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( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの二

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:24:21.05 ID:LB2o3+0u0


 ゆく人の流れは絶えずして、しかも、同じ者にあらず。澱みに浮かぶ人垢は、かつ散りかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。
 世中(よのなか)にある人とお湯屋と、またかくのごとし。
 たましきの都のうちに、棟を並べ、煙突を連ねる、高き、いやしき、浮世のおか湯は、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔しありしお湯屋は稀なり。
 或いは去年(こぞ)焼けて今年改築せり。コインランドリィ付き。
 或いは大家(おおいえ)亡びて引退せり。ご愛顧有難う御座いました。
 通う人もこれに同じ。所も変らず、人も多かれど、いにしえ見し人は、二三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。

 朝(あした)にしに、夕(ゆうべ)に生るゝ(うまるる)ならひ、たゞ水の垢にぞ似たりける。



   『方丈記(?)』鴨長明(?)



 じぃわじぃわ、と油蝉が鳴いていた。
 太陽もうさんさんと元気に照りつけていて、日差しは大義名分のように夏だ夏だと騒いでいる。





( ^ω^)せんとうのスヽメのようです


いの二 ~暑気遁れ~



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:25:36.49 ID:LB2o3+0u0




( ^ω^)「お」

('A`)「よーす」


 美夫湯の玄関先では、タオルを頭に巻いたドクオさんが竹箒で埃を掃き出していた。
 何時もは軒下に置かれている待ち人ソファも駐車場に出され、日干しされている。座布団なんかも干されていて、触ると今にも発火しそうだ。
 夏の日差しは、午前八時と言えど容赦ない。


(; ^ω^)「おっ、遅れましたお?」

('A`)「俺が早いんだよ」


 暇だからさ、とドクオさんは笑う。それでいいのか大学生。僕も大学生だが。
 がら、と何時もは自動のドアが開いて、ひょこりと渡辺さんが顔を出した。
「ああ、来た来た」と笑いかけてくる。今年喜寿を迎えるとは思えない若々しい笑顔だ。うむ、ツンもこんな風に年を食ってくれればいいなぁ……。


从'ー'从「ちゃんと朝ごはん食べてきた? お握りあるよ、食べる?」

( ^ω^)「おっ、頂きますお! ご飯は食べましたが!」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:28:14.23 ID:LB2o3+0u0

('A`)「早く用意して来いよー」

( ^ω^)「おん!」


 男湯の脱衣場のカウンターには、お盆に直接載ったお握りが置いてあった。
 一つ二つ食べた後のある其処から一つ頂戴して、頬張る。しっとりとした海苔の下からは昆布が出てきた。美味しい。
 殆ど手ぶらの状態の僕はポケットから財布と携帯だけ出して、番台に置いてある籠の中に放り込んだ。

 小さな子の拳大のお握りはたちまち僕の胃袋の中に落っこちる。

 用意されてあった白い手ぬぐいを首にかけ、女湯の方へ押し戸を押す。
 何度来ても昼間の銭湯って何だか不思議な感じがするなぁ、などと思いながら、箒を握る伊藤さんに挨拶をした。

 昭和の香り漂うはたきでロッカーの中をぱたぱたやっていた伊藤さんは「ん」と右手を上げる。
 学校の教室にありそうな掃除ロッカーからゴム手袋を取り出して、装着。手洗い場のほうではシュールちゃんがバケツをざぶざぶやっていた。


lw´‐ _‐ノv「どぞ。上はもう拭いたんで、床拭きお願いします」

( ^ω^)「ありがとおー」




8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:33:40.92 ID:LB2o3+0u0

 草臥れた雑巾を受け取り、広げる。
 畳マットに膝を対いて床を丁寧に拭いていく。既に掃除機をかけて在るのか、目だったちりや埃は無い。代わりに垢やあぶら汚れのようなものが雑巾にこびり付く。
 隅に行けば行くほど黒い床を一心不乱に擦っていると、不意にお風呂場から水音がした。新巻さんがシャワーを流している。

 何時も居る男湯と違って、女湯は少し殺風景な印象を受ける。
 それはカウンターに積みあがったいかがわしい雑誌が殆ど無い事や、何故か男湯にだけ飾って在る木彫りの熊や金閣寺の写真が無い所為なのだけれど。
 代わりといっては何だが、暖色を基調とした女湯にはドライフラワーや造花が多めに見られる。渡辺さんの気配りなんだろうなぁ、と椅子の上に纏めてどけられているそれらを見ながら思った。

 立ってみるとそうでも無いが、床に這いつくばっているとこの脱衣所も妙に広く感じられる。二の腕辺りがぴりぴりとしだしたころ、ようやっと全面拭き終えた僕は頭を上げた。
 伊藤さんが手際良くロッカーを閉めていく。
 退けてあった籠をロッカーの下の台に突っ込んでいき、カウンターに上げられていた椅子を降ろした。

 差し出された手にゴム手袋を渡して、脱衣所の掃除は完了。





('、`*川「はいよ。んじゃあお風呂の中洗っちゃってー」

( ^ω^)「おっ」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:35:53.54 ID:LB2o3+0u0


 ジャージの裾を捲って、お風呂場に向かう。
 すっかりとお湯の抜かれた湯桶が僕を迎えた。益々不思議な気分になるが、何時ものことなので気にしない。
 奥の扉から何時もの掃除道具を出して、何時もと違うゴム手袋を嵌める。

 
( ^ω^)「よーっし」


 拳を握って、気合を入れる。人間には疲れる準備というのが必要だ。
 腰に一本棒を据えて、肩から力を落とす。指先は楽にして、けれどぶれないように。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。よくよく吟味在るべきもの也。
 と、いうわけで。

 石鹸入りケロリン桶に入った雑巾を引っ張り出して、泡立てる。何時もの垢落としでは落としきれない垢を今日落としてしまおうという算段だ。
 本当は先にモップで浴槽を洗わなくてはならないのだけれど、前々から気になっていたのだから仕方が無い。
 無心で手を動かし続ける。二の腕に乳酸が溜まっていくのが分かる。


(; ^ω^)「お、っふ」


 首を上げ、天井を見上げると、黒い汚れがこびり付いていた。
 黴だ。嗚呼、あれ洗い落としてぇなぁ。無理だろうなぁ。束子でごしごしやって水掛けたら気持ち良いんだろうなぁ。
 綺麗好きというのは難儀なものだ。

 汗が生ぬるく額を伝った。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:38:50.84 ID:LB2o3+0u0


<トコロデ、学校ハドウダイ?

<エ、イヤ……フツウダケド。ナノソノ父親ミタイナ台詞

<ヤッパ合コントカシタリスルノ?

<エー、……テカ、アノ、ソンナノキイテドウスンノ、シューチャン

<合唱コンクールッテ大学デモスルンダ……

<エエエ、イヤ、ソッチ?


 男湯の方からシュールちゃんとドクオさんの何だか間の抜けた会話が聞こえてくる。
 僕はあまり話してもらえないのだが、四年もの付き合いにもなると、シュールちゃんも心を開くらしい。そんなものだろう。


从'ー'从「あれぇ、そんな丁寧にしなくてもいいのに。疲れるでしょー? 給料は変らないよ?」

(; ^ω^)「あー、分かってますお。でも気になるんですおー」

从'ー'从「律儀だね、内藤君」


 がらがら、と引き戸を引いて渡辺さんが現れる。
 ゴム手袋をつけた渡辺さんは座椅子を一つ引き寄せて、座り込んで他の椅子達を洗い始めた。ガラス戸の向こうでは荒巻さんが手洗い場にモップをかけている。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:41:29.27 ID:LB2o3+0u0



从'ー'从「もうねぇ、私もお父さんも大分年だからねぇ、すーさんも腰痛めてるし、そろそろ店畳もうかって話してるんだけどね」

(; ^ω^)「おっ?!」

从'ー'从「私のお母さんの代から続けてて、もうそろそろ此処も疲れてきてるし」


 渡辺さんは天井を見上げながら呟く。壁のタイルを洗っていた僕は束子を動かす手を止めて、座椅子に座る渡辺さんを見た。
 朗らかな笑みには少々諦念が混じっているように思えた。そんな馬鹿な、と僕は首を振る。

 口を開こうとした瞬間、男湯の方からドクオさんの気の抜けるような悲鳴が聞こえた。
 べっちーん、と間抜けな音がする。
 あ、転んだ、と追いかけてシュールちゃんの声がした。


('A`)「いてぇええ……」

lw´‐ _‐ノv「だいじょぶ?」

('A`)「痛い……良い歳扱いて石鹸踏んで転んだ自分が痛い……」

从'ー'从「大丈夫ー?」

('A`)「大丈夫です……」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:44:40.17 ID:LB2o3+0u0

从'ー'从「そろそろ終りにするー? しゅーちゃん、今何時かわかる?」

lw´‐ _‐ノv「えーと、十一時四十五分」

从'ー'从「そっか、じゃあもうこっちは水掛けだけで終るから、そっちに手伝いに行くねー」


 よいしょ、と腰を上げて渡辺さんが微笑む。正しく年輪を重ねた大樹のような優しい笑みだ。


从'ー'从「じゃ、タイルはもういいから水掛けお願いして良いかな?」

(; ^ω^)「お、はい」


 傍らに置いてあったバケツに水を溜め、壁や浴槽にぶちまけていく。
 因みに上手く水を撒くコツとしては、腰を軽く落とし、バケツの其処をきちんと持って、何よりバケツに水を入れすぎないというのがある。
 バケツリレーの先頭に立った時に役に立ちそうな知識だ。そんな機会があったら試してみて欲しい。

 一々水を撒いては溜め、撒いては溜めの無限ループを繰り返していると、其の内に水道のビニールホースを持ったドクオさんとシュールちゃんが飛び込んできた。
 手洗い場の水道にホースをくっ付けたドクオさんが、無言で水を撒きはじめる。
 シュールちゃんも無言でバケツに水を溜めては撒きを始めた。僕も其れに習って無言でバケツによる無限ループを続ける。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:48:25.67 ID:LB2o3+0u0

 風呂場には瀧のような水音が響き渡っていた。
 背中に容赦なく掛かる冷たい水に辟易しながらも一息つく。天井についた水がぼたぼたと落ちてきた。冷てぇなぁ。
 その水のなかに、黴は混じっていない。


('A`)「あ、すまんこ」

( ^ω^)「……」


 背中に衝撃。遅れて、僕のシャツから水が滴る音がする。じっとりと張り付く木綿生地に、溜息を吐いた。
 取りあえず振り返ってバケツに溜まっていた水をホースを握るドクオさん目掛けてぶっかける。


('A`)「うおつめてっ!」

( ^ω^)「おっ!」

('A`)「……くらえ! お水のバーストスプラッシャー!」

( ^ω^)「おぉん?! ホース対バケツは卑怯ですお?! こなくそ、必殺! バケツガァァァード!!」

('A`)「跳ね返りがぁああ!」

lw´‐ _‐ノv「……」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:51:19.31 ID:LB2o3+0u0


 先に終っていたらしい伊藤さんは、びしょぬれで出てきた僕らを見て、飲もうとしていたポカリスウェットから口を離した。
 眉毛をひくひくと潜めて口を引き攣らせている。
 早々に避難していたシュールちゃんが僕らの足元にタオルを置いた。


('、`*川「お疲れー……えーっと、大丈夫?」

( ´∀`)「あ、今日もやったのか。モナも行けば良かった」

从'ー'从「服が濡れるから止めて下さいね。今日は着替えないんだから」

( ´∀`)「もーん……」


( ^ω^)「お疲れ様ですおー」

('A`)「お疲れ様でしたー」

lw´‐ _‐ノv「お疲れ様でした。どっち勝った?」

('A`)「いや、引き分け」

( ^ω^)「次こそは決着つけますお」

('A`;)「え、もう良いよ、お前の勝ちでいいよ。疲れた」


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:55:25.01 ID:LB2o3+0u0


 何時の間にか水掛大会になるのは何時ものことで、今日は非常勤バイトのモララーくんや荒巻さん、モナーさんが居ない分大人しい大会だったといえる。
 水の滴る手ぬぐいを頭から外したドクオさんは、僕との攻防ですっかり疲れたのかその場で座り込んでしまった。
 僕も程ほどに疲労している。午後からツンと遊ぶということなどすっかり頭からふっとんでいた。

 荒巻さんは疲れたのか、椅子の上で寝転んで鼾をかいている。


从'ー'从「お疲れさまー」

( ^ω^)「お」

从'ー'从「今日は午後から予定あるんでしょ? 後はボイラー室だけだし、先終っていいよ。シューちゃんも、お疲れー」

lw´‐ _‐ノv「うぃー」

( ^ω^)「え、あ、……お! すみません、帰りますお!」


 思い出して、慌ててシャツを脱いで替えに着替える。シュールちゃんが目を逸らしたけれど気にはしない。
 ああ、今日は何てハードワーク!


(; ^ω^)「おっおっ、お、じゃあお先にですおー!」

从'ー'从「はいはい、じゃあ明日ね」


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:59:16.63 ID:LB2o3+0u0



 美夫湯を出て携帯を確認すると、ツンからのメールが一通舞い込んでいた。慌てて開くと、頃合を見て僕の部屋に迎えに行くという旨が書いてあった。
 少し用事が出来たので、二時以降になるやもしれません、と顔文字付きのフォントが踊っている。
 液晶で時間を確認すれば、現在時刻は午後一時八分。ああ、何とか一眠り出来そうだと重い足を引きずった。


 住めば都の四畳半は夏の熱気で蒸していて、大変不快ではあったが、言っていても仕様が無いので窓を開けて換気をはかる。
 立て付けの悪い擦りガラスをがとがと鳴らして開き、そのまま畳に倒れこむ。水掛大会の余韻で頭がまだ微妙に湿っているけれど、些事だよそれは。
 心地よい疲労感が手足に張り付いてる。

 壁に掛かった時計を確認した。
 一時十六分。三十分だけ、眠ろう。



 背中に水がかかる感触が残っていて、妙にむず痒い。
 可笑しな夢を見た気がする。
 



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:05:15.46 ID:LB2o3+0u0
 
 
 ある冬の事だ。
 
 
 寒い寒いと身を縮こまらせながら何時ものように僕が美夫湯に向かうと、シャッターが閉まっていて、そこに一つ張り紙がしてあるのだ。
 パチンコ屋のチラシの裏に油性ペンで書かれた乱雑な文字。僕が此処のバイト募集をした時と同じ筆跡だ。
 最近知ったのだけれど、あの字はシュールちゃんが書いたらしい。綺麗な字を書きそうなのになぁ、とそのギャップになんだか笑ってしまう。

 美夫湯の軒下に差し込む光は僅かだったが、その僅かな街灯と自動販売機の光だけでもその文字は読み取ることが出来た。


『勝手ながら暫くの間休ませていただきます』


 暫くってどのくらいだい、と僕は夜空に聞いた。
 冬の第三角形はスモックで煙ってぼんやりしていた。

 嗚呼、なんだかとても蒸し暑い。
 汗が額を伝う。気持ちが悪い。




23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:11:50.14 ID:LB2o3+0u0

 僕は慌てて美夫湯の裏に回った。荒巻さんが住んでいる小さな平屋の玄関のチャイムを押す。
 へこん、と酷く頼りない音がした。

「え」

 軽快なチャイムの音が聞こえてこない。当然のように、ボイラー室に灯りが灯っている事も無い。
 営業中はいつでも微かな熱気が漂っている筈の其処は、酷く冷たい。腹の奥底に響くようなあの音も、無い。

 寒い。いや暑い。
 何でこんなに暑いんだろう。

 僕は慌てて携帯を取り出す。ドクオさんの電話番号が入っていたはずだ。
 アドレス帳から呼び出して、通話ボタンを押し込む。

『この電話番号は現在、』

 切った。
 このバイトを始めたときに教えてもらったきり一度も使用していないが、番号が変ったなんて話は聞かない。
 
 暑い。暑い。暑い。


 ふと振り向くとツンが居た。赤いマフラーを首に巻いている。何だか不吉だから、そんな色のマフラーは止めてくれって、前に言ったのに。




25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:14:07.03 ID:LB2o3+0u0

 暑い。暑い。蒸し暑い。焼かれるように暑い。灼熱の元、アスファルトで寝そべったように。
 じりじりと身を焦がす熱気。暑い。暑い。暑い。

 ボイラーの中みたいだ。

 こんな所でドクオさんは毎日仕事をしていたのだなぁと思うと、ホンの少しだけあの駄目な大学生を敬える気がした。


 嗚呼しかし暑い。
 なんでこんなに暑いんだろう。













ξ゚⊿゚)ξ「あ、起きた」

(; ^ω^)「……おん」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:14:57.36 ID:LB2o3+0u0


 夏の日差しを半身に浴びて、不意に意識が上昇した。
 途端に人の気配が額に突き刺さる。反射的に目を開ければ、見慣れたツンの長い睫毛が上下していた。
 身じろぐと、ぐっしょりとシャツが湿っている。この時期に窓際で寝るのは無謀だったなぁ。

 頭を上げると、袖なしのシャツにハーフパンツという、出かけるにしてはラフな格好のツンがいた。
 部屋の端に追いやって在るちゃぶ台からグラスをとり、手渡してくる。結露した水滴が手を濡らした。溶けかけた氷が麦茶の中で揺れている。
 おそらくツンの飲みかけであろう其れをとりあえず飲み干して、一息つく。ああ、水分がカラダに染み渡ってゆく。


ξ゚⊿゚)ξ「容赦なく日当たってるわよ其処。もうちょっと考えて寝なさいよね」

(; ^ω^)「ご尤もですお」

ξ゚⊿゚)ξ「っていうか、鍵開いてたんだけど。無用心にも程があるわよ、あんた」

(; ^ω^)「おっお」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:20:03.09 ID:LB2o3+0u0


 言い返す暇も無く頭を掻く僕を呆れたように見遣って、ツンは台所から麦茶をペットボトルごと持って来た。何やら僕の箪笥を漁っている。
 首筋に手をやると、これまたじっとりと湿っていた。キモチワリィことこの上無い。
 頭はなんだか未だ酩酊していて、熱に浮されたあとのような気分だった。

 ツンは「パンツ何処よパンツ」だなんて言っている。


(; ^ω^)「三番目だお」

ξ゚⊿゚)ξ「何でそんな微妙なところに入れるのよ……っと。新しいパンツ買ったら?」

(; ^ω^)「そんなん自分でするお」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁ自分でしてほしいわね」


 っていうか何で僕の箪笥を漁っているんだ、と聞けないままに頭を掻き毟る。汗が飛び散った気がした。
 やっと冷えて動き出した頭が、何故ツンがいるのかという答をはじき出す。そういや、遊びに行く約束をしていたんだっけなぁ。
 今は何時だ、と壁の時計を確認した。午後五時二十三分。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:23:09.01 ID:LB2o3+0u0


(; ^ω^)「……お! おおおお?! ご、五時?!」

ξ゚⊿゚)ξ「五時よー」

(; ^ω^)「まさかの四時間かお! 何でツン起こさないんだお! もう今からじゃ流石にショッピングモールは無理なんじゃ、」

ξ゚⊿゚)ξ「え? うん、ま、ショッピングモールはもう良いわよ」

(; ^ω^)「おっ?」


 ほら早く着替えなさいよ、風邪引くわよ、と箪笥から出したティシャツを僕に差し出す。
 思わず其れを受け取って、ツンが顔を背けている間に湿ったシャツを脱いで着替えた。落ちかけた黄色い光が部屋に差し込んでいる。
 蜩が酷く五月蝿い。脱いだシャツで汗を拭った。汗臭い。

 僕が着替え終わったのを確認すると、ツンは鞄を片手に僕の手を引いた。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:29:32.86 ID:LB2o3+0u0


ξ゚⊿゚)ξ「バンバンジーか、冷やし中華か、冷たいおでん、どれが食べたい?」

( ^ω^)「お? ばんばん?」

ξ゚⊿゚)ξ「私はバンバンジーが良いんだけど、まぁ今日はブーンのご要望にこたえてあげるわよ。他のが良いなら言いなさいな」


 サンダルを引っ掛けて、鍵を閉める。
 僕の手を引っ張って、向かう先は近所のスーパーマーケット。
 夕飯の為に買い物に来たであろう主婦の方々で大変賑わっている。

 自動ドアをくぐると、汗が一気に蒸発して、鳥肌が立つ。野菜コーナーからは、冷たい霧が漂っていた。
 プラスチック籠を持たされて、ツンの先導に着いて行く。
 ぽいぽいと放り込まれる食材を眺めながら、この状況をもう一度考え直した僕は、調味料売り場を覗くツンを追いかけた。


ξ゚⊿゚)ξ「あ、マヨネーズ切れてたから買ったほうが良いんじゃない?」

( ^ω^)「もしかしてツン、ご飯、作ってくれるのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:33:36.60 ID:LB2o3+0u0


 僕の言葉に頷いて、ツンは黒胡椒のパックを籠に入れて目を逸らす。
 次いで黒胡椒はまにあってます。もういりません。
 棚に戻された黒胡椒のパックを見て、細い肩が一度だけ大きく上下する。向き直ったツンは籠を持っていない方の僕の手を引っつかんだ。

 薄い爪が容赦なく刺さる。いてぇ、



ξ゚⊿゚)ξ「……だ、だってあんた寝てるんだもん。しょうがないじゃない」

( ^ω^)「おぅ」

 

 が、我慢。

 起こせば良いのにさ。嗚呼、だからもう、この恋人は変なところで良く出来ているんだから!
 暑苦しいと怒られそうだし、此処は一応公衆の面前なので、抱きつきたい衝動を抑えて、ツンの手を握り返す。
 手汗がきっしょい! と顔をしかめられた。夏だから仕様が無いじゃねぇか。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:36:04.21 ID:LB2o3+0u0





( ^ω^)「僕もバンバンジーが食べたいおー」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、ゴマ垂れ買わなきゃね」

( ^ω^)「おっお」

ξ*゚⊿゚)ξ「それで、食べ終わったら銭湯行きましょ。あんたのバイト先の」

( ^ω^)「……おー!」


 まぁ、またかいた汗を流すには丁度良いさ。








37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:37:32.38 ID:LB2o3+0u0

今回はこれで終了です。
短すぎて自分でも吃驚。





38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:39:17.27 ID:LB2o3+0u0




( ^ω^) カタカタカタカタ


( ^ω^) カタッ


( ^ω^) 『銭湯バイトだけど何か質問ある?(38)』




( ^ω^)「無かったら飯食べるお」






39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:44:14.52 ID:LB2o3+0u0
銭湯に関する質問とか、あったらどうぞ。
あったら……


ないか……ないのか……


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:50:53.76 ID:iIlOAlRz0
時給いくらなの?


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:55:48.65 ID:LB2o3+0u0


>>40


( ^ω^)「五百三十円だお」

('A`)←六百円

lw´‐ _‐ノv←千円


lw´‐ _‐ノv「孫という名の宝物ですから」


( ^ω^)「お風呂代はタダになるから、その分プラスで僕は八百八十円くらいだおー」



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 17:59:51.00 ID:LXeyTl3DO
これは毎日?
大学は?



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 18:02:20.33 ID:LB2o3+0u0



>>42
作中では週五ですが、其の辺りは創作のあれということで。
実際は週二です。

別に実録という訳ではないです



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 18:05:21.92 ID:LB2o3+0u0
うん……思ったよりも銭湯食いつき悪い!

それでは以上で終了します。支援等、ありがとうございました。






元スレ:( ^ω^)せんとうのスヽメのようです(リンク先( ^ω^)ブーン系小説とか読み物とかの倉庫様)

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