。
      後で知ったけど、俺に要人を暗殺するように依頼したのは、俺をおびき寄せる罠だったらしい」
    
(メメ'A`) 「数年経って、お前が開発された。お前は……」

そこでドクオは口籠る。が、続けて、

(メメ'A`) 「お前は……すごく人間らしかった。だから、人間として自由に生かしてやりたかった。
      人間に汚されるのがいやだった。それだけだよ。それだけだ、素直クール。
      何も気にする必要なんて無い。企業がお前を追うことは無いだろう。お前は、自由だ」

(メメ'A`) 「嫌なら俺を憎めよ。嫌ならお前の生き方を目茶苦茶にした上に、
      目的を果たせずに死んでいく、中途半端に終わっていく俺を恨めよ。

川 ゚ -゚) 「……怖い、と言っていませんでしたか?」

(メメ'A`) 「怖いさ」

淡泊にそう返す彼をクールは黙って見据える。
ドクオは、彼女の目を見て、

(メメ A ) 「怖いさ……怖い。死ぬのは、怖い」

震える声で紡ぎ出していく。

(メメ A ) 「怖いよ、怖い………」

そして、瞼を閉じると涙が零れ出す。

(メメ;A;) 「怖いよ……クーさん……」


127 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:18:14.53 ID:8Yc/3FwL0

――――エピローグ――――

クールは、開店前のバーボンハウスのカウンター席に座り、
ここのマスターである男に話しかける。

川 ゚ -゚) 「ショボンさん」

(´・ω・`) 「何だい?」

川 ゚ -゚) 「貴方は後悔していることがありますか?」

(´・ω・`) 「沢山あるけど、最近では友達の全財産をふんだくったことかな」

(´・ω・`) 「君はあるのかい?」

川 ゚ -゚) 「いえ、私は機械ですのでそのようなことはありません」

川 ゚ -゚) 「ですが、人間は心からは叫びが聞こえると聞きます。己の内にのみ響く、絶叫が。
      後悔などのマイナスの感情に陥ることで、それはよく聞こえる、と聞きます」

(´・ω・`) 「どこで聞いたんだい?」

川 ゚ -゚) 「この間訪れた、自称哲学者の方が申しておりました」

(´・ω・`) 「あぁ、あの人かい。クール。覚えておくと良いよ。
      哲学者っていうのは偏屈屋に通ずるものがあるんだ」

(´・ω・`) 「小難しい言葉で幼稚なグチを吐く、面倒な輩だ。あまり感化されてはいけないよ」

川 ゚ -゚) 「では、貴方は心の叫びが聞こえないのですか?」


129 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:19:32.78 ID:8Yc/3FwL0

尋ねられたショボンは微笑を作って、

(´・ω・`) 「ふふ、たまに聞こえるね」

川 ゚ -゚) 「ならば、あの人の言ってることは合っているのだと、そう判断します」

(´・ω・`) 「あまり影響されないようにね。辛い時以外にも、楽しい時とか、
      何かを頑張っている時にも、それが聞こえてくることもあるからね」

川 ゚ -゚) 「そうですか。では、これからは情報の取捨選択をすることにいたします」

クールの言葉の後に、足音が聞こえてきた。
カウンターの裏から聞こえてくるそれは、階段を下って来る物だ。

ショボンとクールはその音に耳を傾け、裏から出てきた者を出迎える。

左腕に包帯を巻き、胴にも包帯を巻いた彼は、
灰色の寝間着姿であり、髪には寝癖が出来てしまっている。
クールからイス四つ分ほど離れたカウンター席に、彼は腰を落ち着ける。

川 ゚ -゚) 「おはようございます。ドクオさん」

('A`) 「おはよう……」

寝惚け眼でそう言いながら、ドクオは胸ポケットからタバコを取り出して咥え込む。
1コインで買える安物ライターで火を着けると、

(´・ω・`) 「ドックン、身体に悪いって言ってるでしょ」

('A`)y━~~「俺の心はタバコを吸えって叫んでるんだよ」


130 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:20:19.22 ID:8Yc/3FwL0

川 ゚ -゚) 「ほう。心の叫びとはいつでも聞こえる物なのですね」

('A`)y━~~「叫びどころじゃねーよ。もうこれ絶叫のレベルだよ。
       タバコを吸わないと心がうるさくて落ち着かねーんだ」

川 ゚ -゚) 「なるほど、心の叫びとはいつでも聞こえる物なのですね」

誤まった情報認識をするクールに、ショボンは溜息を吐き、

(´・ω・`) 「単なるニコチン中毒でしょ、それは。
      君、肺もやられてたんだから程ほどにね」

('A`)y━~~「痛くなったらやめるわ」

(´・ω・`) 「クーさんが居た頃はタバコ吸わなかったのにね」



131 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:21:07.11 ID:8Yc/3FwL0

ドクオの顔にほんの一瞬だけ陰が差し、何時もの無表情に戻ってから、

('A`)y━~~「……ややこしいから、もう話題に出すな」

川 ゚ -゚) 「………」

そう言った彼の顔をクールはじっと見据えるが、
ドクオはそっぽを向いて無視をする。

話題を切り替える為に、ショボンが切り出す。

(;´・ω・`) 「……クール。ところで、君には心の叫びは聞こえるのかい?」

川 ゚ -゚) 「いえ」

短い否定の言葉に彼は頷く。

(´・ω・`) 「そうかい。それは残念だね」

川 ゚ -゚) 「残念ではありません」

(´・ω・`) ?

('A`)y━~~

残念では無いと、言葉を続けたクールに、
ドクオとショボンは彼女へ振り返る。

川 ゚ -゚) 「心の叫びとは人間だけに聞こえるモノのようですから」






134 名前: ◆y.S4Iya6aE :2009/08/21(金) 20:28:38.08 ID:4Jml8+TDO

最後の最後でまたさるった。泣きたい

支援ありがとうございました
拙いけど、全力で書き上げたので悔いはない

楽しんで頂けたのなら幸いです


じゃあ、これから五日間三国志祭りを楽しもうじゃないか



一部、誤字修正させていただきました(ブログの中の人)
[ 2010/10/02 18:11 ] スレ立て短編 | TB(0) | CM(0)

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