2 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:03:46.41 ID:aV5aBJcRO
─高校3年生
─4月下旬
─午前10時
どーせ遅刻だし、と余裕しゃくしゃくで歩いてたら、ギリギリ電車に乗れなかった。
( ^Д^)「あーめんどくせ」
背後にさっきまでなかった気配を感じる。
気になったので振り向いた。
そこには、両手を腰にあてて、爪先立ちのスーパーマンっぽいのコスプレがいた。
顔はマスクで隠れててわからない。
その顔にはどこか親しみを感じる。
勝手に目がスーパーマンの胸元のローマ字の所に行った。
OSSAN☆HIRO
3 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:05:49.97 ID:aV5aBJcRO
すぐに目をそらした、そして、振り向いたことを心から後悔した。
無視だ、こんな変態は無視だ。
その場から離れようとした、その瞬間。
( ФωФ)「待ちたまえ」
最悪だよ、仕方なく振り向いた。
おっさんひろ?おっさんヒーローか?
振り向くとそこには駅員に呼び止められるおっさんヒーローがいた。
( ^ω^)「キミはなんなんだお!?痴漢かお?」
( ФωФ)「おっさんヒーローだ!!」
無理にダンディな声を出してヒーローになりきってるけど、それは、 私は変態ですって自重してるだけなのでは?
4 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:08:23.24 ID:aV5aBJcRO
( ^ω^)「ちょっと駅長室まで来たまえ」
駅員の存在意義を初めて認めた。ありがとう駅員さん。
( ФωФ)「あのっあのですね、これは」
その格好じゃ言い訳は無理だろう。
おっさんヒーローの服を引っ張る駅員。
(;ФωФ)「ちょやめ、ちょ」
そして、抵抗も虚しくおっさんヒーローは連れてかれた。
コレがオレとおっさんヒーローの出会いだった。
――――( ^Д^)プギャーと変なヒーローのようです――
5 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:11:12.91 ID:aV5aBJcRO
( ^Д^)
今更だけど自己紹介、オレはプギャー。
普通すぎるオレの人生。
普通に中学を卒業して、普通に高校に進学して、普通にヤンキーになった。
そして今に至る
朝に変なことがあったけど無事、学校に着いた。
もう3時間目、始まっていたけど。
教室に入ると熱血教師、ギコに嫌みを言われた。
(,,゚Д゚)「3時間目から登校なんて、いいご身分だなゴルア」
コイツがおっさんヒーローじゃねぇーの?
( ^Д^)「さーせん、寝坊っす」
6 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:13:00.21 ID:aV5aBJcRO
まっそんなはずないか、もしあいつがおっさんヒーローだったらオレより先、学校にいるはずがない。
(,,゚Д゚)「じゃあ、授業続けるぞ」
──朝のことを誰かに話そうかなぁ、とか考えてるうちに放課後になっていた。
('A`)「おいいっしょに帰ろうぜ」
いつものようにダチのドクオと帰る。
いつもドクオと別れる道で
('A`)「プギャーファンタいる!?」
ドクオが飲みさしのジュースを差し出してきた。
( ^Д^)「まじで!?センキュー」
中身は空だった。
はめられた。
7 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:14:34.19 ID:aV5aBJcRO
( ^Д^)「ねぇーじゃねぇかよ」
('A`)「じゃまた明日な、プギャー!!」
ドクオは空のペットボトルをオレに託して帰った。
( ^Д^)「あのやろう」
しばらく歩いていてもゴミ箱が見当たらない。
だから、空のペットボトルをポイ捨てした。
その瞬間、作りダンディボイスが聞こえてくる。
( ФωФ)「ちょっと待った!!」
また仕方く振り向いてやったよ。
予想通り、おっさんヒーローが背後に立っていた。
(;^Д^)「またオマエかよ、てかどっから湧いてきたんだよ」
8 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:15:35.17 ID:aV5aBJcRO
オレの言葉などお構いなしにおっさんヒーローというか変態は続けた。
( ФωФ)「ポイ捨てしただろ!?もっと何に対しても優しい気持ちを持ちたまえ!!」
うぜぇー、やっぱコイツギコじゃねぇか?
(;^Д^)「意味わかんねぇし」
( ФωФ)「地球にも優しい感情を持てと言ってるんだ!!」
( ^Д^)「うっせぇ!!てめぇの服装、犯罪なんだよ!!」
思いのほか、この一言が効いたみたいだ。
あからさまにうろたえている。
(;;;ФωФ)「こっちだって恥ずかしいんだよ!!!!」
ええー…逆ギレ??
9 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:20:05.70 ID:aV5aBJcRO
この時から、あの変態はオレに付きまとってきた…
─学校帰り
─帰宅ラッシュの時間帯
─そこそこ混んでいた電車の中
─優先座席に座ってた時
疲れてたし、ウトウトしてたんだ。
ちょっとま、意識が宇宙にいってた。
目を開けたら目の前によろよろの今にも死にそうなじじいが立ってた。
けど、気づかないフリをしてもう一度、宇宙にいったんだ。
しばらくして、もう一度、目を開けたら目の前にあの変態が立ってた。
なんでやねん!!
あれ?じじいは?と思ったら変態の横で足をプルプル震わしている。
だけど、今度は何も言ってこない。
周りに人がいるからだろうか。
オレはもう一度、眠りの世界に行くことにした。
目を閉じると同時にアイツが呟いた。
11 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:22:24.89 ID:aV5aBJcRO
( ФωФ)「がっかりだよ」
俺はオマエの服装にがっかりだよ。
無視、断固無視、そうすればコイツを『何、この人、変な格好で独り言呟いてる。不気味だわ』みたいな空気でコイツを攻撃できる。
どうか、この車両のみんな、オラに力を貸してくれ。
( ФωФ)「はぁーホントがっかりだよ、はぁー、そんなヤツだったとわ」
寝たふりを続ける、オレにあからさまに、独り言を呟いてる、変態。
ひたすらそれを続けるのだ。
どうやらオレの元気玉空気攻撃は効かなかったらしい。
むしろ、オレの方がこの空気に耐えられず逃げ出した。
そのせいで全く関係ない駅で降りてしまった。
( ФωФ)「やれば、できるじゃないか」
(;^Д^)「うお!!いつの間にいんだよ!?まじどっから湧いてきてんだよ!?」
迂闊にも驚いてしまった。
12 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:29:08.32 ID:aV5aBJcRO
俺は奴が消えた後考えた
奴の居場所を突き止めて逮捕してもらおうと
これで仕返しができる
( ^Д^)「かんぺき」
──日は沈みかけていた。
近所の公園で一服してるオレのもとにアイツはやって来た。
オレの企みも知らずに。
( ФωФ)「もっと自分の体にも優しい気持ちを持て!!」
いつもみたいに、いきなり背後にいた。
13 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:30:18.74 ID:aV5aBJcRO
コイツはヒーローじゃなくて忍者なんじゃないか?
今回はこんなことを考える余裕がある。
煙草を吸ってればコイツが来ることは予想済みだ。
( ^Д^)「わかった、やめるよ。」
そう言ってオレは煙草を変態に渡した。
( ^Д^)「二十歳になったら返せよ!あと中のつまようじと耳掻き用のめんぼうパクんなよ」
予想外に素直だったのだろう、変態は少し同様している。
無駄な絡みを避けるためにはコレが最善だろう。
オレの目的は追跡だ。
14 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:32:17.61 ID:aV5aBJcRO
(ФωФ)「そうだ!!素直な優しい気持ちが大切だ!!」
また優しい気持ちかよ
( ^Д^)「デスヨネーじゃバイバァイ、マタネーおっさんヒーロー」
半ば強引に変態を見送る。
ミッションスタート
この辺はオレの家の近所だ。地理的にはこちらが有利のはず。アイツの後を漫画の探偵のごとく電柱やら看板やらを盾にして後を付けて行く。
しかし、素人の追跡にはやはり限界があった。
5分ほど追跡したところで何も隠れるところのない殺風景な直線に差し掛かった。
振り向かれたら即ばれだ。
だから変態が曲がってからダッシュで追いかけることにした。
その作戦が失敗だった。
変態が曲がった瞬間ダッシュで追いかけた。
しかし、奴が曲がった方向を見ても奴はいなかった
15 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:34:49.35 ID:aV5aBJcRO
代わりに意外な人がいた。
(‘_L’)
オヤジだった。
ここは駅から家への最短距離の道だからオヤジがいてもおかしくはない。
オレはオヤジの存在に気付いていながら声をかけなかった。
オヤジだって声をかけてはこなかった。
オヤジはオレを見てたかもしれないが、オレはオヤジと目を合わすのが嫌でオヤジのいる方に目をやら
なかった。
オヤジだって同じだったと思う。
オレにとってオヤジの存在は、そこらのおっさんと変わらない。
それくらいオレのオヤジとの関係は冷えきっているのだ
17 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:35:38.37 ID:aV5aBJcRO
──翌日
オレはあの変態に逃げ切られたことにかなりイライラしてた。
そして、次の策を練っていた。
( ^Д^)「あっそうだ」
なんでこんな簡単なことに気付かなかったんだ。
アイツは誰が見ても不審者だ。ガツンと言ってやって現行犯で捕まえればいいんじゃないか。
ストーカー容疑はその後で問いただせばいい
──この日はギンギンに太陽が照っていて夏かと思うくらいだった。
オレは、その太陽の光を背に、再び、アイツをおびき出すために歩きながら煙草を吸っていた。
今回は背後に全神経を集中さしている。もう不意打ちなんてくらわない。
背後に人の気配を感じた。
アイツが注意してくるより前にガツンと言ってやる。
18 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:36:40.45 ID:aV5aBJcRO
( ^Д^)「いい加減にしろよこの変態野郎!!いい年こいて何やってんだよ!!」
そこにいたのはおっさんヒーロー、
ではなく、2人のヤクザだった。
21 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:54:31.36 ID:aV5aBJcRO
やばいよ、やばいよ、やばいよ、もうオレの人生終わったよ。東京湾に沈むの決定だよ。
口にくわえていた煙草が地面に落ちた。
爪#'ー`)y‐「あぁ?いい年こいてヤクザやっとったらアカンのかい!!」
リアルやばいです。
今、オレの頭の中には3つの選択肢がある。
①逃げる
②謝る
③戦う
恐らく正解は①逃げる─だけど根に持たれて、後々、東京湾に沈む可能性を考えると②謝るも否定でき
ない。
③戦うはいくらオレがケンカで無敗だからといって有り得ない選択だ。
22 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:56:43.55 ID:aV5aBJcRO
もし2体2なら勝機はあるんだけれども…。
( ФωФ)「今度はケンカかぃ?」
目を開けれないほどの逆光の中には光輝くおっさんヒーローがいた。
この時ばかりは、このただのおっさんを、本物ヒーローかと思った。
( ,_ノ` )y━・~「なんだ、この変態、気持ち悪!!」
( ФωФ)「変態じゃない、おっさんヒーローだ!!」
これで2対2、ヤクザに勝てる!!
いつの間にか、オレは③戦うを選択していた。
おっさんヒーローが1人の注意を引いてる間にオレが1人仕留める!!
23 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:57:43.11 ID:aV5aBJcRO
( ^Д^)「かんぺきっ」
つい声に出てしまった。
爪#'ー`)y‐「あぁ?なんやて?何が完璧やねん!?教えてくれや!!!」
胸倉を、掴もうとしてきたヤクザの手を、弾いて、ヤクザの顔面に、渾身の右ストレートを撃った。
しかし、オレの渾身の一撃は止められた、
おっさんヒーローによって。
( ^Д^)「なっ!!なんでだよ!?」
( ФωФ)「優しい気持ち」
いつも大声で注意してくるのに、この時は静かに穏やかに言った。
24 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 21:01:57.19 ID:aV5aBJcRO
オレはその言葉に唖然としていた。
(#,_ノ` )y━・「このガキ何さらしてくれとんのや!!!!」
殴りかかってくるヤクザを必死におっさんヒーローは止めていた。
(メФωФ)「やッめてくれ、やめッてくれッ…」
ボロボロに殴られながら、時折、こぼれる、ひ弱な声はだれかに似てた。
殴られて、蹴られて、何度、倒れても立ち上がり俺をかばう。
そんな姿を見て、オレは泣きながら土下座してた。
痛いくらい、おでこを地面に押し付けて。
( ;Д;)「お願いです!もう勘弁してください!お願いします!!」
アイツは地面に倒れ込んで笑顔でこっちを見てる『それでいいんだ、よくやった』と言わんばかりの表情だった。
その表情はだれかに似てた。
爪'ー`)y‐「そっちから絡んできたんちゃうんかぃ?」
26 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 21:04:35.15 ID:aV5aBJcRO
( ;Д;)「本当に申し訳ないと思ってます!許してください!お願いします!!」
爪'ー`)y‐「ハッ…そのおっさんに免じて許しといたるわ」
唾を吐き捨てヤクザ達は去っていった。
もうヒーローのマスクは取れていた。
殴られてボロボロの、その顔はだれかに似てた、オレのよく知ってるだれかに。
( ^Д^)「たくっ、何しに来たんだよ!?」
何しに来たんだよっ!!
(メ‘_L’)「助けに来たんだ」
(;^Д^)「助けれてねーつの!!」
“ オレの心は確かにアンタに助けられた。ありがとう”
28 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 21:07:42.22 ID:aV5aBJcRO
――あれから数年、俺が二十歳の誕生日を迎えた日のこと。
(‘_L’)「プギャー、入るぞ」
オヤジの声だ。
( ^Д^)「うい」
(‘_L’)「誕生日おめでとう!俺からの誕生日プレゼントだ。」
包装紙に包まれた箱を渡された。
( ^Д^)「何これ?」
オレの言葉などお構いなしにオヤジは言った。
(‘_L’)「じゃあな!!仕事ガンバレよ」
そして、オヤジは部屋から出て行った。
29 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 21:09:29.17 ID:aV5aBJcRO
包装紙を破り、箱を開けた。
その中には、開封済みの煙草のケース、それにケースの中には、湿気た煙草に、つまようじと、耳掻き
ようの綿棒が入っていた。
それと後もう一つ、“優しい気持ち”が入っていた。
─THE END─