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( ФωФ)ろまねすくのなきごえ

2 : ◆66Xn6HYJi2:2009/08/25(火) 23:52:47 ID:???
VIP国の僻地、森と山と湖に囲まれた小さな村。
その村の傍にある山に、とある獣が住み着いておりました。
その獣は村人達に大層恐れられています。

「強靭な顎、鋭い牙、たくましい四足、そして岩をやすやすと切り裂く爪を持ち、その咆哮は地を揺るがす。
 見上げるほどの巨大な体で、爛々と凶暴に輝く瞳に睨まれれば体はすくみ上がり動けなくなってしまう。
 命が惜しければあの山には近づかない事だ。」

村人達の誰もが口をそろえてそう言います。
子供たちも山には絶対に近づきません。
夜中に聞こえる獣の咆哮だけでも怯えてしまうのです。

そんな獣に今まで沢山の戦士達が挑みました。
あるものは正義のため、あるものは名声のため、またあるものはその獣が持つと言う財宝を目当てに。
ですが、一人も帰ってきたものはおりませんでした。


その獣の名前は「ロマネスク」。
獣が住む山の名前からいつの間にかそう呼ばれるようになりました。




( ФωФ)ろまねすくのなきごえ



3 :読者速。:2009/08/25(火) 23:54:28 ID:???
—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

さんさんと太陽の光が降り注ぐ昼。
ロマネスク山の頂近くにある洞窟の中に、静かに潜み、うずくまる一匹の獣。
その身の丈は一般的な一軒家程で、全身を固くしなやかな黒い毛が覆う。

ゆっくりと起き上がり、大きく伸びをした獣は、体を震わせ二本の尾をぴんと伸ばす。
金に輝く瞳は洞窟の外、遠い空を見上げている。

( ФωФ)『(……腹が減ったな)』

自らの胃が唸りをあげているのを確認し、深呼吸。
獣、ロマネスクは洞窟から軽やかに飛び出し、野山へと駆け出した。


同じ頃、ロマネスク山の中を一人歩く少女の姿があった。

ノハ*゚⊿゚)「あっるっこー! あっるっこー! わたっしはーげーんきぃー!!」

赤い髪は日の光でキラキラと輝き、まとった白い服は風にふわふわとなびいている。
右腕にそこらで拾った枝を携え、それをブンブンと振りながら歩くその姿は微笑ましい。

ノパ⊿゚)「んー、探検に来たのはいいけど、なんにもないなー!」

キョロキョロと辺りを見回すも、彼女の目を惹く物は存在しないようだ。
それでも彼女はずんずんと山を進んでいく。
自らの好奇心を満たす何かを探して。

そんな彼女の傍に迫る影があった。
静かに、それでいて大きな影が。

4 :読者速。:2009/08/25(火) 23:57:00 ID:???

ガサリ。

ノパ⊿゚)「あ」

( ФωФ)『!』

遭遇する獣と少女。
空白は一瞬、流れるのは緊張。
食うか食われるか、捕食者と獲物。

ノパ⊿゚)「あわわわわっ!」

先に動いたのは少女のほうだった。
機敏な動きで逃げ——

ノハ*゚⊿゚)「すげー! 本物のロマネスクだーっ!!」

訂正、ロマネスクの元へ駆け出した。
これにはロマネスクの方も驚き、上手く反応する事ができなかった。
そして少女はそのままロマネスクの前脚に思いっきり抱きついた。

ノハ*゚⊿゚)「すげーすげー!! なんかごわごわだー!!」

( ФωФ)『おい、人間』

ノハ*゚⊿゚)「すげぇうなってるうううううっ!!

( ФωФ)『(……そうか、人語でなければわからぬか)』

6 :読者速。:2009/08/25(火) 23:59:19 ID:???
ロマネスクは人語をしゃべるのが久々だったので、上手く行くように二、三度喉をゴロゴロと鳴らし、自分の声を切り替えた。
少女はキラキラした目で獣を見つめ続けている。

( ФωФ)「おい、人間の娘。気安く触るな」

ノハ*゚⊿゚)「うっひょおおおお! しゃべったああああぁぁぁっ!!」

テンションが爆発急上昇の少女といたって冷静、氷のようにクールな獣。
相反する一人と一匹はこうして出会ってしまったのであった。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—
.
ノパ⊿゚)「あんなー、私退屈だからなー、山に探検に来たんだー!」

少女が落ち着いてからロマネスクに発した一言。
それから少女はヒートだと名乗った。

( ФωФ)「娘」

ノパ⊿゚)「ヒートだっ!」

( ФωФ)「……ヒート、お前は我輩が怖くないのか」

村の人間たちに恐れられ、実際に多くの人々をその手に殺めてきた獣。
本人は別に罪の意識がどうとか、そのような事は考えた事は無い。
生きるため、全てはそれだけのためにやってきたことである。

それでも、いや、それゆえに人間たちには抗う事のできない恐怖として見られてきた。
しかしヒートはそのような様子を一切見せることは無い。

7 :読者速。:2009/08/26(水) 00:03:16 ID:???
ノパ⊿゚)「そーだな……怖いより楽しいの方が強いっ!!」

( ФωФ)「そうか……」

( ФωФ)「ところでな、むs……ヒートよ。我輩は腹が減っている」

その目は鋭く少女を見下ろし、口の端からはよだれが伝う。

ノパ⊿゚)「そーかっ」

それを見ても少女は少しも臆する事は無い。
赤い瞳はロマネスクの金色の瞳をしっかりと見据えている。

( ФωФ)「お前を食べても良いか?」

ノパ⊿゚)「いいけど食べるところ無いと思うぞっ!」

さらり、と。本当になんでもないというように言ってのけた。
これには山の獣も面食らった。
自分を食べても良いと言う人間に彼は今までであったことが無く、一生出会う事は無いと思っていたからだ。

( ФωФ)「お前は……馬鹿なのか?」

ノハ#゚⊿゚)「なんだとーっ!! 私は馬鹿じゃないぞーっ!!」

( ФωФ)「ではきちがいか」

ノパ⊿゚)「基地外?」

(;ФωФ)『(……やはり馬鹿か)』

8 :読者速。:2009/08/26(水) 00:08:40 ID:???

本当に取って食ってやろうと思っていた獣は拍子抜けしてしまい、結局娘を食べる気はなくなってしまった。
しかしそれと空腹は別問題で、彼の胃は今でも食物を要求して鳴いている。
するとそれを聞いた少女はさっと立ち上がり、ロマネスクに言った。

ノパ⊿゚)「私が良い所へ案内してやろうっ!!」

( ФωФ)「良い、ところ?」

ノパ⊿゚)「お腹が空いてるんだろ?」

( ФωФ)「ああ」

ノパ⊿゚)「じゃあ、ついてこいっ!!」

そういうと少女はさっさと歩き出してしまいました。
残される獣一匹。

( ФωФ)『(……おかしな人間だな)』

ノパ⊿゚)「おーいっ!! 早く来いよーっ!!」

そう呼びかける声に、しぶしぶ従い、山の獣は小さな赤髪の少女の後ろをついていく。
人間の移動速度は獣からすると微々たるもので、その行進は抜き足差し足よりも遅く感じられた。

新緑の眩い初夏の山中を一人と一匹は進んでいく。
漏れる木漏れ日の中、鳥のさえずりを聞き、吹く風は世界を撫でていく。
少女は歌い、獣は黙々と歩く。

9 :読者速。:2009/08/26(水) 00:12:40 ID:???
そうしてこうして、半時ほど山中を歩き進んだヒートとそれに付き従ったロマネスク。
ついに少女はとある場所で歩みを止めた。
どうやらヒート曰く「良い所」にたどり着いたようだ。

( ФωФ)『これは……!?』

眼前に広がるのは不可思議な光景。
開けた場所、空のような青色で輝く果実のなった金色の樹木が天を貫くようにそびえている。

ノパ⊿゚)「どうだっ!? すごいだろおおっ!?」

( ФωФ)『まさか……』

彼らの目の前に立つのは、宝樹ゲントローグと呼ばれる偉大なる樹。
その幹を使ったものは決して火や刃物に負けない強いものになり、その樹液を塗ればどんなケガも癒す。
他にも葉を煎じて飲めばあらゆる病気に効くと言われている。

(;ФωФ)『生きているうちにこの目で拝む事があろうとは……!』

ノハ*゚⊿゚)「ここはな、私の秘密の遊び場なんだっ!!」

( ФωФ)そ「なんと!?」

宝樹ゲントローグは特定の場所に定住しているわけでなく、一種の異空間と呼べる場所に存在する。
そして自らの一部をとるに相応しい存在の前に扉を開き、姿を現す。
そのため、普通に生きていれば見ることの叶わない樹なのだ。

( ФωФ)『(この娘は、一体……)』

ノハ*゚⊿゚)「この木の実がすっげぇえうまいんだっ!!」

10 :読者速。:2009/08/26(水) 00:13:48 ID:???
そう言うとゲントローグの幹を軽々と登り、一つ実をもいでみせた。

ノハ*゚⊿゚)「しかも食べたらひと月ぐらいお腹がすかなくなるんだ!!」

そしてその実をロマネスクに向かって放り投げた。
ゲントローグの果実は空腹を長く満たし、最適な栄養を備え、体の調子を良くする力がある。
空腹の獣はそれを口で受け止め、よくかみ締めて味わった。

( ФωФ)「……美味いな」

ノハ*゚⊿゚)「そうだろう!! そうだろうっ!!!」

それはロマネスクにとって初めて味わう甘みだった。
今までに食べたものの中でどれよりも甘く新鮮であった。
そしてなにより、充足感が体中を満たしていく。
彼が今までに味わった事が無い不思議な感覚。

( ФωФ)「お前は食べないのか」

ノパ⊿゚)「私は一昨日食べたから大丈夫だっ!!」

そういうと少女はするすると樹を滑り落ちた。

( ФωФ)「ふむ……人間とはいえ、恩を受けたら返さねばならんな」

ノパ⊿゚)「?」

( ФωФ)「ついてこい」

ロマネスクは一度ゲントローグを見上げると、その場に背を向け歩き始めた。

11 :読者速。:2009/08/26(水) 00:15:16 ID:???
少女は嬉しそうに一つ頷くと踊るように獣の後に続いた。
—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

( ФωФ)「少しここで待っておれ」

ノパ⊿゚)ゝ「りょーかいっ!!」

ロマネスクのねぐらへとやってきた二人。
薄暗い洞窟の奥は人間の目では上手く見通すことが出来ない。
ロマネスクは暗闇を苦ともせず、音も無く奥へと消えていった。

それから中でガサゴソガサゴソとひっかき回す音が何度も聞こえてきた。
ヒートは好奇心に駆られ、何度か飛び込みそうに鳴ったものの、入るなと言われた事を思い出しぐっと耐えていた。
結局ロマネスクは10分ほど経ってから、しっぽにたいまつを持って戻ってきた。


( ФωФ)「こい」

ノハ*゚⊿゚) ワクワク

二人は暗い洞窟の中に一歩ずつ踏み込み、少しずつ暗闇と混ざっていく。
しっぽで掲げられたたいまつがわずかに辺りを照らすのみで、少し先は黒の世界。
それでもヒートは怖がることなく、ロマネスクの後に続いた。

( ФωФ)「ついたぞ」

ノパ⊿゚)そ「おおおおおおおっ! なんだこれ、ぴかぴかだああっ!!」

そこに積まれていたのは金銀財宝、高名な鍛冶師の作った武器、貴重な薬品、特殊な道具などなど物品。
どれもこれもが人間たちの間で重宝されており、これだけあれば一生遊んで暮らせるほどの量。

12 :読者速。:2009/08/26(水) 00:16:18 ID:???
これらは全て、ロマネスクを襲った人間たちが残したもの。

( ФωФ)「人間にとって貴重なものばかりだ。我輩には無用ゆえ、どれでも好きなだけお前にやろう」

ヒートは積まれた品々を一通り見回したが、どれにも手をつけようとしなかった。

ノパ⊿゚)「……」

( ФωФ)「どうした、どれでもいいのだぞ」
  _,
ノパ⊿゚)「……いらないっ!!」

そう言ってそっぽを向く。

( ФωФ)そ「な、に!?」

(;ФωФ)「これだけあれば不自由なく暮らしていく事ができるのだぞ?」

ノパ⊿゚)「欲しくないっ!!」

(;ФωФ)「ではなんなら良いのだ……」

ノハ*゚⊿゚)「友達になってくれええええぇぇぇっ!!」

少女の声が洞窟内で何度も反響した、長く長く。
その声が完全に聞こえなくなった頃、ぽつりと獣は答えた。

( ФωФ)「……なぜ我輩が人間なんぞの友達にならねばならんのだ」

空白。

13 :読者速。:2009/08/26(水) 00:17:14 ID:???
  _,
ノハ`⊿´)「やだやだやだー!! 友達になってくんなきゃやだあああああああああっ!!」

少女は床に寝転がり、無遠慮に駄々をこね始めた。
先ほどと同じく声が響き、二倍三倍に膨れ上がっていく。
甲高い叫び声は獣の耳を貫き、蹂躙する。

(;ФωФ)「くっ……やめろ!」

という静止の声も聞かず、それどころかますますヒートアップしていく。

(;ФωФ)「う……ぐぐっ、ぐぅ……!!」

1分、2分、3分。
時は進めど状況は変わらず、このまま延々と続くかと思いきや。

(;ФωФ)「わかった! わかったから! 友達にでもなんでもなってやるから!! もう騒ぐな!!」

泣く子も黙る獣が折れた。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

ノパ⊿゚)「ロマー! ローマー!! 遊びに来たぞおおおぉぉぉぉっ!!」

ロマネスクの洞窟の前、中に向かって叫ぶ少女。
しばらくして、奥から金色の双眸が浮かび上がり、ロマネスクが顔を出した。

(;ФωФ)「また来たのか……」

あれから一週間が経った。

14 :読者速。:2009/08/26(水) 00:17:55 ID:???
少女は毎日獣の友人の住処へ通いつめていた。

ノパ⊿゚)「遊んでくれええええええっ!!」

( ФωФ)「たまには人間の友人と遊んだらどうだ?」

ノパ⊿゚)「いいからっ!!」

( ФωФ)=3「しょうがないな」

少女と獣はいつも野山で戯れていた。
鮮やかな花の海を走り回り、流れる河で魚を探し、太く高い大樹に登り遠くを見渡す。
雨の日は洞窟の中で少女の語る不思議な物語に耳を傾けた。

二人で遊びまわる間、少女はずっとずっと向日葵のような笑顔を浮かべていた。
純真無垢な少女の笑顔に、いつしかロマネスクも誘われるように笑っていた。
それは今までただ孤独に生きてきた彼にとって、新鮮な日々だった。

( ФωФ)『(……楽しいとはこういうことを言うのだな)』

( ФωФ)『(我輩はただ、生きていた。生きていただけだった)』

( ФωФ)『(コヤツに出会わなければ、そういう気持ちを知る事もなく、ただ生きていたのだろうな)』

眼下で紙に落書きをしている少女を見据える。
こんな、こんな小さな人間にそれを教わるとは、なんとも獣生とはわからないものだ、と獣は一匹思っていた。

ノパ⊿゚)「ん? どうかしたか?」

( ФωФ)「ふっ、何でもない……」

15 :読者速。:2009/08/26(水) 00:19:09 ID:???

ノパ⊿゚)「ふーん」

ノパ⊿゚) 〜♪

( ФωФ)「……」

だが彼には、一つ気になっていることがあった。
ヒートの家族、あるいは友人。つまりは人間関係のことだ。

毎日自分の元を訪れて遊んでいるが、他に一緒に遊ぶ人間の友人はいないのだろうか。
付近の村の住人は自分を恐れているのに、自分の子供を危険な山に遊びに行かせたりするのだろうか。

ロマネスクは何度かそれをたずねてみようかと考えたが、ヒートは触れて欲しくない空気をかもし出している。
だから結局彼は何も聞けずにいた。

ノパ⊿゚)、「あ、もう夕方だ……帰らなきゃ」

残念そうにヒートは言う。

( ФωФ)「そうか」

ノパ⊿゚)「明日も来るからなっ!! 絶対来るからなっ!!」

( ФωФ)「分かった分かった……」

そうしてヒートは今日も夕日を背に帰っていく。
ロマネスクには、その背中がちっぽけで、今にも崩れ落ちてしまいそうなほど儚く見えた。

16 :読者速。:2009/08/26(水) 00:21:03 ID:???
—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

夜。
空から月の優しい光が降り注ぎ、闇をかすかに照らす。
森の影を縫うように進む一匹の猫。

(,,゚Д゚)『ふぅ、小型化するといつもの距離が遠く感じるな』

黒い毛並みに二本の尾、金の眼の猫が行く。
その正体は山の獣ロマネスク。
人間が遺した稀代の道具、自らの姿をどんなものにでも変えてしまう『映し身の鏡』を用い、自らを猫に変えたのだ。

(,,゚Д゚)『(久しぶりだな、この村も)』

山の麓の開けた小さな平地、広い世界で身を寄せ合うように佇む家々。
窓からは暖かな光が漏れ、家族の団欒が伺える

(,,゚Д゚)『さて、どれがヒートの家なのだろう』

村の中をゆっくりと歩いてとおり、家の一つ一つを覗いて回るが、それらしき姿は見えなかった。
最後の一軒に差し掛かったとき、家の中から怒鳴り声が聞こえてきた。

「おい、ヒート! お前、最近あの山に行っているそうじゃないか!」

(,,゚Д゚)『!』

ロマネスクは素早く窓際に近寄り、こっそりと中を覗き見る。
ガラスの向こうに見えるのはのは大柄な男と、細身の女の背中。
そしてテーブルをはさんで意気消沈し、顔を伏せているヒートの姿だった。

(#@∀@)「まったくお前と言うやつは! あの山の獣が村を襲いに来たらどうするんだ!!」

17 :読者速。:2009/08/26(水) 00:22:25 ID:???

ノハ´⊿`)「で、でも」

(#@∀@)「口答えするんじゃない! 今日は飯抜きだっ!! 部屋で反省してろっ!!」

ヒートはとぼとぼと家の外へと歩き去り、そのまま外にある離れの中に消えていった。
どうやらそれがヒートの「部屋」のようだ。
ロマネスクがその様子を遠目から確認していると家の中から男と女の話し声が聞こえてきた。

(#@∀@)「まったくなんてガキだ! 育ててもらってる恩も忘れて迷惑ばかりかけやがって!」

怒り心頭と言った様子で机を叩く大柄な男。

('、`#川「まったく、姉さんは死んでからも迷惑をかけて!!」

女は女で爪を噛みながらイライラを募らせている。

(#@∀@)「お前なんかと結婚するんじゃなかったぜ!!」

('、`#川「はぁ!? 私が悪いっての!?」

その後はもう、戦争。
飛び交うのは罵詈雑言に、拳や平手、足に膝に、花瓶、皿、調理器具などなどなど。

(,,゚Д゚)『(……ふむ)』

彼らの会話から、彼らがヒートの叔父と叔母であることは明白だった。
そして、ヒートの両親はもうこの世に存在しないのだと言う事も。

(,,゚Д゚)『(叔父夫婦とは上手くやっていけてないようだな……)』

18 :読者速。:2009/08/26(水) 00:23:32 ID:???

と、今度は別の方から話し声が聞こえてきた。
ロマネスクは物陰に身を潜めつつ、声のするほうを見やる。

爪'ー`)y‐「おい、クソジジイしっかりしろ」

髪が長くタバコをくわえた若い男が、白髪の老人の肩を担いで歩いている。
老人が酷く酔っているのか、足取りはおぼつかない。

/ ,' 3 「ういぃぃ〜っ、ひっく! わしゃなんともないわーい!」

爪;'ー`)y‐「何言ってんだよ、クソ酔ってるじゃねぇか」

そのままゆっくりとヒートのいる離れの脇を通り抜けようとした時だった。

/#。゚ 3 「馬鹿者! ここを通るなとあれほど言っただろうが!」

突如激昂した老人は慌ててその場を離れようとするが、もつれた足が絡み合い、そのまま壮大に転ぶ。
肩を担いでいた男はやれやれと言った様子で老人の右手をつかみ立ち上がらせた。

爪'ー`)y‐「また、"この村で生まれた赤い髪のものは村に災いをもたらす!"か? まったくクソ古い迷信を……」

男はやれやれといったように肩をすくめる。

/;,' 3 「迷信などではない! 過去に実際に何度もあったことじゃ!」

爪'ー`)y‐「と、言われても俺は見たこと無いからねぇ」

/;,' 3 「現にあの娘の両親も、奇妙な死に方をしたじゃろうが!!」

19 :読者速。:2009/08/26(水) 00:25:25 ID:???
爪'ー`)y‐「たしかにおかしな事故だったが、それだけじゃ判別つかねぇぞ」

その後も老人は怒りと恐怖の入り混じった主張を続けたが、男はのらりくらりとそれを受け流し続けた。
しばらく言い合いが続いたが、それに疲れたのかやがて老人は黙り込んでしまった。

/;,' 3 「……と、とにかく! 遠回りでもかまわんから、ここには二度と近づくな!! いいな!」

爪'ー`)y‐「へーへー、わかりましたよクソジジイ」

そういうと男は老人の肩をもう一度担ぎ、来た道を戻り始めた。

爪 − )y‐「……あんたら年寄りのせいで、あの子は村で孤立しちまってるんだ……クソが」

隣の老人に聞こえないように、憎憎しげに小さく吐き出した言葉は、ロマネスクの耳には届いていた。
そして、そのまま二人の姿は夜の闇に消えていった。

(,,゚Д゚)『……』

人間とはなんともややこしい生き物だ、と獣は一匹思う。
頭が大きいばかりに自らの生み出した制約に縛られ、窮屈な思いをしている。

獣は静かにその場を立ち去った。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

ノパ⊿゚)「ロマああああっ!! 来たぞおおおぉぉぉっ!!」

( ФωФ)「おお、来たか。さぁ入れ」

今日も今日とて赤い髪の少女はロマネスク山の洞窟へ通う。

20 :読者速。:2009/08/26(水) 00:26:23 ID:???
そしてそれを暖かく迎え入れる黒い獣。

ロマネスクがヒートの村を訪ねてから、ロマネスクはヒートに対して今までよりも穏やかに接するようになった。
最初はそれを少しむずがゆいような表情を見せていたヒートだったが、今では素直に接するようになっていた。
奇妙な出会いから始まった二人の関係は、少しずつではあったが、良いものへと代わっていたのだ。

そんな二人に忍び寄る、不穏な影があった。

(;^Д^)「ここが例の化け物がいるってー洞窟だな! やっと見つけたぜ!」

男は、巨大な剣を担ぎ、頑強で魔術的な加護がほどこされた鎧を身にまとっていた。

( ^Д^)「へっへっへっ、さっさと片付けて帰るとするか!!」

彼は軽薄な笑みを浮かべながら洞窟の内部へと足を踏み入れた。

( ФωФ)『!』

その気配に素早く気づいたロマネスクは、ヒートを隠すように入り口とその間に立ちふさがった。
ヒートも何かに気づいたようで、ロマネスクの背中からこっそりと盗み見た。

( ^Д^)「おーおー、マジででけぇwwww」

( ФωФ)「何の用だ、人間」

ロマネスクは静かに殺気を放ちながら現れた男に話しかけた。
ヒートにはそれと悟られないように気をつけているが、ヒートもなんとなく不穏な空気は感じているようだ。

( ^Д^)「うおお! マジでしゃべった! 獣の癖に生意気www」

21 :読者速。:2009/08/26(水) 00:28:13 ID:???
男はロマネスクを指差し、げらげらと浅ましい笑い声をあげる。

( ФωФ)「耳が悪いのか、人間よ。何の用で来たのか聞いている」

( ^Д^)「そんなもん決まってんだろwwwwお前をぶっ殺して賞金も財宝もいただくんだよ!」

そう言うと男は背中に背負った大剣を両手に構えると勢い良くロマネスクに突進する。
鈍く銀色に輝く刃は明確な殺意のもと、ロマネスクに迫った。

( ФωФ)『……雑魚が』

ロマネスクはそれ避けることも無く、強靭な右腕を男に向けて振り下ろす。
待ってましたとばかりに男はその腕を刃で受け止めようとする。
が。

(;゚Д^)「うをおぁああっ!?」

男は予想以上の怪力に吹き飛ばされ、洞窟の硬い壁面に叩きつけられた。
腕が、みしりと音を立てた。

(メ^Д゚)。:*・' 「げほぁっ!」

ワンテンポ遅れてずるり、と体がずり落ちる。
魔術の加護を受けた鎧はその効力を失い、砕けた鉄くずになった。

(;メ`Д゚)「う、腕がぁああぁっ!! うぎいぃぃいいっ!!」

男は痛みに狂乱し、我を失いながら暴れまわる。
ロマネスクはゆらりと音も無く男に詰め寄り必殺の一撃を打ち込まんとしていた。

22 :読者速。:2009/08/26(水) 00:29:36 ID:???
( ФωФ)『……死ね』

振り上げられる右腕。
迫るそれは死神の鎌か、あるいは斬首台の刃か。
確実に男の命を奪わんと近づく死のビジュアル。

(;メ`Д゚)「死ぬ死ぬ嫌だ死にたく無い嫌だ嫌だ嫌だよぉおおぉっ!! うわあぁぁぁ嫌だぁぁぁぁあああぁぁっ!!」

男は悲痛な叫びを上げ、助けをこい、がたがたと震えている。
だが恐怖で体を動かすことが出来ず、迫る腕から逃れられない。
もうダメかと思ったその時。

ノハ#゚⊿゚)「だめだぁぁあああぁぁぁああああぁぁぁあっ!!」

少女が叫びとともに二人の間に飛び出してきた。

( ФωФ)『!?』

咄嗟に動きを止めるロマネスク。
その爪先は少女のわずか数センチギリギリというところで留まっていた。
何が起こったのかわからない男。

ノハ#゚⊿゚)「それはだめだロマっ!! やっちゃだめだああっ!」

大きく手を広げ、男の前に立ちはだかる。
ロマネスクは少し逡巡した後に、ゆっくりと右腕を地に下ろした。

(;メ^Д^)「? ……!!」

(;メ゚Д゚)「う、うぎゃあぁぁぁああぁぁあっ!!!」

23 :読者速。:2009/08/26(水) 00:32:39 ID:???

男はロマネスクの隙を突いて立ち上がり、一目散逃げ出した。

ノハ;゚⊿゚)「うわあっ!?」

あまりに慌てていた男はヒートを突き飛ばしてしまい、ヒートはそのまま地面にしたたかに顔を打ちつけた。
ロマネスクがヒートに急いで駆け寄り、助け起こしているうちに、男はもう見えなくなっていた。

ノハ ///)「いってぇえええぇぇえっ!!」

ヒートの顔は、地面に打ち付けた部分が真っ赤になっていた。
幸いにも鼻の骨が折れたり、血が出たりしているということはないようだ。
ロマネスクは傍らに落ちていた布切れを洞窟内の水溜りで濡らしてからヒートの顔にそっと当ててやる。

( #ФωФ)「まったく馬鹿な事をしよって! 一歩間違えば大怪我していたかもしれないんだぞ!」

ノハ[  ])「……もごもごもご!」

顔に当てられた布のせいでしゃべれないようだ。
ロマネスクはあわてて布を取り去った。
一人と一匹の視線は交わりあう。

ノパ⊿゚)「……」

一拍の間。

ノハ`⊿´)「私はロマにひどいことしてほしくなかったんだっ!!」

そう、叫んだ。
それは幼く、無知で、滑稽な言葉だったかもしれない。

24 :読者速。:2009/08/26(水) 00:34:55 ID:???
生き物が生きていくために、身を守るために、他の命を奪うことは避けられないことである。

だが、少女の真っ直ぐで真摯な気持ちが。
その言葉が、獣の胸の奥に響いて広がっていた。

( +ω+)「……わかった」

( ФωФ)「もう二度とこんな事はしない」

ノハ*゚⊿゚)「!」

ノハ>⊿<)b「よしっ!!」

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

/ ,' 3 「むむ、むむむむ……」

老人、荒巻スカルチノフは悩んでいた。
彼はロマネスク山の傍にある村の村長だ。

/ ,' 3 「あの傭兵もだめじゃったか……」

先日彼が送り込んだ傭兵は、今日の夕方頃、ボロボロになりながら村まで帰ってきた。
男は恐怖の顔を浮かべながら気を失い、今は村長の家の客室に寝かされている。

彼の祖父の祖父の代から、この村はロマネスク山に住む獣に悩まされ続けてきた。
里に下りてきて人間を食らうということが十数年に一度という頻度で起こる。
彼の妻も、それが原因で亡くなってしまった。

ロマネスクを恐れて村を離れたものもいたが、大多数は生まれ育った土地を離れることが出来なかった。

25 :読者速。:2009/08/26(水) 00:36:10 ID:???
そのため、村ではロマネスクを退治してくれる有志を募っていたが、今まで一度も成功したためしが無い。
殆どのものは二度と帰ってくることは無く、帰ってきても恐怖にかられ怯えて逃げさるだけだった。

/ ,' 3 「もう、こうなったら……」

一人思案していると、部屋に荒巻の孫、フォックスが飛び込んできた。

爪;'−`)y‐「おいクソジジイ! 例の傭兵が目を覚ましたぞ!」

/ ,' 3 「そうか」

爪;'−`)y‐「なんかすげぇ暴れてるんだよ! こんな所にはいられねぇって!!」

/ ,' 3 「好きにさせておけばいい」

爪;'Д`)y‐「はぁ!?」

と老人と若者が問答していると、別の部屋でどたばたと大きな音が響く。
続いて何人かの叫び声が入り混じりながら家中を駆け抜ける。

爪;'−`)y‐「な、なんだぁ?!」

/ ,' 3 「どうせ例の傭兵が飛び出していったんじゃろ」

爪;'−`)y‐「あんなケガで! クソバカがっ!!」

フォックスは慌てて傭兵の後を追い、部屋を飛び出していく。
急いで廊下を駆け抜け玄関を飛び出すと、男は躓いたのか地に倒れていた。
痛む体を無視して、男が這いずるように村から離れようとしていた。


27 :読者速。:2009/08/26(水) 00:37:21 ID:???
(;メ^Д^)「こ、こんな所にいたら殺されちまう! に、逃げなきゃ!!」

爪;'Д`)y‐「おい、部屋に戻って休んでろって! クソ酷え怪我なんだ、死んじまうぞ!!」

フォックスは助け起こそうとするが、傭兵は振り払って逃げる。

(;メ^Д^)「うるせぇほっとけバカ!! 俺は逃げるんだぁああぁぁぁっ!!」

そのまま押さえつけようとするフォックスと逃れようとする傭兵でしばらくもみ合い続けた。
荒巻はそんな二人を止めるでもなく、厳しい目で虚空を見つめている。
そこへ、一人の少女が姿を現した。

ノパ⊿゚)「あ」

(;メ^Д^)「あ」

先ほどの洞窟での一件で、お互いの事は覚えていたようだ。
フォックスは一人だけ話がつかめず、疑問符を頭に浮かべていた。

ノハ;゚⊿゚)「お前ー、大丈夫だったかぁあっ!」

少女は傭兵に慌てて駆け寄り、助け起こそうと手を差し出す。
が。

(;メ^Д^)「ひぃいぃぃっ!! ち、近寄るなぁ!!」

振り払われる手。
驚く少女。

(;メ^Д゚)「お、お前がぁあぁっ! お前のぉぉおおっ!! うわあぁあっ!!」

28 :読者速。:2009/08/26(水) 00:38:36 ID:???

爪;'−`)y‐「おい、落ち着けって」

(;メ゚Д゚)「あ、あのガキがっ! あの化け物に命令してたんだよおっ!! 俺ぁ見たんだ!!」

/ ,゚ 3 「なっ!?」

爪'ー`)y‐「何を言ってるんだ、こんな子供が——」

(;メ゚Д゚)「嘘じゃねぇえええぇぇぇっ!! うわぁあぁぁぁっ!!」

男は我を忘れ、一目散に駆け出していった。
体の痛みも忘れてしまったのか、その素早さは尋常ではなく、あっという間に見えなくなってしまった。
残されたのは少女と若者と村長の三人。

場に、緊張が走る。
村長は鋭い目つきで少女を睨みつけていた。
若者は信じられないという顔で少女を眺めていた。
少女は二人の大人から浴びせられる奇妙な視線のわけが分からず、不安そうな表情を浮かべている。

/#。゚ 3 「フォックス、ただちにその小娘を村から追い出せ。やはりそやつは疫病神じゃった」

爪;'ー`)y‐「お、おいおい馬鹿なこと言うなよ」

/#。゚ 3 「ええい、黙れ! こやつがおればこの村に未来は無い!!」

村長の怒鳴り声を聞いた村人達が何事かと家から顔を出し、続々と集まってくる。
小さな集落の村人達はあっという間に半数以上が現れ、三人を取り囲むような形になった。

ノハ;゚⊿゚)「ち、ちが! 私、違う! 違うんだっ!!」

29 :読者速。:2009/08/26(水) 00:39:29 ID:???

/#。゚ 3 「誰がお前の言う事なぞ信じるか!」

爪;'ー`)y‐「落ち着けってクソジジイ! あの傭兵の言った事なんてホラだろ!」

周りの村人達は話がわからず、ざわざわとざわめいていた。

(-@∀@)「あの、うちの姪が何か……?」

村人達の中から、ヒートの叔父が代表して村長に問いかけた。
村長は厳しい顔つきのまま、振り返って言う。

/#。゚ 3 「この娘は山の獣の使いじゃ! 疫病神じゃ!! こやつがおっては村は滅びる!!」

刹那、喧騒は数倍に膨れ上がった。
そんな馬鹿な。やはり赤髪の娘か。怖い。近づいてはだめ。
誰が何を話しているのか分からないほどに人々の声は膨れ上がっていた。

少女は恐怖していた。
大勢の人間に囲まれ、敵意を、憎悪を、恐怖の目を向けられているから。
小さな彼女の胸では、平常を保つ事など出来なくても無理はない。

出て行け、と誰かが言った。男だったかも知れないし、女だったかもしれない。
その声を受けて他の誰かも出て行け、と言った。
声は声を呼び、さらに声を呼ぶ。

いつしか村人達の大合唱が始まっていた。

('、`#川「出て行け! 出て行け!」

30 :読者速。:2009/08/26(水) 00:40:59 ID:???
(#@∀@)「出て行け! 出て行け!」

ヒートの叔父も叔母も、叫んでいた。
誰も彼もが呪詛の声を上げていた。

((ノハ;゚⊿゚)))「あ、う、あ……あう」

唯一フォックスだけは、ヒートのことをかばうように前に立った。
後ろのヒートに小声で呼びかける。

爪;'ー`)y‐「ここは早く逃げろ! こいつら何するかわかんねぇぞ!」

((ノハ;゚⊿゚)))「えう、あ、う」

爪;'ー`)y‐「早くッ!!!」

その言葉にはじかれるように、ヒートは走り出した。
振り返ることなく、ただただ走った。

足がもつれて、転びそうになっても。
息が苦しくて、胸がつぶれそうになっても。
恐怖が足を動かさせ続けた。

ヒートが去った後の村では、村長が村人達に呼びかけていた。
その声は大きく、激しく、猛り狂っていく。

/#。゚ 3 「皆の衆! わしは今、一つの決断をした!!」

/#。゚ 3 「これは今までの村長たちも一度は考え、しかしその犠牲の大きさゆえに封じた獣への解決策じゃ」

31 :読者速。:2009/08/26(水) 00:43:19 ID:???
ごくり、と誰かがつばを飲む。

/#。゚ 3 「しかし! 今となってはその犠牲を払ってでも解決しなければいけない事態じゃ!」

/#。゚ 3 「あの小娘は必ずや復讐に現れるじゃろう!」

/#。゚ 3 「さあ、立ち上がるのじゃ!! わしらの平穏を勝ち取るためにっ!!」

村長の狂気に飲まれた村人達も雄たけびをあげ、その唸りは村中を振るわせる。
一人取り残されたフォックスは、もはや流れに置き去りにされ、異様なる光景を眺めている他無い。
沈む夕日に照らされた人々の一団は、さながら大きな1匹の怪物に見えた。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

夜のロマネスク山。
真っ黒い獣が、切り立った崖の上に一匹。
優しく注ぐ月明かりに照らされ、全身の毛が漆黒に輝く。

( ФωФ)『ヒートは、どうしているだろうか……』

思うのは、真っ赤な髪が印象的で、小さな小さな人間の女の子。
弱くて、ちっぽけで、真っ直ぐで、寂しい女の子。
いつの間にか自分の中でとても大きな存在になっている事に、獣は驚いていた。

( ФωФ)『もう、寝るか。明日また会える』

一つ、二つと軽やかに岩を飛び移り、いつもの自分の住処へとたどり着く。
中に入ろうとした時、後ろに気配を感じた。
ロマネスクが振り返ると、そこにはボロボロになり、息を乱したヒートが立っていた。

32 :読者速。:2009/08/26(水) 00:45:50 ID:???
ノハ;⊿;)「ロ、ロマ……ああ、あう、うぅううぅっ!!」

ロマネスクの姿を見たヒートは安堵からぼろぼろと涙をこぼす。
あわてたロマネスクはすぐに彼女に駆け寄る。

(;ФωФ)「一体何があったのであるか」

ノハ;⊿;)「うああぁあぁあぁぁんっ!! うわあぁっ、ひっ、うわあぁぁぁん!!」

尋ねても、帰ってくるのは泣き声ばかり。
仕方なしに、ロマネスクはヒートを住処に招き入れる。
彼はおろおろしながらも、彼女の背中を優しくさすってやり、落ち着くまで待ち続けた。

それからどのくらいの時が経っただろうか。
ヒートの泣き声はいつしか嗚咽へと変わり、洞窟の中は静まりかえっていた。
ロマネスクは横たえた自分の体にヒートをもたれさせ、抱きしめるように包み込む。

( ФωФ)「もう、大丈夫か?」

ノハう⊿゚)「うん……グスッ」

( ФωФ)「何があったか、話せるか?」

ノハう⊿゚)「……村を追いグスッ、出されグスッた……」

( ФωФ)「!! ……そうか」

ロマネスクは、いつかこうなるんじゃないかと以前から思っていた。
ただでさえ、村人達から疎まれていて、さらには山の獣である自分と付き合いがある。
いつそうなってもおかしくは無かった。

33 :読者速。:2009/08/26(水) 00:47:40 ID:???

原因は聞かなくてもわかっていた。
あの男が吹聴したのだ、と。

( ФωФ)『(やはりあの時……いや、過ぎたことか)』

彼が考えるべきはこれからのこと。
そして彼には一つの案があった。

( ФωФ)「なぁ、ヒート。お前さえ良ければなんだが……」

ノパ⊿゚)「……?」

( ФωФ)「我輩と一緒に旅に出ないか」

ノパ⊿゚)「!」

( ФωФ)「どうせ我輩もお前も人々に疎まれている。ここにいるよりも、安住の地を探した方がずっと良い」

自分が生まれ育った地を離れると言う選択を迫る。
彼女が是と言うか否と言うか、ロマネスクにはわからなかった。
幼い彼女には、どちらにせよ辛い事が待ちうけているのは明白だった。

ノパ⊿゚)「……」

沈黙。
長い長い沈黙。

( ФωФ)「嫌か?」


35 :読者速。:2009/08/26(水) 00:49:34 ID:???
ノパ⊿゚)「……ううん」

小さく、頭を振った。
そして、息を大きく吸う。

ノハ*゚⊿゚)「行く!! ロマと一緒に行く!!」

ヒートは是と言った。
いつもの彼女らしく、大きな声で、言った。

( ФωФ)「そうか……一緒に行こう」

ロマネスクは一匹思う。
彼女を、必ずや幸せにしてみせると。
使命感や義務などではなく、自らの意思、望みとして。

ふと、ほんの微かに、ロマネスクの鼻腔を何かがくすぐった。

( ФωФ)「……! この臭いは……まさか!」

それは、死の香り。
あわてて住処を飛び出し、山を見下ろしたロマネスクはその光景に、驚愕せざるをえなかった。

(;ФωФ)「なんと……なんということだ!!」

山が、燃えていた。

眼下に広がる木の海は、真っ赤に染まり、もうもうと煙を吐き出し続ける。
立ち昇る黒煙は空を覆い、灰の雨を降らせている。
炎の範囲は凄まじかく、山の麓のあたりはぐるりと炎に包まれていた。

36 :読者速。:2009/08/26(水) 00:50:36 ID:???

森の中を、様々な生き物が逃げ惑う。
崩れ落ちる木に潰され、降りかかる火の粉にやかれ。
そこには、死が立ち込めていた。

ノハ;゚⊿゚)「うわわ、わわわっ!!!?」

遅れてやって来たヒートが山を見渡し、素っ頓狂な声をあげた。

(;ФωФ)「馬鹿者! なぜ出てきた!」

ノパ⊿゚)「だ、だってロマが慌てて出て行くから」

(;ФωФ)「とりあえず口に布を当てろ! 煙を吸わないように!」

慌てて口元を服の裾で口を覆うヒート。
そのまま彼女を尻尾で掴み、そっと背中に乗せる。

(;ФωФ)『(とにかくここを脱出せねば……)』

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

少し、前のこと。

/ 。゚ 3 「燃やせ燃やせぇっ!! 聖なる炎で燃やし尽くせぇ!!」

山火事は、村人達の手によるものだった。
山の周囲の木を切り倒し、燃え広がらないようにしてから、山に火を放った。
火種を運ぶもの、木を切り裂くもの、火を大きくするもの。
誰も彼もがとり憑かれたようにふらふらと、それでいて素早く動き回っている。

37 :読者速。:2009/08/26(水) 00:52:38 ID:???

その動きは迅速で、ただの人間にここまで出来るのかと、一人佇むフォックスが疑問に思うほどだった。
それだけの狂気が人々を包み込んでいたのだ。

/ 。゚ 3 「我らが平穏のためにぃ!!」

くるくる狂う。
人々が狂う。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

火は、山の半分以上を多い尽くしていた。
その速度はじりじりと歩み寄るかのように。

(;ФωФ)『(逃げ場なし。強行突破するしかないか)』

ノハ;゚⊿゚)「ど、どうするんだ!?」

( ФωФ)「突っ切る」

ノハ;゚⊿゚)「で、出来るのかぁ!?」

( ФωФ)「やってみせる。信じろ」

ロマネスクにとって、これは一か八かの賭け。
それでも、ヒートを少しでも安心させるために。

ノパ⊿゚)「わかったああぁあっ!!」

( ФωФ)「行くぞっ!!」

38 :読者速。:2009/08/26(水) 00:55:12 ID:???

坂を、駆け下りた。
ぐんぐんと迫る炎の海。
それでも、速度は落とさず。

背中のヒートは緊張と不安のあまり、ロマネスクの毛を強く握り締めた。
じんわりと汗が滲む。

迫る迫る。
炎が迫る。
迫る。

飛び込んだ。

瞬間、ヒートの肌で感じる温度が、空気が変わった。
呼吸をするたびに、喉が痛む。

ロマネスクは駆ける。
迫る炎を交わし、生い茂る草木を飛び越え。
走る走る。

(;ФωФ)『(……中々に厳しいっ!)』

この火事の中を走るだけでも一苦労なのに、灰が目や鼻や喉をつく。
炎は触れずともその熱が体を照らし、体温が必要以上に上昇する。
さらに迫る火の手を避けるために真っ直ぐ麓まで降りられず、遠回りを強いられる。

それらはじわじわと、確実にロマネスクの体を蝕んでいく。
足を、肺を、目を、喉を、耳を、鼻を。

39 :読者速。:2009/08/26(水) 00:57:08 ID:???
(;ФωФ)『(だがっ、負けられぬ!)』

今、自分は文字通り背負っている。
大切な人の命を。
ならば、倒れるわけにはいかない。

その想いが、ロマネスクを駆り立てる。
たくましい四足が地面を捉え、燃える山の中を確実に下っていく。

そして。

(;ФωФ)『見えたっ!!』

炎の無い景色、地獄の終着点、自由の場所。
あと、ロマネスクの十数メートル先にある。

走る走る走る。
そして、境界線が迫り。
森を抜けた。

そこに。

狂気に駆られた人間達が、いた。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

(;ФωФ)『なっ、なんだと!?』

ノハ;゚⊿゚)「お、おじs——

40 :読者速。:2009/08/26(水) 00:59:26 ID:???
(-@∀@)「出たぞぉおおおぉおおぉぉっ!! ロマネスクが出たぞおおぉぉおぉぉっ!!」

叫び声が遠くまで轟く。
その声を聞きつけて、村人たちが現れる。
手には、武器。

/ 。゚ 3 「やはり出てきたかぁ!! 山の獣よぉ!!」

荒巻が、村人達が、一人と一匹の前に立ちふさがっていた。
彼らはこの炎を抜けてロマネスクがやってくるという可能性を危惧し、待機していたのだ。

/ 。゚ 3 「やれえぇぇっ!! 殺せえぇぇっ!!」

その一声で、村人が殺到する。
鍬、鎌といった農具を持ったものもいるし、剣や槍、弓と言った武器を持っているものもいる。
全員に共通しているのが、目が血走っていること。

(;ФωФ)『くそっ、邪魔だ!!』

ロマネスクは、それらを振り払うために、左前足を振り上げた。
が。

        ノハ`⊿´)「私はロマにひどいことしてほしくなかったんだっ!!」

(;ФωФ)『はっ!』

あのときの約束が脳裏をよぎった。
その隙をついた村人達の殺意がロマネスクの体に突き刺さる。
それは微々たるものだが痛みが走る。

41 :読者速。:2009/08/26(水) 01:01:10 ID:???
(;ФωФ)『どうやって切り抜ければ……』

ヒートとの約束がある限り、彼らを殺す事はできない。
戸惑いは、更なる状況の不利をもたらす。
村人達の何人かが投げ縄を取り出したのだ。

その縄をロマネスクめがけて投げ始めた。
体に人間達がまとわりついて動きが鈍っていたロマネスクは何本かの縄に捕らえられてしまう。

(;ФωФ)『くそっ!!』

縄はもがけばもがくほど、ロマネスクの体に食いついた。
上手く動けないロマネスクに、容赦なく攻撃が浴びせられた。
切られ、突かれ、刺され、弓が降る。

今までの疲労の蓄積と傷によるダメージ。
さらには自らの本能を押さえ、殺さずに切り抜けようと考えを巡らせて。
少しずつ、少しずつロマネスクは疲弊していた。

だから彼は注意力が散漫していた。
自分の体に巻きついてる縄の異様さに気がつかなかった。
その縄は何かに濡れて怪しくてらてらと輝いていた。

/ 。゚ 3 「燃やせええぇぇぇっ!!」

その合図で、縄に炎が放たれた。
縄にしみ込ませていた油を伝い、その炎は一気にロマネスクに襲い掛かる。

(;+ω+)『うぉおぅぐぁああぁあぁぁあぁっ!!』

42 :読者速。:2009/08/26(水) 01:03:27 ID:???
縄の食い込んだ足や首などを焦がす。
凶悪な熱量、それはもはや痛みと変わらず。
激しい燃焼はロマネスクの理性を削ぐ。

熱さに暴れまわるロマネスク。
当然縄を掴む人間や、周りにまとわりついた人間達ははじかれ、叩きつけられ、引きずられた。
それでもなお、人々は止まる事を知らずにロマネスクを攻め立てる。
倒れても倒れても立ち上がり、狂気を、凶器を振るう。

(;+ω+)『ぬぐぅっ!! うぐっ!! うおおおぉおぉおぉっ!!』

ロマネスクはさらに暴れ狂い、ついには自らの身に絡み付いていた縄を剥ぎ取る事に成功した。
全身に燃え上がる前に、何とか脱出することができた。
背に乗るヒートはただただ、強くロマネスクにしがみつくばかり。

( ФωФ)『はぁっ、はぁっ……』

ロマネスクが、足を止めた。
溜まった疲れが、足を止めさせたのだ。
そこめがけて放たれた矢の雨。

(;ФωФ)『ぬおおおおぉおおっ!!』

身を低くかがめ、そのまま前方へとびだす。
少しでも矢をかわすために。

その時、前脚が地面から飛び出た切り株にぶつかる。
ふわっと、獣の黒い体が浮かぶ。

ロマネスクの目にすべてが、スローに見えた。

43 :読者速。:2009/08/26(水) 01:05:25 ID:???

その勢いは、背中に乗ったヒートを、跳ね上げる。

そこに迫る矢。



ぐさり。

貫かれた体。

地に叩きつけられる少女。


( ФωФ)『あ、あ……あ、ああ……』


(;  ω )『うわぁぁあああああああああぁぁああぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁああああぁぁあぁっ!!』

その時獣が、鳴いた。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

(   ω )『……』

それからは、一瞬だった。
真っ黒の獣は、その強靭な四肢で人々を蹴り飛ばし。
鋭い爪で引き裂き、長い牙で噛み砕く。
粉砕し、蹂躙し、殺戮した。

44 :読者速。:2009/08/26(水) 01:07:09 ID:???

残ったのは、血と炎で真っ赤に染まる亡骸の山。
どれが誰かもわからないほどに。

( ФωФ)『はっ』

ロマネスクは我に変えると、慌ててヒートの元に駆け寄った。
少女は、赤々と地に横たわっている。

(;ФωФ)『しっかりしろっ!! ヒート!! ヒートォ!!』

指先で、そっとゆする。
返事は無い。

(; ω )『ヒート、ヒート、ヒートォ!!』

何度も、何度も呼んだ。
叫びにも似た声で。
それでも返事は無い。

(; ω )『そうだ、心臓は!?』

獣はぴんと伸びた耳をそっと少女の胸にあてる。
突き刺さった矢が、うっとうしい。

とくん……とくん……

(;ФωФ)『!!!』

ヒートの心臓は弱弱しくも、動いていた。
彼女はまだ、生きている。

45 :読者速。:2009/08/26(水) 01:09:20 ID:???
しかしその動きも少しずつ遅くなっていくのが、わかった。

(;ФωФ)「なんとかしなければ……そうか!! ゲントローグ!!」

獣は思い出した、奇跡の樹を。
あの宝樹ならば彼女を救えるかも知れない、と。

ロマネスクはそっと横たわる少女を持ち上げ背に乗せた。
そして、走り出す。

獣は、ただひたすらに走った。
闇雲に、どこをどう走っているかも分からずに。
ただただ走り続けた。
ずっとずっと、走り続けてみせた。

それでも、ゲントローグは見つからない。
彼の前には現れない。

(;ФωФ)『どこだあああぁぁ!! ゲントローグ!! どこだああぁぁ!!』

吼えた。獣は吼えた。

(;ФωФ)『姿を現してくれぇぇえぇぇ!!』

吼えた。願いを込めて吼えた。

(;ФωФ)『ゲントローグぅっ!!』

その時、ロマネスクを眩い光が包んだ。

46 :読者速。:2009/08/26(水) 01:11:06 ID:???
—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

次に見えたのは、いつかと同じ光景。
宝樹ゲントローグが以前と同じ輝きを放ち、鎮座していた。

( ФωФ)『お……おおお!!』

( ФωФ)『宝樹よ!! どうか、どうかこの娘を助けてくれっ!!』

ロマネスクは樹に近づこうとする。が。

「止まれ、黒い獣よ」

静かで、威厳に満ちた声が当たり一帯に響いた。

(;ФωФ)『だ、誰だ!? どこにいる!?』

「私は、ゲントローグ」

(;ФωФ)『なんだと!?』

聖なる樹は、輝きを増しながら静かに語る。

「その娘はもう、助からぬ」

(; ω )『!??!』

「我が力を持ってしても、その娘を救うことは出来ぬ。その娘の命はここで尽きる、それが宿命だ」

ゲントローグがそう告げたとき、ぷつりと何かが切れる音がした。

47 :読者速。:2009/08/26(水) 01:13:46 ID:???

(; ω )『何故だ!! 何故なんだぁ!!』

(; ω )『何故この子がこんな目にあわねばならんのだ!! この子は何も悪くないのに!!』

(; ω )『ただ、ただ普通に生きようとしただけなのに!! 何故だぁ!!』

心の奥底からの、悲痛な叫び。
だが返事は無い。
誰も答える事ができない。

いつしか、周りの風景は元の場所に戻っていた。

(; ω )『くそぉっ……くそぉおおぉぉおおぉぉぉおっ』

獣の泣き声が、広くがらんとした誰もいない山に響いた。

—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

空から、雨が降る。
激しい雨が降る。

全てを洗っていく。
燃えた木も、焼け死んだ獣達も、倒れた人々も、薄汚れた大地も。

そして、黒い獣と、赤い亡骸にも。

ロマネスクは、少女の傍にそっと寄り添う。
そして優しく包み込んでやる。


49 :読者速。:2009/08/26(水) 01:14:53 ID:???
( ФωФ)『ヒートよ。我輩はずっとお前と一緒だ』

( ФωФ)『どこへも行かない、ずっとずっとだ』

( ФωФ)『だから、一緒に遊ぼう。一緒に笑おう』

( ФωФ)『なぁ、ヒート』

少女の頭をそっとなでる。
その顔は笑っているように見えた。
それを見て、ロマネスクは、満足そうに眠りについた。



その後、その地域一帯は、激しい雨と禿げ上がった山によって生み出された土砂崩れに全て飲み込まれた。

50 :読者速。:2009/08/26(水) 01:17:38 ID:???
—※—※—※—※—※—※—※—※—※—※—

月日は流れ。
誰も訪れない名も無き平原。

どこまでも続く、草花の群れ。
そこに、男が一人佇んでいる。
その瞳は、悲しげで。

爪'/−`)y‐「あんたら、今、幸せか?」

その視線の先は、花畑の隅、少し外れたところ。
そこには小さな赤い花と背の高い黒い花が、仲睦まじそうに並んでいた。
とても幸せだ、と言いたげに。


終わり




掲示板が一時休止中のため元スレ不詳(規制されている人用、作品投下スレ2 と思われますが詳細不明)
元スレ・まとめともに現在見ることの出来ない状態のため、ウェブアーカイブから発掘してまとめています。ご了承ください。

文字化けの修正を行っています(ブログの中の人)
[ 2014/01/25 23:21 ] スレ立て短編 | TB(0) | CM(0)

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