スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

( ´_ゝ`)(´<_` ) 無題

377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:17:29.45 ID:hJabgr8LO
彼はこの密林の主
蹂躙を許された唯一の者

大岩を思わせるその巨躯は、後光差さんばかりの荘厳さに満ち溢れ
大地をえぐるその四肢は、あらゆる障害を踏み躙る槌となる

貫く眼光は、対峙する勇気をひねり潰し
天を仰ぐ純白の双牙は、命を刈り取る鎌となる


縄張りに愚かにも踏み込むなかれ
それ即ち轢死体への秒読み宣告

決して気付かれてはならない
何があろうと怒らせてはならない

自らの生物としての脆弱さを自覚し、畏怖せよ

嵐の様な暴虐に、ただただ怯え涙せよ

人に抗う術無き彼の者の名は

大地の暴君【大猪】ドスファンゴ



382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:20:03.94 ID:hJabgr8LO
(´<_`;)「まったく。これだから俺は嫌だと言ったんだ」

腰の高さほどまで自由奔放に伸びた雑草。
耳に届く羽音は遠くなり近くなりながら、煩く響き続ける。
視界を至る所でさえぎる熱帯の植物。


滝のように流れる汗が下着を過剰に湿らせていて、肌にぺっとり張りついている。

独り言でも言ってなければ溶けてしまいそうになる密林。

そこに立つ弟者。

(´<_`;)「暑さと湿気だけで気力体力減るってのに、その上肉食獣や小型竜に見つかったらどうするつもりなんだか」

立ちこめる熱気とむせるような植物の臭い。

不快指数は初めから限界ぎりぎりだ。

まして全身に重い金属性の防具を着込んで、馬鹿でかくて糞重いハンマーを持ってれば+αには十分だろう。


383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:20:53.97 ID:hJabgr8LO
(´<_` )「なのに」

目の前の地面に視線を落とす。

(´<_` )「こいつときたら」

嫌味を込めて、そこにいるモノに声を投げる。

真っ赤に塗られた鎧がもそもそと蠢いていて、声は軽くシカトされた。

(´<_` )「いい度胸だ糞兄者」

もちろん返事は無いのだが。


386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:21:56.33 ID:hJabgr8LO
(*´_ゝ`)「もうおらへんのんか? まだ隠れてんのとちゃうんか、んん~?」

(´<_` )「おい兄者」

(*´_ゝ`)「ほーら、こんなトコに隠れてた☆ さぁおいで、お兄さんが優しくして あ げ るっ」

(´<_`#)「兄者」

(*´_ゝ`)「おや? 君もうちょっと上手く隠れなきゃね。お尻だか頭だかがコンニチワしているよぉ」

( <_ #)「おい」

(*´_ゝ`)「あはっ☆ 僕の手がそんなに嬉しいのかい? しょうがないなあ、おまえもおいで」

地面に這いつくばって一心不乱にミミズを地中から引き抜く男。

両膝で小さな壺をはさみ、獲物をぽいぽいと放り込んでいる。

( <_ #)

無言でハンマーの柄に手を掛ける

頭を腐葉土にめり込ませていた塊が無造作に引き抜かれ、土がぼこりと音をたてた。

(*´_ゝ`)~♪

もちろん赤いのは気付かない。


388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:23:55.22 ID:hJabgr8LO
(´<_`#)

持ち手の滑り止めががっちり握られ、苦しそうな音を立てた。

そのまま変態赤鎧の頭をこづく。鈍い音がしたが弟者に気にする素振りは無い。

(´<_` )「兄者、気味の悪い独り言を吐くな。ミミズごとすり潰すぞ」

( ゜_ゝ゜)「ぅぐっ!? 痛っぁなんだ何事だ!??」

振り返りそこに立つ仁王に初めて気付いた。

脳みそが急激に働いたのか。
氷点下の視線と声の主を理解し、お花畑からゲンジツに帰って来たらしい。

頭への衝撃でよたつく視線のまま、震えながら血を分けた兄弟を見上げる。

(;´_ゝ`)「おおおお落ち着け弟者」

(´<_` )「心外だな兄者。俺はいつでも冷静だ」

ゴッ ゴッ と頭部を殴りながら冷徹に返す。

(;´_ゝ`)「聞け弟者! 俺は今侵グフッ……侵略者なのだ。平穏と信じガハッ……信じていた日常を蹂躙する快感は誰にゴフゥッ……も止めらガッ……止められんメメタァ」


391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:26:07.97 ID:hJabgr8LO
兄者のたわけた返事を聞いて殴る手がとまる。
かわりにぎちぎちと掴んだ滑り止めが鳴き、腕の筋肉が更に固まった。

(´<_`#)「言いたい事はそれだけか兄者」

( ´_ゝ`)「もちろんこれだけじゃ無いぞ」

先程までのダメージが即座に夢散したように、ハツラツとした声。

一瞬にして四つん這いワンワンスタイルから正座に移行し、弟者に向き直る。

その目は純真無垢な子供だけが持つキラキラで満ち溢れ、今にも話しだしそうな空気を作り出した。

実に気持ち悪い。

(*´_ゝ`)「語らせてくれるのか弟者。お前にしては殊勝な心がけだな。よし、ではどこから話そうか。生態か? 交尾か? 擬人化方法論か?」

(´<_` )「……っ……」

( ´_ゝ`)「ん? 何かな弟者君。よく聞こえないぞ?」

(´<_` )「……っとべ」

( ´_ゝ`)「なんだ弟者、おいしい米との炊き込み方についてか?」

(´<_`#)「吹っ飛べアホがぁぁぁっ!!」

(;´_ゝ`)「ちょっwwwwおまwwwwww」

392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:27:10.98 ID:hJabgr8LO
弟者の手には蒼い岩石に鉄棒を突っ込んだだけの、巨大で粗雑なハンマー

それがパラパラと土を落としながら持ち主の頭上で静止した。

(´<_`#)「ぉあああああぁぁぁっ!」

塊は上から左へ、左から下へ遠心力を蓄えるように弧を描く。
真下に来た時に鈍器は横への運動をはじめた

(;´_ゝ`)「アッー!!!」

容赦なく振りぬかれるハンマー

その勢いは兄者を前方上空へ吹き飛ばしただけに納まらず、通過点の草、虫、土を根こそぎ蹴散らす。

(´<_`*)

会心の手応えに弟者が口の端だけ持ち上げ軽く笑う。

巨大な鈍器は円運動を保ちながら勢いを徐々に緩め、背中でぴたりと止まった。


396 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:28:58.98 ID:hJabgr8LO
(´<_` )「流石だな、良い当りだ」

上昇運動を終え、墜落運動に入った兄者を見ながら呟く弟者。

放物線を忠実に守る空飛ぶ赤鎧が、ぐんぐんと終着地点に近づいて行く。

必死に手足をばたつかせ滞空時間の延長を試みてはいるが、そこはやはり人。

勇気と根性だけで空を飛べる筈も無い。

ほんの一呼吸置いて

(メ゜_ゝ。)「ぐえ」

大岩に激突した音と踏まれた蛙の様な声が、虫の羽音やざわめく木々に紛れてかすかに聞こえてきた。


398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:30:27.57 ID:hJabgr8LO
墜落しその上で伸びてしまった兄者を眺めながら、加害者はそばに落ちているクチバシを模した赤い槌に手をのばす。

(´<_` )「糞兄者、お前の死は無駄にはしない。墓標に貰っていくぞ」

槌の頭を支点にし、倒れていた持ち手に指を掛けて柄尻を上に向ける。

(´<_` )「……これは」

視線の先。

丸く平たい柄尻に【さすが あにじゃ】と拙い手彫で刻んである。

(´<_` )「流石だ兄者。死した今でも想像を絶するキモさだな」

悲しみの混じる声で亡き兄への追悼の意を示す。
そして別れを惜しみながら遺された品に手をかけた。

そのまま、持ち上げようとして

(´<_` )「ふっ……!?」

異常に気付いた。


400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:31:25.25 ID:hJabgr8LO
握る左手に力を込め持ち上げ、肩に担ぐ予定だったのだがそれは適わない。

(´<_`;)「な……なんだ!?」

自分の槌を下に置き、両手で無理矢理持とうとするのだが、ほんの僅かも土から浮かない。

極端に重いのである。

(´<_`#)「こ の や るぁぁぁぁ!」

絶叫と筋肉が共鳴し赤い槌がわずかに浮いた。

だが、こぶし一つ分もあがらない。

(´<_`#)「が……ぎぎっ」

歯をくいしばり、足を踏張るが敢えなく槌は地面に落ちた。

衝撃が足に響く。めこりと音を立てて頭が半分土にめりこんだ。

(´<_`;)「兄者こんなものを振り回していたのか?」

認めたくはないがヤツは漢だったのではないか。

そうつぶやきながら何気なしに御遺体の方をちらりと見た。

401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:32:21.54 ID:hJabgr8LO





(((  _ゝ )))





動いてなさる。



事故により逝去した赤鎧ではなく、そのしたの岩が。


403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:38:16.24 ID:hJabgr8LO
大の字に倒れた兄者をゆらゆら揺らしながら

少し持ち上がっては、すとんと落ち

少し持ち上がっては、ぽとんと落ち

そのたびに力の入らない両手足がぶらぶらと動いている。

(´<_`;)どうなっている?

弟者は小さく自問した筈だった。

だが声は出ず、ただ、かすれた息が唇から漏れ出たに過ぎない。

((´<_` ))!?

不意に膝が笑い始めた。
がくがくと揺れるからだは言う事を聞かず、力なくその場にへたりこんでしまう。


ねっとりとした脂汗が額を背筋を伝っていく。


(´<_`;)「んん……ぐっ……」

乾いた喉が水分を欲しがり、無理矢理唾を飲みこんだ。

404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:39:09.92 ID:hJabgr8LO
(´<_` )「……最悪だ」

辛うじてノドが声を絞りだす。

心が拠り所を求め、座り込んだまま無意識にハンマーの柄を引き寄せ、握り締めた。

(´<_` )「うかつだったな……テリトリーだったのか……」

言葉はあくまで冷静。

しかしそれとは裏腹に片膝を折った態勢のまま、膝はそれでも震え続ける。

(´<_` )「……っ」

云うことを聞かない足を無理矢理抑えつける。

僅かながら震えが小さくなったのを感じ、体の恐怖を強引に理性でねじ伏せ、両膝の抗議を無視して立つ。

ふらつく体。傍にはえている木の幹に乱暴に手を付き、安定を得た。


407 名前:さるくらった。驚いた。:2007/05/17(木) 00:40:47.05 ID:hJabgr8LO
(´<_` )「逃げられそうには無い……か」

すでに自分の存在も知覚されているだろう。

目前の光景が、自分が強制的に生物的に弱者であると自覚する。

(´<_` )「絶対絶命というやつか。ツイて無いなまったく」

いまだ震え続ける膝に喝を入れ奮い立たせる。
そして、全体重をかけ右足を一歩前に踏み込んだ。

大地を踏みにじってめり込む感触が、制御を失っていた利き足の主導権をあるべき所に戻す。

(´<_` )「しかし愚痴ってもなんともならんか……くるなら来い、化け猪」

その名を出して、ひしゃげかけた心に杭を打つ。

折れぬ心は幾千の兵器に勝ることを彼は知っている。。

(´<_` )「密林の主、暴虐の王……ドスファンゴ」


409 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:41:40.01 ID:hJabgr8LO
その双牙は鈍く光る白。

植物を踏み潰し、地面を抉りながらゆっくりとこちらに向き直る。

小さな山にすら見えるその姿は、王の異名に相応しく巨大で威圧的だった。

ヒトの腰までのびた雑草は、彼の膝にも届いていない。


弟者は肺に限界まで酸素を取り込んでいく。

軽く息を止め、ヘソの奥に力を込めた。


一瞬の後。

(´<_`#)「いい加減起きろぉっっ!! いつまで寝ている糞兄者ぁぁぁぁっ!」


途方も無い声量、開戦の怒号をあげた。

その声に合わせ大小無数の鳥が一斉に飛び立ち、地表に羽ばたきで起きた風が吹く。


突風に目を細める弟者。しかし睨む相手からは決して外さない。

いや、外せなかった。


413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:46:26.96 ID:hJabgr8LO
程なくして鳥の声は耳に届かなくなった。


頬を撫でる風が止んだ。


虫どもの這う音も、飛ぶ音も消え去った。




気味の悪い静寂の中、暴虐と通り名された者の視線が、完全に弟者を捕捉する。

その瞬間、烈火のような敵意が目に宿った。

自分だけの物である縄張りを侵し、入り込む敵への単純にして純粋な悪意。

瞬き一つの間にそれは殺意に昇華され体中から吹き出した。


414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:47:22.78 ID:hJabgr8LO
(´<_`;)「っぐ……あ!?」

猛烈な威圧感と悪意が固体化し、空気に取って代わったような錯覚。

それは日々をのうのうと生きる【ヒト】が遠い過去に置いてきた、野性の敵意。

自然の中に身を置いて数多の敵に身を晒し、日常として命を削りながら生きる者の害する意志。

彼らのそれは時に風を渦巻かせ、時にそれは直接的に心身へと影響を及ぼす。

( <_ ;)「っあ……が…………が」

突き刺さる様な空気が呼吸を止める。
意志が肺に伝わらない。

延髄につららをねじこまれ抉られる様な

心臓を真っ赤に焼けた鉄で直接締め付けられる様な

全身に絶え間なく落雷を受け、その身が焦げ続けているような

そんな絶望としか言い様の無い感覚。


ヒトとしての日常だけを生きる者なら、その異常の中に居るだけで絶命に至る。

強者に命を握られているということは、通常耐えられる事ではない。


418 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:53:01.07 ID:hJabgr8LO
( <  )「ぁ……あ……!」

酸素を求め口が大きく開き舌が突き出た。


為す術無く意識が薄れ始め、再び膝から崩れ落ちる。

秒と云う単位が[分]にも[時間]にも感じられる苦悶の数秒

凍り付いた弟者の時間。

死ぬことを覚悟したその瞬間だった。


421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:54:13.32 ID:hJabgr8LO
( ´_ゝ`)ノシ「呼んだか弟者ぁぁーっ」

小山の上で蘇生した死体が、場に充満している空気を読まずにぶんぶんと大きく手を振り呼び掛ける。

殺意を垂れ流す獣の上で、兄者はこれ以上無く兄者だった。

(#´_ゝ`)「お゙ーとーじゃーっっ!!」

霞掛かった頭に聞こえた耳慣れた声。
異常の中に得た日常が、心臓を鷲掴みしていた恐怖をわずかに緩める。

(#´_ゝ`)「俺がミミズたん達を独り占めしたのがそんなにショックだったなんて気付かんかったーっ!! すまーん!!」

兄者の声が恐れを拭っていく。

呼吸が、肺の機能が戻ってくる。


( ´_ゝ`)「兄としてっっ! 弟のお前の望みを察してやれなかった事が非っ常に悔やまれるっ!!」

ぼやけた頭が言葉に合わせて徐々に透き通り、体に自分の意志が通い始めた。

( ´_ゝ`)「そこで私は決意した! 断腸の思いではあるがっ! 弟者お前にこの壺を託すっ!」

馴れ親しんだ兄者の言葉が極度の緊張で固まりきった筋肉に染みる。

ぎしぎしと音を立てながら動きを取り戻してきた。

視界が鮮明になっていくのがわかる。


423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:55:39.84 ID:hJabgr8LO
( ´_ゝ`)「さぁ、受け取れ弟者よ! 兄者の思いをこの壺といっs……ぬぅをぉぉぉぉっ!?」

流石家長男、流石兄者。本日二度目の大飛行。

予期せぬフライトは、猪の首振り一つで実現した。

振り上げた首をゆっくりおろす猪

弟者を睨み付け、前足で土を掻く化物のはるか後ろ、再び見事な軌跡が描かれていく。

一瞬弟者は兄者の行方を目で追った。

その隙を野性は見逃さない。

爆発したような加速でドスファンゴが突進する。

(´<_` )「ぅおおおぉぉ!?」

気付くのと同時、体をねじり右に飛び避けた。

間髪を置かず、今まで居た場所を強烈な衝撃波を伴った固まりが駆け抜ける。

突進に巻き込まれたハンマーが吹き飛んだ

くるくると宙を舞い、着地と同時に頭を土にめりこませる。

衝突は避けられたが勢い余って土の上を転がる弟者。
手のひらにべったりと泥が着く。

424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:56:43.57 ID:hJabgr8LO
(´<_`;)「……なんて速さだ……」

後ろを振り返る。

大猪が前脚を突っ張り急停止をしようとしている。

それだけならまだ良かったのだが。

(´<_` )「これはいかんな」

両手を土に付けたまま唖然とした。

突っ張った前脚を支点に、後ろ足が地面を抉りながらスライドしていく。

土が削れる音と共に半円の溝が出来上がっていく。

(´<_`;)「突進の勢いを利用して体を反転させる気か」

その場から飛び出しながらつぶやく。
跳ねとばされていた蒼鎚に目を向けた。

目標まで距離にして30歩程。


426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 00:59:50.44 ID:hJabgr8LO
(´<_` )「あんなとこまで飛ばされたか」


左手に敵意を感じながら正面、土から生えた柄を睨む

(´<_` )「間に合ってくれよっ」

あらんかぎり腕を振り腿を上げ、僅かに残っていた体の違和感を絞りだす様に足を出す。

それと同時に左耳に土が弾け飛ぶ音が、その一瞬後に駆ける音が届いた

(´<_` )「う……ぅおおおっ」

疾走の慣性を勢いに乗せて、目の前の泥に飛び込む。

弟者が踏み切り、残した足跡。

跳んだ直後、そのくぼみが重量を伴った暴風にたやすく踏み躙られる。

(´<_` )「ぐっ……」

泥混じりの唾を吐き、再び加速態勢に入る弟者。

その瞬間、右から聞いたことの無い轟音が響いた。

(´<_` )「……化け物め」

経験したことが無くとも理解できる事はある。

ありえなくても、受け入れなくてはならない。


431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:01:40.85 ID:hJabgr8LO
(´<_`;)「木をへし折ったのか。直撃なら死ねる……な。笑えん冗談だ」

顔にぶつかる向かい風が呟きも後ろに吹き飛ばしていく。

鎚まであと12歩

また蹄が土を抉っていく音が聞こえる

あと9歩

土の削れる音が止んだ。

あと8歩。


あと6歩。


あと4歩。

(´<_` )「届く!」

だがその声に土の爆ぜる音が重なる。

432 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:02:52.33 ID:hJabgr8LO
あと3歩。

人と獣の駆ける音

あと2歩。

左手をのばす

あと1歩。

指が柄に触れた。

背後の気配が、距離を異常な速度で詰めて来る


指を柄に掛け、第一関節だけで引き寄せ握り締めた

鎚の重量で勢いを殺し、同時に左手を支点に体を反転させる

(´<_` )「ぐっ……あああああ」

足を大地に突き刺さんばかりに踏張り、その場に急停止。

そのまま左手で柄の根元を、右手で柄尻付近を握る。


434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:03:54.99 ID:hJabgr8LO
突進を避ける気は無かった。

もとより崩れた態勢からの回避行動で避け切れる訳が無いことは、一度目の攻撃で理解っている。

(´<_` )「それなら」

足場を確保し、柄をこれ以上無い力で握り締める。

(´<_` )「全力で殴るまでだ」

武器の頭を土に埋めたまま振り上げる動作に入る。

(´<_`#)「おおおおおおっ」

ごりごりと土を抉る感触が両手に伝わる。

巨鎚に、両腕にかかっていた猛烈な負荷が土を抜けた瞬間0になった。

(´<_`#)「喰らえええええっ!」

蒼い鉱石が猪の顎にめりこんだ。

だが猛進の勢いはそんなことでは失われない。

巨砲の砲弾と化した塊に弟者は遥か後方へ跳ねとばされ、木に体を打ち付けた。

獣の眼が猛烈な怒りにそまる。
口から血をだらだらと垂らしながら、視線はただ一点を睨み付けた。


441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:09:42.55 ID:hJabgr8LO
(´<_`メ)「あ……が……」

背中を貫いた衝撃に止められた呼吸。

憎悪の固まりが膝を曲げ、後ろ足が土にめりこむ。

手負いの獣、とどめの追撃

双牙を敵に向け加速。一歩ごとに泥が散る。
距離が瞬く間に無くなっていく

動かぬ身体、とっさに目を瞑る。
弟者の額に牙の先端が触れた。


443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:10:30.89 ID:hJabgr8LO






その刹那







445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:11:25.30 ID:hJabgr8LO
( ´_ゝ`)「俺の弟者たんに何する気じゃーい!!」

緊張感皆無の怒声が響き渡った

同時に空気が裂け、震え、爆ぜる

ひと呼吸置いて大地が揺れた

( <_` )

弟者が片目を開けて見た物。

それは左側に転がる巨大な猪と、目の前に正座した赤鎧

(*´_ゝ`)「さぁおまたせ弟者たん。めくるめくミミズ萌を堪能しようか」

(´<_`;)「あ……兄者?? どうなってるんだ」

(*´_ゝ`)「まず基本的な楽しみ方からだ。壺は膝に挟む。しっかり固定しろよ。そして一切の邪念を振りきって中指から徐々にミミズたん達に」

ゴッ

(´<_` )「な に が あ っ た か 三 行 で」

(;#'_ゝ`)「飛行恐い痛い
       弟者ピンチ
       ハンマーぶん投げた」

(´<_` )「把握した」


448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:14:58.24 ID:hJabgr8LO
しかし、と弟者は兄者の赤いハンマーを見やる。

大猪の傍らに落ちているそれは、自分では持ち上げることすらかなわなかった物。

(´<_` )「アレを狙って投げられるのか」

尊敬に値するな、と心で呟いた。
だが声には出さない。浮かれて空も飛びかねないから。

(´<_` )「ま……まぁ、その。なんだ。兄者よ」

( ´_ゝ`)「なんだ弟者。改まって気色悪い」

それでも、言いたくは無いが言わねばならない時もある。

(´<_` )「助けてくれて有難う」


(  ゚_ゝ゚)

兄者、停止。

(´<_` )「どうした兄者」

( ´_ゝ`)「い……いや、お前に礼を言われるのは生まれて初めてなもんで、一瞬思考力を失っただけだ」

(´<_` )「ああ。二度と兄者に礼を言わずに済むよう気を引き締めとくよ」
ぽりぽりと頭を掻く弟者。

450 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:15:56.37 ID:hJabgr8LO
( ´_ゝ`)「ところで聞かせてもらいたいんだが。あの猪肉はなんだ?」

顔だけ向けて顎で差す。

引っ繰り返った猪が脚をぴくぴくさせている。

(´<_` )「……あれはたぶんここの主だ。兄者あの距離で殺気を受けてよく平気だったな」

( ´_ゝ`)「母者が殺意の波動に目覚めた時に比べれば、そよ風みたいなもんだからな」

(´<_` )「何かしでかしたのか」

( ´_ゝ`)「ああ。生涯忘れられぬ日だ」

(´<_` )「説明よろ」

( ´_ゝ`)「妹者の苺ぱんつゲット&装備
       実は母者の
       瞬獄ktkr


(´<_`;)「……壮絶だな」


ふう、と息をついて先程兄者によって投擲の的になった獣を見やる。

( ´_ゝ`)「ああ……壮絶だ」

つぶやく兄者の後ろ。


454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:16:42.16 ID:hJabgr8LO
気を失っていた猪が目を覚まし、ごろりと転がった。
そのまま立ち上がり、無造作に身を振るう。
付着していた砂粒や木片が放射状に飛び散っていく。

(´<_` )「あにじゃ」

巨獣が口から具象化した怒りを吐き、ごりっごりっと蹄で土を掻いている。

(´<_`;)「うううしろ」

( ´_ゝ`)「え、何?」

(´<_`;)「後ろだ兄者! よけろっ!」


弟者は横に飛ぶ。兄者は振り返る。

文字通り、猪突猛進。
槍のような牙が体に風穴を開け、一瞬の後三度空に招待された兄者が宙を舞う。





はずだった。


456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:17:33.94 ID:hJabgr8LO
だがその予想はすぐに覆される。

猪の目前から凄まじい土煙が立ち上り、植物の焦げる匂いが辺りに充満していく

( ´_ゝ`)「い い 加 減 に し ろ よ く そ 猪」

轟々と唸る異音の中で、兄者の声が凛と通る。

聞こえるはずの無い声が届いたように感じたのは血肉を分けた分身だからか。

双子の片割れの姿は、まだもうもうと煙る泥の霞に紛れている。

徐々に擦過音が小さくなる。巨獣の猛進が不自然に減速していく

(´<_`;)「!?」

土まみれの体を引き上げ異変に気付く弟者。
彼が見る先。獣が脚を出すも普段の半分すら進まない。

顔をあげた数秒後には勢いが停止直前まで衰え、四肢が土を掻く動作も前進する力に変化する事は無い。

その蹄はただいたずらに地の溝を深くしていく。


457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:18:34.10 ID:hJabgr8LO
晴れていく土煙、姿を現す赤鎧。

( ´_ゝ`)「調子に乗り過ぎたな、肉」

両手に握られた殺意を込められていた双牙。
赤い具足はぶすぶすと煙を立てながら二本の溝の終着点で土にめりこみ、敵の前進を拒んでいる。

( ´_ゝ`)「お前はこの世の禁忌に踏み込んでしまったよ」

濃い怒りを押し殺した静かな声。一言発するたびに空気がしんと凍てついていく。

( ´_ゝ`)「楽に逝かせんぞ。粗末な畜生の脳で最大限悔やみ詫びるんだな」

周囲の景色がぐにゃりと曲がる。陽炎が兄者から立ち上る

( ´_ゝ`)「原型残さずおまえの全てを擦り潰す。肉一片、毛一条残ると思うなよ」

言いおわりと同時兄者は深く息を吸った。

赤い兜が弓をつがえる動作の様に、後ろへ仰け反り

(#´_ゝ`)「あああっ!」

怪物の鼻面に頭突きをたたき込んだ。

(´<_`;)「な……」

目に映る光景は異様だった。


459 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:20:22.72 ID:hJabgr8LO
人間のパチキが野性に勝った瞬間。

顎を地に着けひれ伏す巨獣
足元の王を睨む細身の変態。


(#´_ゝ`)「弟者っ!」

自分の名だけの命令文が不意に聞こえ、茫然としていた頭が一気に回る

それを反芻するより先に腰の蒼鎚を構え、兄者の紅鎚に駆け寄った。

もとは同じ細胞の二人。

その関係に主語はおろか、時には言葉さえ不要。

(´<_` )「把握したっ」

紅鎚の前に止まり、足場を確認しながらぎりぎりと体をねじる。

ハンマーの頭がゆっくりと兜の裏まであがる。

そして

(´<_`#)「受け取れぇぇっ!」

貯めた力を、ねじれの解放に併せて弧を描かせて鎚を振り下ろす。

兄者を吹き飛ばしたじゃれあいの一撃とは大きくかけ離れた、正真正銘全力のフルスイング。

460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:22:47.89 ID:hJabgr8LO
鼓膜を痛め付ける激烈な衝突音と共に、紅鎚は持ち主の方向へ一直線に飛んでいく。

( ´_ゝ`)

睨み合いを続けたまま、右腕を弟者の方へ無造作に向ける。

鎚はいまや風車の様
頭は風車の芯になり
柄は風車の羽となる

目で追い切れぬその羽を

( ´_ゝ`)「ふっ」

一度も確認する事無く確かに掌に捉え、過ぎ去ろうとする紅鎚を己の膂力のみでそこに留めた。

弟者に持ち上げる事すらできなかった超重鈍器

さらに遠心力で数倍に膨れ上がったはずの質量を、兄者は片腕で表情を変えずに御する。


462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:24:49.14 ID:hJabgr8LO
( ´_ゝ`)「俺の大切な」

ハンマーが頭の上に掲げられる。紅鎚のクチバシが陽に光る。

( ´_ゝ`)「ミミズたん達を」

一層握りを強め、来たる衝撃に備える左右の手。
巻かれた布が握力に絞られぎちぎちと鳴く。

( ´_ゝ`)「粉々に踏み潰した報いを」

体を逸らして力を蓄める。牙をもつ手を捻り、無理矢理頭を近寄せて

(#´_ゝ`)「その身で償えこのど畜生がぁあぁっ」

振り下ろした紅鎚が猪の鼻を殴り付ける

骨の砕ける薄ら寒い音と共に、王の頭部が半分土に埋まる

(#´_ゝ`)「あああああ゙っ!」

二撃目が寸分違わず同じ場所にめりこんだ。
完全に埋もれた猪の絶叫が土中を震わせる。


465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:25:56.16 ID:hJabgr8LO
(#´_ゝ`)「コレがあの娘達の分じゃああぁぁっ!!」

心底愛した萌対象への想いが、ヤツへの憎悪を天文学的に加速させている。

一撃目、二撃目とは異なる円運動の三撃目。

大地を穿ち泥ごとかちあげられたハンマーの一撃に、埋まった顎を撃ち抜かれ数度地響きを立てて巨獣が転がっていく。

(´<_`;)「おぉ……」

可能不可能を問う以前の状態、あまりの有り得無さに言葉につまった。

めりこんだ跡、削り取られた大地、動かぬ巨体。

兄者がヒトである確証が音をたてて崩れていく気がする。

(´<_`;)「兄者はバケモノか」

思わず口に出る疑問を聞き逃すはずが無く

( ´_ゝ`)「誰が何だ弟者たん」

(´<_`;)「おおおおおお兄さま!?」


472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:28:48.56 ID:hJabgr8LO
( ´_ゝ`)「落ち着け弟者、そして聞け」

(´<_`;)「はっ、はいぃっ」


( ´_ゝ`)「俺はこれからあの娘達の葬式をしてくる。あいつをぶん殴れて気は済んだ。あとは任せた、頑張れよ」


(´<_` )「は?」

   バイバイバイ
( ´_ゝ`)ノシ「じゃ」


そう言い残し、残像すら残る速さで砕かれた壺と亡骸を拾い集める兄者。

まったく把握できない青鎧。

茫然と見守っているうち兄者がどろりと姿を消した。


478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/17(木) 01:33:53.22 ID:hJabgr8LO
残されたのは沈黙と瀕死の獣と弟者のみ。


(´<_` )「は……はは」

瀕死とは言え化物に代わりはない。

死ぬかもしれない、そんな思いがよぎり腕があわ立つ。

よろめきながら起き上がる巨体。眼は憎しみでぬりつぶされている。

(´<_` )「逃げては狩人の名が泣くか」

心に芯を打ちこみ、鎚を振りかぶる。

一本になった牙をこちらに向け、時折よろめきながら巨獣が突っ込んでくる。

(´<_` )「ああああああああああっ!!」

蒼鎚が風を切り、脳天をとらえた。

(終)




元ネタ・ゲーム『モンスターハンター』シリーズ

元スレ:\(^o^)/ブーン系小説練習+読み物&イラスト総合案内所のようです  (リンク先( ^ω^)ブーン系小説とか読み物とかの倉庫様)
[ 2013/11/22 21:22 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://tanpentokanohokanko.blog118.fc2.com/tb.php/237-774b41f2





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。