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(´・ω・`)埋葬するようです

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 01:41:18.40 ID:E4SIT+Y50
(;´・ω・`)「うあっ」


私がみみずを見つけたのと、踏みつけたのは、悲しいことに同時といってもさしつかえなかった。
反射のように右足をあげたが、体を捩るみみずの、ぶよぶよとした感触は
すでに靴を通りこし、首筋にまではいあがっていた。

(´・ω・`)「これだから、雨上がりは……」


靴の裏をこすり付けるように歩き、家路へと急ぐ。
今の出来事をひきがねに、一日の疲れがどっと湧いてきて体を巡る。
一刻もはやく、家に帰りたかった。

 
「なぁ、ちょっと」
 

はやく帰って、シャワーをあびて、鯵の干物をつまみにビールをあおり
みみずの記憶を隅におしやりたい。


「なぁって、スーツ着て左手に鞄持ってるおじさんよぉ、無視するなよぉ」

はやく帰りたいというのに、この暗い夜道に私以外の人間はいなかった。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 01:53:54.37 ID:E4SIT+Y50
振り返ると、そこにはただ今歩いてきた道があるだけだった。
なんの変哲もない、田舎の住宅地

(#´・ω・`)「……」

恐怖よりはかすかに怒りの方が多くわいてくる。

立ち去ろうとする私に、それは続けて声をかけた

「あーっと待って、もう少し下を、下を見てくれ」

いわれるままに視線を落とすと、そこには一匹のみすぼらしい猫がいた。

∧_∧  
( ´_ゝ`) 「はいありがとう、こんばんわ」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 02:05:31.96 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`) 「いきなりで悪いとは思うんだけどさ
       おれを助けてくれないかな」

猫だ、猫を思い浮かべろと言われれば、大多数の人間が思い浮かべる、あの猫だ。

猫が、言葉を話している。

(;´・ω・`)「っ!……」

驚きのあまり言葉も出ず硬直してしまった私を、猫はいいように解釈したらしく
ちいさな頭を上下に動かして、ひとりでいや、一猫で話を続けた

( ´_ゝ`) 「ああ、うん、わかるよ。
       いきなりこんな事言われても困るよな」

( ´_ゝ`) 「具体的には、寝床を貸してほしいってこと。
       できたら水も飲ませて欲しいけど、まぁ、それはいいよ」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 02:21:08.81 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`) 「できたら半月、んー数日でいいや。
       知らないやつを家にあげるのは嫌だろうけどさ
       そこはちょっと頼むよ、おれも困ってるんだ」

(;´・ω・`)「はな、話を勝手にすすめるな」

ようやく絞り出せた私の声は、なるべく威圧的に聞こえるように努力したというのに
みっともなく震えていた、猫の方ば、変わらずに飄々としている。

( ´_ゝ`) 「あー悪い。
       なんせこんな状況だから焦っちゃって」

ほら、と猫が体を傾けた。
全身の毛が、濡れて汚れてはいるが、ひときわ左足がまっくろに汚れていた。

おそらく、怪我をしているのだろう。

( ´_ゝ`) 「血ぃけっこう出ちゃってさ。
       しばらくメシも食ってないってのにさ、雨までふるし」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 02:29:07.41 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`) 「もう死んじゃいそう。
       な?頼むよ」

(;´・ω・`)「……」

いろいろな事が頭の中を駆け巡った。
追い払うべきだ、と脳が警報をならす
こんな得体のしれないものを家にあげる?冗談じゃない。

だけども

(´・ω・`)「ひとつ言っておく。
      私はまだ、おじさんじゃない」

( ´_ゝ`) 「へぇ、老けて見えるな。
       それは了承ととってもいいか?おにいさん」

(´・ω・`)「撤回してもいいんだぞ」

( ´_ゝ`) 「ごめん、ごめん。
       助かるよ、ありがとね」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 02:37:11.96 ID:E4SIT+Y50
私のあとを猫はひょこひょこついてきた。
だいぶ歩きづらそうにしているのが見て取れたが
歩調を緩めようとも、抱き上げてやろうとも思わなかった。

猫はとても汚れていて、私はスーツを着ていたし
できることなら、はぐれて、ついてこないでも欲しかった。


猫はぺらぺらと何事か話し続けた。

そのどれもが、私の耳を素通りする。


くすんだ赤の、ほつれた座布団の色と、湿った土の匂いが蘇り、頭が痛い。


おそらくそうすれば付いてこれないのだろうに
なぜ、私は走らないのか。

はやく、家に帰りたかった。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 02:44:09.78 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`) 「へぇ、独り身のおっさんの家なんて、汚いのが常識だと思ってたんだが
       こういう事もあるんだな」

(´・ω・`)「黙ってくれ」

( ´_ゝ`) 「なんだよー褒めてんだぞ」

(´・ω・`)「そういう意味じゃない」

( ´_ゝ`) 「じゃ、どういう意味?」

(´・ω・`)「私は一人暮らしだし、訪ねてくるような人間もいない
      ここは壁もそんなに厚くない」

( ´_ゝ`) 「はぁあ、なるほどな」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 02:51:12.35 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`)「んで、どこでなら寝ていいの?
      できたら玄関以外がいいんだけど」

(´・ω・`)「ちょっとまった!!」

(;´_ゝ`)「うわ!びっくりした」

何の遠慮もなく、その肉球をフローリングにおろした猫を押しとどめる。
明かりのもとでみると、猫はそれはもう汚かった。

薄茶色のぺったりした毛にくっついている得体のしれないものや、未だ傷口から滲む血液が
私の家に持ち込まれるなんて、いったいどうして耐えられようか。

(´・ω・`)「まず君を洗う
      話はすべてそれからだ」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 02:58:30.55 ID:E4SIT+Y50
(;´_ゝ`)「うぅ、えらいめにあった
     猫は水が嫌いだって、お前知らないのかよ」

(´・ω・`)「お湯を使ったじゃないか」

(;´_ゝ`)「そんなん、どうでもいいよ
     くそー思い切り洗いやがって……」


(´・ω・`)「あのままじゃ傷にもよくない」

(;´_ゝ`)「思ってもないことを……」

(´・ω・`)「本心だとも」

( ´_ゝ`)「けっ、どうだか
      おれはもう寝る!!」


(´・ω・`)「ちょっと待て」

( ´_ゝ`)「なんだよ、まだ何かあるのかよ」


(´・ω・`)「ドライヤーがまだだ」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 03:05:32.34 ID:E4SIT+Y50

(((  _ゝ )))ヨタヨタ

(´・ω・`)「ああ、疲れた」

(  _ゝ )「おれが……」

(´・ω・`)「君も今日は寝たらどうだい。
     聞きたいことはあるけど、お互い疲れただろう」

( ;_ゝ;)「おれが死んだら祟ってやるうう」


(´・ω・`)「それは楽しみだ」
 

根気よく洗うと、猫はだいぶきれいになった。 

ドライヤーの音がよほどこたえたのか、小刻みに震えぐったりとしているが
正直なところ、とても良いきみだった。 


私はまだ、おじさんじゃないんだぞ。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 03:17:03.15 ID:E4SIT+Y50
(´・ω・`)「ここで寝ると良い」

( ´_ゝ`)「ん、良いのか?」

(´・ω・`)「使ってないんだ」

( ´_ゝ`)「じゃあ遠慮なく
      今日は寝る、話は、話はあしただ」

(´・ω・`)「おやすみ」


ソファのわきに置いた赤い座布団に丸くなると
猫はほどなくして寝息を立て始めた。


私も、もう夕飯を食べる気さえ残らないほど疲れていたので
早急に寝室にむかうことにする。


電気の紐をひいて、明かりを落とす際

古ぼけた赤色、そうまるでミミズの体色のようないろが脳裏に染み出す。
左手首がじくじくと痛んだ。


( -_ゝ-)..zzZZ

猫など、猫など拾ったためだろうか。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 03:19:48.92 ID:E4SIT+Y50

(´・ω・`)「ああ、いや」

(´・ω・`)「考え過ぎだ」

頭が痛い。
私もはやく眠るべきだ。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 03:27:45.08 ID:E4SIT+Y50

―――
―――――
――――――――
ついにその薄茶の毛皮につつまれた胸が規則的な上下をやめたことを、充分に確認してから
僕はそれに手を伸ばした。

手に触れたものは、いまだ暖かく
もう目を覚まさないのだと、僕には到底信じられそうにないことだった。

あまり大きいとは思わなかったのに、抱き上げてみるとずっしりと重い。
それを畑のうらまで運ぶころには、ぼくの息はすっかりとあがり。

園芸用のスコップでなんとか穴をこしらえたころには
もはや立っているのも億劫なほどに疲弊していた。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 03:38:25.35 ID:E4SIT+Y50
(´・ω・`)「さようなら」

ちいさな盛り上がりを未練がましく振り返りつつ、家に帰った。
愛していたわけではないのに、とても寂しかった。
犬の遠吠えを聞いては、いましがた埋めたばかりの姿を思い浮かべずにはおれなかった。

▼・ェ・▼

彼の色の濃いたれ耳が、僕は好きだった。
彼は僕の犬ではなく、野良犬で、痩せていて町中から嫌われていた。

しかたのないことだった。

野良犬というものは恐ろしい。

僕だって、寂しくなければ彼に近づこうと、思いはしなかっただろう。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 03:45:03.12 ID:E4SIT+Y50
母さんは忙しくて、めったに家におらず、学校でも誰も僕と関わろうとしなくて寂しかった。
だから、給食を残して野良犬にやることで、少しでも寂しさをうめたかった。
それだけだ。

だけど僕は今、彼に会う前よりも寂しい。


(´;ω;`)「名前、つければよかったなぁ」



――――――――
―――――
―――




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 03:54:22.93 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`)「二週間」

(´・ω・`)「二週間?」


( ´_ゝ`)「多少前後しても
      そんくらいしたら、出ていけるようになると思う」

(´・ω・`)「そう?」

( ´_ゝ`)「うん」


(´・ω・`)「食事は?」

( ´_ゝ`)「気にしなくていい
      外で探す」

(´・ω・`)「具体的に何食べるの?」

( ´_ゝ`)「虫とか」

(´・ω・`)「…………
     私の食事のついでで構わないなら用意できるよ」

( ´_ゝ`)「ならそれがいい」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 04:00:39.31 ID:E4SIT+Y50

( ´_ゝ`)「あと鍵開けといてほしい」

(´・ω・`)「えっ」

( ´_ゝ`)「いや?」

(´・ω・`)「嫌だよ……
     私、日中家にいないんだから」

( ´_ゝ`)「えー」

(´・ω・`)「外に出たいなら朝言ってくれよ
      帰りは八時まで」

( ´_ゝ`)「んー
      まぁ、しゃあないか」

(´・ω・`)「あっ、でもトイレどうしよ」

( ´_ゝ`)「ああそれなら」

( ´_ゝ`)「トイレのドアだけ開けといて」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 04:11:07.42 ID:E4SIT+Y50
私と猫はいくつかの取り決めをした。


( ´_ゝ`)「寝床さえ用意してくれるなら
      あとはどうでも」


私としては明確な線引きをして、余計なことをせずにすむようにしたかったのだが
猫はほとんどどうでも良い様子であった。


話し合いの最中に、なんどもあくびをし牙をのぞかせた猫は
私の庇護を望んでいるわけではないようだ。


ありがたいことだった。
家にいれてしまった以上、面倒はみるつもりだが
私はペットを飼うつもりなど、さらさらなかったためである。


そして言葉通り、猫がいても
私の生活に支障がでることはなかった。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 04:23:06.47 ID:E4SIT+Y50
朝起きて、自分の朝食を猫にわけ。
猫が外出するときは、出社のついでに。
帰宅も私のついでに。

夕食をわけ、包帯を変える。
ただ、それだけが私の生活に加わった。

たわいも無い会話をすることもあれば、しないときもあった。

水は蛇口から自分で飲むし
トイレは私と同じく、洋式の水洗トイレを使用しているようだった。

そうして、あまりに猫の存在が私の負担にならないのでようやく
ようやく私は、猫が妄想の存在だと悟った。
猫との暮らしをはじめて、既に十日をすぎた昼のことである。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 04:38:03.19 ID:E4SIT+Y50
気が付いてみれば、ごくごく当たり前のことであった。
私はいままで生きてきて、喋る猫になどみたこともない。

そう、そんなものに出会って普通に受け入れてしまっていることが
まずおかしい。

きっと、この猫が私の妄想が作り出した存在であると
初めから無意識化で、私は知っていたのだろう。
だからあんなにもあっさりと、喋る猫の存在を受け止めたのだ。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 04:47:56.04 ID:E4SIT+Y50

もっと考えを巡らせてみると、ますますもって
猫が妄想の猫であるように思えた。

猫との会話が、人間と猫との間で行われるものにしては
あまりにスムーズだったことも、裏付けのように思えた。

猫が妄想であるならば、もう少し距離を縮めてもいいかもしれない。
自分に遠慮する必要はないだろう。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 05:01:48.37 ID:E4SIT+Y50
(´・ω・`)「今日は肉が食べたいなぁ」

( ´_ゝ`)「おれは芋がいい」

(´・ω・`)「にくじゃがにしようか」

( ´_ゝ`)「玉ねぎは抜けよ」

彼が家にきてから、3週間はすぎただろうか
彼の足はすっかり良くなって、傷があったとは思えない健康な様子で
毛並も、どことなく良くなった気もする。

約束の日が過ぎたことを、私たちは口にしなかった。

そのかわり、雑談が増えた

私は、私が彼の正体を知っていることを彼には言わないことに決めた。
誰だって、自分が実在していないなどと言われれば気分を害すだろうし
私にとって、彼が妄想の猫だろうと、実在の猫だろうと大した違いは無かった

わたしは彼を友人だと認識するようになっていた。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 14:16:25.25 ID:E4SIT+Y50
(´・ω・`)「君って毛並だけはいいよね」

( ´_ゝ`)「だけ、とはなんだよ
     他にもあんだろ」

(´・ω・`)「ああ、そうだね
      にぼし食べる?」

( ´_ゝ`)「いただこう」

事実、彼の毛並は素晴らしかった。
顔のつくりもぼんやりとしていて、あまり整っていないし、体格も貧層ではあったが
汚れを落とし、本来の色を取り戻した彼の毛皮は惚れ惚れするほどに美しかった。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 14:22:49.65 ID:E4SIT+Y50

(´・ω・`)「またゴミくっつけてきたのかい」

( ´_ゝ`)「向こうから来るんだよ」

(´・ω・`)「取りなよ」

( ´_ゝ`)「毛づくろい、きらいなんだ」

しかし風のつよい日などに外出したあとは長い巻き毛にはっぱやら何やらが
もしゃもしゃと絡んでいるので、さすがの毛並も形無しではあった。

(´・ω・`)「きれい好きじゃない猫なんて聞いたことないぞ」

( ´_ゝ`)「きれいなのは好きさ
     体を舐めるのがきらいなんだよ」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 14:31:30.86 ID:E4SIT+Y50
( *´_ゝ`)「うあー
      いい、気持ちいい、極楽」

(´・ω・`)「おかゆいところはございませんかー」

( *´_ゝ`)「もっと右!右を!」

たまに、頼まれてブラシをかけることがある。
私は、彼を撫でるということに、なぜかいつも抵抗を持っていたので
このように思う存分、青色がかってみえる白い毛皮に触れられるこの時間を尊いと感じていた。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 14:35:52.04 ID:E4SIT+Y50
彼の首には首輪がはまっている。
私が付けたものではなく、彼のもちものである。
なめし革に丁寧な彫刻とあおい石が施された、とても首輪とは思えないつくりのものだ。



彼はこれをとても大事にしていて、雨にふられたときなど
自分のことよりもまず首輪のことを気にしていた。


彼の性格を考えると、それはとても意外なことだったが
私にも、他人には触れられたくないつよいこだわりが一つや二つあるので
あえて追求はしなかった。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 14:49:27.14 ID:E4SIT+Y50
―――
―――――
――――――――


ついに金魚が跳ねるのをやめたので
僕は握りつぶさないように気をつけつつ、金魚を掴み、畑へと走った。


黒い尾ひれがきれいな金魚で精一杯世話をした。
餌を食べなくなったときは心配で一日中金魚のことばかりかんがえていたし
水面に腹を浮かべていたときは、冷えた手で心臓を握られたような気さえした。



だというのに僕は、まだ息のある金魚をすくいあげ座布団までつれていった
あんなにも悲しかったのにも関わらず、土をかぶせている時
僕の心はたしかに高揚し満たされていた。





80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 14:53:54.94 ID:E4SIT+Y50


自分がよくない方に変わってしまっていることに気が付いたが
そのときにはもう、畑には思い出せないほどの生命の残骸が埋葬された後だった。



巣から落ちた雛 重症の兎 干からびかけた蛙 枯れかけた花 しまいには割れかけの茶碗まで
目についた、死に近いものはほとんどすべて、座布団に連れて行き看取ってから埋めた。


僕は埋葬に憑りつかれていた。


――――――――
―――――
―――

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 15:03:48.92 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`)「その匂い、コーヒーだな」

(´・ω・`)「そうだよ」

( ´_ゝ`)「おれにもくれ」

(´・ω・`)「駄目だよ」

( ´_ゝ`)「せめてチョコを……」

(´・ω・`)「もっと駄目だよ」

( ´_ゝ`)「くれたら、おれの秘密を教えてやるからよぉ」

(´・ω・`)「秘密は気になるけど駄目」

( ´_ゝ`)「けち」

(´・ω・`)「うん」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 15:15:26.87 ID:E4SIT+Y50
( ´_ゝ`)「秘密っていうのはさ
      おれはな、実は人間なんだよ」

(´・ω・`)「そうかい」

( ´_ゝ`)「あぁ、クソ
      信じてねぇな……本当だってのに」

( ´_ゝ`)「嘘みたいだけど本当のことなんだ
      道を歩いてたら、いきなり突き飛ばされて」

( ´_ゝ`)「おきあがった時には
      もう、このとおり猫だったってわけだよ」

(´・ω・`)「それは……」

( ´_ゝ`)「だからコーヒー飲んだって
      チョコ食べったって平気だ」

(´・ω・`)「しつこい」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 15:20:36.04 ID:E4SIT+Y50
私がコーヒーとチョコを読書の友としていると
彼はしきりに分けろ分けろとせがんできた。

驚くべき執念だが、ものがものであるので頷くわけにはいかない

いかに彼が猫ばなれしていようが、人間だと自称しようが、私の膝を叩くふくふくとした前足はやっぱり猫のものなのである。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 15:30:46.02 ID:E4SIT+Y50

( ´_ゝ`)「なぁ、お前
      コーヒー好きなのか?」

(*´・ω・`)「好きだね
      毎日飲みたいくらいさ」

(;´_ゝ`)「飲めばいいだろう?」

(´・ω・`)「私の好きなブレンド
     ちょっと遠い喫茶店のなんだ」

( ´_ゝ`)「ほぅ」

(´・ω・`)「今日は向こうに用事があったからよってきたけど
      毎日飲むにしては、少し贅沢でもあるからね」

( ´_ゝ`)「おれ、インスタントで充分だけどなぁ」


88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 15:46:01.94 ID:E4SIT+Y50
(´・ω・`)「ただいま」

( ´_ゝ`)「ん、あぁ……おかえり」

(´・ω・`)「今日は食べられそうかい」

( ´_ゝ`)「ばっちり、ばっちり
 んでも今は眠いからいらない」

(´・ω・`)「そうか……」

( ´_ゝ`)「うん、おやすみ」

彼は最近、ほとんど食事をとらない
かわりに、たくさんの睡眠をとっている。


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 15:50:16.07 ID:E4SIT+Y50

( -_ゝ-)..zzZZ 


私は夜中に目が覚めたとき、必ずソファのわきまで足を運び
彼の呼吸を確かめてから布団にもどることが多くなった。


( ´_ゝ`)「何でもない
 年だよ年、年取ると眠くなるんだ」


彼はすまし顔でそう言ったが、痩せて背骨の存在がつよくなった背中こそそうあれど
そのほかには彼が老猫であるよう見えるものは何にもなかった。


90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 15:53:12.04 ID:E4SIT+Y50
顔のひきつりを感じて、私は私に恐怖と腹のそこからの軽蔑を覚えた。

(;´・ω・`)「違う……」

もう、私は違うのだ

あの、死のにおいをたっぷりと吸った座布団も
この町に来るときに、引き裂いて葬りさったではないか

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 16:15:02.90 ID:E4SIT+Y50
(;´_ゝ`)「なぁ、お前に
      話しておきたいことが、あるんだ」

(;´・ω・`)「なんだよ、そんな……
       そんなにあらたまって」

(;´_ゝ`)「おれは、お前に、ほんとうに、ほんとうに感謝している。
      まえも、話しただろう、おれはさ、おれはにんげんなんだよ」

(;´_ゝ`)「おまえは、信じなかったし、きっとたいした意図があったわけじゃないんだろうけど
      おまえの、おれのあつかいが、おれは心地よかったよ」

(;´・ω・`)「何を……」

目もうつろに、寝床の座布団によこたわり
ぜいぜいと苦しそうに、息をしながら
それでも彼は必死に言葉をつむいだ

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 16:20:18.47 ID:E4SIT+Y50
(;´_ゝ`)「おれは、猫になってから、今までにないくらい
     ひとから大事にされた」

(;´_ゝ`)「だいたすうのひとが、みんな、おれを撫で、だきあげ、食事をくれ
     ほめたたえた」

(;´_ゝ`)「そのすべてが、おれを途方もなくみじめにした」

(;´_ゝ`)「だから、だからおまえが……」

(;´・ω・`)「私は、私はただ」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 16:39:27.66 ID:E4SIT+Y50
(;´_ゝ`)「おれがしんだら、この首につけてるものを売ってくれ
      たいしたものじゃないが、コーヒー代にはなる」

(;´・ω・`)「やめろ……喋るんじゃない……
      病院に、病院いこう。な?だから……」


( ´_ゝ`)「ああ、そうだな……ちょっと苦しくて弱音がでたんだ」

( ´_ゝ`)「息苦しいんだ、首のこれとってくないか?
      それからタクシーをよんでくれ、病院にいこう」


(;´・ω・`)「すぐに用意する!」

私は震える手を叱咤し、急いで彼の首輪をはずした
後ろのテーブルに置いてある財布をつかみ振り返ると
彼はいなくなっていた。





確かに、私は彼を、私の妄想だと思っていた
だけど、やはりどこかで実在の猫だと、そう思っていたらしい

何が起きたのか、私の脳では理解しきれず
毛の一本も落ちていない座布団から長い時間、目が離せなかった。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 16:50:12.89 ID:E4SIT+Y50


私は夢から覚めた心地だった。
目覚めた直後は、まちがいなく現実だったといえるほどに存在感があるというのに
すこし、時間がたってしまえば輪郭すら掴めなくなる。

現に私の中には、猫と暮らしていたという記憶だけが、かろうじてひっかかっているだけで
たった数日しかたっていない今、もう毛の色さえ思い出せない。

このまま猫のことは、記憶の底に沈めてしまおうか、とも思ったが
どういうわけか、首輪が手元に残っていたため
熟考した結果、私はこの首輪を埋葬することに決めた。



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 17:00:47.77 ID:E4SIT+Y50
人気のない林に穴を掘る。
出来る事なら、小さなスコップではなくて、もっと大きなものを使いたかったが
目立たないためには、いたしかたない。

しっかりと深い穴をこしらえた後、私は花を用意していない失態に気が付いた。
これは、私のための埋葬ではないつもりだった。
もう、顔もわからぬ彼の弔いための埋葬をおこなうつもりだった。

落とさないよう、手首に首輪をはめて
私は花屋を探すことにした。


102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 17:34:52.97 ID:E4SIT+Y50

幸運にも、予想よりは近くに花屋を見つけることができた。
小ぢんまりとした店で、アルバイトらしき青年が一人レジに立っている他は誰もいなかった。
いくつか花を見繕い、青年に花束を頼んだ。

(´<_` )「こちらでよろしいでしょうか?」

青年は成型した花束を私に見せてくれた
美しく整えられた花束は、これから崩される運命にあることが惜しくなるほどで
私は取り落としたりしないように、慎重に手を出した。


瞬間、花束は床に打ち捨てられていた

レジの青年は、さきほどまでの温和そうな表情とはまるで違う
鬼気迫る顔と、骨でも折ろうと目論んでいるかのような力で私の手首を掴み私を問い詰めた。


(;´・ω・`)「何をする!」

(゚<_゚  )「これを!」

(゚<_゚  )「これをどこで!」


104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 17:46:34.29 ID:E4SIT+Y50
(´<_` )「どこかで買ったものですか?誰かから譲り受けたものですか?
      それとも拾ったものですか?お願いします、答えてください」

(;´・ω・`)「答えますから、まず手を放してください」 

(´<_`;)「すみません」 

(´・ω・`)「何か事情がおありのようですが……」

(´<_`;)「ああ、なんと言ったら良いのか
     あの、それは、そのバングルは……」 

(´<_`;)「兄の、兄のものなんです」 

顔を覆いうめくように呟かれたその言葉に、頭を殴られたような気がした。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 18:04:30.18 ID:E4SIT+Y50
(;´・ω・`)「バングル……ですか?」

(´<_` )「はい、姉がこういったものを作るのが好きで
     きょうだいで同じものを…… 」

(´<_`;)「少し、待っててください
     おれ、今もっています」 

青年が足をもつれさせながら持ってきたそれは、私の手首に収まっているものと、つまり猫が大事にしていた首輪と石の色が違うだけで
どこもかしこも同じかたちをしている。


(;´・ω・`)「しかしこれは……」


(´<_`;)「ありふれたデザインですが
     ですが、裏に、裏に絶対A.Sと彫られているとおもいます」 

見ると、青年の主張通り、裏地にはA.Sと彫られていた。
きっとこれは青年の兄のものなのだ。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 18:19:36.84 ID:E4SIT+Y50
(´<_`;)「一体これはどういう経緯であなたの元へ着たのですか?」

(´<_`;)「教えてくださいお願いします。もうこれだけが頼りなのです
      兄は、兄はもうずっと消息を絶っていて……」

(;´・ω・`)「大変、申し上げにくいのですが……」

(´<_`;)「どんな些細なことでもかまいません」

(;´・ω・`)「私が拾った猫が、首輪としてつけていたものです」

もうほとんど涙声になってしまった青年に向けるには、あまりに配慮にかける言葉だったように思えた
私の言葉を聞いた青年の瞳が、みるみるうちに憂鬱の、厚い雲に覆われる。

(´<_` )「…………」

(;´・ω・`)「あの……」

(´<_` )「その猫はいま……」

(;´・ω・`)「先日、あーその、出て行きました」

(´<_` )「そうですか……ありがとうございます。
      時間を取らせてしまってすみませんでした」


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 18:30:29.17 ID:E4SIT+Y50
(´<_` )「花束、すぐにお作りしますね」


肩を落とした背が痛ましく、私はとっさに声をかけていた

(´・ω・`)「こちらお返しします」

(´<_` )「いえ、それは」

(´・ω・`)「いいんです、私には必要のないものですから」

(´<_` )「何から何まですみません
     ありがとうございます」

せめてもの気持ちに、と花代は青年が出してくれた。
いくぶん豪華になった花束を抱えて、森にもどり
どうしようもないので花を埋めることにした。

今までの埋葬とは違い、土を盛り上げ枝を刺す
一輪のこしておいた花を添える。
私は、墓を作った。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 18:51:00.25 ID:E4SIT+Y50
また、ここに来ようと思う。
コーヒーとチョコレートを持って墓参りを、してみようと思う。
そのときまでに、花屋の青年に彼の、私の友人の名前を聞いておくつもりだ。

(´・ω・`)「それじゃあ、また」





残念ながら、あの花屋は何度探しても、もう一度訪れることは叶わなかった



私は最近よく考える

(´・ω・`)「いったい、彼は何であったのか」

いくら考えても、わかることはただ一つで、それは彼が私の友人であるということのみだった。







128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 18:51:50.84 ID:E4SIT+Y50
終わり。
支援等ありがとよー


オマケ・ID:E4SIT+Y50によるAA

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/27(金) 14:09:55.81 ID:E4SIT+Y50
保守ありがとよー

            ∧_∧  
 γ⌒ヽハ,,,,ハ ? (・ω・` )  
 ("_)( ´_ゝ`)   O旦と )    
 i⌒⌒⌒⌒⌒i   (__(__つ   
[ 2013/10/04 18:30 ] スレ立て短編 | TB(0) | CM(0)

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