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('A`)は樹海行きの切符を買うようです 第六話

第五話はこちら
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:04:55.24 ID:u5xd6MRz0

『第六話』

 ベッドの上で跳ね起きた。僕は不快感にまみれている。

 顔中が汗にまみれて気持ち悪い。
濡れたシャツが肌に貼りついて気持ち悪い。
そして何より、下半身がぬめりついていた。

('A`)「中出し義母レイプ…!?」

 自分の尻に手をまわすと
アナルがヌルヌルになっているのが感じられる。
僕はそのヌルヌル成分を指に取ると、
浅い呼吸を繰り返しながらズボンから手を引っ張り出した。

('A`)「ペロ…苦!」

 どう見ても精子です。本当にありがとうございました。


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:07:33.05 ID:u5xd6MRz0

 僕は惨めな気持ちにどっぷりと浸かりながら、
ティッシュで指の1本1本を拭き清めた。
床に落ちているデスノートを拾いあげ、表紙をめくる。

『第1回:何者かに撲殺
 第2回:空腹のあまり死亡
 第3回:フサギコに撲殺
 第4回:ギコ猫に撲殺
 第5回:クックルーに撲殺』

 僕は昨夜のことを思い出す。

 クーにレイプされた後も僕の視力は回復せず、
その上金縛りのような状態にあっていて、僕はしばらく動けなかった。
そして、その間に近づいていたらしい敵に、僕はタコ殴りにされていた。

 ようやく開いた目に飛び込んできたのは屈強な鳥の怪物で、
すっかり気が動転していた僕は真っ向勝負を挑み、
そのまま殴り殺されたわけである。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:10:12.32 ID:u5xd6MRz0

('A`)「今考えればいくらでもやりようはあったな」

 そう思った。
たとえば目ー潰し草を投げつけてやっても良かったし、
もっと単純に救急草を飲んでも良かった。
こちらが『行動』するのに時間制限はないのにもかかわらず、
僕は何も考えていなかった。

('A`)「くそ、くそ。
   はじめて地下4階より下に行けたのに。
   装備も良くて胸板も厚くなってたし、
   何より追い風のようなものを感じてたのに!」

 悔しいのとむかつくのと惨めなのとで僕の目には涙がにじんでいる。
泣いたら負けだ、と僕は思った。
鼻水をすすりあげコブシを握り、
唇を噛んで感情が過ぎ去るのを待っていると、
唐突に、まだ下半身がヌルヌルであることを思い出した。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:13:12.62 ID:u5xd6MRz0

('A`)「痔になってたりするのかな」

 僕はおそるおそるズボンを脱いだ。
幸いなことにズボンはあまりヌメっていない。

('A`)「む」

 そして気づいた。僕のパンツ。

('A`)「アナルまわりよりフロント周辺の方がヌメっている…!」

 つまり、と僕は考える。脳内から声がした。

「どういうことだね毛利君」

 チョビヒゲピザだ。蝶ネクタイのガキもいる。
僕は声を作って応答した。

('A`)「つまりこういうことですよ目暮警部。
   これはやつの精液ではないのです…!」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:16:40.75 ID:u5xd6MRz0

「何ィ! 本当かね毛利君! では誰のザーメンだというのだね!」

 ザーメンて。僕はうろたえた。

('A`)「あ、いや、それはその…」

「あれれー?
 おじちゃん、ホモセクシャルとのオーラルセックスで
 射精した形跡があるよー?」

 うわー直球だなぁ、と僕は開いた口が塞がらなかった。
小学生ぶるならもうちょっと語彙レベルを落とせよ。

「どういうことだね毛利君!」

 てめーもうるせーよ。

('A`)「だから、夢精していたのですよ犯人は!
   そして、その犯人とは、他ならぬ私だったのです!」

「なんてことだ。それでは…それでは…」

 共食いじゃないか、とチョビヒゲピザはその場に崩れ落ちる。
僕がパンツを脱ぐと、幻覚たちは去っていった。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:19:39.60 ID:u5xd6MRz0

 皆さんは夢精の経験がおありだろうか。

 僕は『NO』だ。正確には、だった。
そのため、僕は夢精後のパンツの処理方法が皆目検討つかない。
いったい夢精人たちはこのパンツをどうやっているのだろう。

('A`)「洗面所に持っていって洗うか?」

 NO! と僕の危機管理能力が警鐘を鳴らす。

「そんなことをしたら、お前さん、死ぬぜ」

 腰にタオルを巻いてパンツを洗っているところを両親に見つかり、
何故か頬を赤らめながら挨拶する僕の姿が頭に浮かぶ。
想像の中の僕は穴だからという理由で排水溝に入ろうとして、
とーちゃんにぶん殴って止められていた。

 洗面所で洗うのはよろしくない。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:22:15.65 ID:u5xd6MRz0

('A`)「そうだ風呂場! あそこなら確実に1人になれるし、
   シャワーで洗い流した後は洗濯機に投げ入れておけば良い」

 NO! 僕の危機管理能力が再び警鐘を鳴らす。何故だ。

「私が授業でタンパク質の変性について話したことを忘れたのですか?
 風呂の湯の温度は容易に変性を引き起こす。
 そして精液はタンパク質だ。
 風呂場オナニーは死に直結する、私はそう教えました。
 これであなたに同じことをいうのは二度目です。
 三度目はいわせないでくださいよ無駄無駄…」

 僕の脳内では化学の教師が
髪の毛をコロネ状に巻きながら演説している。
彼はいわゆる頭髪に不自由な人なので、
すべてをかき集めてもコロネは1つしかできなかった。

 風呂場で洗うのもよろしくない。
いったいどうすれば良いのだろう。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:24:11.42 ID:u5xd6MRz0

 端的に話すと、僕は散々悩んだ挙句、
パンツをビニール袋に入れて捨てることにした。
考え得る最もシンプルな方法だった。

('A`)「1度や2度の射精量で大変なことになるとも思えんがな」

 シャワーで下半身を洗い流しながらそう思ったが、
わざわざごみ箱からビニール袋を取り出して
パンツの救出を行おうという気にはならなかった。
そんなことをしてまた惨めな気持ちになるのはごめんだったし、
今後そのパンツとどんな付き合い方をしていけば良いのか
僕にはわからない。

('A`)「パンツに罪はないんだけどな」

 僕はごみ箱に向かって合掌した。
パンツの神様は僕を許してくれるだろうか。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:26:49.67 ID:u5xd6MRz0

 日曜日の太陽は誰の上にも等しく降り注ぐ。
それはホモセクシャルにレイプされた高校生にもいえることだし、
前節での活躍を見込まれスターティングメンバーに名を連ねた
サッカー選手にもいえることだった。

 ブーンはその72分間のプレイの中で数回惜しいシュートを放ち、
チームのために数個のフリーキックをゲットし、
何本かの鋭いパスを通したらしい。
彼は2対0とリードを広げた局面で守備的な選手と交代させられ、
ピッチを退く際にはスタンドから拍手で迎えられたとのことである。

 僕は新聞を食卓に置くと、自分の部屋に戻って着替えた。

('A`)「僕には気分転換が必要だ」

 出かけよう、と思ったのだ。
どんな不慮の事態が起きるかもしれない。
出かけるついでに夢精パンツ入りのビニール袋を
コンビニかどこかで捨ててしまうのが賢明だろう。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:29:05.92 ID:u5xd6MRz0

 ひとり歩く僕の右手にはくたびれたビニール袋。
そしてその中には乾燥した精液でカピカピになっているトランクス。
こんな状況を誰かに見られるわけにはいかない。

('A`)「これは、単独のスニーキングミッションなのだ」

 奥歯に致死性のある毒薬の詰まったカプセルでも
装備したいところだった。
誰かに見つかったら舌を噛み切って死ぬより他にない。

 いや、と僕は否定する。

('A`)「そんなのはだめだ。
   死人に口無し、僕がこのパンツを元に
   どんな変態さんに仕立て上げられるかわかったもんじゃない!」

 自爆だ、自爆。餃子を見習え。やってできないことはない筈だ。
そんなことを呟きながらなんとかコンビニに辿りつき、
僕はスニーキングミッションをコンプリートさせた。
実に爽快な気分だったので、僕はそのまま街にくりだした。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:32:09.65 ID:u5xd6MRz0

 僕は都会が好きではない。
人がたくさんいる場所が苦手なのだ。
空気は汚く雑音にあふれ、誰もが何かに急かされている。

 しかし、都会のすべてが嫌いというわけではない。
やはり都会は便利であって、
それは石を投げればコンビニに当たるほどである。
散在するジャンクフード店は大好きだし、
何より僕は都会の大型書店が好きだった。

 僕は備え付けの椅子に腰掛けお気に入りの作家の本を読んでいる。
この長めの短編小説、あるいは短めの中編小説といった長さが、
そして翻訳家も兼ねていることに由来する独特のリズムの文体が
僕は好きなのだ。

 この本屋ではずらりと10席程度の読書スペースが提供されている。
名目としてはそこは本の内容を確認するところで
1時間以上の占領は認められないのだけれど、
まだ空席が残っていることをいいことに、僕はすっかり熱中していた。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:34:20.42 ID:u5xd6MRz0

 本を読むときの姿勢が悪いのだろう。
僕は読書時首に疲労がたまりやすい性質の人間で、
何時間も続けて本を読むことができない。
数十分ごとかに顔を上げ、首をまわしてマッサージしないと
気が狂いそうになるのだ。

 数回首をまわしたところで
僕の2コ隣の席に女の子が座っていることに気がついた。

 彼女は文庫本を開いていた。
ピンと伸びた背筋が姿勢の良さを物語っている。
グリーンのワンピースを品良く着こなし、
ウェーブがかった金髪は今日は縛られていないらしい。

 ツンだった。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:37:07.10 ID:u5xd6MRz0

(;'A`)「うおーなんだよこれ。どうすりゃいいんだよ」

 僕はすっかりパニックに陥っていた。
先日の痴態を知られているような気がして猛烈に恥ずかしい。

('A`)「落ち着けドクオ、そんなことはない。
   ツンは『樹海』内で行われていることについて
   認知していないといっていたし、
   だいたい現実にいる方のツンはその記憶を失っている筈だ」

 というより、と僕は考えた。

('A`)「シカトしてればいーんだよな」

 そりゃそうだ。
触らぬ神に祟りなし。恐怖には関わらないに越したことはない。
僕は再び本に目を落とす。

ξ゚⊿゚)ξ「あら、ドクオじゃない?」

 僕の目論見は2秒で潰えた。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:40:06.99 ID:u5xd6MRz0

 ツンは昼からブーンと会うらしい。
この本屋に来たのは友人に薦められた本をつまみ食いするためで、
そろそろ行こうと思っていたところなのだと言っていた。

ξ゚⊿゚)ξ「だから、結構な偶然ね」

('A`)「そうだね。運命を感じる?」

ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ。ナンパしてんの?」

 少し考え、そうだ、と僕は言ってみた。
一瞬驚いたような顔を見せた後、ツンはにっこり微笑んだ。

ξ゚ー゚)ξ「ふーん、じゃあ、ご飯でも食べよっか」

 今度は僕の驚く番だった。
ツンは僕の次の言葉を待たずに携帯電話を取り出すと、
僕から2・3歩遠ざかって背を向け、誰かに電話をかけだした。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:43:23.24 ID:u5xd6MRz0

 ツンの電話はすぐに済んだ。

ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、向かいでしばらく時間を潰しましょ」

 有無を言わせず本を棚に戻させると、
ツンは僕を連れてチェーン展開をしている喫茶店に入った。

 慣れた様子で呪文のような注文をサラサラと告げるツンとは対照的に、
僕は各駅停車で注文する。
なんでコーヒー1つ頼むのにこんなに手順が必要なのだろうか。
なんとかカップ1杯ののアイスコーヒーを手に入れた頃には
僕はほとんど店員を呪っていた。

 僕たちは道路に向かったオープンテラスに腰掛けた。

ξ゚ー゚)ξ「あんた、ここ来るのはじめてでしょ」

 座るやツンはそう僕をからかった。
僕はデジャヴのようなものを感じ、何も言葉が出てこない。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:46:13.63 ID:u5xd6MRz0

('A`)「えっと、なんだって?」

ξ゚ー゚)ξ「だから、ここ来るのはじめてかって。あんた耳ついてんの?」

('A`)「ついてるよ」

ξ゚ー゚)ξ「聞きたいのはそこじゃないの。そんなの見りゃわかるって。
     ここに来たのははじめて?
     だよねー。あんなにオタオタしてたもんねー」

 間違いない、と僕は確信をもった。
ここにいるグリーンのワンピースの女の子と、
あの『樹海』にいる赤いワンピースの女の子は同一人物だ。

 僕はコーヒーを飲んで喉を潤すと、唇を舐め、
思い切って口を開いた。

('A`)「僕はこれまでに『樹海』で5度死んでいる」

 僕はひどく緊張している。
ツンは何か言おうとしたその口の形のままで固まった。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:49:22.64 ID:u5xd6MRz0

ξ;゚⊿゚)ξ「え、なに、あんた、なんで、
     あんたなんであそこ知ってんの?」

 ツンはすっかり狼狽しきっていて、
その慌てぶりはかえって僕を落ち着かせた。

('A`)「落ち着けって。
   まず、落とすといけないから、
   その呪文コーヒーを一口飲んでテーブルに置くんだ」

 ツンは僕の言う通りにコーヒーを一口飲み、テーブルに置いた。
僕はツンに何をどう話すべきか頭の中でまとめる。
あまり良くはまとまらなかったが、ツンが落ち着いてきた様子だったので、
とにかく話を続けることにした。
いくら時間をかけたところでまとまるものとも思えない。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:51:09.49 ID:u5xd6MRz0

('A`)「まず確認したい。
   ツンは『樹海』の存在を知ってるな?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、知ってるわ」

('A`)「僕は今月の頭くらいからあそこに行くようになっている。
   そして、僕が樹海行きの切符を買うと、
   いつもそこにはツンがいる。
   そのことについて心当たりはある?」

 ツンはしばらく黙って思考をめぐらせていたが、
やがて合点がいった様子で口を開いた。

ξ゚⊿゚)ξ「うん、たぶん、あたしは全部わかる。
     それはあんたにとってショッキングな話になるかもしれないけど、
     それでも聞きたい?」

 もちろん、と僕はうなずいた。
ツンは呪文コーヒーを一口飲むと、再び話しだす。


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:54:02.54 ID:u5xd6MRz0

ξ゚⊿゚)ξ「まず、あたしに『樹海』であんたを迎えてた記憶はないわ。
     それは解放されたときに消されるの」

('A`)「うん、それは知っている。
   というか、そうじゃなかったらこんなリアクションにはならないよね」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね。
     で、それでもあたしは『樹海』については知っている。
     なんでだと思う?」

('A`)「さっぱりわからない。
   というより、まず、なんでツンがあそこにいるのかわからない。
   自分の意志でいるわけじゃあないのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「それは、半分はそうね。
     もう半分は義理みたいなもんかな」

('A`)「義理?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう、義理。
     『樹海』をクリアして願い事を叶えてもらい、
     前任者を解放した人は、次の人に解放されるまで
     あそこで神様の使いっ走りをしなきゃいけないの。
     クリアする前までの記憶はいじられないから、
     あたしはこうして『樹海』のことを覚えてるわけ」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:56:23.53 ID:u5xd6MRz0

('A`)「つまり、ツンは願い事を叶えてもらったんだ。
   そして誰かに解放されるのを待っている」

ξ゚⊿゚)ξ「そういうこと」

('A`)「それがどうして僕にとってショッキングな話になるのかな」

ξ゚⊿゚)ξ「だから、クリアして願い事を叶えてもらったとしても、
     しばらく経たないと効果が得られないのよ」

 ツンは一区切りついた様子でコーヒーを口に運んだ。
僕にはあまり実感がわかなかった。
何故それがショッキングな話になるのだろう。

('A`)「どうも納得がいかないな。
   だって記憶が消されて願い事した日に戻るんだろ?
   夢を見て起きるみたいなもんだ。
   いくら待たされることになろうとも、
   覚めてしまえば一瞬で、そんなにつらくはないんじゃないか?」


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 16:59:26.69 ID:u5xd6MRz0

 そうね、とツンは考え込む。

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオは自分の思い通りになる世界に生きてみたいと思う?」

('A`)「そりゃ、思うんじゃないかな。
   だいたい願い事を叶えてもらうってのもそれに近いことじゃないか」

ξ゚⊿゚)ξ「それはそうかもね。
      でも、自分の思い通りになる世界では、
      自分の思う通りにしかならないの」

('A`)「うーん。それは、刺激のようなものが少なすぎるといいたいのかな」

ξ゚⊿゚)ξ「刺激。そうね、そうかもね。
      たとえばあたしの思い通りになる世界にあたしがいるとして、
      あたしは内藤に会いたいなと思うわけよ」

('A`)「だろうね」

 僕はツンから目をそらしたが、彼女はそれに気づかず話し続けた。
僕はコーヒーを飲み干した。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:02:19.89 ID:u5xd6MRz0

ξ゚⊿゚)ξ「その内藤はあたしが考えた内藤で、
      それはあたしのイメージした内藤かもしれないし、
      あたしの理想とする内藤なのかもしれないけれど、
      とにかく実際の内藤とは違うわけよ」

('A`)「だろうね。それの何が嫌なのかな」

ξ゚⊿゚)ξ「だから、その内藤はあたしの想定の範囲内でしか動かないの。
      あたしの思った通りにしか動かない。
      突然走りだすこともなければ
      唐突に旅行に行こうと言い出さないし、
      絶対サッカーの才能があるんだけど
      何故かサッカーを避けている友達の話もしない。
      あたしがそいつの名前を知りたがっても、
      あたしが知らないんだから、当然教えてもらえないの。
      それも、教えたくないから教えないんじゃなくて、
      知らないから教えられないという態度なのね」

('A`)「リアリティのなさに苛立ってくるわけだ」

ξ゚⊿゚)ξ「その先にあるのはすごい孤独感よ。
      次第にさっさと死にたくなって、それでも自分では死ねないの」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:04:42.05 ID:u5xd6MRz0

 ツンは呪文コーヒーを飲み干すと、大きく1つ息を吐いた。

ξ゚⊿゚)ξ「だから、あたしがあんただったなら、
      もう『樹海』に行くのはやめとくわね」

 だろうね、と僕は頷いた。
沈黙が二人を包む中、僕たちは人々の歩く様を眺めて時間を潰した。

 やがて汗だくのブーンがやってきた。
鬼気迫る表情だった。

(;`ω´)「やっと着いたお! ドクオだったのか!
      今日、僕は、ドクオを殺すお!」

(;'A`)「落ち着けブーン。何があったんだ」

(;`ω´)「それはドクオの胸に訊いてみるといいお!
      そこになおれ!」


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:07:16.10 ID:u5xd6MRz0

 僕はブーンに引き起こされた。すごい力だった。
困ってツンの方に目を向けると、彼女はカウンターで水をもらっている。

ξ゚⊿゚)ξ「はい内藤お疲れさま。
      とりあえず水でも飲みなさい」

 ブーンは僕を掴んでいた手を離すと、
一気に水を飲み干した。

( `ω´)「うおつめたっ! 頭! 頭痛いお!
      これもドクオのせいか!」

('A`)「その理屈はおかしいだろ。落ち着けよ。
   素数を数えろ」

( `ω´)「1・2・3・4・5…」

('A`)「それは自然数だ」

( ^ω^)「落ち着いたお」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:09:36.80 ID:u5xd6MRz0

『もしもし内藤? あたしリカちゃん。じゃなくて、ツン。
 今本屋にいるんだけど、うん、そうそうあの本屋、
 あの本屋にいるんだけど、なんか知らない男にずっとつきまとわれてるの。
 このままだとレイプもしくはSATSUGAIされそうで怖いからすぐ来て!
 でも車に乗って来たらもう二度とあんたと一緒に歩いてあげないから、
 公共の交通機関でお誘いあわせの上早く来て!
 あんたが来るまで誘いに乗るふりして向かいでコーヒー飲んでるからね!』

 ブーンは電話でそんなことを云われたらしい。
脳みそまで筋肉でできてることでおなじみの彼は
いてもたってもいられず、先日試合をこなしたばかりの
プロフェッショナルなスポーツ選手であるにもかかわらず、
家からここまで走って来たとのことだった。

( ^ω^)「いやーすまんこ。
      思えばドクオのことをツンは知ってるはずだお」

('A`)「あ、別に僕に信頼があるわけじゃないのね」

 乱暴したお詫びに、ということで僕はブーンに焼肉を奢られている。
旨い飯を食えれば僕はそれなりに幸せだった。


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:12:31.75 ID:u5xd6MRz0

 僕は焼肉を奢られた後彼らと別れた。
一緒に遊ぶか、と形式上訊かれたが、
ブーンの表情は明らかにそれを嫌がっている。

('A`)「ツンは何か好きな食べ物あるの?」

 別れ際にそう訊くと、
ツンは生クリームのたっぷり詰まったエクレアだと答えた。

 僕はデパートの地下2階で
生クリームのたっぷり詰まったエクレアを3つ買うと、
いったん家に帰ってスポーツバッグにデスノート、
そして僕が小さい頃よく蹴っていた小さなサッカーボールを詰め込んだ。

 僕は樹海行きの切符を買った。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:15:26.51 ID:u5xd6MRz0

 あたり一面の草原の中、やはり彼女はそこにいた。

ξ゚⊿゚)ξ「あらこんにちは。連続で来るのなんて久しぶりじゃない」

 風を受け、赤いワンピースの裾がゆらゆら揺れている。
僕はスポーツバッグからサッカーボールを取り出した。

('A`)「こんにちは。今日は改めて自己紹介しようと思って来たんだ。
   僕はドクオ。
   ブーンの友達で、サッカーを生活から遠ざけている」

 僕がボールをツンの足元に蹴ると、彼女はそれを器用に受け止めた。
ツンはいつの間にか上下ともに白を基調とした
ユナイテッドヴィッパーズのユニフォーム姿になっている。
ツンが意外なほど本格的なフォームでボールを蹴ると、
ボールは僕の立っているところに飛んできた。

 僕はそれを胸で受け、自分の足元に丁寧に落とす。
穏やかな風が吹いていた。


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:18:05.94 ID:u5xd6MRz0

 しばらくボールを蹴りあった後、
ツンはボールを取りあげ僕の方に近づいてきた。
彼女はもはやUVのユニフォームは着ておらず、
いつも通りの赤いワンピースにその身を包んでいる。

ξ゚⊿゚)ξ「またあたしと会ったわけ?」

 ツンは僕にそう訊いてきた。
僕は答えず、
生クリームのたっぷり詰まったエクレアが3つ並べられている箱を
ツンに手渡す。

('A`)「お茶でもしない?」

 僕がそう誘うと、ツンは口元を緩めて訊き返す。

ξ゚ー゚)ξ「なにそれ。ナンパしてんの?」

 そうだ、と僕は頷いた。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:21:32.62 ID:u5xd6MRz0

 あたり一面の草原の中、気がつくとテーブルと椅子が存在していた。
僕とツンはそこに腰をおろすと箱を広げ、
これもいつの間にかテーブルの上に存在していたコーヒーポットから
ティーカップにコーヒーを注ぎ込んだ。

ξ゚⊿゚)ξ「そこまで知っててまたここに来るなんて、
      あんた、ひょっとすると馬鹿なんじゃないの?」

 エクレアを平らげコーヒーをすすり、ツンは僕にそう言った。
もっともだ、と僕は頷く。

('A`)「うん。僕は、ひょっとすると馬鹿なのかもしれない」

ξ゚⊿゚)ξ「それか、この生活を軽く見てるのよ。
      どうせ大したことないや、実際やってみたら
      なんだこんなもんかって思うに違いないと思ってんのよ」

('A`)「そうかもしれない」

 実際ここの生活はどうなのか、と僕は訊く。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:23:25.74 ID:u5xd6MRz0

 そうね、とツンは遠い目をした。

ξ゚⊿゚)ξ「ここで生活をしていると、無限等比級数について考えるわ」

('A`)「数学の?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう、数学の」

('A`)「僕が勉強不足だからなのかもしれないけれど、
   ちっとも意味がわからない」

 でしょうね、とツンは微笑んだ。
彼女はいつの間にか黒いマジックペンを持っていて、
それでテーブルの上に正方形を描いた。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:25:25.12 ID:u5xd6MRz0

 ツンは正方形を真っ二つに割るように、
二つの対応する辺の中点を結ぶ線を引いた。

ξ゚⊿゚)ξ「これで半分」

 彼女はそう言い、長方形の内1つをマジックペンで塗りつぶした。

 ツンは引き続き、残った長方形を半分に割った。
最初の正方形の4分の1の大きさの正方形が2つ並ぶ。

ξ゚⊿゚)ξ「これで残りの半分」

 彼女はそう言い、正方形の内1つをマジックペンで塗りつぶした。

ξ゚⊿゚)ξ「これを続けていったとして、
     いつか正方形が完全に塗りつぶされるときがくると思う?」

('A`)「こないんじゃないかな。
   線の太さを考えに入れなければの話だけれど」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。こないのよ」

 彼女はそう言った。そして大きく1つ息を吐いた。


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:28:18.55 ID:u5xd6MRz0

ξ゚⊿゚)ξ「あらゆるものには終わりがあると思うじゃない?」

('A`)「そうだね。僕もいつかは本当に死ぬんだろう」

ξ゚⊿゚)ξ「ということは、はじめと終わりの中点がある筈なのよ。
      40歳で死ぬ人は20歳が中点なんだし、
      シーズン10得点するフォアードは5点が中点なわけ」

 ツンは自分のティーカップにコーヒーのお代わりを注ぐと、
僕に要るかと訊いてきた。
僕がそれを断ると、彼女は再び話しはじめる。

ξ゚⊿゚)ξ「ここで生活をしていると、こう思うの。
     『そろそろ半分過ぎたかな』って」

('A`)「そろそろ半分過ぎたかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。いつかあたしが解放される日が来るとして、
      それが早いか遅いかはわからないけれど、
      いつか来ると思うわけじゃない。
      それで、そこから数えてそろそろ半分は経ったんじゃないかな、
      と思うわけ」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:31:06.09 ID:u5xd6MRz0

('A`)「そうじゃなかったんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。違うの。
      あたしはこれまでに4回そう思ったわ。
      そろそろ半分済んだかな、
      そろそろ解放されても良いんじゃないかな、って」

 そして4回こう思ったの、と彼女は締めくくる。

ξ゚ー゚)ξ「きっと永遠にあたしはここに居るんだわ。
      半分が過ぎて、そのまた半分が過ぎても、
      それは永遠に続いていくの」

 見渡す限りあたり一面の草原の中、僕とツンは2人だけだった。

 大丈夫だ、と、僕は彼女にそう云った。

('A`)「僕は外でツンに会っている。
   つまり、ツンがいずれ解放されることは確定しているんだ」

 それに、と僕は付け加える。

('A`)「僕が解放してみせる」


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:33:49.41 ID:u5xd6MRz0

 地下1階。僕の両手は空いている。

 降りた先には何もなかった。
敵もいなければアイテムも落ちていない。
いつも通り暗く冷えた部屋の中に、僕はひとり立っていた。

 荷物の中を見ると、ちゃんと大きなうまい棒(めんたい味)と
足踏みスイッチが入っていた。
ツンに手渡されなかったため、ひょっとしたら僕はこれらなしで
今回の探索を行わなければならないのではないのかと心配していたのだが、
どうやら杞憂に終わったらしい。

('A`)「それなら別にツンいなくてもいーじゃんな」

 僕は神様に向かって文句をつけてみたが、
天罰が僕に降り注ぐ気配はどこにもなかった。
僕は地下1階の探索を開始した。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:36:04.50 ID:u5xd6MRz0

 僕はすっかり手馴れたもので、注意深さを忘れるなと自戒しつつも
手早く探索をすませていく。

('A`)「これってもしかして、
   ある程度慣れてしまった後は運の勝負になるんじゃないのか?」

 そんなことを思ったが、
あまり運の要素を重要視してしまうと
かつてない幸運を無駄にした前回の探索のことが
頭にチラついてしまうので、
僕はなるべく考えないようにした。

 僕は地下1階でわかんないんですの巻物と『タングステンシールド』、
火ー吹き草を手に入れた。
タングステンシールドは装備してみるとずっしり重く、強いことがわかる。

『ドクオはタングステンシールド+2を装備した!』

 そんな気がした。


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:39:04.14 ID:u5xd6MRz0

 地下2階。僕の左手にはタングステンシールド+2が握られている。

 タングステンシールドは確かにすごく守備力が大きいのだが、
やたらと重く、それは僕の腕に乳酸がたまっていくのがわかるほどだった。

('A`)「これは特別な装備品なのかもわからんね」

 僕は説明を見てみることにした。

『-タングステンシールド-

 タングステンというとフィラメントの原料として有名であるが、
 その比重の高さはダーツのバレル部分の材料として優れている。
 一度タングステンのダーツを握ると二度と真鍮製には戻れない。
 あ、そうそう。装備したらやたらとお腹空くよ!』

('A`)「そうそう、20グラムの太鼓型が僕のマイダーツなんですよ。
   って、ダーツはどうでも良いんだよ!」

 ダーツなんて握ったこともない筈なのに、
僕はありえないノリツッコミを敢行していた。
死にたくなった。


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:42:42.09 ID:u5xd6MRz0

 なんにせよ、タングステンシールドを装備していると
お腹がすいていくらしい。
この階で装備しているのは賢くないな、と僕は思った。

('A`)「装備するなら4階以降だ。
   それまでは最悪素手でもなんとかなる」

 僕は迫りくるギコ猫やちんぽっぽを1匹1匹プチプチ倒し、
地下2階を探索してまわる。
この深さで怖いのはワナだけなので、
僕は部屋に入るとアイテムを探し、無ければ無いで固執せず、
さっさと次の部屋へと移動する。

 僕は地下2階で700チャンネルとお手当て草、
そしてガチムチ草を拾った。

 早速ガチムチ草を飲み込むと、僕の胸板はちょっぴり厚くなった。


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:45:02.13 ID:u5xd6MRz0

 地下3階。僕の両手は空いている。

('A`)「そろそろ武器がないと困るな」

 僕はそう思った。
盾はタングステンシールドでまかなえる。
多少腹が減ろうが地下5階を抜けてしまえば樹海村で
宿屋に泊まれるし、
タングステンシールドの守備力自体は満足いくものである。

('A`)「だからネックは武器なんだ」

 願わくば前回と同様バツグンソードが欲しいところである。
武器、武器、歌舞伎、と唱えながら敵を殴っていると、
僕は武器が落ちている部屋に辿りついた。


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:47:34.78 ID:u5xd6MRz0

('A`)「ヤター。言ってみるもんですな」

 僕はスイスイスピアを拾った。早速装備する。

『ドクオはスイスイスピアを装備した!』

 そんな気がした。

 スイスイスピアは僕にとって初見ではない。
忌まわしき餓死を体験した日に僕はこれを一度見ているが、
そのときはまったく余裕のない極限状態だったため
装備することはなかったのである。
僕はスイスイスピアの攻撃力の低さに肩を落とした。

 いやまてよ、と僕は気づく。

('A`)「タングステンシールドと同様、
   何か特別な効果があるのかもしれない」


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:50:18.95 ID:u5xd6MRz0

『-スイスイスピア-

 オークションで話題になったあれには敵わないけど結構長い。
 ちょっぴり離れた敵にも攻撃が届くよ!』

('A`)「これはひょっとして、すごく良い武器なんじゃないのか?」

 僕は走りまわって敵を探すと、やっとこさでてきたビコーズに向かって
『行動』1回分ほど離れた位置から突いてみた。
普通なら僕の攻撃は空振りに終わり、近寄ってきたビコーズに対して
僕が先制攻撃の形となる場面である。

『ドクオの攻撃! ビコーズに8ポイントのダメージ!
 ビコーズをやっつけた!』

('A`)「やっぱりだ。こいつはすごいぞ!」

 僕はひとり興奮した。
間合いの取り方を誤らなければ、
僕は敵に向かって2回連続攻撃できるということである。


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:53:02.91 ID:u5xd6MRz0

 僕の右手にはその特殊性から有用であること間違いなしの
スイスイスピアが光り、
僕の左手には使いどころを間違えなければ無双の守備力をもつ
タングステンシールドが装備の時を待っている。
これは、と僕は思った。

('A`)「ひょっとしたら前回より恵まれているのかもしれない…!」

 僕は地下3階で10本の木の矢を拾い、
拾ったうまい棒(キャラメル味)をその場で食べた。
敵が出てきても接近を許さずに駆逐できるのは快感で、
僕はすっかりスイスイスピアが気に入っている。

('A`)「矢でも鉄砲でももってこいってんだ!」

 僕は調子に乗っていた。


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:56:42.47 ID:u5xd6MRz0

 地下4階。僕の右手にはスイスイスピアが握られている。

 フサギコの攻撃力に備えて盾を装備する。

『ドクオはタングステンシールド+2を装備した!』

('A`)「これで万全だな。
   あとはフサギコをやっつけるのに何回殴らなければならないのか
   確かめておくことだろう」

 そう思った。
僕は降りた先の部屋でうまい棒(キャラメル味)を拾うと、
地下4階を歩き回ることにした。


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 17:59:04.76 ID:u5xd6MRz0

 幸運なことに、僕が移動した先の部屋にはフサギコが単身待っていた。
僕は盾を装備し忘れてないことを再確認すると、
『行動』1回分の距離を残してフサギコと対峙する。

『ドクオの攻撃! フサギコに15ポイントのダメージ!』

『ドクオの攻撃! フサギコに15ポイントのダメージ!』
『フサギコの攻撃! ドクオに7ポイントのダメージ!』

『ドクオの攻撃! フサギコに15ポイントのダメージ!
 フサギコをやっつけた!』

('A`)「どうやら3回殴ればやっつけられるらしいな」

 つまり、距離の取り方を誤らなければ
バツグンソードと遜色ない攻撃能力を発揮できるというわけだ。

('A`)「怖いのは、通路なんかでバッタリ遭遇することだな」

 僕は時折矢を前方に放ってソナーのように活用する。
できるだけ慎重に、僕は地下4階を探索してまわった。


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:01:56.42 ID:u5xd6MRz0

 店だ、と僕は呟いた。

 僕の今いる小部屋は通路の突き当たりに位置していて、
そこには様々なアイテムが置かれている。
入り口脇に立つ男は僕が小部屋に入るとき挨拶してきた。

<ヽ`∀´>「いらっしゃいニダ」

 どうやら本当に店らしい。
置かれたアイテムにはすべて値がついていて、
お金を払えば買えるのだろう。
男に訊いてみたところ、どうやら僕の持つアイテムも
その価値に応じて買い取ってくれるらしい。

 僕の所持金は700チャンネル。
店のアイテム達はどれもそれなりの値段をしていて、
多くても1つか2つを買うのが精一杯という様子だった。


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:05:05.31 ID:u5xd6MRz0

 並ぶアイテム群の中、飛びぬけて高価なアイテムがあった。
指輪だ。
好奇心にかられて手にとってみると、男は素早く移動し、
僕がそのまま出られないよう店の入り口に立ちふさがる。

『ドクオはダイアの指輪を拾った!』

('A`)「あ、そっか。
   泥棒されたらたいへんだもんな」

 何も言ってこないということは、
別に手にとって見るのは悪いことではないのだろう。
僕はその9500チャンネルもするダイアの指輪をしげしげと見つめた。

 男が入り口を塞いでいるので、この部屋にいる限り、
モンスターに襲われる危険性はまったくない。
はじめて入った店ということもあり、僕はちょっぴりはしゃいでいた。


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:08:27.23 ID:u5xd6MRz0

 700チャンネルで買えるものといったらやっぱり制限がかかるようで、
僕は2つの案がある中揺れていた。

('A`)「1つはガチムチ草。
   もう1つはお手当て草+うまい棒(キャラメル味)だ」

 タングステンシールドを装備して進む以上、
飢えの心配は常につきまとう。
僕は現在大きなうまい棒(めんたい味)とうまいぼう(キャラメル味)を
1つずつ持っているとはいったものの、
食料はいくらあっても足りないと思っておいて損はない。

 しかし、右手に持つのは純粋な攻撃力を考えた場合心もとない
スイスイスピアである。
ガチムチ草で少しでも胸板を厚くしておくことは必須ともいえる。

('A`)「どっちだろう…」

 僕は悩んでいた。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:11:07.32 ID:u5xd6MRz0

 僕は考え事をする際に
手に持っているものをいじくりまわす癖がある。
数学で問題がなかなか解けないときは
鉛筆を手の上で回しながら考えるし、
電話で誰かと話し終わって見てみると
そのへんの紙に不思議な模様が描かれていることが少なくない。
オワタナイフを装備すべきか迷っていたときも、
僕はそれをいじくりまわしながら考えていた。

 そしてそれは今回も同じことで、僕はダイアの指輪で手遊びしていた。

 何の拍子だったのだろう。
ダイアの指輪をいじりながら考えているうちに、
それは僕の指にすっぽりハマってしまっていた。

『ドクオはダイアの指輪を装備した!
 なんと! ダイアの指輪は呪われていた!』

('A`)「!」

 思わず店の入り口に目をやると、男はじっと僕を見ている。

(;'A`)「やだな。すぐに外して返しますよ」

 しかし、僕がどれだけ万力のように力をこめて
指輪を外そうとしようとも、
ガッチリ食い込んだ指輪は僕の指から離れる気配を見せなかった。


103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:14:29.80 ID:u5xd6MRz0

<ヽ`∀´>「ダイアの指輪、9500チャンネルニダ」

 男は何故か嬉しそうに、僕に向かって言ってきた。

(;'A`)「いやいや、こんなの買いませんから。
    すぐに外して返しますから」

<ヽ`∀´>「それならそれで構わないニダ。
     買うなら、ダイアの指輪、9500チャンネルニダ」

 あれーおかしいなぁ、あれーおかしいなぁ。
吹き出る汗に指を滑らせながら、僕は指輪をなんとか外そうとする。

『呪われたダイアの指輪は外れない!』

(;'A`)「うるせーよ!」

 僕の指には血が滲んでいた。


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:17:32.39 ID:u5xd6MRz0

 とりあえず、この場をなんとか収めなければならない。
僕はいったん指輪を外すことをあきらめ、
自分のもちものをすべて換金するといくらになるのか訊いてみた。

<ヽ`∀´>「しめて2850チャンネルニダ」

 全然足りなかった。

(;'A`)「えーと、あなたはずっと見てたわけですから、
    僕がどういう状況なのかわかりますよね。
    僕も悪気があってこうなっているわけではないのです。
    なんとか勘弁していただけないでしょうか」

<ヽ`∀´>「買うならダイアの指輪、9500チャンネルニダ」

 だめだこいつはやくなんとかしないと。


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:20:44.56 ID:u5xd6MRz0

 僕はすっかり八方塞がりになっていた。
いったいこの状況はどうすれば打開されるというのだろう。

 僕の所持品をすべて売り払ったところで
指輪の代金には大きく届かない。
そして指輪は僕の指から外れない。
僕が途方に暮れていると、男が話しかけてきた。

<ヽ`∀´>「SAW」

 彼はソウ、と発音すると、僕に細い糸鋸を手渡した。

('A`)「ソウ?」

 『縫う』? 違う。おそらくは名詞でノコギリ。
あるいは動詞で、『ノコギリによって切る』。

 彼は僕の目を見ると、もう一度ソウ、と発音した。


109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:23:38.52 ID:u5xd6MRz0

 僕は何度も瞬きを繰り返しながら糸鋸を受け取った。

(;'A`)「これは…?」

 僕は男に問いかける。
わかっているくせに、と彼は微笑む。

<ヽ`∀´>「買うならダイアの指輪、9500チャンネルニダ」

 僕は糸鋸を握り締めると、
指輪のまとわりついている指の付け根にもっていく。

 ちょっと待てよ、と僕は自分に問いかける。
お前、自分が何をしようとしてるかわかってるのか?

 男はソウ、ソウ、と僕を煽るように繰り返す。

 僕は大きく1つ息を吐くと、心を決めた。


112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:26:15.88 ID:u5xd6MRz0

 僕は糸鋸を捨て去った。
男を睨みつけ、小部屋の奥に移動する。

<ヽ`∀´>「買うならダイアの指輪、9500チャンネルニダ」

('A`)「知るか!」

 僕が叫ぶと、男は意外そうな表情を向けてくる。
僕は火ー吹き草を飲み込んだ。

『ドクオは火ー吹き草を飲み込んだ! ニダーに25ポイントのダメージ!』

 男はニダーというらしい。
ニダーは炎を受けてもさして動じた態度は見せず、
大きく歪んだ笑みを見せた。

<ヽ`∀´>「アイゴー! 謝罪と賠償を要求するニダ!」


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:29:17.62 ID:u5xd6MRz0

 離れた位置から僕が次々と投げつける木の矢をものともせず、
ニダーは1歩1歩、嬉々とした表情で僕に向かって近づいてくる。

<ヽ`∀´>「謝罪と賠償を要求するニダ。謝罪と賠償を要求するニダ」

 ニダーが『行動』1回分までの距離に接近してくると、
僕はスイスイスピアを握り締めた。

『ドクオの攻撃! ニダーに7ポイントのダメージ!』

('A`)「馬鹿な! ダメージが少なすぎる」

 僕が叫んだところで状況は変わらない。
ニダーはサドスティックな笑顔を顔に貼り付けたまま、
僕の隣まで近寄ってきた。


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:32:22.82 ID:u5xd6MRz0

('A`)「くそッ」

 僕がスイスイスピアを突き出すと、
ニダーはそれを受け僕を殴りつけてきた。

『ドクオの攻撃! ニダーに7ポイントのダメージ!』
『ニダーの攻撃! ドクオに32ポイントのダメージ!』

 あまりの衝撃に、僕の体は吹っ飛ばされる。
できるだけ間合いを取ろうと壁際にいるのが災いしたのか、
僕は体をしたたかに壁に打ちつけてしまい、
しばらく呼吸ができなくなった。

 ようやく空気を吸い込めるようになると、
僕は咳を繰り返しながら声をもらした。

('A`)「強すぎる…」


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:35:27.54 ID:u5xd6MRz0

<ヽ`∀´>「謝罪と賠償を要求するニダ」

 僕の目をしっかりと見据えながら、彼はそう繰り返す。

('A`)「謝罪と賠償とは何なんだ!」

 僕がそう訊くと、彼はコブシを握り、こう言った。

<ヽ`∀´>「ウリは知らん、そんなのはお前が考えればいいことニダ。
     謝罪と賠償を要求するニダ」

 僕は一縷の望みをかけ右手を振るい、
ニダーはそれに呼応するように振りかぶる。

『ドクオの攻撃! ニダーに7ポイントのダメージ!』
『ニダーの攻撃! ドクオに32ポイントのダメージ!』

 僕は死んだ。

          『ニダーに撲殺』第七話へつづく。




133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/06(土) 18:59:49.27 ID:P7z9PwdW0

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| 30002-01 (V-タ)       経1
└──────────────────



第七話はこちら

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