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('A`)紡ぐ話は紅い糸のようです

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:23:00.42 ID:gEsd+p7W0

ぎ、と鈍い音がして重い木製のドアが開き、
暗い部屋に一筋の光が差し込む。

部屋の中は一見手芸の店のようで、糸が並んでいる。
しかし、どれも古く、今にも切れそうなものばかりだ。

その中、男は独り言のように呟く。

( <●><●>)「1つ記憶を紡ぐとしましょうか。
        皆さんが折角いるのですから、眠る前の暇つぶしくらいにはなるでしょう」


男は、糸車に赤い糸をセットすると、
歌を歌うように呟きながら、ゆっくりゆっくりと糸を紡ぎ始める。




6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:23:21.98 ID:gEsd+p7W0

はたりはたりと紡ぎましょう

ほつれからまる糸玉を

廻し紡ぐは糸車

糸を逢わすは機織り機

この三点が揃わねば
淀み歪むは話の運命

三角関係と言わしめど、色恋沙汰にはありませぬ

今宵逢わすは紅の糸、少年少女の物語

甘く哀しいお話を、はたりはたりと紡ぎます


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:24:03.21 ID:gEsd+p7W0

それはこことは違う世の、乱世の時にありました。
二つの国が争って、世界は大いに荒れました。

一つの国はVIP国、王は温厚実直で、平和な国でありました。
自慢の王子は勇猛果敢、戦があれば勝ち続け、神の子供と歌われる、

御名はドクオといいました。


VIPと争うラウンジ国、王は傍若無人にて、乱れた国でありました。
しかし王女は正反対、妾の娘でありながら、優しく気高い御方で
民から好かれておりました。

御名をクーといいました

二人が紡ぐ物語。
紅く冴える月の如く、哀しい二人の物語。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:24:49.28 ID:gEsd+p7W0

('A`)「私は出かける。後を頼むぞ」

(;ノAヽ)「え?では私もお供いたしま―」

('A`)「いらん。むしろ着いてくるな」

VIP国の王城の厩舎で小さく言い争いながら歩く2つの人影。

(;ノAヽ)「しかし!王子を1人で外出させたら
      従者である私が王に怒られてしまいます!」

従者の言葉を無視して、ドクオは馬に乗る。

外は春の陽気。
小鳥が飛び交い、囀りが騒がしく聞こえ、
植物は皆花を咲かせ、全てのものが春を謳歌している。

('A`)「…」

しかし、そんな華々しい外の様子とは裏腹に、馬に揺られるドクオの顔は沈んでいた。

『VIP国の王子』
申し分の無い身分、権力、そして戦地での目覚しいほどの活躍。
そして、約束された将来。

どれをとっても文句なんかないはずだ。

国民も、従者も、父である王でさえもそう思っているだろう。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:26:14.37 ID:gEsd+p7W0

('A`)「…私は、どうすればいいのか」

春風が咲き誇る花々を揺らす草原。
ドクオは馬を降り、寂しげにたたずみ呟く。
普段民が知る勇敢にして鬼のような戦神の影はなく、ただ瞳を暗く陰らせる。

('A`)「今まで戦の不得手な父の代わりに戦ってきた。だが…」

ドクオは考える。なぜ、自分は戦うのか。
国のため? もちろんだ。
民のため? そうも言える。

では、自分のために何かしたことはあったろうか?
いや、ない。
物心ついた時には帝王学に武芸、自分の事にかまっている暇なんて無かった。

今日だってここまで1人で出かけるのに従者に色々言われているのである。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:26:37.54 ID:gEsd+p7W0

('A`)「確かにここは国境も近く、危険でないとは言い切れないが…」

最近は停戦状態にあり、落ち着いているのだ。
そこまで危険ではないだろう。

ドクオはそう考えて、草原に寝転んだ。

( ・∀・)『ドクオ様はお世継ぎの身。国の事を考えていただかねば困ります』

( ´∀`)『王である私の息子なのだから、文武に鍛えなきゃいけないモナよ』

王である父モナーと、お目付け役であるモララーの顔が、言葉が浮かぶ。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:27:29.94 ID:gEsd+p7W0

どのくらいそのまま空を見ていただろうか。
気付けば少しドクオは眠っていたようで、日が傾き始めていた。

('A`)「ふぅ…、私はどうしたらいいんだ…」

目覚めれば、そこにあるのは現実。
しかし、いつまでも思考をめぐらせているわけにはいかない。

いつかは―
いや、もしかしたら明日までに答えを出さなければならないかもしれないのだ。

――と、人の気配を察知してドクオは素早くそちらを見る。

川 ゚ -゚)「どうかしたのか?そこの人」

立っていたのは16、17歳
――恐らく自分と同い年であろう美しい少女。
絹のように白く美しい肌に、美しい黒髪。
質素ではあるがその美しさを充分に引き立てる青いワンピース。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:27:45.37 ID:gEsd+p7W0

('A`)「いや、なんでもない。遠乗りに来て疲れたから少し休んでいただけだ」

近くに繋いだ馬を指差し、再びドクオは寝転がる。
すると、その少女はドクオの隣に座り、ドクオの顔をじっと見つめる。
状況の読めないドクオは驚いた顔をして再び起き上がる。

(;'A`)「いや、なにしているんだ?」

川 ゚ー゚)「いや、薬草取りに来て疲れたから少し休んでいるだけだ」

少女はドクオの台詞を真似して言った後、
悪戯っぽく笑って、薬草がいっぱいに入った籠を持ち上げてみせる。

(;'A`)「…そうか」

ドクオは混乱したままやっとの事でそれだけ言うと三たび寝転がる。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:28:21.90 ID:gEsd+p7W0

川 ゚ -゚)「君は…家に帰らないのか?」

しばしの無言の後、少女がポツリと呟く。

('A`)「…そう言う貴女こそ、帰らないのか?
    最近は戦争なんかが一段落してるとはいえ、まだまだ危ないだろう」

川 ゚ -゚)「私は…帰りたくない」

なぜだ?とドクオが起き上がりながら聞くが、
少女は俯いて黙り込むだけだった。

日が落ち、暗くなり始めた頃に従者がドクオを迎えに来た。

('A`)「迎えになど来る必要は無いぞ」

(;ノAヽ)「ですが、ドクオ王子に万一の事があったらと思って!
      私は一日中探し回ったんですよ!?」

王子、という言葉に少女が反応したのが分かった。
一国の王子、しかも天下を二分するVIP国の、だ。無理もない。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:28:39.70 ID:gEsd+p7W0

川 ゚ -゚)「明日も、ここで話したいのだがいいか?ドクオ」

それは、馬に乗ろうと起き上がったときに不意に囁かれた申し出。

('A`)「あ、あぁ。大丈夫だ」

(;ノAヽ)「ドクオ様!早く早く!私が首になってしまいます!」

ドクオが分かったよ、と従者の方へ叫んで少女の方を見ると
もうすでに薬草籠を持って歩いていた。

(;ノAヽ)「まったく困ります!勝手に外出されては」

城への帰り道は従者の話をあぁ。とかぬぅ、とか聞き流しながら、
そういえば名前を聞かなかったな、と思い馬に揺られた。


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:29:02.01 ID:gEsd+p7W0

( ・∀・)「困りますな。勝手に外出などされては。
      私は王からドクオ様を任されている身。せめて許可を取ってからに…」

('A`)「私ももう子どもじゃないんだ。それぐらいは許せ」

城に帰ると、今度はお目付け役のモララーからのお説教。
ドクオはうんざりといった様子で話を聞き流し、反論はしておく。

( ・∀・)「しかし、一国の王子たる身が…」

話を続けるモララーを無視して、自室へと戻る。
ドクオの頭の中にはもはや今日会った少女の事しかない。

('A`)「…」

溜息を一つつくと、寝所に着く。
明日の予定は、特に会議はないから真っ直ぐ草原だな。
などと考えているといつの間にかドクオの意識は闇に落ちていった。


―その日の深夜のVIP城。
1つの影とそれに跪く影が、小声で言葉を交わす。

( ・∀・)「…そ…女、……ない…か?」

( ノAヽ)「…はわか…が、事実…」

2つの影は朝が近づくと、その姿を自らの持ち場へと動かした。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:29:24.21 ID:gEsd+p7W0

次の日、ドクオは再び小言を言う従者を振り切って、
馬を駆り、昨日の草原へ向かう。
少女に会うため。ただそれだけのために

('A`)(俺も暇だな…。見知らぬ女の為に…)

事実、傍から見ればただの気まぐれだったと言えるだろう。
ドクオ自身もそう思っていた。
近くに従者が隠れてついてきているのに気付いてはいたが、
すぐに大丈夫だと分かるだろう、と放っておいていた。

川 ゚ー゚)「やぁ。来たな、ドクオ」

('A`)「昨日も思ったが、なんで私の名前を知っているんだ?」

川 ゚ー゚)「昨日従者が『ドクオ王子』って言っていただろう?」

('A`)「あ。そうだったか」

少女は昨日と同じ場所に立っていた。
今日は、白いワンピース。手にはまた、薬草籠を抱えて。

その日は、他愛も無い話で半日は話していた。
ドクオが王子であること、国の情勢、民の暮らし、天気の話。

ドクオにとっては最近の生活から欠け落ちていた、心休まる時間であった。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:29:41.10 ID:gEsd+p7W0

その次の日も、またその次の日も。
ドクオはその少女に会いに、草原へ馬を走らせた。
もちろん、会議や仕事のあるときは行かないと告げ、しかし暇さえあれば草原へ。


ドクオは、自分の意思でそこに行きたいと思い。
また、少女と会うことが生きがいとなりつつあった。

('A`)「あんたの名前はなんなんだ?」

川 ゚ー゚)「ふふ、知りたければ自分で調べればいい。『王子』だろう?」

(;'A`)「むぅ…なかなかマンドクサイ事を言うな…」

いつしか、草原にはいつも2人の姿があるようになり、暖かな風が、2人を包んでは流れていく。
砕けた口調になり、まるで昔からの知り合いのように話しあう。


しかし、ドクオが何回聞いても少女は名前を教えてはくれない。
そして帰り際には必ず先に背を向けて帰る。
それだけは、ずっと変わらなかった。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:30:41.23 ID:gEsd+p7W0


――その日までは。




20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:31:28.71 ID:gEsd+p7W0

その日も、いつものように2人草原で話していた。
いつものように、他愛も無い話。

しかし、夕立のように、『それ』は突然に起こった。


(#・∀・)「王子から離れろ。この悪女」

(;'A`)「モララー?どういう事だこれは!?」

突然、剣を構えたモララーがドクオ達の前に現れる。

川 - )「…」

少女は黙り込み、さほど驚いた様子を見せない。
それがドクオにはたまらなく不安だった。

(#・∀・)「王子。こちらへお下がりください。そいつは敵です」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:32:09.60 ID:gEsd+p7W0
モララーの言葉にドクオは絶句する。
しかし、威厳のある声を繕って問う。

('A`)「もう一度聞く。モララー、どういうことだ?これは」

(#・∀・)「そいつは…!」

モララーが話し始めようとした瞬間

川 - )「…いい。私から話そう。『ドクオ王子』」

モララーは自分の話を遮られて怒り心頭といった様子だが
ドクオがそれを手で制す。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:32:45.60 ID:gEsd+p7W0

川 ゚ -゚)「私は…いやわたくしは、ラウンジ国王女。クーです」

(;'A`)「ラウンジの…王女?」

信じられない。
この悪戯な笑顔の、美しい少女が?

川 ゚ -゚)「そしてわたくしは、自らの臣民の無念を晴らすために。
     貴方に近づき、殺そうとした、スパイです」

(;'A`)「嘘だろ?クー。なぁ、性質の悪い冗談だろう?」

混乱するドクオを尻目に、クーは薬草籠の中を漁る。


川 ゚ -゚)「これを」

そう言ってドクオに投げたのは、鞘に入った短剣。
その柄には、ラウンジ王家の紋章。
ドクオは、頭をハンマーで殴られたかのような感覚に襲われた。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:33:07.16 ID:gEsd+p7W0

(#・∀・)「これで分かったでしょう!?コイツは貴方を殺そうとしていたんだ」

説明が終わり、ドクオが納得するのを待っていたかのように。
モララーは剣を抜き、クーへと踊りかかる。

(;'A`)「待て!モララー!」

ドクオが飛び出そうとしたが、クーが遮る。
あの、悪戯な笑顔で。

次の瞬間。
ドクオの眼に映るのは、
出会ったときと同じ、空のように明るい青い布地に
薔薇の花弁のように真紅の血を滴らせ、地面に伏せる愛しき人。




24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:33:28.29 ID:gEsd+p7W0


――愛しき人?


――あぁ。そうか。俺は…

( A )


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:33:43.05 ID:gEsd+p7W0

( ・∀・)「ははは!ドクオ様の安全はお守りしましたぞ!」


五月蝿い

( ・∀・)「これで一安心ですな!」

五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!

(#'A`)「黙れ!」

ドクオは咄嗟に剣を抜き、モララーに襲い掛かる
一瞬遅れてモララーの剣がドクオの方を向くが、その一瞬をドクオが見逃すはずが無かった。

血飛沫。
続いて断末魔。
倒れ伏すモララー。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:33:58.37 ID:gEsd+p7W0

夕陽と血で紅く染まった草原に、ただ佇む男が1人。




(゚A゚)「うあぁぁぁ…」

返り血に染まる紅の服。

愛する人が持つはずの消された記憶、愛した人との消えない思い出。

消された記憶と消えない思い出
二つの間に挟まれて、少年は銀の刃を自分へ向けた…。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:34:42.82 ID:gEsd+p7W0

はたりはたりと紡ぎましょう

ほつれからまる糸玉を

廻し紡ぐは糸車

糸を逢わすは機織り機

この三点が揃わねば
淀み歪むは話の運命

三角関係と言わしめど、色恋沙汰にはありませぬ

今宵逢わせた紅の糸、少年少女の物語

紅に輝く草原に、二人寄りそう光景を

例え夢であろうとも、願うことこそ幸せか

二人が再び出会うこと
願うことしかできぬでも…



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/23(火) 22:34:59.09 ID:gEsd+p7W0

男は語り終わり、背伸びをし、懐中時計を取り出す。


( <●><●>)「もうこんな時間ですね。今宵はここまでにいたしましょう。
        この話はここでお終い。紅の糸。甘く切ない恋の糸。」

( <●><●>)「2つの国がどうなったのか?
        …それはまた別の機会にいたしましょう。」

次に紡ぐ糸は、あなたの糸かもしれないですね…



終わり



関連作品:(,,゚Д゚)紡ぐ話は青い糸のようです
       川 ゚ -゚)紡ぐ話は紅い糸のようです('A`)(総合短編版 リンク先は玉兎の夢様)
[ 2013/11/10 21:32 ] シリーズもの | TB(0) | CM(0)

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