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( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの七

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:07:10.31 ID:qf1+i+zz0




 麦踏みやらの農作業に駆り出され、久しぶりに帰ってきた実家は、前回帰った時から何一つ変わっていなかった。
 強いて言うならば一部の庭木の葉が寒冷な風に染まり、赤く色づいているくらいである。南天が風に揺れている。
 秋はアッと言う間もなく過ぎて行った。上着からはみ出た手は冷たく、最早感覚もない。血色悪く生白い色をしていた。

 家を出る前に通っていた銭湯に赴くと、これまた何一つ変わらない顔をして建っていた。
 田舎は時間が凝り固まって出来ているようである。









3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:08:51.64 ID:qf1+i+zz0










( ^ω^)せんとうのスヽメのようです


いの七 ~霜立ち~











4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:12:54.52 ID:qf1+i+zz0





( ^ω^)「懐かしいおー」


 丸く可愛らしい湯船が、美夫湯とはまた違った趣きがあった。よいと一息吐く。
 今は仏間の壁に掛かっている祖父と入った湯船に、今も同じように入ることが出来る。
 前のように隣に祖父は居らねども、何も変わらず鼻の頭に滴が落ちる。それは大層すばらしいことなのだと水蒸気を吸い込んだ。
 町外れにつくねんと建った銭湯は、今も昔も番台に座る婆さんの震えた手つきすら変わらない。
 婆さんはぷるぷると僕から代金を受け取り、ぷるぷると僕を見遣り、ぷるぷると久しぶりだが元気かと問うた。

 まさか顔を覚えられていたとは思わない僕は面喰らい、軽くのけぞりながらも元気だと伝えた。
 名前も知らない人が気さくに此方を知っている。これぞ田舎の恐ろしさ。
 少しでも礼節を欠こうものならば、瞬く間に知れ渡り、翌日の夕食のお供は『ナニガシさん家の長男はナンタラ』という話題になる。

 まぁそういう恐ろしい一面は置いておく。
 里帰りをした僕が、何時までも変わらない、時間の止まってしまったように古めかしい脱衣場を覗く。
 美夫湯だってそんな銭湯だった筈なのだ。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:17:49.67 ID:qf1+i+zz0


( ^ω^)「……」

( ^ω^)「ふぅう」





( ´∀`)『いらっしゃいませようこそモナー』

从'ー'从『ああ、内藤君、来てくれたの。有り難うねぇ』

( ^ω^)『……元気ですおね』

( ´∀`)『もりっもりモナよ』





6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:20:57.43 ID:qf1+i+zz0


 自転車で交差点を横切ろうとし、注意不十分の車にぶつかられたモナーさんは、右足の太股の骨を骨折するという重傷を負った。
 が、その後御歳七十八歳とは思われない回復力を発揮しながら療養中である。
 先日も、桃缶を片手に見舞いに行った僕を足をぶら下げながらも朗らかに出迎えた。

 丁度伊藤さん一家もお見舞いに来ていた様子で、見慣れた伊藤さんとシュールちゃん、
それから見慣れない旦那さんと渡辺さんがモナーさんのベッドを取り囲んでいた。
 折角だからと入った、個人の病室のベッドの上。
 ガッツポーズで慰謝料をふんだくると意気込むそのモナーさんの姿に、大したじいさんだと僕は感心しきりだった。と同時に、安心もした。

 なぁんだ、全く元気ではないか。

 その余りにあっけらかんとした様子に僕は大層肩の力が抜けたのであったが、現実はそう甘くなかったのだ。
 僕の手渡した桃缶を相手に早速缶切りで勝負を挑み始めるモナーさんと渡辺さんをシュールちゃんと旦那さんに任せ、伊藤さんは僕を病室の外まで引いてきた。



('、`*川『あのね』

( ^ω^)『お?』



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:23:06.35 ID:qf1+i+zz0


('、`*川『あのね、じいさんああやって強がってるけど、そろそろ良い歳だから、』

('、`*川『これを機会に、お風呂、辞めようかとも言ってるの』

('、`*川『だから、それだけ心に留めといて欲しいな』


( ^ω^)『あ……そですか』



 伊藤さんは相変わらずきびきびと、ひたすら義務だった。
 実の父が入院したという心労からか、彼女の頬には青白い披露が浮かんでいた。
 事故の知らせを耳にした時分にある程度は予想していた事であろうと、ハァそうですかとしか言いようの無いのが僕であった。
 新しいバイトを探さねばなどと思う。現実的な思案をする事によって、胸に押し寄せる得も言えぬ感情を誤魔化していた。

 いつかはそうなった事なのだという納得はある。

 モナーさんも渡辺さんも荒巻の爺さんも寄る年波には勝てまい。
 詰まるところ美夫湯とは、伊藤さんやシュールちゃんといった家族の手伝いや、ドクオさんやモララーくん、
僕といったアルバイトを雇ってやっと切り盛りしていたお湯屋さんなのだ。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:25:45.28 ID:qf1+i+zz0
 一人たりとも欠ければ、存続が危うい。
 現にモナーさんが欠けてしまった今、美夫湯は休業を余儀無くされている。


『あそこの年寄りどもが一人でも欠けたら美夫湯やばいからなぁ……』


 不意にドクオさんの言葉が耳の奥で鳴った。





( ^ω^)「……ふむ、まぁ、でもね」


 もう湯に浸かり初めて十五分程になる。良い具合にアタマが朦朧とし、手足は熱く痺れたように動きも鈍い。
 絶え間無いジェット水流と、湯の流れ落ちる音。
 美夫湯よりか幾ばくが小規模な天井と、豪快な壁画を仰ぎ見る。


( ^ω^)「たかだかアルバイトの僕に、何が出来るでも無いお、ねぇ」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)「……ご家族の方が、話し合って決める事だお」


 僕の出る幕などありはしない。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:31:01.86 ID:qf1+i+zz0















( ^ω^)「ただいまおー」

「ああ、おかえり……所で、あんた何時まで家に居る気なの?」

( ^ω^)「え?」




12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:34:44.03 ID:qf1+i+zz0




( ^ω^)「何だ、この、僕の扱い……」


 面倒くさげな力仕事や、機械作業を僕に手伝うだけ手伝わせた両親は、正月までゆっくりしようと思っていた僕を半ば追い出すようにして復路へ着かせた。
 確実に息子の事を労働力としてしか見ていやしねぇ。
 もう良い歳の父母に無理をさせるのも心苦しい。此方はまだ仕送りを受け取っている学生の身なので文句を垂れる気にはならない。
 だが、別に正月ぐらい我が家で過ごしても良いじゃないかよ、と電車の中で食べなさいと渡された干し芋をかじりながら思う。

 がたんごとんと特急は走る。巡るましく流れていく景色に目をくれて遣る道理は有りもせず、あまりにおざなりな両親の対応を思い出しながら駅弁を貪った。
 餞別にと渡された紙袋の中、野菜や生活用品や菓子の中に混じった切り餅ががさごそと音をたてた。
 確か部屋に小豆の缶があったから、善哉でも作ろうか知らん、と首を傾ける。
 一人では消費しきれねやも知れないから、ドクオさん達を呼んでも良い。


( ^ω^)「モララーくんやシュールちゃんも呼んで、……善哉パーティ?」


 いや、それならば大掃除の時に差し入れとして持っていってしまおうか。
 冬の掃除は大層冷えることだろうから、いっそコンロか何かを用意して行って、熱々を食べられたら評判も上上だろう。
 ハフハフと脱衣場で餅を伸ばす光景が目に浮かぶ。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:39:21.35 ID:qf1+i+zz0


(* ^ω^)

( ^ω^)「って」


 ゆるんだ頬が一瞬にして引き締まった。
 美夫湯が、その頃にやっているのかさえ定かではないのに、そんな早計な話。
 そして何だか無性に寂しい。


( ^ω^)「……」

( ^ω^)「……ああ、そうか」


 もし美夫湯が無くなったら、僕はもうドクオさんやモララーくん、シュールちゃんなんかと話す事は無くなるのだ。
 彼らだけでは無い。荒巻の爺様も、渡辺夫妻も、伊藤さんも、親しくなったお客さん達とも、もう関わりはしない。
 町ですれ違うくらいならするかも分からない。だが、すれ違って声を掛け合うような関係では無くなるであろう。

 元より、接点は美夫湯のみだった僕と彼らが、それさえ無くなった後も関わり続けるとは一切思えない。
 それは酷く悲しいナァ、と電車にゆられ、僕は思った。




17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:43:02.82 ID:qf1+i+zz0

 地元の其れよりも視界に馴染むようになった駅前に足を落ち着かせた。
 更に私鉄に乗り換え、下宿先近くの駅へとガタゴト、鈍行に揺られる。


( ^ω^)「ふー」


 僕の実家からこの町まで、電車を幾らか乗り継ぎ約三時間半。
 近場と言えば近場だが、長旅と言えば長旅だった。
 多少なりとも凝り固まった肩や腰を伸ばすようにしながら、駅から下宿への道を歩く。
 暖房の利いた車内から、急に空気の冷えた屋外へというのは中々つらいものがある。次第に鼻の頭が痛むように冷え、自然と僕の足取りは速くなった。

 街を行く人々は皆さんきびりきびりと忙しげに歩く。師も走り回る季節だ。街のどこかで車のクラクションが鳴り響く。
 携帯を開き時間を確認すると、まだ卯の刻前だ。南中を過ぎた太陽が薄らかたぶいている。
 秋の日は釣瓶落としと言うが、冬の日はならば釣瓶では済まないに違いない。
 具体的には思いつかないが。


( ^ω^)「……そういや、今日冬至だったかお」


 指に食い込む紙袋を持ち上げ中身をのぞき込むと、半分に切られラップに包まれた白皮南瓜が切り餅の直ぐ下へ鎮座していた。
 柚子は無いか、と探すと、案の定ごろごろとビニール袋に包まれた黄色い柚と、おまけと言わんばかりに母手製の柚ジャムの瓶が現れる。

( ^ω^)「南瓜、今から煮て、夜に……柚湯かぁ」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:47:05.43 ID:qf1+i+zz0








 用意するもの。丸ままの柚子少量。手ぬぐい一枚。針と糸。十分に沸いたお湯の入った浴槽。
 まず、丸ままの柚子を半分に切ります。
 ヘタを上にして置いた時の状態から、丁度横に真一文字を描くように、両断。そんな風にして半分になった柚子が出来たら、少し放置。

 用意して置いた手ぬぐいを半分に折り畳んで、両端をきっちりがっちり縫い合わせ、袋を作ります。
 口を三つ折り縫いして紐を通す技術があれば、尚良い。
 無けりゃ使い終わった後で破いてしまえば良いのだが、何となくそれは勿体無いので、今回はキチンと紐を通した。

 そうして出来た手ぬぐい袋に、切った柚子を放り込んで口を縛り、ぼっちゃんと沸いた風呂に投げ込んで、適当な時間ボンヤリ待てば、
良い良い具合の柚子湯の出来上がり、である。
 丸まま入れるよりも柚子の香り高く、狭い風呂場が爽やかな空間になること請け合い。
 ただし肌が弱いひとには刺激が強いかも知らないので要注意。
 袋越しに柚子を揉むとなんだか良さげな気がするが、掃除と後始末に文句を言うなら辞めておいた方が良い。

 というのを、




20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:50:47.52 ID:qf1+i+zz0


( ^ω^)「えいや」


 両手を前へ突き出すような、妙な格好で、ぼちゃんと僕は狭い風呂桶に放り込んだ。
 いったん沈んだ柚子入りの袋は、瞬く間に水上へと浮き上がってくる。ゆらゆら揺れて、ワタシ一度落ちましたのよ、と僕に主張するようであった。
 母に紙袋を持たされた時は、ナンだこのクソ重たい物は、鬱陶しいな、バカヤローと泣きたくなったが、鼻を擽る水っぽくなった柑橘類独特の香りを嗅いでいる
と何だか心安らぐものである。うん、良いね。疲労回復に効きそうなにおいだ。

 後でお礼の電話でもかけよう。
 グルグルと簀巻きの様に丸める種類の湯蓋を閉め、脱衣場で予め脱いで置いた靴下を履き直す。
 しかしバカみたいに狭い風呂場である。脱衣場を含めても、おそらく三畳かそこら、あるのかないのか。
 実家の風呂も決して広いとは言えないが、この部屋に越してきて見た時には驚愕したものだった。
 世の中には我が家の風呂場よりも狭い風呂場があるのだな! 内藤家もまだまだなのだね、と何やら訳の分からない感慨を抱いたものである。


( ^ω^)「さて、」

( ^ω^)「ご飯ご飯おー」




21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:54:54.43 ID:qf1+i+zz0

 炊飯器を開け、むわりと顔にぶち当たる澱粉の香りの湯気を吸い込み、水に濡らした杓文字を突っ込む。
 空気を取り入れるように手早く、かつ米粒をつぶさぬよう繊細に。お宅のお米は立っていますか。家のお米は立っています。
 不愉快な振動が尻ポケットで蠢いているが気にしない。決して気を抜いては成らない。
 一瞬の手抜きが米のうまさを損なってしまったら、それはレコード一枚で人生を台無しにしたにも等しい。


( ^ω^)「ふぅ」


 米をかき混ぜ終えた僕は、一息吐いて尚しつこく尻で振動する物体を取り上げた。
 案の定携帯電話の着信だった。


( ^ω^)「……お?」


 言葉としては聞きなれて言いなれているが、文字としてはそうでも無い人名が小さな液晶に浮かんでいる。
 不可思議に思いながらも開き、決して電源ボタンと間違えないように注意しながら、通話ボタンを押した。
 顔の横に携帯電話を押し当てる。しかし何度やっても、耳の当たりがむずむずして落ち着かないポーズである。


( ^ω^)「もしもし? お待たせしました、内藤です」

『……あ、やっと出た』


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:58:39.76 ID:qf1+i+zz0









('A`)「あーえっと、おじゃまします」

( ^ω^)「どうぞお上がり下さいお」

('A`)「うん、じゃあ遠慮なく」





23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:02:20.22 ID:qf1+i+zz0


 ドクオさんはスーパーの袋を携えてやって来た。
 はいよと手渡された袋はズッシリ重く、中を覗き込むと黒黒と酒瓶が光っている。
 一人酒が寂しいからつきあってくれという旨を電話して、たった十分後のご到着だった。
 明日も平日なのだが、そういった倫理はあまり気にしない事にした。
 下手をしたらもう会わないかもしれないと思ってさえ居た人からの連絡だったため、少々僕も舞い上がっていた。

 ドクオさんを僕の部屋に上げるのは初めてである。簡単な掃除さえ出来なかったが、こちらもあちらも十分に大人。
 ベッドの下を漁るような事もしないし、そういったものは全てデジタルに頼っている為心配は無い。


( ^ω^)「摘みになるようなモンはありませんお?」

('A`)「いいよ、家から持ってきた」

( ^ω^)「……しかし、突然何ですかお」

('A`)「うん? いやなぁ、なんか思い立ってさ。やっぱり忘年会は一人じゃ寂し過ぎるだろ」

( ^ω^)「そりゃ、そうでしょうけどお」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:05:49.54 ID:qf1+i+zz0


 とは言ったものの、流石に、本当に何も出さないという訳にも行くまい。
 これまたれいの紙袋からはみ出て異臭を放っていたず太い葱を引き抜き、白い部分を厚めに切って、胡椒を振ってフライパンに転がす。
「葱焼き、いいな!」と其れを見ていたドクオさんが両手を挙げて喜ぶ。ふむ、益々母親にお礼の電話をする義が増えた。

 皿に載せた葱を持っていくと、ドクオさんは既に酒瓶を開け、僕が来るのを今か今かと待ち構えていた。
 見慣れない携帯電話がちゃぶ台の上に置いてある。僕がそれに気付いたのを認めると、慌てたようにドクオさんは其れを自分のポケットへ収めた。
 その辺りに放ってあったテレビのリモコンを操作。浮かび上がるアナログの文字がやはり鬱陶しい。
 不意にドクオさんが紙コップを取り出した。そんなもの何に使うのかと僕は注視する。


('A`)「これは、ほら、コップ足りないといけないから」

( ^ω^)?

('A`)「そのうちモララーと荒巻の爺さんも来るからな。覚悟しとけよ」

( ^ω^)「……は?」

('A`)「本当はシュールちゃんや伊藤さんも呼びたかったんだけどな。まぁ流石に、時間が時間になっちゃうから」

( ^ω^)「え、ちょっと待って下さいお。何の話?」

('A`)「何って、おまえ、忘年会だよ。美夫湯の」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:12:31.64 ID:qf1+i+zz0


 よいしょとドクオさんが酒瓶を傾け、トクリトクリと僕の持っていたコップに酒が注がれる。
 生憎ながら僕はアルコールに明るくないので、鬼火だとか書かれたラベルを見ただけでは、なんの酒なのか分からない。
 小さめのコップに七割ほど酒が入ったのを確認すると、ドクオさんは自分に渡されたコップにも同様、酒を注ぐ。


('A`)「来年も頑張ろうぜーって皆で一杯やんだよ。これ毎年恒例だから。覚えとけよ」

( ^ω^)「え?」

('A`)「まーとりあえず先飲もうぜ。ああ、安心しろよ、流石にどんちゃん騒ぐなんてしないから」

( ^ω^)「え? ああ、はい、まぁ」


( ・∀・)「呼ばれて来ましたー!」


( ^ω^)「早速うるさっ!」






29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:21:13.98 ID:qf1+i+zz0


( ・∀・)「荒巻さんもいますよー!」

('A`)「荒巻のじさまも来たのか。飲み比べしようぜ飲み比べ」

( ・∀・)「駆けつけ三杯やりまーす!」

( ^ω^)「こら未成年! 未成年止めなさい!」

('A`)「おー、差し入れ? 有難さん。入ってもらっていいよな、内藤?」

( ^ω^)「おっ、どうぞどうぞですおー」

( ・∀・)「やだなぁブーンさんこれはビールじゃありませんよ、こどもののみものですこどもののみもの。泡立ちりんごジュースですええ」

( ^ω^)「未成年!」

('A`)「あー、モナーさん達は来れないかぁ。まぁ、養命酒見舞いに渡したし、大丈夫だろ」

( ^ω^)「そんななんでも養命酒であんた!」




 窓際でドクオさんと荒巻の爺さんがちびりちびりと飲み比べをしている。
 モララーくんは携帯を片手に美夫湯常連だという同級生を呼び出し中だ。

 そういえば、と手を伸ばして浴室の電気を切った。
 お湯が冷めてしまうかも知れないが、ならばまた沸かせば良いだけのことだ。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:23:28.71 ID:qf1+i+zz0







( ^ω^)









32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:24:15.25 ID:qf1+i+zz0




 熟(つらつら)鑑るに、銭湯ほどちかみちの教諭なるはなし。

 其故如何となれば、賢愚邪正貧福貴賤、湯を浴んとて裸形になるは、
 天地自然の道理、釈迦も孔子も於三も権助も、産まれたまゝの容にて、惜い欲いも西の海、さらりと無欲の形なり。

 欲垢と梵悩と洗清めて浮湯を浴れば、旦那さまも折助も、どれがどれやら一般裸体(おなじはだかみ)。

 是乃ち生れた時の産湯から死だ時の葬灌にて、暮に紅顔の酔客(なまえい)も、朝湯に醒的(しらふ)となるが如く、生死一重が嗚呼まゝまならぬ哉。

 されば仏嫌の老人も風呂へ入れば吾しらず念仏をまうし、
 色好の壮夫も裸になれば前をおさえて己から恥を知り、
 猛き武士(もののふ)の頸(あたま)から湯をかけられても、人込じやと堪忍をまもり、
 目に見えぬ鬼神を隻腕にえりたる侠客(ちゅうっぱら)も、御免なさいと石榴口に屈むは銭湯の徳ならずや。

 心ある人に私(わたくし)あれども、心なき湯に私なし。

 たとへば、人密に湯の中にて撒屁(おなら)をすれば、湯はぶく/\と鳴て、忽ち泡を浮(う)み出(いだ)す。


『浮世風呂』式亭三馬





33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:26:02.06 ID:qf1+i+zz0





( ^ω^)せんとうのスヽメのようです


いの八 ~また来たりて、春~







34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:26:54.90 ID:qf1+i+zz0


 水飛沫と、ジェットの低く耳になじむ音。女湯の方で風呂桶が高橋留美子漫画の如くカポーンと鳴っている。
 ぽたん、と鼻の頭に水滴が落ちた。高い位置で開いた窓からは、街灯に照らされる夜桜が揺れている。
 さて、そろそろ上がらなければと縁に置いておいた桶からタオルを取り上げる。
 まだ少しばかり肌寒いが、逃げる二月を過ぎれば気温はゆるやかに上がっていく。



( ^ω^)「……」



 まぁ、一仕事する前に、もう少しだけ。
 僕は頭の上にタオルを置いて、天井を見上げた。



( ^ω^)「いっい湯っだっな、アハハン♪」




( ^ω^)せんとうのスヽメのようです


と  ~終り~







35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 17:30:52.24 ID:qf1+i+zz0
以上で( ^ω^)せんとうのスヽメのようですは終了です
早くからネタが無くなったお陰で大変尻窄みですが書くのは楽しかったのでよしとします。
驚きの短ささらり薄い

読んでいただいて「ちょっと銭湯行こうかな」と思っていただければそれは俺の計画通りです
参考にさせて頂いた某K湯さまと伊藤さん、其れから読んでくれた方々に感謝







元スレ( ^ω^)せんとうのスヽメのようです(リンク先( ^ω^)ブーン系小説とか読み物とかの倉庫様)

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