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( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  インデックスページ

完結中編



はしがき ~春麗~
いの一 ~夏盛り~
いの二 ~暑気遁れ~
いの三 ~盆祀り~
いの四 ~秋深し~
いの五 ~椛色付く~ 、 いの六 ~冬始め~
いの七 ~霜立ち~


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( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  はしがき

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/29(水) 16:45:08.73 ID:2Pwuwo4u0


 熟(つらつら)鑑るに、銭湯ほどちかみちの教諭なるはなし。

 其故如何となれば、賢愚邪正貧福貴賤、湯を浴んとて裸形になるは、
 天地自然の道理、釈迦も孔子も於三も権助も、産まれたまゝの容にて、惜い欲いも西の海、さらりと無欲の形なり。

 欲垢と梵悩と洗清めて浮湯を浴れば、旦那さまも折助も、どれがどれやら一般裸体(おなじはだかみ)。

 是乃ち生れた時の産湯から死だ時の葬灌にて、暮に紅顔の酔客(なまえい)も、朝湯に醒的(しらふ)となるが如く、生死一重が嗚呼まゝまならぬ哉。

 されば仏嫌の老人も風呂へ入れば吾しらず念仏をまうし、
 色好の壮夫も裸になれば前をおさえて己から恥を知り、
 猛き武士(もののふ)の頸(あたま)から湯をかけられても、人込じやと堪忍をまもり、
 目に見えぬ鬼神を隻腕にえりたる侠客(ちゅうっぱら)も、御免なさいと石榴口に屈むは銭湯の徳ならずや。

 心ある人に私(わたくし)あれども、心なき湯に私なし。

 たとへば、人密に湯の中にて撒屁(おなら)をすれば、湯はぶく/\と鳴て、忽ち泡を浮(う)み出(いだ)す。


『浮世風呂』式亭三馬


( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの一

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/29(水) 17:00:28.95 ID:2Pwuwo4u0



いの一 ~夏盛り~



 夏が来た。
 僕が銭湯の掃除の仕事を初めて、もう四ヶ月になる。
 光陰矢の如し。矢って言うにはちょっと遅いが。


( ^ω^)「こんばんわですおー」

('、`*川「あら、内藤君、今日は早いわね」

( ^ω^)「おっお、サウナ入ろうかと思いましてお」

('、`*川「ああ、そうなの。ゆっくりしていって」

( ^ω^)「あいですおー」


( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの二

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/10(水) 16:24:21.05 ID:LB2o3+0u0


 ゆく人の流れは絶えずして、しかも、同じ者にあらず。澱みに浮かぶ人垢は、かつ散りかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。
 世中(よのなか)にある人とお湯屋と、またかくのごとし。
 たましきの都のうちに、棟を並べ、煙突を連ねる、高き、いやしき、浮世のおか湯は、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔しありしお湯屋は稀なり。
 或いは去年(こぞ)焼けて今年改築せり。コインランドリィ付き。
 或いは大家(おおいえ)亡びて引退せり。ご愛顧有難う御座いました。
 通う人もこれに同じ。所も変らず、人も多かれど、いにしえ見し人は、二三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。

 朝(あした)にしに、夕(ゆうべ)に生るゝ(うまるる)ならひ、たゞ水の垢にぞ似たりける。



   『方丈記(?)』鴨長明(?)



 じぃわじぃわ、と油蝉が鳴いていた。
 太陽もうさんさんと元気に照りつけていて、日差しは大義名分のように夏だ夏だと騒いでいる。





( ^ω^)せんとうのスヽメのようです


いの二 ~暑気遁れ~


( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの三

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 14:31:22.51 ID:TgL+Nc5L0




 割り箸を折り、カッターナイフで削って尖らせる。それを八回。
 クール宅急便で実家から送られてきた荷物の中に、胡瓜と茄子が一つづつ入っていたのだ。
 それらに削った割り箸を差し込み、ちゃぶ台にそっと立たせる。

 胡瓜の早馬。茄子の牛。

 僕のこの下宿にご先祖様が還ってくるのかと言えば、そんな事は絶対に無いのだろうが、それでも何となく義務感を感じてしまう。
 迎え火も送り火もしないが、お盆と言えばこの割り箸を削る感触が思い起こされるのだ。
 祖父に教わりながらおぼつかない手つきで彫刻刀を握ったものだなぁ……。


( ^ω^)「おん」




( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの四

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/12(月) 15:15:06.57 ID:QP+csU7+0


 人間というものは、これ以上の快適をむさぼる必要はないということを考えたりする。
 人生はこれぐらいのものだという嘲笑的なものではない。もっと充足し、ひたりきった楽天気分だ。
 なんのために生きるか、なんのために仕事をするか、なんのために入浴するか、
そんなセンサクを失った充足感において、こうしていることのあたたかさ、なつかしさを感じることがある。
 ここに宇宙あり、と大袈裟に云っても、とりわけ変とも思わないだろう。別に詐術ではない。種と仕掛はハッキリしている。

 一定の温度とその持続だけのことなのである。


   『温浴』坂口安吾



( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの五、いの六

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/22(日) 13:24:23.30 ID:f+QcL0OT0


 三月廿八日、午前五時ころ、伊豆湯ケ島温泉湯本館の湯槽(ゆぶね)にわたしはひとりして浸つてゐた。
 温まるにつれて、昨夜少し過した酒の醉がまたほのかに身體に出て來るのを覺えた。わたしは立つて窓のガラスをあけた。
 手を延ばせば屆きさうな所に溪川の水がちよろ/\と白い波を見せて流れてゐた。
 ツイ其處だけは見ゆるが、向う岸は無論のこと、だう/\とひどい音をたてゝゐる溪の中流すらも見えぬ位ゐ深い霧であつた。
 流石に溪間の風は冷たい。
 わたしはまた湯に入つて後頭部を湯槽の縁に載せ、いまあけたガラス戸の方に向つて、出て行く湯氣、入つて來る霧の惶(あわただ)しい姿を見るともなく仰いでゐた。


『湯槽の朝』若山牧水




( ^ω^)せんとうのスヽメのようです  いの七

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/22(火) 16:07:10.31 ID:qf1+i+zz0




 麦踏みやらの農作業に駆り出され、久しぶりに帰ってきた実家は、前回帰った時から何一つ変わっていなかった。
 強いて言うならば一部の庭木の葉が寒冷な風に染まり、赤く色づいているくらいである。南天が風に揺れている。
 秋はアッと言う間もなく過ぎて行った。上着からはみ出た手は冷たく、最早感覚もない。血色悪く生白い色をしていた。

 家を出る前に通っていた銭湯に赴くと、これまた何一つ変わらない顔をして建っていた。
 田舎は時間が凝り固まって出来ているようである。











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