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(*゚ー゚)かぞえるようです

1 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 18:57:58.59 ID:hC5bXLIB0

「しあわせ」

歌うように言った彼女のどこか不安げな微笑みは、とても美しかった。

「しあわせなの」

そうして、閉じられた五本の細くてしろい指が、ゆっくりと、開かれていく。
まっしろな、細い指。
鴇色の唇が開いては閉じて。まっしろな息をふぁ、と吐き出しながら。

歌うように数をかぞえる。


声が震えているのは、寒さのせいか。




4 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 18:59:35.31 ID:hC5bXLIB0




(*゚ー゚)かぞえるようです





5 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:01:04.04 ID:hC5bXLIB0



――― ひとぉつ


――― あなたにはじめてあえたこと





8 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:04:00.10 ID:hC5bXLIB0


(*゚ー゚)「だぁれ?」

青空に映える白いワンピース。
大きな麦わら帽子。
真っ白な肌と、色素の薄い髪の毛。
大きな大きな鳶色の瞳。

(*゚ー゚)「このちかくのひと?」

あんまりにもその少女が綺麗で。
あんまりにもその声が可憐で。

(,,゚Д゚)「あっ」

やっと探しだした野球のボールを、取り落としてしまった。



10 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:06:26.30 ID:hC5bXLIB0


(,,゚Д゚)「え、っと、おれ、あの」

(*゚ー゚)「このちかくにすんでいるひとなのね?」

綺麗な、綺麗な声で彼女は言った。

(,,゚Д゚)「あ、うんえっと、ぎこ、っていうんだ」

(*゚ー゚)「そう、わたしは、しぃっていうの」

にこり。
その笑顔を向けられるだけで、頬があつくなるのがわかった。



11 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:08:20.61 ID:hC5bXLIB0


(*゚ー゚)「なつになるとね、いつもここにくるのよ、べっそうがあるの」

あっちのほう、と白い指で丘の先を指差す。
僕は目が良いのだけれど、流石に丘の向こうを見通すことはできなかった。

(*゚ー゚)「いつも、おとうさんは出ちゃだめって言うんだけど」

ぬけだしてきちゃった。


ぺろり、と薄紅の舌を覗かせて。



13 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:10:36.39 ID:hC5bXLIB0


「だからね」


(*゚ー゚)「きょう、わたしとあったことはないしょにしてね」

しぃは、くすくす笑ってそう言った。
やくそくよ、と小さな小指を差し出して。

自分も小指を出そうと思ったけれど、ボールを探したときにひどく汚してしまっていて。
その綺麗な、汚れなんて何一つ知らないような指に僕の指を絡めてしまっていいものだろうか、と。

躊躇っている僕の小指に、しぃはするりと自分のそれを絡めた。



ゆーびきーりげんまん

うーそつーいたらはーりせんぼんのーますぅ


14 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:12:26.14 ID:hC5bXLIB0


(,,゚Д゚)「しぃは、いつもここにいるのか?」

(*゚ー゚)「うぅん」


(,,゚Д゚)「そのかみのけは、そめたのか?」

(*゚ー゚)「おかあさんもおなじいろよ」

他愛もない話をたくさんした。
取落としたボールを探すことを忘れるくらいに。

(,,゚Д゚)「あしたも、あえるか?」

気付けば空は銀朱に染まっていて。
真っ白なワンピースは同じ色を映していた。

(*^ー^)「まってるわ、ぎこくん」

夕焼け色の彼女はまた、小指を差し出した。


15 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:14:44.74 ID:hC5bXLIB0


「あの日の夕焼け、覚えてるか」

「えぇ、覚えてる。あなたが最初に描いた絵の色だもの」

ふふふ、と。
彼女は笑う。

ひとさしゆびを立てた白い右手は触れたらとても冷たそうだった。
けれど、もう僕のコートのポケットは彼女の左手と僕の右手でいっぱいだから、
彼女の右手を導くことはできなくて。

「きにしないで、寒くなんて、ないもの」

ぽけっとの中の愛しさが、ひどくひどく、暖かい。



16 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:17:00.63 ID:hC5bXLIB0


「綺麗」

白い息を吐き出しながら、彼女は呟く。
そっと開かれた白い掌に、牡丹雪はゆったりと落ちて、とろりとあまく溶けた。

「あぁ」

少し、眉をひそめて彼女は寂しそうに。
その掌にいくつも、いくつも、水滴がぱた、ぱた、と、開く。

「綺麗なものほど、触れるのは難しいんだ」

帽子を深く被りなおして、僕は言う。

僕の涙は、雪に落ちる。


きゅ、と、彼女は濡れた掌を握りしめ、また人差し指をたて。

つづけて、中指をたて。



18 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:19:09.80 ID:hC5bXLIB0




――― ふたぁつ


――― あなたにまた、あえたこと





19 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:21:10.28 ID:hC5bXLIB0


大きな都会を通り過ぎ、また少し寂れてきたところに、僕の学校はある。
そう広くないグラウンドに、そう多くない野球部員が集って、のんびりのんびり走っていた。

(,,゚Д゚)「あのラウンジ校が見たら、俺らの練習どう思うだろうなぁ」

僕は全国的に有名な強豪校の名前を挙げながら、グラウンドを走る。

( ´∀`)「間違いなく笑われるモナ」

同級生がゆったりと返す。
息も切れないくらいの速さで、ぐるぐるぐるぐる走る。

読書感想文用に適当に選んだ本に、こんなシーンがあった気がする。

ぐるぐる。
ぐるぐる。
堂々めぐり。

ドードーは言う。

みんな勝ったんだ、だから全員がごほうびもらわなくちゃ。



21 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:23:09.92 ID:hC5bXLIB0


(,,゚Д゚)「ごほうび」

( ´∀`)「何か言ったモナ?」

(,,゚Д゚)「いや、何も」

もらわなくちゃ。
僕へのごほうび。

なんだろう。

しばし考えて、一つの考えに辿りつく。

(,,゚Д゚)「俺、今日放課後の練習、休んでいいかな」



22 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:26:34.69 ID:hC5bXLIB0


美術室と書かれた教室を、軽くノックする。

('、`*川「あら、久し振りに来たわねー」

(,,゚Д゚)「おう」

('、`*川「今日も見てるだけー?なんか描いてみれば?」

(,,゚Д゚)「俺に絵が描けると思うか?」

('、`*川「無理そう」

クラスメイトの美術部員と笑い合う。
女子ばかりの美術室。

どうやら、学年ごとの、三つのグループができているらしい。



23 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:28:42.80 ID:hC5bXLIB0


彼女は一年生。
だから二年生である僕は、そんな後輩グループに突入できるはずもなく。

(*゚ー゚)

窓際で、一人イーゼルに向かっている彼女を見ていることしかできなかった。


('、`*川「擬古クン、一回脱いでモデルになってくれない?」

(,,゚Д゚)「やだっ、俺の貞操がっ!」

('、`*川「なにそれ」

クラスメイトと話していても、視線は彼女に。

あぁ。

ごほうびの、ボンボン菓子より、甘い、あまい、時間。



24 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:30:26.39 ID:hC5bXLIB0


気付けば美術部に入り浸る日々。
野球道具を家に忘れたまま学校に行くこともあった。

そんなある日。

('、`*川「一回なんか描いてみなさいよぅ、ほれほれ」

押し付けられるように、大きな画用紙と、四角いクレヨンのようなものがたくさん入った箱を渡された。

(,,゚Д゚)「なんかって…」

('、`*川「そうね、折角だから誰か描いてみたら?」

(,,゚Д゚)そ

('、`*川「だ、れ、に、し、よ、う、か、な」



25 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:32:33.58 ID:hC5bXLIB0


楽しげに談笑する部員たちの間を、人差し指がぴょんぴょんと跳ねる。

(,,゚Д゚)「え、いや、俺は絵なんて」

('、`*川「てっぽーうって、ばん、ばん、ばん!はい、きまりっ!」

(,,゚Д゚)「えええぇぇ……」

埴屋さぁん、とクラスメイトは窓際に声をかける。

スケッチブックと、パステルと箱に書かれたその画材を交互に見やり、眉を思いきりひそめていた僕に。


(*゚ー゚)「なんですか?伊藤先輩」


きれいなきれいな声が、おりてきた。



26 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:35:11.64 ID:hC5bXLIB0


「あれね、ほんとうはわたし、先輩に頼んだの」

ぎこせんぱいとちかづきたいのだけれど、どうすればいいですか、って。

「気付いたさ」

「…ほんとう?」

きゅ、と。
ポケットの中で、少しだけ強く、あたたかいてのひらが握られる。

「おれも」

僕も答えるように、彼女のてのひらを、握る。


「おれもずっと、しぃを見ていたから」



27 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:37:42.06 ID:hC5bXLIB0


彼女は笑う。
涙交じりの声で笑う。

あぁほんとうに、きみは。

いつまでたっても、泣き虫だ。

僕はまた、帽子を深くかぶる。


小刻みに震える掌。

開かれた、人さし指と、中指。


薬指をひらいて、彼女はうたう。



29 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:39:36.48 ID:hC5bXLIB0




――― みぃっつ


――― あなたが、えをかいてくれたこと




31 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:41:27.80 ID:hC5bXLIB0


(*゚ー゚)「いきなりパステルなんて、難しくないですか?先輩」

(,,゚Д゚)「ここで諦めたら男が廃る!」

たくさんの色から、いくつかを選んで重ねていく。
柔らかいそれは画用紙の上に色を落としながら崩れていく。

絵なんて描いたことがないからこそ、必死に。
震える手で、歪な線を並べていく。

彼女を表す色が見つからない。
こんなにたくさん色があるのに。
どれを使えば彼女は一番美しく見えるのだろう。

知識のない僕にはわからなかった。



33 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:43:23.99 ID:hC5bXLIB0


何日も何日もかけて。
何枚も何枚も捨てて。

そうして、完成と呼んだ絵は、ひどく稚拙なもので。

すぐに破り捨てようとした僕を彼女はゆるやかに制して。
しゅぅ、とメロンのような香りのするスプレーを絵に吹きかける。
そして、制服が汚れてしまうことも厭わないで、細い腕でそっと、だいだい色の絵を、抱く。

(*゚ー゚)「ゆうやけのいろ」

愛おしそうな声で、優しく、呟く。

細められた瞳のきらめきは、どんな画材でも、表現することはできないだろう。

(*゚ー゚)「まってたよ、ぎこくん」


あの日の夕焼け色の中。



35 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:45:32.93 ID:hC5bXLIB0


野球部は、やめた。
誰も残念がらなかった。

野球道具は近所の子供にあげた。
真夏の太陽みたいな笑顔で喜んでくれた。
野球道具も本望だろう。

スケッチブックを抱え直して僕はまた、美術室へ向かう。



37 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:48:00.39 ID:hC5bXLIB0


(*゚ー゚)「先輩、上手くなりましたね」

木炭でざくざくとしぃの姿を描いていく。

僕がイーゼルに向かう分だけ、しぃはイーゼルに向かわなくなった。
いいのか、と僕が聞くと、彼女は首を横に振る。

(*゚ー゚)「続けられないんです、絵」

家がうるさいの、と。
寂しそうに微笑む。
はやく諦めてしまいたかったの、いいきっかけだったわ、と。



41 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:50:49.14 ID:hC5bXLIB0


そんな風に綴られる言葉。

反論しそうになる僕の唇に、そっと、人差し指をあてる。
ゆるゆると、首を二度、三度、横に振って。

(*゚ー゚)「先輩は、絵、続けてください。絵じゃなくてもいい、好きなこと、続けてください」

お願いします、約束です。
彼女は細い小指を差し出す。


僕が好きなことは。


きみをかくことだ。


彼女の指に自分の指を絡めながら思ったことをそのまま言うと。

しぃはうれしそうに、うれしそうに笑った。
うれしそうに、涙を流しながら。



44 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:53:24.28 ID:hC5bXLIB0


「あのときから、しぃは、よく泣いていたな」

頬を伝う涙をそっと、指先で拭ってやる。
二人を乗せた古い小舟は軋みながら、湖の上を滑っていく。

雪は止み、ただただ、錆鼠の空が広がっている。
空気も澄んでいる。
じきに星が見えるだろう
ぼんやりと光る下限の月は船のようで。

みずうみとよぞら。
ふねはふたつ。

「あなたはいつでも強がりだった」

いつだってめげてもよかったのに。
いつだってあきらめてくれてもよかったのに。



48 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:55:52.34 ID:hC5bXLIB0


「いつだって針を千本のんでもよかったさ」

でも。

「しぃは泣き虫だから、おれが針をのんでいるのを見るだけで、泣いてしまうだろう?」

だから、きみは嬉し涙だけ流していてくれ。


「有難う」


そんな苦しそうな笑顔で、泣かないでくれ。



50 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:57:31.66 ID:hC5bXLIB0



彼女は小指をそっと立てる。

僕は黙って見つめている。


彼女は唇をそっと開く。

僕は黙って聞いている。



53 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 19:59:49.71 ID:hC5bXLIB0




――― よぉっつ


――― あなたが、わたしとあるいてくれたこと




55 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:02:28.18 ID:hC5bXLIB0


(*゚ー゚)「たすけて」

いつものようにイーゼルに向かっていると、息を切らしながらやってきたしぃに、告げられる。

(,,゚Д゚)「どうした?少しおちつ…「結婚」

強く、強く、しぃはその単語を告げる。


(,,゚Д゚)「……は?」

そして、大きく息を吸って一つ。

(*゚ー゚)「結婚、させられてしまうの」



56 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:04:29.41 ID:hC5bXLIB0


そうだ。

冷静に考えてもみろ、彼女の親が僕らの中を認めているわけ、ないじゃないか。

彼女は大企業の一人娘。
こちらはしがない絵描き志望。

釣り合わないにも程がある。

(*゚ー゚)「わたし、嫌。ねぇ、どうしたらいい、ぎこくん」

絵の具まみれの手を強く、胸に抱くようにしながら、しぃは縋るように言う。
その服も高いものだろうに。
僕が買うような、安い絵の具で汚してしまってはもったいないよ。



57 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:06:41.74 ID:hC5bXLIB0


嗚呼、いつだって僕は彼女を汚していたな。

(,,゚Д゚)「しぃ」

彼女の小指も。

(,,゚Д゚)「俺と」

彼女の服も。


彼女の、人生も。


――― おれといっしょに、にげよう。



59 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:10:08.33 ID:hC5bXLIB0


狭いアパート。
誰も買ってくれない絵を毎日毎日描き上げていく。
モデルは一人だけ。
背景は夕焼けだけ。

(*゚ー゚)「売らなくていいの、全部わたしのものでいいの」


あの時と同じように、しゅぅ、と、フィキサチーフを吹きかけながら、しぃは笑う。
クロッキー帳も、スケッチブックも、水彩画も、油彩画も。
ぜんぶぜんぶ、彼女のもの。


彼女の為に、彼女の絵を描く時間の、なんと幸福なことか。

僕は、彼女の人生を汚していることに気付かないで、幸福な時間に浸っていた。



61 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:12:14.10 ID:hC5bXLIB0


神様がくれたボンボン菓子。

アリスがくれるのよりずぅっとあまくておいしい、宝石みたいな砂糖菓子。


あぁ、でも、幼かった僕には気付けなかった。


ボンボン菓子の砂糖の薄い殻の中。


甘いシロップが入ってるとは、限らないということに。



64 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:14:30.31 ID:hC5bXLIB0


三日前、しぃの父親がついにしぃを見つけ出した。
何度も何度もたたかれる扉。
僕たちは手を取り合って、窓から走り出す。

行く場所は、一つしか見つからなかった。



66 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:16:44.33 ID:hC5bXLIB0


「いつぅつ」

彼女は歌う。
あの日から変わらない、綺麗な、綺麗な声で歌う。

閉じられた五本の指をそっと開く。

「あなたと、ここにいられること」



68 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:18:51.88 ID:hC5bXLIB0


(,,゚Д゚)「先程から気になっていたんだ」

(*゚ー゚)「どうしたの?」

(,,゚Д゚)「何を、数えているんだろう、と」

あぁ、と。
彼女は五本の指を立てた掌を、僕に見せながら、答える。

(*゚ー゚)「これは、しあわせを」

(,,゚Д゚)「しあわせ?」

(*゚ー゚)「しあわせのかずを、かぞえていたの」



僕はたまらず、彼女の細い細い肩を、ぎゅっと、抱き寄せた。



70 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:21:23.49 ID:hC5bXLIB0


(,,゚Д゚)「幸せの数なんて、五本の指で足りるものか」

(*゚ー゚)「片手で足りなければ両手を使うわ」

(,,゚Д゚)「幸せの数なんて、十の指で足りるものか」

(*゚ー゚)「あなたの指があるでしょう」

(,,゚Д゚)「幸せの数なんて――「あぁ、だめね」



(* ー )「やっぱり、指が、足りなくなった」



73 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:24:01.02 ID:hC5bXLIB0


水鏡の中。
小舟は動くことをやめて。

(*゚ー゚)「ねぇ、ここがいいわ」

幸せそうな声でしぃは言った。
そっと、肩にその小さな顔を埋めながら。

僕は、彼女を抱きしめて。
ただただ。
ただただ。

嗚咽を漏らすだけ。

(*゚ー゚)「さいごなのに、もう」

あれだけ深くかぶった帽子は何処へ行ったのだろう。
僕の髪を、しぃはやわらかく、撫でてくれた。



75 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:27:47.68 ID:hC5bXLIB0


しぃが懐から、丸められた一枚の紙を取り出す。
少しよれたそれを、大切に、大切に広げて。

船を浮かべるように、そっと水面に乗せて、手を離す。

僕が初めて描いたしぃの絵は、丸まりながら、湖の上を滑っていく。
やがて、夕焼け色の紙面を、じわり、じわりと錆鼠色が食べて、食べて、食べて。

たっぷりと時間をかけて、僕の絵は、呑みこまれた。

(*^ー^)「じゃぁ、いきましょうか」



78 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:29:42.44 ID:hC5bXLIB0


僕は、うなずいた。

君は、わらった。


二人分の影が傾いた。
水面に波紋が響いていく。

ぐわぁん、と星が尾を引きながら、回る。

ぐるぐる。
ぐるぐる。
ごほうびのもらえない、堂々めぐりがまたはじまって。


おわる。



80 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:31:48.22 ID:hC5bXLIB0


あぁ、それでもぼくは幸せだった。

なぜなら君と終われるから。



たくさんの幸せをありがとう。

にほんの腕では抱えきれないほどのしあわせをありがとう。



82 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:34:01.61 ID:hC5bXLIB0


あぁ、僕はやっと、ほんとうにきみという幸せをだきしめられた。

えいえんに君をだきしめるけんりを得られた。

てんのかみさまがくれたボンボン菓子。

ようやくその味がぼくには理解できた。



87 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:36:57.15 ID:hC5bXLIB0



かがみのようになったそのみなもを壊しながら。


つきとほしをきらきら、きらきら、みにまといながら。




89 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:39:02.29 ID:hC5bXLIB0



    「わたしもよ、ぎこくん」



たくさんのしあわせのなかに、ぼくときみは、いま、おちていく。




92 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:41:46.73 ID:hC5bXLIB0



  おわり



元ネタ:雫/あさき
ちょっと引用 :不思議の国のアリス/L・キャロル







93 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:43:15.89 ID:hC5bXLIB0


投下は終了です。
たくさん支援ありがとうございました。
質問などありましたらどうぞ。

正直ギコが「僕」なのに違和感でした。
あとボンボン菓子食べたことないです。
おいしいの?チョコレートボンボンと違うの?

夏なのに冬でごめんなさい。エアコン寒いよ。



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/21(金) 20:44:49.72 ID:Cnym+1XU0

乙ー。雰囲気が好きだ

色がほとんど読めない



98 名前: ◆VPsEPuSTuM :2009/08/21(金) 20:48:52.49 ID:hC5bXLIB0

>>95
鴇色(ときいろ) 鳶色(とびいろ) 薄紅(うすくれない)
銀朱(ぎんしゅ) 錆鼠(さびねず)

色の名前だとこんなものでしょうか。


参考URL
ttp://www.youtube.com/watch?v=PveA39_7NOY
雫/あさき

ttp://www.genpaku.org/alice01/alice01j.html
不思議の国のアリス 原作: L・キャロル 翻訳: 山形浩生 「第 2 章  涙の池」参照

ttp://www.colordic.org/w/
和色大辞典
[ 2010/11/26 23:20 ] スレ立て短編 | TB(0) | CM(0)

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